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インタビュー

第505号 ロジレビュー・インタビュー ~大島 章仁氏(クラシエホームプロダクツ株式会社)~ (2023年4月6日発行)

■はじめに

  2022年7月から配信を開始しました、楽々ゼミナール参加者へのインタビュー、第6回目の今回は、クラシエホームプロダクツ株式会社の大島 章仁(おおしま あきひと)様にインタビューにお答え頂きました。物流、DXやSDGs等に関する取り組みについてのお話を伺いました。
→過去のインタビュー記事はこちら

■ご紹介

クラシエホームプロダクツ株式会社
「クラシエは、お客様の毎日の暮らしに密着するトイレタリー・コスメティックス分野(美)、薬品分野(医)、食品分野(食)を事業領域としています。」
  クラシエグループのトイレタリー・コスメティックス事業を行うクラシエホームプロダクツ株式会社の歴史は、「前身企業において1936年に日本で初めて繭の中身であるサナギから石鹸の原料油を精製することに成功し、「サボン・ド・ソワ(絹石鹸)」が誕生したことに始まります。
  現在のトイレタリー・コスメティックス事業では、独自の技術とノウハウを生かした、高い品質でありながらお求めやすい価格で生活に密着したさまざまな日用品や化粧品を提供しています。(以下略)」
(引用元):クラシエグループ ホームページ(https://www.kracie.co.jp/), 「事業概要」,「トイレタリー・コスメティックス事業」(2023.1.16)

ロジスティクス部長 大島 章仁 氏
1968年岐阜県で生まれ、高校卒業まで岐阜県で過ごし、大学進学と同時に関東へ引っ越し、その後35年ほど千葉・神奈川・東京を住まいとして、現在も東京に住んでいます。職歴はインタビューの中でご紹介します。

■インタビュー

――大島部長様の経歴について教えてください。
  職歴は、1992年に鐘紡株式会社情報システム事業本部に入社し1.5年間システム開発を経験し、1993年より(日用品を扱う)ホームプロダクツ部門に移動、28年半ほど従事しています。その中で理美容・レジャー施設向けのプロフェッショナル部門で営業・マーケティング・管理業務(商品の需給管理)を21年、その後マーケティング統括部へ異動し、一般流通のマーケティングを5年程担当、2020年2月より現職のロジスティクスを担当しています。ロジスティクスの業務はもうすぐ3年になるところです。

――営業・販売を経験されてマーケティング関係の部署に移られて、どのようなことをされていましたか。
  プロフェッショナル部門でのマーケティングは、販促活動を担当していました。マーケティング統括部は、一般小売店で販売する商品に関する部門で、マーケティングの中でも企画部門に近い仕事をしていました。市場調査や商品のカタログの作成なども行っていました。

――マーケティングからロジスティクスの部署に移動されて苦労されたことはありますか。
  最初は、全くの素人だったので、何をしたらよいか分からなかったのですが、在庫を切らさないように、在庫をオーバー(過剰に)しないようにと言われていたので、まずは需給管理のところから手をつけました。

――現状の課題や今後の計画に教えてください。
  当社の最大の課題は、原料コストの急上昇です。ここ数年で、海外の地域ではコロナが拡大をすること(ロックダウン等の影響)で起こる原料不足、米国での寒波による生産工場停止、海上コンテナ・船の不足、海運の遅延やコスト高騰など様々な問題が発生しました。また、原油価格高騰による原材料および輸送コストの高騰にも歯止めがかかっていません。
  物流に目を向けても、原油価格の高騰の影響は大きく出ているようです。運送会社さんからは、燃料サーチャージの依頼が来はじめています。当社では、センター間輸送便で使っている国内海上輸送でのコストアップが始まっています。今後もこういったことが起こってくることを懸念しています。
  国内でも自然災害の影響や頻度が増してきています。台風による海上輸送・陸上輸送の遅延が発生し、例えば台風による沖縄便遅延や、鉄道輸送の線路水没による遅延等、今年だけでも幾度となく影響を受けました。九州、北海道向けの輸送便は鉄道や船舶を利用したモーダルシフトを推進してきましたが、天候に対しては不安定な部分も目立ってきています。当社では、労働負担の軽減を第一に考えていますが、それだけでは解決できない課題が顕在化しているのも事実です。今後は、労働力軽減・スピード・コストを勘案し、ベストな組み合わせを模索していきたいと思います。

――調達に関するコストアップが発生し、物流については現在高止まりしている状況ですか。
  ものによっては原料そのもののコストは下がりましたが、為替の影響で手に入れる時のコストは高止まりしています。来年度(2023年度)以降も不透明でどうなるかわからない状況です。このため、いろいろな場合を想定して対応する必要があり、困難な予想をしています。

――2024年問題について、どのような対応をされているのか教えてください。
  一昨年位から言っているのですが、運送業界の中でも比較的小規模の 運送会社さんでは、明確なオファーが無いところがあり、なかなか全体像をつかめていない状況です。2024年問題に関し、考えなくてはならない時期に来ていると思っています。物流の継続性を確保する視点で、取り組まなくてはならない事だと考えています。
  業界では、積載率向上のための取り組みや共同配送への転換、ホワイト物流・フィジカルインターネット等のキーワードは数多く出ています。基本は無駄をなくしていく事だと思いますので、業界の方々のご意見を頂きながら、当社内でできる限りの無駄の排除に取り組んでいきたいと考えています。
  例えば、積載率向上に向けては、着荷主である卸企業様の協力を頂き、一部の納品先様については、納品するトラックを確保しやすいように、先日付での発注と、まとめ発注を頂いています。まとめ発注というのは、数日分のオーダーをまとめて発注頂くことで、積載率の向上・配送頻度の低減を目指して実施しています。
  これまでは当日11時迄に発注いただいた商品を、翌日午前中に納品するというものが慣例となっていました。1日前に発注内容を送付いただくことで、早期の手配が可能となり配車に成果が出ています。
  商品に関しては、パレット単位での納品が多い商品に関するキューブ化(商品外箱の立方体化によるパレット積載効率化)を進めています。特にセンター間輸送に関しては、積載効率を向上させるための対策として有効に働いています。
  今後の対応については、物流の継続性・持続性を維持するために、業界の最新の取り組み状況等について、勉強していかなければならないと考えています。
  また、2024年問題では、トラックドライバー1人での移動距離の制限により、輸送距離が短縮する事について、対応を迫られる課題だと考えています。例えば、北東北や四国地区等の、当社物流センターから遠方の地域については、対応を検討する必要があると思っています。現在は、商習慣上、受注日の翌日午前中納品が、通常の納品リードタイムとなっています。これだと2024年問題では、トラックドライバーの2人乗車体制、あるいは、物流拠点を増設しなければ、どうしても届かない距離・エリアが出てきてしまうという状況です。卸企業様、物流企業さんと相談をしながら、商習慣の見直しも含めて、早期に対応を検討していきたいと考えています。

――ホワイト物流の取り組みに関して教えてください。
  我々が実施しているホワイト物流の取組方針や取組内容については、「ホワイト物流」推進運動ホームページ(https://white-logistics-movement.jp/)に掲載している、当社の行動宣言(https://white-logistics-movement.jp/wp-content/themes/white-logistics/docs/declarations/00446.pdf)を参照していただきたいと思います。
  我々単独ではできないこともあり、取引先様や物流事業者さんに協力をいただきながら、できることから取り組み始めている段階です。

――共同配送を検討されているなかで、以前プラネット物流様を通じて、複数の企業で物流共同化に取り組まれていましたが、現在でも継続して実施されていますか。
  北海道、関東、九州地区等では、引き続き事業を引き継いだ物流会社さんが共同物流を実施していますが、我々は、当社にとってメリットがある内容かどうかを考えて、共同物流への参加の有無を決めています。具体的には、九州と北海道地区では、お客様ごとに納品するトラック1車分を当社単独では仕立てられないことが多いため、共同配送を利用して納品しています。関東地区では大手の卸企業様から、車単位で注文をいただくことが多いため、自社単独で車を仕立てて納品している状況です。

――コロナ禍での影響や、どのように対応されているのか教えてください。
  原材料の値上がりは世界的なコロナの影響によるものでした。それにプラスして、コロナ禍になって、売れる商品のタイミングが大きく変わりました。
  例えば、入浴剤はこれまで冬季の売上構成が高かったものが、季節を問わず売れるようになりました。また、ムダ毛処理商品の市場が急拡大するなどの影響がありました。コロナの影響でサロンに行きづらくなった影響と考えておりますが、どのように商品を持ったらよいのか、需要予測面での課題となっています。
  またコロナの影響で中国からの訪日客によるインバウンド消費がなくなったことで、爆買い対象商品が販売機会を失いました。このように一部の商品については、コロナの影響を大きく受けていると言えます。

――DXに関連した取り組みについて教えてください。
  DXに関しては、デジタルトランスフォーメーション(DX)という観点ではあまり進捗がありません。当社は今、デジタイゼーション(業務フローの部分的なデジタル化)に関して、ある程度進んできていると思います。書類・会議のデジタル化、お客様との会議・商談のオンライン化、在宅勤務の制度化等は、一般化してきました。存在するデータをどのように繋げて意味のある情報とするのか等、今後取り組まなければならないことは、非常に多くあると思っています。
  デジタライゼーション(デジタル化とともに新たな付加価値を生み出していくこと)やDXにステップアップしていくためには、どうしていくのかについて、考えながら取り組み始めているところです。

――ECへの取り組みについて教えてください。
  ECに関しては専門的な取り組みとしては非常に遅れていました。これまでは卸店様と一緒に既存プラットフォームでの販売等に取り組んでいましたが、今年マーケティングの部署の中にEC推進部という組織を作り、本格的な対応をスタートさせました。現在は既存のプラットフォーム(アマゾン・楽天・LOHACO等)のなかで、展開しています。サイト内に自社商品のブランドページを作ったり、商品紹介を充実させたり、プラットフォーム内の広告を出したりしています。
  物流面では、通常の流通と同様に、卸企業様からEC事業者へ納品いただいていますので、メーカー物流としては、特に変わったところが無いのが現状です。
  ただしECで売れるものと、小売店で売れるものは、異なる傾向があります。

――ECで売れるものと小売店で売れるものが違う理由は、ECと小売店の客層が異なるためですか。
  昔は大きいものが売れるといわれていました。例えば、詰め替え用の商品だと、1回分よりも2回分、3回分の商品が売れるのです。最近のECでは、特徴が尖った商品が売れる傾向があるようです。例えば無添加・ナチュラル・○○フリーなどの商品が売れているようです。

――SDGsの取り組みについて教えてください。
  SDGsに関しては2030年に向けての目標を設定し、重点3領域(循環型社会の実現と天然資源の保護、心と身体・暮らしの安心の向上、知の共有と地域経済活性)を定め、「夢中になれる明日」を実現するために、クラシエグループのサステナビリティとして取り組んでいます。詳細は当社ホームページ(https://kracie.disclosure.site/ja)に掲載していますのでご確認ください。

――3PL 事業者へ求めることについて教えてください。
  安心・安全・最適コストが実現できれば良いと思っています。普通のことを普通にこなしていただける安心、物流波動にも柔軟に対応いただける安心、トラブルが起きた時に被害が増大せず収束していただける安心など、常に任せておいて大丈夫と思える安心感を3PL 事業者さんへ求めています。
  安全に関しては、事故(物理的な事故・紛失・誤配・遅配等)がない安全性、常に安全に対する取り組みが繰り返し行われ、自主的に事故防止が徹底される体制が必要です。
  適正なコストに関しては、双方納得がいく費用感で、十分に話し合いながら行っていけば解決する課題だと考えています。急な(値上げの)対応を求められると、少し困るかもしれませんが、3PL 事業者さんとは、本音を言って相談しあえる関係性を築いていきたいと考えています。
  あとはBCPについての希望ですが、いざという時の備え(非常用電源の設置等)が出来ているか否か、想定が有るか無いかが重要だと思いますので、こういったBCP体制作りを3PL 事業者さんと共有できれば、安心できると考えています。

――最後に、弊社セミナー/研究会へのご要望について教えてください。
  最近様々な物流企業さんから、色々なテーマのセミナー案内をいただきます。サカタさんの専門のテーマを絞り込んでほしいと思います。一つのテーマを長期的な視点で追って、変化・動向を捉えられれば有難いと思います。「このテーマであれば、サカタさんが一番得意。このテーマであればサカタさんに聞こう」と思えるような特徴が欲しいです。
  また、定期的にタイムリーな話題と共に、我々と近い業界の新しい取り組みなどについても教えてほしいと思います。政府が…、国交省が…、内閣府が…、トラック協会が…など、関係各所から発表されるリリースなどの解説、何をして何に備えればよいのか等、一般の人にもわかりやすい解説をして頂ければ有り難いと思います。

(聞き手:サカタウエアハウス株式会社 営業開発部)



(C)2023 Akihito Oshima & Sakata Warehouse, Inc.

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