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インタビュー

第99号医薬品業界における電子タグの活用と今後の展望―平成16年度経済産業省公募 医薬品業界における電子タグ実証実験―(2006年5月11日発行)

執筆者 岡安 秀太郎
凸版印刷株式会社 ICビジネス本部RFIDソリューション部 主任
    執筆者略歴 ▼
  • 経歴 1993年3月  早稲田大学卒業
    同 4月  凸版印刷株式会社入社
    商業印刷部門で主にEビジネス企画関連業務に従事した後、ICビジネス本部に異動
    現職 本社ICビジネス本部RFIDソリューション部主任
    平成16年度、17年度 経済産業省による「医薬品業界における電子タグ実証実験」の事務局を担当

JILS(社団法人日本ロジスティクスシステム協会)主催「SCMソリューションフェア2005」ワークショップ「医薬品業界におけるRFIDの活用について」の発表内容をもとに 2005年12月インタビュー

1.――JILS主催「SCMソリューションフェア2005」ワークショップ「医薬品業界におけるRFIDの活用について」にて事例を発表された経緯について教えてください。

  そもそも発表のスケジュールと当日のSCMソリューションフェアの会場にも書いてありましたとおり、去年(平成16年)の医薬品業界の電子タグ実証実験は日本製薬団体連合会様を事業主体として実施しており、凸版印刷はその事務局として参加していました。

  経済産業省による電子タグの実証実験は、今年(平成17年)で3年目なのですが、2年目の昨年から医薬品業界が入りました。そのプロジェクトの成果としての発表をSCMソリューション展で求められ、事務局として話をしたというのが経緯です。
  電子タグ実証実験3年目の平成17年度も医薬品業界における実証実験は採択となりまして引き続き実施していくこととなっています。ただし申請団体・事業主体が変わりまして、今年は日本病院薬剤師会様が主体となります。こちらを事業主体として凸版印刷は昨年と同じく事務局として参加しています。日本製薬団体連合会様には検討委員会のメンバーとして参加いただいております。
  本日のインタビューは医薬品業界電子タグ実証実験の事務局を去年今年と担当している凸版印刷としてお話しします。

2.――セミナーをお聞きして、改めて背景についてお伺いしたいのですが、特に強調されていたのは、改正薬事法に伴う企業の対応、特に記録管理やトレーサビリティを重要視していると言われていたと思いますが、このあたりは導入背景やテーマとしてありましたでしょうか?

  平成14年に公布された改正薬事法の施行により平成15年7月から流通面で生物由来製品の製剤名・規格・ロット番号を含む販売記録の保管管理がメーカーに義務付けられています。それに伴い医薬品卸には販売記録を報告することが義務付けられており、同様に医療機関でも使用記録を保管管理することが義務付けられています。昨年の報告書の冒頭でも触れていますが、この義務化事項というのが一つの背景になっています。
  すでに改正薬事法が施行されておりますので目視確認をして手で入力するということで対応しています。この業務が現場において非常に負荷になっており、またチェックミスなどもおこっているという現状があります。この問題を解決するために、タグを導入すれば手入力しなくてもいいだろうし、効率もよくなくなるのではないかと期待されているということがあります。

3.――実証実験段階でどの商品に実際に導入されるかを検討されたと思うのですが、商品としては講演資料に掲載されているような小型のものから開始した経緯について教えてください。

  本日実際に持ってきたのですが、これが小型のアンプルとバイアルの二つのタイプです。この形状を選んだのは、販売記録が義務化されている生物由来製品等の一般的な形状であるということと、非常に小さくてタグを付けづらいと思われているため、この形状のものを対象として選んでいます。

写真.小型のアンプルとタグ付きラベル例

4.――ラベル上のどこかにタグがはいっていますか?

  ラベルの裏についています。

5.――金属部分がアンテナですか?

  シールの裏面の丸いものがアンテナで真ん中の黒い部分がチップになっています。このような小型のものを開発して実際にラベラー(ラベル貼り)機で実装するということを検証しました。

6.――こちらの2つの商品について導入することができれば、他の医薬品についても導入し拡大できますか?

  医薬品には大きさや形状や材質など様々なものがありますので今回対象とした小型のアンプル形状とバイアル形状以外については検討が必要だと思います。

7.――この商品の流通量はどれくらいありますか?

  これは商品ではなくダミーです、全て実験用にラベルや箱を作っているので、実際にどこかの製薬会社のものとして作ったものということではありません。

8.――実験に使用されたということで、実際の商品に電子タグを貼り付けたということではないのですね。

  はい、去年の実験で大きく3つの事を行ったと話したと思うのですが、1番目としてまずタグを付けられないと始まらないので生物由来製品の使用単位として一般的な1ミリアンプル・10ミリバイアルという2つの使用単位にタグを付けられるかということ、このタグを開発して実際の実用に足るようなラベラーでの実装ができるかどうか、ということを検証しました。
  次にメーカーの出荷から病院への入荷までのあらゆる検品作業・読み取りシーンにおいてタグがあったら、どれだけ効率が上がるのかという点、もう一つはトレ-サビリティシステムによって販売記録が可視化でき管理できるかどうかということを検証しました。
  このトレーサビリティのところは、実際に流通している実薬につけてどこかのメーカーから卸業者に入ってというような検証ではありません。別に実験環境を作りまして、そこで卸業者さんに導入率の高い実際のERPソフトのベンダーさんに協力いただいて、実験をしています。

9.――実験の時の流通量はどれくらいの量で行われたのでしょうか?

  実薬には使用していないので流通はしておりません。タグの使用量が多かった部分としてはタグを開発するところとラベル化適性実験や、ラベラー適性に関する実験部分です。これが去年の全体の報告書なのですが、1章に実験概要があって、2章で現状の医薬品の流通に関しての分析、3章が電子タグの基礎実験となっています。医薬品業界初の電子タグ実証実験ということで、医薬品には様々な形状、材質がありますので、アンプル、バイアル以外にも金属を使用しているものなどにもタグを付けて読み取るとか、そういった基礎データをとるような実験をしています。それから後はタグとラベラーの開発、その後に各フィールドでの入荷検品とか出荷検品などの工程での読み取率とか効率化(時間の計測)とかを行いました。トレ-サビリティ部分は6章のところで記載しています。
  トレーサビリティ実験では実際の病院や卸業者の倉庫とかメーカーで行えなかったので、当社の関連会社のパッケージングサービスの工場(医薬品の詰め替えやリパッケージの免許を持っている所)にラベラーを持ち込んで、メーカーを想定した実装実験を行い、同様にサプライチェーンの実験も行っています。ネットワーク機能があり遠距離でも使用できるシステムを使ったメーカーと卸をネットワークでつなげる実験を一カ所に集約してトレ-サビリティを検証するといった形で実験を行っています。

10.――実際に卸や医療機関に持ち込んで、テストでどのような使い方をされるかというそのあたりの実験はいかがでしょうか?

  医薬品卸業者につきましては3つの卸業社に協力いただきまして各卸の物流センターに行き、そこで各種検品を模した実験をさせていただいております。
  病院は同様に2カ所の病院に行きまして、そちらで入荷検品の実験をしています。

11.――2年目ということですが、初年度の1年間は準備期間で2年目に今回の実験をされたのでしょうか?

  平成16年度は日本製薬団体連合会様を主体として行った実験です。メーカーの団体なので、製造された薬品の使用単位にタグを付けるところを中心に実施しています。そしてそれら出荷したものが病院に入るまでのトレーサビリティをみるという、販売記録をメーカーが管理するという視点で実験をやっています。
  平成17年度は日本病院薬剤師会様を主体としている実証実験です。医療機関では入荷された薬をこのまま使うわけではありません。サプライチェーン的には医療機関が一番川下ではあるのですが、医薬品を入荷した薬剤部は病院内の院内物流の一番川上であり、薬を調合したり注射剤の準備をするので、これをトレースする必要があり、最後にどの患者さんに投与したかまでがトレーサビリティという話になります。病院内について去年は深く検討されていなかったので、今年は検証していない病院の中の部分をやりましょうという予定になっています。医薬品業界はメーカー・卸・医療機関に大きく分けられますが、平成16年と平成17年の実証実験で全体を通した検討が一通りできると考えています。

12.――今年の実験はすでに完了していますか?

2006年3月で完了予定です。

13.――実証実験における御社の役割とは、1つは事務局という役割があると思いますが、もう1つは関連会社でラベラーの機械を製作されており、御社の担当された範囲について教えてください。

基本的には事務局ですが、電子タグの開発と機器選定やシステムのディレクションを行っておりベンダーにもなっております。

14.――実験システムの導入形態のご質問ですが、セミナーのなかでもワンサーバーで全てのトレーサビリティを管理するしくみですというご質問があったかと思うのですが、そのシステムはインターネットで結ばれているような仕組みなのでしょうか?

  昨年の実験については、SAPのERPソフトを使い、ネットワークで管理をする形で検証をしています。あるメーカー1社が自社製品のトレーサビリティだけをみるような形になっていました。メーカーを離れたデータを管理するところがあってそこに各メーカーが全部入っていく形がいいのか、将来的にあるべき姿まではまだ検証していない状態です。

15.――実験の段階ではあるメーカーのシステムのネットワーク機能やシステムの一部を使用し、比較的小規模な投資でシステムを構築されましたか?

  実際のERPソフトベースで構築していますがあくまで実験レベルになります。実運用を考えた全体的なコストの話については検証を行っていない状態です。

16.――システムについては既存の各メーカーのシステムとの連携がどのようになっているかという点は疑問に思ったのですが、特定のある会社のシステムの中でリンクして動くということで、そのシステム自体が実験に参加したすべての企業の既存システムとリンクするということでしょうか?

  メーカー、卸、医療機関では各社、機関によってIT化の状況や、システム構築のされ方が大きく異なっています。電子タグを導入した場合にはその情報を各社、各機関の基幹システムと連携させる必要がありますが個別のばらつきが大きいため既存のシステムに合わせて対応をとる必要があると思います。

17.――実験テーマに関する内容についてお伺いしたいのですが。小型タグの選定にあたって、発表の中ではUHF帯のものを選択されたということですが。

  いいえ、使用単位は13.56MHz(短波帯)です。こちらのサンプルもそうです。

18.――そうすると比較的読み取りの範囲としては近距離になりますか?

  そうです。近距離になります。

19.――セミナーの中でビデオで流されていた時には、パレット単位で大きいゲートを通過し読み取っている様子が映し出されていましたが。

  パレットにはUHF帯(950MHz)の電子タグを使用しています。

20.――そうしますとUHF帯と短波帯の両方の電子タグを使われたのですか?

  去年実験では13.56MHzを使用単位、販売箱単位箱、ダンボールに使用し、パレットとかカーゴにはUHF帯(950MHz)電子タグを付けました。

21.――ICタグのラベル化にあたって苦労された点はありますでしょうか?

  やはりタグが入りますとただの紙とは違ってきますので、電子タグをセットしたラベル化の適正をみるため、ラベル基材、層構成、インレット別に時間、温度、湿度などの条件による粘着適正や、印字・エンコード適正の面からラベル化に適したものの評価を行いました。

22.――基本的にはなるべく既存のもので使えるような形に組み込むことで、今後検討されているのですか?

  そうですね。今回既存のラベラーにタグを読むセンサーを取り付けて動かしています。
  ラベラー機の摩擦や静電気でICチップが壊れるという話もあったのですが、静電気については一般的な許容量といわれる2KVを超えた測定結果でしたが今回の実験では特に問題なく、壊れることもなく大丈夫でした。

23.――ラベラーによる貼り付け時、同時に読み取りエラーのものを弾いている映像を拝見したのですが、このあたりはあくまで実験のため弾いていると思いますが、弾かれた商品については本来的にはタグを貼り直すという作業をすることを想定されてますでしょうか?

  今回の実験では、良品でも弾くというのが多くおこりました。要はアンプルが回転してしまって直角など角度的に読めない場合があって、それを弾いてしまっていました。実際のタグ自体の不良率は非常に低かったのです。不良があった場合には、貼り変えるかどうかといったことは検討しておりませんが、それほどラベラーでの不良というのはなかったのであまり問題にはならないのではないかと思います。

24.――技術的な点の確認ですが、1分間に250回読ませるということは、1分間に250回なら250回を超えないような例えば1秒間になおすと何個までとか制限が必要になりますか?

  アンプルで1分間300回、バイアルで250回という数字は実際にラベラー機で普通の電子タグのないラベルを付けている時間ですから、そのスピードに合わせてチェックできるものを作ったということです。

25.――読み取り機のスピードに合わせているわけではないのですね。

  はい。スピードの問題といえば電子タグへのエンコード(書き込み)の時間がかかるという問題があります。今回実験では56バイトの情報を書き込んでいますがラベラーでの実装の方は1分間に200とか300いっているのに、エンコードは1分間に例えば20、30とかそれ位のスピードになってしまうのです。タグに書き込む方スピードの向上が必要です、複数ラインでラベルをエンコードしてそれを1ラインにまとめて貼り付けるといったような運用等も考えられると思います。

26.――改正薬事法と既存システムの対応のところは、既存システムの場合ですと全て目視で見ながら入力していたものを、電子タグですとそれが全てシステム化で自動化されますか。

  電子タグを使うことで書き込まれたロット番号を含んだ情報の読取を自動化することはできると思います。

27.――サプライチェーンの各企業様のメリットということでは、特にメーカーの段階では最初に逆にこれを付けるということでデメリットと言いますか、負荷がかかるのかと思いますが。

  ソースタギングになりますからそうですね。

28.――その次の川下までの流通のところでは、かなりメリットが出てくると思いますが。

  そうですね。タグは付いているのでそれを活用するわけですから。

29.――そうしますと、今後例えばそういったコスト負担でメーカーがそのコストを全て負担するというよりは、メリットのある川下の卸とか病院の方で、一番川上でかかったコストを何か分担するという可能性はありますか。

  コストを分担するという考えはあると思いますが、業界全体でコストを分担するといったモデルは思いつきません。

30.――そのあたりの議論は実証実験段階のグループのメンバーの中で、何かそういったお話は出ましたか?

  はい。導入された場合それぞれが電子タグのメリットを享受することになるので実装コスト負担については、問題提議にとどまると思いますが検討する必要があるという認識です。

31.――実験を実施された段階で例えばメーカー・卸・医療機関の方からそれぞれ要望がありましたでしょうか?

  必要としている情報に違いがあると思います、メーカーは使用単位にタグを付けますが、出荷時には梱包状態になり、卸は薬事法上販売単位を開けて使用単位を扱うことがありません、販売箱の単位で扱わなければいけない。そうすると当然卸の段階では使用単位でメーカーがつけたタグは読まないのです。このように各流通段階で必要とする情報が違うというところがあります。メーカーであれば同一ロットの同一商品はロット単位で管理していればいいのですが、病院に入るとこれは誰に使ったかなど個別の管理をしなければならないので、1個ずつの管理になってきます。このあたりのサプライチェーンの各段階で必要な情報について詰めて運用法やタグ添付単位の粒度を検討する必要があります

32.――末端のエンドユーザーである医療機関の要請としては個品単位で管理されたい。ただし、上流へいけばいく程そこまで管理する必要はないということですか?

  上流へ行けば行くほどということではなく、たとえば卸では販売単位を開けて使用単位を扱うことがないということです。

33.――今後の展望・課題についてお伺いしたいのですが、JILSの講演でも課題で大きく次の4つのテーマをあげられていたと思います。
①導入範囲、導入商品の拡大
②精度/効率の向上
③業務サイクルの同期化
④コード標準化、セキュリティ
導入範囲とか商品の拡大につきましては、来年の3月まで今年の実験が続くということで、その中で何かご計画等はありますか?実験の段階でもう少し医療機関へ実験をされるというようなこと等ありますか。

  今回の実証実験以外にも病院でのタグの活用は、新聞等でも取り上げられていますが、例えば患者さんを認識するためリストバンドにタグを入れるとか、実際に注射剤にタグを付けて患者さんのIDとチェックをして投薬するとか、そういった取り組みは医療機関での事例も散見されます。医療機関での電子タグに対する期待は高いのではないかと思います。

34.――サプライチェーン全体で見るにしても、一番ニーズ・要請が高いのは、末端の医療機関でどのように使えるかという対応になるでしょうか?

  電子タグはそれぞれの場面で様々な利活用が考えられます。医療機関ですと、サプライチェーンという括り以外に、医療の安全性の向上にも効果があると期待されています。注射剤にもなりますと生命に大きく影響を与えますので医薬品の管理精度の向上への期待が高くなっているのではないかと思います。ただし同時にもっとも電子タグにも高い信頼性が要求される業界だと思います。

35.――精度や効率の向上の面で、先程逆に書き込みの方がかなり技術的に少し遅れているようなことを仰っておられたかと思うのですが、このあたりの今後の展望と言いますか、御社の取り組みはいかがでしょうか。

  情報量が増えれば書き込みに時間もかかるし、読み取りにも時間がかかる。何を書き込む必要があるのかというそもそもの問題があります。タグは書き込むことができ、書き込んだものを変えたりできるデータキャリアなのですが、タグに情報を持たせる考え方と、タグにはユニークコードだけでそのユニークコードは何かというものを全部データベースで持つという考え方とがありどちらがいいのか運用を考えて業界で検討する必要がある部分です。
  読み取る書き込みデータが多くなるとやはり読み取りに時間がかかります。また同時に読取るタグが多くなっても時間がかかります。たとえばこれはタグの付いた使用単位が10本入の小箱です、これが10箱あると箱のタグも含めてタグが全部で110個になります。設計にもよりますがリーダは入ったものをとりあえず1回読むような形になるので時間がかかることになるのです。そういう時に、ソフト的に読み取るエリアを狭くして、ユニークコードだけを見るようにした方が、より早い読み取りができたりとかということも考えられます。また物理的に箱の中身まで電波を通さないとか、読取距離を調整するとか必要な読むべきものだけ読む工夫を技術面と運用面でもカバーしたりする必要があるのかなと思います。

36.――同じタグでも、ここまでは読んでここから先は読まないという、そういう設定や運用は可能なのでしょうか。

  これは、パッシブ型の電子タグは基本的に電池も何もなくて、電波を受けてから起電力を受けて読まれるものなのですが、アンテナの範囲内にタグが入ったら1度はアンテナとタグとでやり取りをしてしまいます。その後でメモリー領域を読まなくするといった設定ができるものもあるのですが、基本的には読める範囲に入ったものは、読んでしまうという形になるので、時間がかかってしまうのです。

37.――そうしますと、方向性としましては、なるべく必要最低限の情報を電子タグに持たせたいという考え方になりますか?

  方向としては、データベースの方で逐次データをリアルタイムで更新していって、それを参照するといったような方向性なのかなと思います。ただ、いろいろな環境で広く使われることを考えるとタグにも書き込めてデータベースを参照できない場所でも、読んで何か分かるというようなサポートは必要かと思います。
  現状の医療機関のチェックというのは、基本的には全て人の目視によるダブルチェック等、そういった運用でやっているのです。それがいきなりタグ、データベース参照になると、見た目は全然分からない。見た目は同じだけれど、読むとサーバーから答えが返ってくるという、いきなり目で見て全チェックだったのが、データベース参照に完全に切り変わるのか、その中間のような運用になるのか、どの形がいいのかまだ検証中、実験中という状況です。

38.――岡安さんは、目で見える表示とタグの両方を併記するようなことを考えていきたいと、セミナーの中で仰っておられたと思いますが。

  電子タグは精密電子でもありますから電子タグが壊れた場合の対応も考えると可視情報の併記をするか、運用上の対策は必要だと思います。

39.――医療分野や医薬品分野の大きな流れとして、私の聞いている範囲では、なかなか製造ロットのバーコード化というものが遅れているようなことを聞いておりますが。流れとしては、例えば製造ロットのバーコード化も含めて一気に電子タグへ行こうとしているような現在の風潮でしょうか。それとも通常ですと、途中のコード128とかを経て最終段階に電子タグがあるような位置づけのようにも思いますが、その辺りのお考えはいかがでしょうか。

  業界全体でソースタギングした電子タグを医療機関も卸もメーカーも全部で使いましょうというのには、超えるハードルが非常に多いという感じはしています。
  日本製薬団体連合会の医療用医薬品流通コード標準化検討プロジェクトでは昨年の実証実験を終えて現時点では電子タグをデータキャリアとして推奨することは難しいとの結論に達したと聞いています。

40.――一般的には、電子タグの実用化の例としてはリサイクルして使えるというところで実用化が始まっているところもあると聞いていますが、医療用でも電子タグのリサイクルという点も実験のテーマであがっていますでしょうか。

  今回の実験では医薬品に実装したタグをリサイクルするという視点で実験を設定していません。

41.――病院関係の方からお話を聞くと、薬のなかに粒状のカプセルがありますが、箱の外には表示がありますが、薬のシート単位での表示があまりないとか、調合した後の薬にも、表示がないとか、そのようなお話を聞いたことがあるのですが、この辺りのことはテーマにあがっていますでしょうか?

  その点になりますと、タグというよりは実際の病院内の現在の管理体制、運用にもよるので、たとえば、アメリカですと全部薬も1錠1錠リパッケージして分かりやすく管理をするといった運用をしているところもありますし、タグというよりはまた別の話なのかなと思います。

42.――全体的なお話としては、全ての個品に付けるというのはあまり現実的ではないのではないかというようにも聞こえるのですが、例えばある程度必要な単位では電子タグ、そこから先はバーコードといった使い分けというのも今後必要なのでしょうか?

  使い分けは考えられると思います。

43.――その辺りは、実験ではかなり深いレベルまで活用してみるのと同時に、実際の運用を想定しての実用的な形での実験というのもお考えになられていますか?

  そうですね。実際の現場への導入レベルの話にしていければと考えています。

44.――最後に、今後の実験あるいは来年度以降に向けて、特に御社で取り組んでいきたいことや、テーマとしてこういうことをやりたい等といった方向性がありましたらお願いします。

  実際の導入にむけて利活用のモデルを明確にしていきたいと思います。

45.――医薬品の中にはいろいろな管理レベルがあって、商品によっては冷蔵しておかないといけないものもあり、そういったものへの対応というのもありますが、実験の中にこういった管理レベルへの対応も今後組み込まれていくのでしょうか。

  今回実験では行っておりませんがニーズはあると思います。冷暗所できちんと保存しておくべきものが、流通過程などで規定の通りに管理されていたかどうかの証明は、従来のバーコードでは難しかったことですがセンサー付きの電子タグで温度や光について管理の履歴をとっていくこともできますので、そういった運用はあると思います。また利活用の範囲という意味では麻薬とか向精神薬等の厳重に管理すべきものだけに限定してタグを付けて運用ということも考えられるかと思います。すべての医薬品に遍く電子タグを付けるのではなくて、限定されたところから付けていくということです。導入する場合はまずはそういった必要性の高い部分から段階的に導入することで効果や課題、解決策を明らかにしながら進めていくことになるのではないでしょうか。

46.――今後、より実務レベルに近いような形での実験を考えておられるということですか?

  そうですね。課題を明らかにして導入に向けての基盤の整備に協力できればと思います。

以上



(C)2006 Hidetarou Okayasu & Sakata Warehouse, Inc.

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