第476号 続々・軽トラ運送が熱い(中編)(2022年1月18日発行)
執筆者 | 長谷川 雅行 (株式会社日通総合研究所 経済研究部 顧問) |
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執筆者略歴 ▼
目次
2.ラストワンマイルのその後
最後に、「黒ナンバーの取得方法(貨物軽自動車運送事業者としての事業経営届出)」である。第372・373号で貨物軽自動車運送を紹介したところ、読者から「定年後に始めたいから、具体的な手続きを教えてほしい」とメールを頂戴した。第372号の手続きのポイントを再掲する。
①貨物軽自動車の準備
貨物軽自動車を用意する。新車・中古車・レンタル・リースすべて登録できる。
②運輸支局への事業届出
上記1-(1)項の事業用ナンバー(黒ナンバー)を取得するには、事業の本拠を管轄する運輸支局に、以下の提出書類等を揃えて届出る。提出書類等の記入方法等は、運輸支局の窓口で相談すると教えてくれる。行政書士に依頼することも可能であるが、費用が掛かる。
「事業用自動車等連絡書」「貨物軽自動車運送事業運賃料金表」「貨物軽自動車運送事業経営届出書」「車検証」「認印」
なお、車庫の基準は、軽自動車では1両当たり8㎡となっている。
③軽自動車検査協会へ書類提出・黒ナンバー交付
運輸支局の窓口で、②で提出した書類に受領証となる印を押してもらった後、「事業用自動車等連絡書」の原本と認印を持参して、支局指定の軽自動車検査協会(同じ場所にある)へ行き、所定の用紙に必要事項を記入し提出する。
自家用から事業用に変更する場合は、自家用の黄ナンバーを車両から外して返納する。
印紙で黒ナンバーのプレート購入費(税込1,900円)を支払うと、黒ナンバープレートが交付される。
(3)ライフ・コーポレーション
コロナ禍の巣ごもり消費の拡大で、ネットスーパーが伸びている。また、新規にネットスーパーを始める量販店も多い。
コンビニもウーバーイーツ等を活用して宅配を拡大している(ローソンでは1,000店舗以上で実施)が、軽トラックの利用ではないので、ここでは省略する。
ここでは、ライフ・コーポレーション(以下、「ライフ」)の事例を紹介したい。これまで、ライフはアマゾンと提携して、上記AFを利用して店舗商品を近隣エリアに配送し、逐次、取扱いエリアを拡大してきた。2021年度のネットスーパー売上は100億円を目標にしている。
ネットスーパーの売上が増加してきたので、AF以外に自前のラストワンマイル網を構築する方針を打ち出している。具体的には、総合物流事業者である間口ホールディングス(大阪市港区。グループ総資本803百万円、グループ売上高502億円。同社HPから)のグループ会社、スリーエスコーポレーションおよび間口ロジスティクス関東とライフで、新会社ライフホームデリバリーを設立し、2021年6月から「軽貨物配送」「梱包作業支援」「コールセンター」業務を開始した(ライフホームデリバリー社HP)。
ライフでは、2030年にはネットスーパー売上1000億円の目標を掲げて、店舗の改装や配送拠点の整備を進めるとしている。
これまでのAF依存から、自前ラストワンマイル網への転換・拡大と、間口HDグループ挙げての展開が注目される。
(4)CBcloudの事業拡大
それでは、軽トラ運送側の最近の動向はどうだろうか。
第439~441号では「物流スタートアップの動向と課題」として、さまざまな物流スタートアップ企業をご紹介した。
そのなかで、第439号「2.CBcloud」で、軽トラのマッチングサービスであるCBcloud社(以下、CB社)をレポートした。CB社はその後も順調に業容を拡大しており、軽トラだけでなく一般トラックのマッチングサービス(求車求貨サービス)も始めている。2021年7月末には軽貨物ドライバー3万人、自動二輪ドライバー1万人、一般トラック運送事業者1000社が登録されている。
2021年6月には、セブンイレブン(以下SEJ)との提携が始まったので、今回レポートすることにした。
宅配に出遅れていたSEJが、従前のセブンミールを改変してネットコンビニとし新たな配送網を構築すると報じられ、どの軽トラ運送事業者が手を挙げるか、筆者も注目していた。セブンミールは、筆者も利用したことがあるが、当初は、店長や手すきの店員が自転車で配達していたので、「これでは伸びないな」と感じたものである。
SEJはCB社との提携で、全国の2万店で最短30分のラストワンマイル配送サービスを目指している。
第439号で紹介したように、CB社は軽貨物運送のマッチングシステム「PickGo(kは反対文字)」を活用して、「買い物代行サービス」を全国に拡大している。薬局や量販店な38社・約4200店舗で、消費者が店舗と欲しい商品を入力すると、買い物代行してくれるドライバーが一覧表示され、選んだドライバーが買い物して届けてくれる仕組みである。
消費者はSEJのネットコンビニで商品を選び、配送先を入力すると、CB社がPikGoでマッチングしたドライバーがSEJ店舗で買い物して届ける。配達料は一回110~550円(何個でも)、配達時間は10~23時となっている(2021年10月24日現在)。
現在は、東京・広島・北海道の約350店で導入されているが、2025年度をめどに全国展開の予定である。
3.新たな軽トラビジネス
視点を変えて、コロナ禍で増えつつある軽トラを利活用した新ビジネスとして、軽キャンピングカー(略して「軽キ
ャンパー」という)と、ペット用のトリミングカーを紹介する。
第448号で紹介した、フードトラック(キッチンカー)は、コロナ禍で苦戦している飲食店からの転業も多く、増加
しているが、「新規参入しても3割が撤退する」と言われるレッドオーシャンになっているようである。
やはり、顧客をつかまえるには、どこに出店するかという「立地」がポイントで、最近では「内食」需要をターゲットに、住宅地に出店するケースも増えていると報じられている。
(1)軽キャンピングカー
アウトドア志向で増加したキャンピングカーは、コロナ禍においても「密」を避けたレジャー手段として、販売・レ
ンタルが好調のようだ。
最近は、そのローコスト版として軽キャンピングカー(以下、「軽キャンパー」という)にも注目が集まっている。
2019年9月に筆者が住む横浜で、「横浜キャンピングカーショー2021」が2日間にわたって開催(その後、大阪
でも開催)され、軽キャンパーも展示されていた。
驚いたのは、バン(ワゴン)車に2列の2段ベッドが収まり、4名乗車・4名就寝(かつての3段式寝台車よりキツ
い?)が可能な軽キャンパーがあったことだ。これでは「密」そのものだが、手軽なレジャー手段として人気がある
そうだ。
軽トラックをベースとした軽キャンパーには、寝台部分が「脱着式」と「固定式」の2種類がある。このうち、脱着式
は、寝台部分(シェル)がトラックに積載する「貨物」扱いとなるよう、トラックの利点を活かしている。
あるメーカーの脱着式シェルのサイズは、L1925mm×W1430mm×H1810mmなので、積載時の高さは、法令上の制限値である2.5m以下、はみ出し積載となる長さも、法令上の制限値である車長の10%以下となる。
これなら、「固定式」のように改造車として軽自動車検査(登録車の車検に相当)を受け直す必要もなく、税金面も軽トラックのままである。ただし、走行中のシェルは「貨物」なので、原則として人は乗れない(軽トラックの乗車定員2名のまま)。
元々、軽トラックなのでバン(ワゴン)に比べて車両価格も安価で、シェルの価格もグレードにより、約109~175万円という。
このように、軽トラックに「貨物」としての装備を積載したビジネスとしては、キッチンカーや石焼き芋(窯は貨物)、灯油配送車(取り外し=積卸し可能なタンクは貨物)などがあり、アイデア次第では軽トラックを活用した他の新規ビジネスも可能である。
古くは、復帰前の沖縄で走っていた貨客混載の「貨物タクシー」、北海道では現在でも残っている買い物代行・仕入れ代行の急便業者(物流二法以前の制度)なども、コロナ禍で増えた貨客混載・料理宅配・買い物代行サービス等から、もう一度見直されるべきかも知れない。
(2)トリミングカー
コロナ禍の巣ごもりで、モノ(商品・料理など)を届けるEC(ネット通販)・料理宅配・フードトラック(キッチンカー)が増加している。
モノを届ける以外に、サービスを届ける「サービスの出前」も、従来から家事代行やハウスクリーニングなどがあったが、コロナ禍の巣ごもりでペットブームが再来している。
室内飼育ではペットの手入れが必要となるが、従来のペットサロンに代わって、シャンプーやトリミングを出前で行う「トリミングカー」(と言うそうである)が増えている。トリミングカーが増えると、上述の軽キャンパーのように、専門の架装業者も現れる。
トリミングカーの実態は、人間の理美容のように法的規制がなく公式データがないので不明であるが、筆者も実物を見かけたことがあるので、紹介だけに留める。衛生上の措置や水回り等の設備を搭載しなくてはならないので、車両に費用が掛かりそうである。
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