1. HOME
  2. ロジスティクス ・レビュー
  3. セミナー/インタビュー
  4. インタビュー
  5. 第519号 ロジレビュー・インタビュー ~小野崎 伸彦 氏(株式会社シーネット)(後編)~ (2023年11月9日発行)

ロジスティクス ・レビュー

ロジスティクスと経営のための情報源 /Webマガジン

インタビュー

第519号 ロジレビュー・インタビュー ~小野崎 伸彦 氏(株式会社シーネット)(後編)~ (2023年11月9日発行)

■はじめに

  2022年7月より新たに開始しました、企業様へのインタビュー、第11回目の今回は、当社のお取引様である株式会社シーネット 小野崎 伸彦(おのざき のぶひこ)様にインタビューにお答え頂きました。物流やマーケティングの他、人材育成やDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略等に関する取り組みについてのお話を伺いました。
→過去のインタビュー記事はこちら
本論文は、前編と後編の計2回に分けて掲載いたします。
*前号(2023年10月5日発行 第517号)より

■ご紹介

株式会社シーネット
株式会社シーネットは、1992年の創業以来、物流一筋にシステム化による業務効率化と品質向上に取り組んできた、 倉庫管理システム(WMS)ベンダーのパイオニアです。
自社開発、自社マーケティングの効率的な体制により、多様な業界・業種・業態の物流現場が抱える 課題に常に最適解を提示、2011年から11年連続でクラウド型WMS売上シェアNo.1を達成しています。
現在では、「つなぐ」をテーマに掲げ、WMSと他のシステムの連携による効率化をご提案しております。
その取り組みの中で、私たちはWMSを進化させ、新たにWESを開発し、つながるソリューションを展開。これにより多くの物流企業のDX推進を加速させてきました。
今後も「つなぐ」をテーマに、倉庫内の業務プロセスを最適化し、よりスムーズな物流運営を実現するために貢献したいと考えています。
出典:* デロイト トーマツ ミック経済研究所株式会社, スマートロジスティクス・ソリューション市場の実態と展望【2022年度版】https://mic-r.co.jp/mr/02560/
参照:株式会社シーネット ホームページ(https://www.cross-docking.com/

  
株式会社シーネット 代表取締役社長 小野崎 伸彦 氏。


 インタビュー者略歴 ▼
  • 経歴
    • 1979.3  東京農工大学 工学部卒業
    • 1979.4  日本NCR株式会社
    • 1985.8  ユニデン株式会社 情報システム部 入社
    • 米国駐在(1985.8~1990.3)
    • 1992.1 株式会社シーネット設立
    • 2018.4. シーネットグループ株式会社設立
    シーネット
    グループ
    経緯
    • 1992   株式会社シーネット 設立
    • 2011   達人物流信息服務(大連)有限公司 設立
    • 2013   希耐特(北京)信息系統有限公司 設立
    • 2015   C NET(Thailand)Co., Ltd. 設立
    • 2016   株式会社シーネットコネクトサービス 設立
    • 2016   越庫(上海)信息科技有限公司 設立
    • 2018   シーネットグループ株式会社設立
    •      株式会社ベイキューブシー、M&Aによりグループ会社に(1991.4.1設立)
    •      株式会社シーネットIoTソリューションズ 設立
    • 2021   株式会社デジタルコア、 M&Aによりグループ会社に

 

■インタビュー

――最近AI学習や生成AIなどが話題になっていますが、貴社で取り組まれていることはありますか
  大手コンサルティング会社さんと組んで、物流の2024年問題等をどう解決するのか、解決するのに何が必要なのか、全体の最適化をどのように図るのか等について、現在話し合っています。
  倉庫管理システムの仕組み自体は、30年程前からほとんど変わっていません。計画を立ててバッチ編成し、倉庫の時間割を作りバッチ処理を流しているのです。それらの処理をきめ細かく管理できるかどうかがポイントだと思っています。
  将来的には、計画系の段階から将来の予定データまで、ChatGPT等のAI技術を使用することによって、リアルタイムで予測し、需要予測もできる、人の行動も予測できる、人が何人必要かも予測できるようになったら、トラックが何時に来るからそれまでに商品を用意しないといけない、明日のこの時間帯にはこれが必要など、全て予想できるようになってくると考えています。
  現在は、商品の欠品が発生したり、センター長が明日は出荷が多いから人員を増やそうだとか、リフトマンが倉庫の空いている場所を見つけて入荷商品を保管するという形の運用になっています。これをAIを利用して予測し、最適な形で全体を管理しようとしている会社は、これまで30年間どこにもないのです。
  中小企業では今の状態が限界で、この状態をどうすればAIで、ChatGPT等を使って予測できるのか、リアルタイムで入出庫データが変わった瞬間に作業予定も変わるような形にできるのか、そういったことがもっと広がり、サプライチェーン上で実現可能になってくれば非常に面白いと思います。
  大手コンサルティング会社さんとサプライチェーンについて共同で取り組んでいますが、これらのことを一度には実現できないのです。コンサルティング会社では現場データ管理は行っておらずデータ自体は持っていません、弊社は物流データを持っていて分析できる、こういったお互いの足りない部分を補うことにより、より良い技術を生み出すことができると考えています。すでに弊社ではAI導入に向けたチームを作り始めています。

――IT人材育成について、取り組まれていることを教えてください。
  人材育成はこの業界で最重要課題だと考えています。弊社は人材育成の前にどんな人材を育成していくのかということで、新卒を重点的に採用し育成しています。ここ最近、中堅社員の中途採用をしたいのですが、採りたくても採れない状況です。IT業界も物流業界のように人材不足で人が採れなくて、新卒に軸足を置いて採用活動を行っています。
  千葉県内の大学生は千葉県で働きたいという人が多いため、グループ会社を集結し、昨年9月に船橋市から千葉市に本社を移転しました。新卒の方が入りやすいような場所と環境、教育に力を入れています。ITの専門学部だけではなく、文学部や経済学部などからも採用しています。
  入社後9月末までは教育機関で座学研修を行い、10月から12月までは弊社でのOJTが始まります。現場に入ったり、お客様のプログラム開発を行ったり、プロジェクトに参画してもらったりしています。翌年の1月から3月までは、更に適正に応じて次のOJT先に配属されます。グループ全体で毎年15名ほど入社してきますので、新卒の人たちにはしっかりと基礎から教えています。このような話を新卒の方に話すと安心して入社できるようで好評です。新入社員の男女比率は6割が女性となっています。人事部の責任者も女性のため、女性に喜ばれるような職場環境・規則を整備しています。

――女性を積極的に採用し、働きやすい職場環境の整備に取り組んでいますか。
  IT業界は一般的に男性比率が高い産業だからと言って、女性の採用枠を狭めると採用できなくなってしまいます。女性の活躍する余地がとても大きい業界であり、女性が働きやすい職場環境の整備を行っています。その次は、海外の方も採用しようと考えています。10年後には社員数500人体制になることを目指しており、それに向けて環境を整備し採用活動を行っています。
  採用については、毎年、先輩社員が試行錯誤しながら採用方法を考えて取り組んでいます。そうすると大学にも伝わるようで、大学の先生から当社に紹介したいとか、インターンに入れてくれないかなどの問い合わせが増えています。インターンを行うと当社の仕事内容をわかっていただけますし、大学の先生も安心感があるようです。当社の人事部の担当者が各大学を回っており、当社の紹介を行いながら実際に行っている教育内容を説明しています。
  最近では、大学の先生と相談し「よさこい活動」を行っています。千葉の大学のサークルとタイアップし、大学の「よさこいサークル」に、タオルやテントを購入するなどの協賛活動を行っています。
  新卒採用では、人材採用、人材教育、若手社員の待遇改善の3点がとても重要なテーマです。採用プログラムは整備されているので、細かなところを工夫し、改定しながら採用活動を行なっています。

――外国の優れた技術を持つ人材の採用を検討して行く予定はありますか。
  先日、当社の事業戦略室の社員がインドの大学を訪問した際に、現地の大学生が日本に行きたいと言っており、かなりの人数の方が希望していました。これらの日本での就職を希望している海外の学生を採用することを検討しています。
  これまで、中国やベトナムの学生の採用も行ってきましたが、あまりうまくいきませんでした。これまでの失敗を糧に、より良い方法や仕事のやり方が見えてきており、もう一度挑戦してみようと考えています。IT業界では、常に人材不足なため、様々な国籍の人を採用しますが、上手くいかなかった事例も多いのです。
  これは海外の学生が悪いのではなく、多くは受け入れる側に問題があります。受け皿(任せたい仕事の内容や明確なキャリアプラン等)がどう変わっていくかをきちんと整備できないとダメだし、どこの受け皿に任せるかが重要になってきます。現在、弊社では業務の分業が進んでおり、進めていくにはよい時期かなと考えています。

――貴社のWMSはグローバル対応もされていますが、海外の日本法人にも販路を広げていますか。
  最初は中国で、北京、上海へ独資で進出しています。タイの、バンコクも同様です。次はインドも候補に上げています。当社の考え方としては、「自分たちがその国で会社を構えて、自社の社員が中心となって直接その国に入りサポートをする」、という方針で海外での販売活動を進めています。

――独自で着実に海外進出をされているのですね。現地法人と提携して拡販することはされていますか。
  海外進出を行う際、本当に顧客に提供したい主たるサービスについては、その部分は自社で行うようにしています。現地法人に頼むと、現地法人は色んなことに対応する必要があります。WMSなどは常にサポートする必要があり専門性が高いため、規模の小さい現地法人では人手が足りずサポートしきれないところがあります。現地法人が提供できるサポートと弊社が直接提供するサポートの住み分けをキチンと行う必要があると考えています。

――プレスリリースに掲載されていますが、貴社では積極的に特許を取得されていますか。
  30年程前から、ほとんどのソリューションは特許申請を行っております。これまで10数件の特許を取得しています。

――特許取得による技術的な裏付けがあると、他社が真似できない独自性に繋がってきますか。
  そうですね。同じようなものを作って、同じようなことをやらないでという牽制になります。ソリューションは真似できるので、すぐに作られてしまいますが、作った後に気付くことになります。大手企業はすぐに気づき撤退しますが、中堅企業は気付かないまま売っている場合もあります。大手企業では、しっかりと特許技術について調べているようです。

――大手企業と貴社が提携して進めることはありますか。
  現在そうなっています。大手物流会社さんが他社のソリューションを使用するのをやめて、弊社のWMSソリューションと提携し、一緒にやりましょうということもあります。大手物流会社さんやエンジニアリング会社さん、大手SI企業など、様々な企業と提携し、WMSソリューションを提供しています。

――IT業界では、現場を大事にされている会社が多くありますが、貴社でも教育制度に取り入れられていますか。
  物流の基本は現場にあります。現場に密着し、お客様目線で物流の基本をしっかり教え込んでいます。現場、倉庫を軸とした教育を行っています。具体的には、新入社員は必ず現場に1週間ぐらい派遣して、実際に荷物を運んだり、商品をピッキングして、現場の苦労を分からないといけないと考えています。倉庫の状況を知らずに、現場の流れや言葉を理解しないと、お客さんとの会話もできなくなります。
  資格制度では、ビジネス・キャリア検定(https://www.javada.or.jp/jigyou/gino/business/logi.html)等のロジスティクスに関する資格を積極的にとるように推奨しています。弊社の人材育成の基本は、物流の現場を理解したIT人材になるように、教育を行っています。

――最後に、今後、力を入れていきたい分野について教えてください。
  一番は、クラウドサービスのクオリティを断トツに(一番に)なりたいと考えています。クラウドは皆さんすべて同じように捉えられていますが、かなりサービスレベルに開きがあります。物流は特にセンシティブな産業なので、クラウドサービスも、よりセンシティブに取り組んでいく必要があると考えています。弊社のクラウドサービスは国内最高レベルになりたいと考えており、日本国内のクラウドサービスではNo1だと思っていただける領域に入っていくことが直近の課題です。
  二番目は、AIです。具体的な内容はまだ定まっていませんが、大規模な処理は今後AIが効率的に処理できるようになり、大きな効果が生まれるようになると考えています。
三番目は、自動化・ロボットの導入です。まだまだ苦しんでいますが、これは人手不足の中でやらざるを得ないと考えています。
  これらに対応していくために、WMSを最新版に切り替えたところです。今後さらにWMSをブラシュアップしていく予定です。取り組んでいくテーマは数年ごとに変わっていくため、現在はこの3つのテーマを中心に動いています。
  それと、人材を増やすということに力を入れています。物流業界のお客様からは、例えば、お話をいただいてから3か月後にWMSを稼働させたいという要望をいただくことがありますが、現在は開発に関わるキャパシティや時間にあまり余裕がない状況です。今後ある程度こういった需要にも応えられるような人員体制にしていく必要があります。そのためには直近であと50名程人員を増やしたいと考えています。新入社員が、戦力になるまでには最低3年はかかるため、中長期的な視点での人材の育成が必要になってきます。
  これらに対応できるような、会社の基盤作りを念頭において、利益よりも会社作り・社員づくりという方針で取り組んでいます。社員には「利益が下がってもいいからやりなさい」と伝えています。クラウドサービスに積極的に取り組んでおり、経営は安定していますので、安定している間にその水準にまで引き上げることで、競合他社が追いつけなくなるレベルへいち早く到達し、新たな顧客を開拓していくという戦略を練っています。

――お忙しい中、長時間にわたるインタビューにご協力いただき、ありがとうございました。
(聞き手:サカタウエアハウス株式会社 営業開発部)


(C)2023 Nobuhiko Onozaki & Sakata Warehouse, Inc.

関連記事

サカタウエアハウスの業界別ソリューション、フルフィルメント・サービス 他

流通・マーケティング・物流分野の研究レポート 「ロジスティクス・レビュー」無料配信中!
申し込み
流通・マーケティング・物流分野の研究レポート 「ロジスティクス・レビュー」無料配信中!
申し込み