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インタビュー

第517号 ロジレビュー・インタビュー ~小野崎 伸彦 氏(株式会社シーネット)(前編)~ (2023年10月5日発行)

■はじめに

  2022年7月より新たに開始しました、企業様へのインタビュー、第11回目の今回は、当社のお取引様である株式会社シーネット 小野崎 伸彦(おのざき のぶひこ)様にインタビューにお答え頂きました。物流やマーケティングの他、人材育成やDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略等に関する取り組みについてのお話を伺いました。
→過去のインタビュー記事はこちら
本論文は、前編と後編の計2回に分けて掲載いたします。

■ご紹介

株式会社シーネット
株式会社シーネットは、1992年の創業以来、物流一筋にシステム化による業務効率化と品質向上に取り組んできた、 倉庫管理システム(WMS)ベンダーのパイオニアです。
自社開発、自社マーケティングの効率的な体制により、多様な業界・業種・業態の物流現場が抱える 課題に常に最適解を提示、2011年から11年連続でクラウド型WMS売上シェアNo.1を達成しています。
現在では、「つなぐ」をテーマに掲げ、WMSと他のシステムの連携による効率化をご提案しております。
その取り組みの中で、私たちはWMSを進化させ、新たにWESを開発し、つながるソリューションを展開。これにより多くの物流企業のDX推進を加速させてきました。
今後も「つなぐ」をテーマに、倉庫内の業務プロセスを最適化し、よりスムーズな物流運営を実現するために貢献したいと考えています。
出典:* デロイト トーマツ ミック経済研究所株式会社, スマートロジスティクス・ソリューション市場の実態と展望【2022年度版】https://mic-r.co.jp/mr/02560/
参照:株式会社シーネット ホームページ(https://www.cross-docking.com/

  
株式会社シーネット 代表取締役社長 小野崎 伸彦 氏。


 インタビュー者略歴 ▼
  • 経歴
    • 1979.3  東京農工大学 工学部卒業
    • 1979.4  日本NCR株式会社
    • 1985.8  ユニデン株式会社 情報システム部 入社
    • 米国駐在(1985.8~1990.3)
    • 1992.1 株式会社シーネット設立
    • 2018.4. シーネットグループ株式会社設立
    シーネット
    グループ
    経緯
    • 1992   株式会社シーネット 設立
    • 2011   達人物流信息服務(大連)有限公司 設立
    • 2013   希耐特(北京)信息系統有限公司 設立
    • 2015   C NET(Thailand)Co., Ltd. 設立
    • 2016   株式会社シーネットコネクトサービス 設立
    • 2016   越庫(上海)信息科技有限公司 設立
    • 2018   シーネットグループ株式会社設立
    •      株式会社ベイキューブシー、M&Aによりグループ会社に(1991.4.1設立)
    •      株式会社シーネットIoTソリューションズ 設立
    • 2021   株式会社デジタルコア、 M&Aによりグループ会社に

 

■インタビュー

――貴社のWMSパッケージの強み、特徴を教えてください。
モスフードサービス様への食品業界向けWMSの導入から教えてください。

  モスフードサービス様とは会社設立して30年のお取引があり、弊社WMSパッケージの初期導入からお使いいただいています。現在は最新型のWMS(クラウド型倉庫管理システム「ci.Himalayas/R2」)https://www.cross-docking.com/service/wms-standard/)になっており、初期導入時から6~7世代ぐらい経っています。最初はパソコン(PCサーバー)で導入し全国に展開していました。モスフードサービス様は食品の卸売としても活動しており、食材を仕入れて加工・卸売し、外部の複数の物流会社に委託し全国の各店舗に発送していました。各拠点の物流管理レベルがバラバラで統一感もなかったため、早急に統一したいというお話をいただき、弊社WMSによる全国共通の在庫管理の仕組みを導入したことが、20年以上前の事例になります。

――各拠点の在庫管理を、すべてモスフードサービス様が管理されるようになったのですか。
  在庫管理の仕組みを使用しているのは、倉庫の現場を運営している物流会社ですが、出荷指示や欠品、移動などはモスフードサービス様がコントロールしていました。特にモスバーガー様は食品の安全に拘りがあり、賞味期限やロットナンバーで追跡し、基準を満たさない原材料があると商品を出荷しないように全て止めるなど、独自の高度な食品安全基準がありましたので、WMSパッケージをかなり作りこみ、対応していきました。
(参考)導入事例/株式会社モスフードサービス https://www.cross-docking.com/case/mos/

――モスフードサービス様へのWMS導入が礎となり、貴社のオリジナルWMSパッケージが発展したのでしょうか。
  大手鉄道会社系CVS様や業務用食品販売会社様など、複数の企業様に弊社WMSを導入いただいており、それらの多数の実績が土台となっています。食品物流では、扱っている商材が安価にもかかわらず、細かな商品管理が必要という特徴があり、あまりシステムに費用をかけられないという側面がありました。そのため、システム会社の参入が難しくて、競争相手が少なく、低価格で必要な機能を提供する弊社WMSに多数のお声がけをいただきました。

――実績を作ると、同じ業界での横展開がしやすいということがありますか。
  ある地域で1社に弊社WMSを導入していただけると、その地域の別の会社からも「**さんが導入したのなら当社も同じシステム(WMS)を使いたい」ということで、同じWMSを導入しようと考えるところが多かったのです。食品業界は横の繋がりが強く、モスフードサービス様が導入していただいたことで現在でも外食産業の業界で弊社は圧倒的に強いのです。
  商売の基本は口コミマーケティングです。スターバックス様も口コミ(実際に使用した企業の評価)が選定理由の1つとなり、導入を決断いただけました。食品会社様とのお取引が多くこの業界に必要なノウハウもかなり蓄積されました。最新のクラウド型倉庫管理システム(WMS)には、賞味期限管理機能など食品業界で必要な機能は一式、WMSの基本機能として埋め込まれています。
(参考)導入事例/スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社 https://www.cross-docking.com/case/starbucks/

――食品業界での成功をもとに、どのようにWMSを展開されてきたのですか。
  最初は、食品業界での導入実績をもとに、同様の管理が必要な、食品・飲料メーカーや外食チェーン、及びそれらを扱う3PL業者や小売業者に支持をいただき、 食品流通分野の企業が抱える多数の課題を解決し、数多くの企業様に弊社WMSを導入頂いています。最近では、通販物流や海外物流においてもご利用頂いていますし、製造業からの引き合いも増えてきました。直近の展開としては、「つなぐ力で倉庫運営を進化~WMS、WES、音声、オムニソーターの連携による可能性」(https://www.cross-docking.com/news/archive_webinar/)と題しまして、WMSと音声ピッキングシステムやオムニソーターとの連携による高速・正確な仕分け作業、省人化・効率化の実現をご提案したり、WMS等からの物流データを蓄積したビッグデータを分析するBA(Business Analytics)ツールを発表し(https://www.cross-docking.com/news/ba-prototype/)、ロジスティクス全体のKPIの可視化、集計作業の効率化、業務改善・経営戦略のサポート、そしてレポート作成の効率化等を実現していきます。
  WMSを提供するインフラ基盤については、卸売業者様では1日に何万というデータ処理が必要になるため、サーバー処理能力などを気にしていた時代もありましたが、今はハードの処理能力が格段に向上したため、ソフトウェア開発に専念できるようになりました。インターネットの成長とともに、WMSの導入形態は、クライアント/サーバーシステムから、AWS(Amazon Web Services)等のクラウドサービスへ変わってきました。
  弊社も最初は品川のデータセンターに自前のサーバーを設置していましたが、それすら必要なくなり、自社のサーバーを管理するというのは極一部で、あとはAWS等のクラウドサービスに切り替えています。

――外部のインフラを利用し、貴社は開発や保守に専念する体制をとられているのですか。
  そうですね。ただしEDI関連などの細かなところは自社で行う必要があります。EDI関連は昔からの手順が残っているため、最先端のクラウドサービスでは処理できないところがあるからです。

――最新のクラウドシステムの導入にあたり、苦労された点はありますか。
  既にクラウドサービスを始めて10年以上になりますので、現在、次のフェーズに入らざるを得ない状況、つまりクラウドシェアトップのAWS(Amazon Web Services)を使っているだけでは、お客様に安心していただけない時代になりました。当社では安心して使用していただけるクラウドサービスをどこまで探求するのか、「安心・安全」を、次のステップのテーマとして取り組んでいます。
  物流は止められないので、自然災害やハッカーなどに対して、どのレベルのセキュリティ対策やBCP対策を保持するのかを考えるとキリがないのです。それでもお客様が成長し、規模が大きくなるほど、先行手配をやらざるを得ないのです。機械のメンテナンスを行っている状況ではないという状態にならないと、サービスを止めないための総合的な対策、品質保証レベルをお客様に提示できる状態になららないと、次のステップに向けた大きな商売はできないと考えています。
  例えば、外資系企業では海外本社の法務部門から規約リストが届き、一つずつ確認しクリアしなければならないのです。弊社の社員が本社へ行って、クラウドサービスのセキュリティレベルについて説明を行っています。「これから対応していきます」では遅いのです。最近では日本企業でも同様の報告を求める企業が増えています。
  こういったセキュリティ管理については、要求レベルが高いところに基準を合わせる必要があります。顧客の要求レベルにあわせて様々な基準を設けると、メンテナンスが大変になるのです。ただし、セキュリティ管理やメンテナンスをしっかり行えば、高い保守料金を請求できるという訳でもありません。

――DX・ECに関連したサービスには、取り組まれていますか。
  お客様から物流DX化を進めたいと要望された際に、すでに弊社WMSを使用している会社様が多いため、現在使用しているWMSを使いながら改善できるソリューションを、お客様ごとに複数用意しています。
  具体的には、数年前に分社化し、「株式会社シーネットコネクトサービス」(https://www.cnet-technology.com/)「株式会社シーネットIoTソリューションズ」(https://www.cnet-technology.com/)というグループ会社を設立し、新技術であるIoTソリューションや、監視カメラによるセキュリティサービスや画像認証システムなどを提供しています。
  WMSでは在庫管理はできますが、それ以外のIoTやカメラソリューション、認証システムで合理化できるものは、それらのシステムに繋いでスタートさせていただいています。爆発的に広がるということはありませんが、お客様のニーズに合致しており、気に入っていただいているお客様は結構多い状況です。

――画像認識サービスはグループ会社様で専門的に取り組んでいますか。
  そうですね。シーネットはWMSを販売している会社として認識されていますが、シーネットコネクトサービスは、物流センターの車番認証を自動的に行うシステム(車番認証システム https://www.cross-docking.com/service/camera-number/)や音声認識システム(ボイスピッキングシステム https://www.cnet-technology.com/services/voice-systemなどを20年ほど販売しています。これらはお客様から根強いニーズがあり、じわじわと広がり気に入っていただいていますので、長く継続して販売しています。
  10年ぐらい前から出荷検品時の商品画像(動画)をクラウド上に保存し、日付やキーワードで一発検索するというソリューション「ガゾウQS(キューエス)」 https://www.cross-docking.com/service/camera-kenpin/を販売しています。これまでに、野菜の出荷センターや大手クリーニング屋さん、レコードセンターなどで導入いただいています。
  大手クリーニング屋さんでは、クリーニング後に服をワンシーズン預かるサービスを行っており、返却した際に商品が異なっているだとか、付属アイテムが付いていない等のトラブルを防止しています。
  このようなソリューションを最先端クラウド技術、カメラ技術をもとに、一発検索で即座に確認し、Webを介してトラブルが発生した際の証拠画像の送付などをおこなっています。
  お客様から、「こんな機能があったらいいな」という要望に対して、最新テクノロジーを用いて実現していく新しいソリューションの開発に、弊社は積極的に取り組んでいます。

――物流業界では2024年問題によって人手不足が益々深刻化する見込みです。貴社では自動化技術にも取り組まれていますか。
  2024年問題は色んな所で騒がれていますが、弊社はWMSによる倉庫管理を中心にビジネス展開を行っています。紆余曲折はあれ、物流業界では、自動化・ロボットは導入せざるを得ないだろうと考えています。では、「どうやって人手が少なくても運用できる倉庫、倉庫の自動化・無人化を進めていくのか」について、弊社の得意分野である食品業界の中で、できることを考え試行錯誤中です。弊社のお客様は中規模センターが多いため、投資できる金額も限られてきますし、日本の労働コストは安価なため、結構難しいのです。
  コロナ禍で、賃上げや人の流出などは滞っていましたが、これから経済が活性化してくると予想されるため、新たな自動化のスキームが待たれているのではないかと考えています。そこで弊社は、それらに適応した自動化ソリューションを提供していきたいと考えています。

――貴社のHPに自律移動ロボットなど紹介されていましたが、ロボットによる自動化についてどのように取り組まれていますか。
  弊社ではロボット自体を自社開発するつもりはありません。中国やインド、アメリカなど様々な国で作られたロボットをどうソリューション化するのか、日本のマーケットにどう合わせていくのか、というところを弊社は得意としています。
  倉庫を運用している弊社のお客様はたくさんいらっしゃるので、そこへこんな形のソリューションを導入すると、こんな風に良くなります、という提案を弊社が行っていきたいと考えています。倉庫内で活用する色々なカテゴリーのロボットを作っている会社がたくさんありますので、色々な会社と付き合っていきたいと考えています。
  お客様の要望によって、ニーズを満たすものがなければ作ることも検討しますが、基本的には専門企業と連携して行います。一社でコツコツ作るよりも、専門技術を持った企業と連携して作っていくほうが良いものができると考えています。

――物流業界全体で貴社のお客様の課題はどういったことが多いですか。
  大なり小なり色んなニーズをいただきます。お客様も弊社が提供している製品やサービスのことは分かっていますので、既存システムを新しいシステムへ変更したいだとか、WMSをクラウド化したい等の要望が多く寄せられます。
  最近、多くなってきたのは電力問題です。屋根や空き地に太陽光パネルを設置し、物流センターの電力を自前で賄いたいという声が、食品業界(特に冷蔵・冷凍倉庫等)を中心に出てきました。そのような場合にどのようなソリューションを用意して、どのようにすれば良いのか答えられる人がお客様の社内にいないため、どのように進めたら良いのかわからず、弊社に相談いただくことがあります。
  弊社では、現在倉庫の電力問題に対応できる太陽光パネルを使ったソリューションを用意しご提案を行っています。一つの案件が終了するまでに一年半ほど掛かりますが、電気料金の上昇に伴って少しづつ増えてきています。
  太陽光パネルの次は蓄電池です。ここ数年で蓄電池も飛躍的に性能が上がり売れています。蓄電池で電力を賄うことができたら倉庫の価値はすごく上がると思います。
(聞き手:サカタウエアハウス株式会社 営業開発部)

※後編(次号)へつづく


(C)2023 Nobuhiko Onozaki & Sakata Warehouse, Inc.

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