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インタビュー

第501号 ロジレビュー・インタビュー ~沖 大輔氏・新豊 健二氏(三口産業株式会社)(前編)~ (2023年2月9日発行)

■はじめに

  7月から配信を開始しました、楽々ゼミナール参加者へのインタビュー、第5回目の今回は楽々ゼミナールを飛び出して、弊社の荷主様である三口産業株式会社の沖様、新豊様にインタビューにお答え頂きました。物流に関する質問以外にも、生産や営業についてのお話も伺いました。

今回は前編と後編の二回に分けて掲載いたします。
→過去のセミナー/インタビュー記事はこちら

■ご紹介

三口産業株式会社
1923年創立。「頭髪化粧品メーカー」として、ヘアケア・スタイリング剤など、美容サロン専用化粧品の開発、製造、販売を行っている。2020年には、メイン事業ブランドの「フォードヘア化粧品」を「MIAN BEAUTY(ミアンビューティー)」として新たに始動。「やさしく、わたしらしく」をコンセプトに、独自のカウンセリングを通して美を提案する。
参照:三口産業株式会社 ホームページ

取締役 生産本部 部長 沖 大輔氏(写真左)
1988年に三口産業株式会社へ入社。研究職を経て、製造、製造管理を担当。製造責任者としての業務に加え、自社工場全体の管理も担当し、2019年には自社工場の責任者に着任。

営業部 部長 新豊 健二氏(写真右)
1997年に三口産業株式会社へ入社。入社後から現在に至るまで営業を担当。2020年には営業部 部長に着任し、営業部全体の統括と商品開発・販売・生産計画の策定を関連部署と連携して担当。

■インタビュー

―― 三口産業様の物流体制、沖様が所属される生産本部や、新豊様が所属される営業部での物流への関わりについて教えてください。

沖氏 お客様からの受発注に関しては、業務部と、新豊が所属する営業部が協力して対応を行っています。私が所属する生産本部は製造した商品を倉庫に預けて、出荷までの維持管理を行うことが役割です。入荷~保管までは生産本部、受発注、出荷は業務部と営業部という切り分けになるよう、新豊と協力し、本来あるべき姿に持っていこうとしています。また、これまで属人化していた物流や配送の品質に関する対応も、営業部を母体として会社全体で対応出来る体制を作り、今、運用が始まっています。

―― 三口産業様と定期的に行っているミーティングでも、物流や配送の品質について、情報を共有頂いており、新たな体制後も、引き続き情報交換をしっかり行い、品質維持に努めて参ります。

―― 物流に関して、三口産業様での統一認識や、目標、今後の計画などがありましたら教えてください。

沖氏 顧客満足の大事な要素の一つとして、物流があると考えています。お客様からの「品質」に関する問い合わせの中で、物流に関連するものが、かなりのウエイトを占めていると感じています。そういう意味でも、物流に対してのお客様のニーズも重要になります。貴社(以降サカタウエアハウス)との定期的なミーティングでも、破損や遅配について情報共有を行っていますが、これらも弊社全体の「品質」の中では大きなウエイトを占めているということです。先ほどお話しした、物流や配送の品質管理体制見直しも、この話につながっています。

―― 顧客満足の対象としては、ディーラー様になりますか?それともサロン様のほうですか?

沖氏 両方ですね。例えば今、サカタウエアハウスが直接サロン様へ配送し納品※1 いただいている部分も対象となっています。
(註)*1.サカタウエアハウスによる『楽々倉庫』 -「サカタ共配サービス」-
https://www.sakata.co.jp/news/202106raku2soko_sl_kyohai/により納品

―― その関係で今後の計画的な部分は先ほど仰っていた、クレーム時の対応等が中心になりますか?

沖氏 この後に出てくる話にも繋がるかと思いますが、例えば、納品時の包装資材等のゴミ問題があり、できるだけ梱包を簡素化するということは、今後絶対に検討が必要なことかなと考えています。あとこれは営業サイドでかなり前から要望として出ていたことですが、関西拠点ベースで弊社は配送していますので、どうしても関東より以北、特に北海道、そういったところへの配送は、極端な繁忙期、特に年末とかの時期に荷物の遅配が恒例となってしまっていて、お客様の不満足につながっていると思います。
そういったこともありますので関東圏に東日本エリア向けに物流拠点を持てないかという要望が非常に出ております。その辺は生産の拠点と併せて検討して行く課題かなと考えています。

―― 三口産業様との定期的なミーティングでも、北海道への配送の件は毎年連休前に議案となっています。一週間前ぐらいから、最終の出荷日ですとご案内はしているのですが。

沖氏 おそらくお客様への受注の仕方にも問題があると思います。何時までに受注いただかないと納期が守れないですよということをきちんと伝えているかどうか、受注の締切期日を超えて無理に注文を受けて出荷をお願いする場合があり、そういう所を弊社の営業なり業務なり受注を受けた側の担当者もきちんとお客様へ説明をすることによって、一部回避できるところもあるのかなと思います。ただ、やはりこれだけ課題として上がっているので、それだけで済むかと言ったら、そうはいかないというのが現実だと思っています。
関東圏に東日本エリア向けに物流拠点を持つことについて、一番私がリスクと考えていることは、在庫を関西と関東の二拠点で持たないといけないということであり、財務上かなりウエイトが大きくなってしまうので、できたら製造拠点に同時に在庫を持つことによって、負担を少しでも緩和できないのかなと思っています。

―― 関東に物流拠点と製造拠点を作ることについてもう少し教えてください。

沖氏 後で話題に出てくるかと思いますが、BCPの観点から災害が起きた時、弊社の商品を作っている自社生産品というのは現在の大阪の工場しかないのです。だから、ここが止まってしまうと、すべての商品の供給が滞るということになるのです。その担保という意味で同業他社様と相談しながら補完しあうということを、具体的に相談したこともあります。ただ、やはりいろんな障害があって、そう簡単にはいかないということなのです。
生産能力が半分以上余裕をもって稼働できる会社は、ほぼないと思います。そうなってくると、自社の商品を作りながら他社の要望(生産)を受けるとなると限られた枠しか残ってないのです。そういう意味では新たな協力会社をみつけるという考え方もあるのですが、基本的には自力で(BCPに対応できる)生産拠点を持つことが必須になるのかなと考えています。

――二拠点化のご要望というのは、三口産業様の中でも相当強いものになってきているのですか?

沖氏 会社としても、BCPということを真剣に取り上げて、ずっと検討してきているので、そこではBCPの必要性というものを充分理解しています。
新豊氏 営業サイドを中心に検討を始めたきっかけは、東日本大震災が発生し、大阪で同様の災害が起きた時に完全に(物流が)止まってしまうということで、そういうBCPに対する意識が出てきたということがあります。この業界でも何社か東西に拠点を作っている企業が出てきたじゃないですか。そういうのを営業の現場でも見聞きしている中で、「当社は今後どうするのか?」といった意見が出てきているのです。

―― どちらかというと、配送リードタイムの問題よりもBCPの方が優先課題ですか?

新豊氏 そうです。リードタイムの問題も確かにあるのですが、お客様も大阪だから東北地区は納期が一日遅れることをご理解いただいた上で発注していただいているところがあります。そこは前提ではあるのですが、やはり地震など天災の部分でBCPに対する意識が出てきたところはあります。
地震が少ないということもあって、例えば岡山県で製造するメーカーさんが増えてきていたり、日本人自身がそういうことを少し意識する機会が増えてきたかなという感じですよね。

―― サカタウエアハウス弊社は群馬県館林市に新しく倉庫を建設中で、群馬県は一番地震の少ない地域ということが売りで、BCPに適した物流拠点としてご提案させていただいています。

沖氏 そうですね。在庫をどう分配していくかという点が凄く難しい話で、弊社は多数のアイテムや在庫を保有しているので、そこをどれだけ削りながら有効な在庫を回転させていくのかということを本格的に考える良いきっかけでもあるのです。
ただそういう切り口でも、営業サイドからすると、少しでも売れている商品には、お客さんが付いているので、生産や供給を継続したいという思いが強いのです。
そんなに遠い先ではなく、そのあたりは整理しながら、方向性は出していけるのかなと考えています。

―― 品質管理で重視されていること、こだわりがありましたら教えてください。

沖氏 弊社の品質管理体制は、お客様の手元に商品が届いて、お客様が商品を使い切って最後まで安心安全に使えたというところまでを品質保証していかないといけないということを基本として、品質管理のベースはそこに基準を置いて、取り組んでいます。当然のことながら、受け入れた原材料のチェックをしたり、製造工程それから出来上がっていく過程の製品、半製品のチェック、そういったことをベースにしています。
あと一番ネックになるのは衛生面で、サロン様に届いた段階では、問題はないのですが、店販品はエンドユーザー様が購入されて自宅で使われるので、皆さんのお風呂場に商品が置いてあるという状態です。綺麗に衛生面が保たれている家庭も多いのですが、そうでないところでは、色んな雑菌であるとか、そういったものが介在してくる可能性があるのです。そういう環境でも品質が維持できているかどうかチェックしています。弊社で製造している製品は、全アイテム菌検査を行って出荷判定をしています。
お風呂場は湿気が多く、アルコール消毒とかで手をかざすと噴射されるものと違って、商品の中の液体に直接手で触ってしまうことも多いのです。
この対策は、一つは防腐剤を使うという方法があります。ただ、その防腐剤があくまでもお客様の手元に行って、そういう環境で使われた時に品質を維持するために効力を発揮するという物であって、製造する段階では菌を一切中に入れないということが前提なのです。だから原液に接液する製造環境では、基本的に洗浄度クラス管理した上で、菌などが入らない状態なのです。製造環境で菌が介在してしまうと、その時点で防腐剤が失効してしまうとか、そうするとお客様の手元に届いた時、お風呂場でカビが出てきたり、菌が湧いたりとかそういったことにつながるため、弊社では製造工程での衛生管理を徹底しています。

―― 以前訪問時にお聞きした、「工場の効率化、見せる工場」について教えてください。

沖氏 三口産業として、工場で働く人がお客様満足というものを重要な位置付けで捉えていたのに、ものづくりをする人たちがお客様を感じずにものづくりをしてしまっているところがどうしてもあって、これは言葉で言ってもなかなか理解しがたいものなのです。工場というところは、比較的閉鎖的な社会になってしまうので、外部の方との交流が非常に少なく、だからお客様満足と言いながら自分たちの感覚で物を作ってしまうのです。そこを改善するためにも、工場を新しくする際には、積極的にいろんな方に見て頂くことによって従業員もお客様を間近に感じることができるだろうということで、小さい工場ながら見学者通路を作り、多くのお客様に見学に来ていただきました。
見学者は、サロン様や、ディーラー様は当然なのですが、海外から来られた方とか、あとは学生さんも受け入れていますし、地元の地域で交野市が主催している一般の方に工場見学していただくというイベントにも参加させていただき、かなり頻繁に見学いただいています。

―― 私たちが申し込んでも見学に行けるのでしょうか?

沖氏 いつでもお声がけいただいたら、見学いただけます。
よく言われることが、「前の工場を知っている人からすると新しい今の工場は、ガラッと変わったねって」。やはりそういう外部の人の目が加わると、自分たちも意識を変えないという考え方が加速するのです。
「見せる工場」というのはコンセプトに含まれており、ぜひ見学に来てください。先日も仕入先様が研修を兼ねて、10名来社いただきました。
新豊氏 結構皆さん興味があるみたいで、以前代理店会議に沖部長に来て頂いたときのことをお話します。年一回、代理店会議があり、社長挨拶やその年の政策発表、新製品発表を行います。
沖部長は普段生産本部にいて、代理店会議に出席することはないのですが、ここ(工場)を新しくした時に出席していただいて、スライドなどで説明し、懇親会の時に工場見学について少し話してみたのです。そうしたら皆さんすごく興味を持って、見てみたいという反応があって、やはり自分たちが売っているものをどういう風に作っているのか見てみたいというのは、エンドユーザー様だけでなくて代理店様、中間卸売業者の皆さんもすごく興味があるのかなと思いました。
沖氏 人数制限もないですし、見学者通路を設けていて、着替えは必要ですが折角なので入れるエリアは中に入っていただいて、間近に見ていただいた方が色々と感じるものが多いかと思います。
「見せる工場」と、もう一つのコンセプトが「小ロット多品種生産」です。大手企業と競っても仕方がないので、いかに付加価値の高いものを提供していくかということが主戦かなと考えた時に、大量生産に見合ったような工場を作るのではなくて、小ロットで多品種が生産できるようにということが工場のコンセプトのひとつなのです。だから生産ライン一つ一つは、すごく短いのです。小さい工場の中で、ワンフロアに生産ラインが5列並んでいるのですが、どれも短いラインで色々なものを段取り替えしながら作っています。

―― 生産計画立てる際、過去実績や販売計画、納期、在庫、市場動向など様々な要素と組み込まれていると思うのですが、一番重要な要素は何でしょうか?

沖氏 あるべき姿で言うと販売計画ベースで、あと市場の動向を調査しながら追いかけるというのが基本かと思います。現状では営業サイドの販売計画というのが、まだ精度が上がってきてないのが現実かなと思っています。過去実績をベースに今は営業サイドと随時すり合わせをして、数量を決めながら生産しているというのが基本的な方法です。

―― 属人化してしまっている等のお話もあるのですが、今後システム化を検討したいということはありますか?

沖氏 基本的に一定期間毎に見直した生産ロットをベースに生産計画を立案するのですが、実際は先ほど申し上げたように営業の計画とか、世の中の動きに合わせて、過剰在庫にならないように都度コントロールしているので、結構生産ロットが変動し、どうしても属人化から完全に脱却するということはできないのです。
ただ、一人の人がすべてを行うスタンスから、複数人で共有しながら管理する形に、具体的には管理職が行っているのですが、入社2、3年目の人に仕事を落とし込みながら弟子を作っているような、そういう形で共有しながら属人化を防止しようと取り組んでいます。
私も先ほど申し上げたように、入社後製造現場で作業を行っていたのですが、当時は製造現場で生産計画とか資材原料の調達などを全部一人で行っていました。やはり本来の姿は違うだろうなと思うので、何のために生産管理部があるのかということで、それを是正するために複数の人に仕事を移そうと取り組んできたのですが、ようやくそれができるようになってきました。

―― 生産管理部というものが、機能する様になってきたということでしょうか?

沖氏 そうですね。今は工場の基幹組織として、自覚を持って動いてくれるようになってきています。

―― 原材料の調達/確保や高騰について、最近の動向(感じられていること)がありましたら教えてください。

沖氏 言うまでもありませんが例外なく原材料の価格が上がっています。インフラに関してもかなり上がっています。今回の急激な値上がりは異常な状態なので、今後半年、一年で収まるとは考えられないと想定したときに、抜本的に今後どうしていくかを考える必要があります。一つはお客様に高い付加価値を本当に実感し納得して頂ける商品をご提供し、そこに対して対価を頂くという方法です。
またもう一つは商品を継続して販売していくにあたって、お客さまにある程度のコストを負担頂くということは、業界的にNGだったと思いますが、いつまでもそれを言っていられる状況ではなくなってきており、今課題として検討しているところです。

※後編(次号)へつづく

(聞き手:サカタウエアハウス株式会社 営業開発部)



(C)2023 Daisuke Oki & Kengi Shintoyo & Sakata Warehouse, Inc.

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