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第475号 続々・軽トラ運送が熱い(前編)(2022年1月6日発行)

執筆者  長谷川 雅行
(株式会社日通総合研究所 経済研究部 顧問)

 執筆者略歴 ▼
  • 経歴
    • 1948年 生まれ
    • 1972年 早稲田大学第一政治経済学部卒業 日本通運株式会社入社
    • 2006年 株式会社日通総合研究所 常務取締役就任
    • 2009年 同社顧問
    保有資格
    • 中小企業診断士
    • 物流管理士
    • 運行管理者
    • 第1種衛生管理者
    活動領域
    • 日本物流学会理事
    • (社)中小企業診断協会会員
    • 日本ロジスティクス研究会(旧物流技術管理士会)会員
    • 国土交通省「日本海側拠点港形成に関する検討委員会」委員ほか
    • (公社)日本ロジスティクスシステム協会「物流技術管理士資格認定講座」ほか講師
    著書(いずれも共著)
    • 『物流コスト削減の実務』(中央経済社)
    • 『グローバル化と日本経済』(勁草書房)
    • 『ロジスティクス用語辞典』(日経文庫)
    • 『物流戦略策定のシナリオ』(かんき出版)ほか

 

目次

1.はじめに

  2017年9月の第372・373号「軽トラ運送が熱い」と、2020年11月の第447号・448号「続・軽トラ運送が熱い」の二度にわたり、軽トラ運送についてレポートさせて頂いた。
  性懲りもなくというか、三度目のレポートをさせて頂きたい。主なテーマは、「ラストワンマイルのその後」と「軽トラのEV化」という最新の動向である。

(1)軽自動車の規格
  後段の「軽トラのEV化」については、軽自動車の規格も関係してくるので、第372号の「2.軽トラックとは」を参照されたい。
  軽自動車の規格については、1949(昭和24)年の制定以来、何回も改正されている。
  「現行規格では、排気量660㏄、全長3.4m、全幅1.48m、全高2.0m(それぞれ未満)である。
  積み荷制限は、貨物重量350㎏、積荷高さ2.5m、荷台からのはみ出し積載は道交法で荷台長の1.1倍までとされている。」(上記、第372号記事を再掲)
  車両重量については制限がないので、なかには1tを超えるスーパーハイトワゴンのように、「軽自動車」とは思えないような車種もある(1980年代のカローラ・サニーなどの車重は800~900kg)。お値段の方も200万円を超えている。
  なお、軽バンも車両重量は1トン近いものが多く、乗車定員2名(110kg)、貨物重量350kgと燃料を加えると、1.5トン近くなる。軽バンは2021年9月以降、法規整備と安全装備の充実により、ライトを自動的に点消灯させるオートライトや、横滑り防止装置を装着するなど、改良が図られている。
  以前の軽自動車には、「農耕作業車」という区分があり、後に「小型特殊自動車(小特)」になった、耕運機(小型トラクター)や市場などで使われているターレットが、小特に分類される(小特は普通自動車運転免許で運転できる)。
  超小型モビリティについては、トヨタ「コムス」などが「原付ミニカー」(ナンバープレートは青色)として、乗員2名(110kg)、貨物の最大積載量30kg(自転車と同じ)であった。2021年6月に規制が緩和され、最大貨物積載量が90kgまで拡大された。
  トヨタでは、2022年にコムスの後継車両として、電動超小型モビリティ「C+pod」を、法人向けに発売予定である。

写真1 トヨタの超小型モビリティ「コムス」

(筆者撮影)
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  また、軽自動車のナンバープレートは、1975(昭和50)年に現在の黄色に黒文字(事業用車両は黒に黄色文字)になった。その理由は、次の2点と言われている。

①高速道路の料金所で軽自動車を識別しやすくするため
②高速道路での速度超過取締りをしやすくするため(当時、軽自動車の最高速度は80km/h。現在は100km/h)

  「2020年東京オリンピック・パラリンピック」で、2021年9月30日まで特例として、軽自動車でも自家用車には白色のナンバープレート(東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会特別仕様ナンバープレート、いわゆる五輪プを選択することができた(図1のラグビーワールドカップと同様)。
  余談であるが、2017年9月に交付開始された五輪プレートは、上記の受付終了までに、4年間で290万台近くに交付(最終交付は2021年11月24日)されたが、うち軽自動車が約268万台と9割以上を占める。某調査によれば、自家用軽自動車のオーナーの約半数は「登録車と同じ白ナンバーを付けたい」と思っているとのことである。
  2018年から全国各地で導入されている「地方版」図柄プレートは、軽自動車でも図柄の下地は白ベースで「黄枠」が付くデザインとなっている。2022年4月1日から2027年3月末までは、各都道府県の県花をモチーフとした「全国版」の交付が始まるが、こちらの図柄プレートは軽自動車としての視認性を高めるため、左上に黄色い三角スペースが付く(図1参照)。
  それほど、自家用軽自動車オーナーには、白ナンバーに対する要望が強いとも言える。「たかがナンバープレート、されどナンバープレート」なのである。
  登録車(小型車・普通車)については事業用でも「緑枠」の白プレートが特例で交付されたが、さすがに事業用の軽自動車の「黒枠」は、「不吉」イメージなのか認められなかったようだ。

図1 新たな全国版図柄入りナンバープレート案
自家用軽自動車

(出所:国土交通省資料)
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  現在の軽自動車や超小型モビリティの規格、さらにはナンバープレートが、今後のEV化との関連でどうなるか、筆者も注目しているところである。
  軽自動車のナンバープレートで、先日、気になったことがある。写真2は新大久保のアジアンタウンで見かけた、中国の航空宅配業者の軽バンである。一見したところでは集配車であり、覗いてみると貨物らしき段ボールも積んでいる。しかし、黄ナンバーの自家用車である。業務連絡用か人員輸送用なのだろうか?

写真2 順達国際速運の軽バン

(筆者撮影)
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2.ラストワンマイルのその後

  第447号・448号で、軽トラック(バンを含む)がラストワンマイルで、様々に活用されていることをレポートした。今回は、フォローということで幾つか紹介したい。

(1)アマゾン(デリバリープロバイダ=ADP)
  アマゾンのデリバリープロバイダ(第447号・448号を参照)については、以前は、アマゾンのHPで「配送業者の連絡先」として掲載されていたが、最近は見当たらない。
  現時点では、①SBS即配サポート、②遠州トラック、③ギオンデリバリーサービス・④札幌通運、⑤TMG、⑥ヒップスタイル、⑦丸和運輸機関、⑧ロジネットジャパン西日本、⑨若葉ネットワークの9社のようである(担当エリアは省略)。
  このうち、①はSBSホールディングス(以下、HD)傘下の企業、④⑧はロジネットジャパンのグループ企業である。また②⑦は、月刊ロジスティイス・ビジネス誌2021年9月号の「3PL白書2021」にも登場している3PL企業である。
  以前、デリバリープロバイダであったファイズHDは見当たらない。
  デリバリープロバイダの担当外(エリア・商品・サービス等)は、ヤマト運輸・日本郵便などの宅配便業者が配送している。

(2)アマゾン・フレックス(AF)
  アマゾンでは、上記のADP、既存の宅配便業者による配送ネットワーク以外に、自社ネットワークとしてのアマゾン・フレックス(AF)があり、配送件数が多くて高密度の都市部では、AFの拡大に力を入れているようである。
  AFは、アマゾンの募集要項「Amazon Flex はじめてガイドブック(2021年4月初版)」によれば、「アマゾンと個人事業主である軽貨物ドライバー(以下、ドライバーという)との間に直接交わされる業務委託契約のもと、黒ナンバーの貨物軽自動車とスマートフォンのアプリを使って配達業務を行っていただくプログラム」とされている。スマホのAF専用アプリで、AFへの登録から当日の配達まで全ての手続き・業務が行われる。(4)で紹介するCBcloud社や207社など最近のラストワンマイル企業は、全ての業務がスマホのアプリで完結するようになっている。この辺りが、旧来の赤帽等との大きな違いではなかろうか)
  配達業務を受託しようとするには、まず、貨物軽自動車運送事業の届出を行い、AF専用アプリへの登録によりアマゾンと契約することになる。
  車両(事業用貨物自動車)は、デリバリーブロックという担当エリアの配送を受託する場合は、荷室長・荷室高・荷室幅の合計が4,000mm 以上のワンボックスタイプかそれと同等の車両であり、かつ、最大積載量350kg の貨物軽自動車が指定されている。次に挙げる特徴⑥のように、冷蔵・冷凍車でなくとも良い(第447号の写真4参照)。
  募集要項は、上記、AFへの登録(「アカウント作成」「希望配達エリアの選択ほか」「配送方法・保険」「免許証」「車検証」「自賠責保険証」「任意保険証券」「事業経営届出書」「税金・振込先口座」「説明動画」「身元調査」「ステーションの選択」「黒ナンバーの取得方法」)に始まり、具体的な配達業務(「仕事の流れ」「1日の流れ」「配送エリア別月額報酬例」「問合せ先」、さらには配達業務の初心者向け(「オファーの取り方」「初日に向けてウォーミングアップ」「配達初日」)まで、至れり尽くせりのガイドブックになっている。
  このうち、「事業経営届出書」「黒ナンバーの取得方法」では、新規に貨物軽自動車運送事業を開業する個人ドライバーに所定の手続き等が解説されている。アマゾンでは、既存の貨物軽自動車運送事業者(個人事業主)だけでなく、他業種・職種からの転業者(例えば、コロナ禍における飲食・サービス業等)をもターゲットにしていることが伺われる。
  ここでは、AFが他の宅配と違う特徴として挙げている10と、「配送エリア別月額報酬例」と「黒ナンバーの取得方法(貨物軽自動車運送事業者としての事業経営届出)」を紹介したい(その他の内容は、AFのホームページを参照されたい)。

① スケジュール調整ができる
  1デリバリーブロックは4~8時間程度を中心に、組み合わせ次第では、1日最大12時間まで可能。働く日にちと時間をドライバー自身で決めることができる

② 働き方を選べる
  フル稼働、または週に数時間でも可能なため、副業としても活用できる。

③ 毎週、報酬が支払われる
  報酬は翌週にドライバーの銀行口座に振込まれる(払込時期は規約に従う)

④ 24時間前まではキャンセルが自由である
  オファー(当日の配送業務)のキャンセルは24 時間前まで自由なので、急用ができても安心である。

⑤ 荷物の仕分けが不要である
  集荷ポイント(アマゾンの配送拠点)で担当の荷物を車に積み込むだけ。積み込みの時間も報酬の対象となる。(筆者注:配送拠点では、アマゾン側で担当ドライバー別に積み込み前に仕分けられているようだ)

⑥ 代引もチルドも取り扱わない(筆者注:ガイドブックには「代引きもチルドもなし」と書かれている)
  ドライバー自身が釣銭を用意したり、冷凍・冷蔵車を設備する必要はない。AFで配送されるPrime Now、およびAmazon フレッシュで冷凍や冷蔵食品が荷物に含まれる場合、必要に応じて保冷バッグ・ドライアイス・保冷剤を配送資材として、アマゾンから貸し出される(第447号・写真4のAF配送中を参照)。

⑦ 配達ルートをアプリで参照できる
  アプリの地図に配達ルートが表示される。アプリを参照の上、ドライバー自身で効率のよい配達ルートを設定して配達できる。担当する配達ルートは、配送業務にチェックインする時に決まる(筆者注:アマゾン側で配送支援システムにより配達ルートが事前準備される)。

⑧ お客様の指定があれば置き配可能
  不在宅への配達も、置き配により再配達が不要となる。

⑨ Amazon Hub への配達も可能
  コンビニやドラッグストア、駅などに設置されているAmazon Hub や、小売店での受け取りができるAmazon Hub カウンターへは、より確実に、効率よく、簡単に配送できる(Amazon Hub はエリア拡張中)。
  Amazon Hubロッカーは、筆者の近くのスーパー店頭にも設置され、固有名は「おこし」である(固有名でAmazonのHPから検索できる)。「物は試し」と利用してみたことがある。Amazonで注文時に受け取りロッカー名「おこし」を選択すると、メールでIDが送られてくる。配送業者が購入品を「おこし」に入れるとメールで到着案内が届くので、ロッカー「おこし」へ行って画面からIDを入力すればロッカーが解錠されて依頼した品物を取り出す)

写真3 Amazon Hubロッカー「おこし」

(筆者撮影。躯体の右上に「おこし」と固有名が表示されている)
*画像をClickすると拡大画像が見られます。


⑩ 配達エリア・ステーションを選べる
  ドライバーの住所が変わっても、Amazon Flex が展開している地域であれば、エリアやステーションの変更が可能である(未展開地域やドライバー募集していないエリア・ステーション等もある)。

  なお、ドライバー希望者として一番気になる報酬であるが、
  関東・関西エリア で 月額最大で44 万円以上と示されている。その計算根拠は、1日2ブロック(5時間程度の1ブロック)×22日稼働の場合  2万370 円×22日= 44万8140円 (関西は、2万円×22日=44万円)となっている。
  同様の計算で、愛知エリアが月額最大で42万円以上、北海道・宮城・広島・福岡エリアが月額最大で39万円以上となっている。
  第447号「5.多様化する軽トラ・バン商売 (2)軽トラ運送の開業資金」では、「キャブバンが4年(48ヵ月)リースで月額31,800円(CBcloud社のHP)」と書いた。月間22日稼働・最大収入39~44万円で、生活費・車両償却費・ガソリン代・車庫代・保険料等を賄わなくてはならない。

※中編(次号)へつづく


(C)2022 Masayuki Hasegawa & Sakata Warehouse, Inc.


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