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インタビュー

第531号 ロジレビュー・インタビュー ~須山 裕二氏(株式会社オークボ)~

■はじめに

  2022年7月より新たに開始しました、企業様へのインタビュー、第12回目の今回は、弊社の顧客である株式会社オークボ 須山 裕二(すやま ゆうじ)様にインタビューにお答え頂きました。物流やマーケティングの他、DX等に関する取り組みについてのお話を伺いました。
→過去のインタビュー記事はこちら

■ご紹介

株式会社オークボ様は1949年に創業され、関西一円の美容室・サロン様向けに美容材料卸販売やサロン様の経営サポートを行う美容ディーラーです。
参照:株式会社オークボ ホームページ(https://www.ohkubo.net/

  
株式会社オークボ
代表取締役 須山 裕二 氏


 インタビュー者略歴 ▼
  • ・1968年9月11日生まれ
  • ・1991年 テキサス州立PJC卒業
  • ・1992年 株式会社コーセー入社
  • ・1996年 日本ロレアル株式会社入社
  • ・1997年 株式会社オークボ入社
  • ・2001年 株式会社オークボ代表取締役就任
  • ・2009年 大阪器具商組合理事長就任
  • ・2015年 全国美容用品商業協同組合連合会理事長就任
  • ・2019年 全国美容用品商業協同組合連合会相談役就任

 

■インタビュー

―― 貴社の概要について教えてください。
  弊社は、私の祖父が1949年に創業しまして、私の代で3代目になります。創業当時から美容商材、頭髪化粧品を中心とした美容用品を美容サロン様へお届けすることを業務の柱としています。
  美容師の方が使われる美容商材というのは、カラーリング剤やヘアケア商品、パーマ液などがあり、技術的な面では、商材を使用する側の理美容師様が技術を伴われるような仕事なので、弊社では商品の提供に合わせて、セミナー、講習会などの教育関連のコンテンツを美容師の方々へ提供することも、業務の柱としています。
  弊社の特徴ですが、創業以来”Face to Face”、お客様と顔を合わせて、お客様の課題をお預かりしながら、膝を合わせて課題解決していくことを信条としている会社です。

―― HPを拝見したところ、オークボ様の6つのPの中にパーソンという言葉も入っているように、人と人を大切にされているのが1番の特徴なのですか。
  はい、その通りです。私たちは製造元のメーカーではないので、(美容ディーラーの)競合他社は全国にあって、お客様である美容師様からすると、同じ商品をどこから購入するかというのは、弊社の営業を通じて美容メーカーからお預かりした美容商材に、如何に付加価値をつけて、現場の理美容師の方々に使っていただけるかということが重要で現場の営業を介して、「人を通じて」という人(営業マンが提供するサービス)を売りにすることを大切にしています。

―― セミナーを開催していると仰っていましたが、講師は外部講師を起用されているのですか。
  そうですね。技術的な内容のセミナーでは著名な美容師の方に、外部講師としてセミナーを担当して頂いています。
  その他、経営者の方向けに集客や売上などのマーケティングに関する内容のセミナーや、若い美容師の方向けに接客やマナー関連のセミナー等、色々開催しています。

―― セミナーはどれぐらいの頻度で開催されていますか。
  弊社もスタジオを完備しておりまして、コロナ禍前ですと(関西圏のサロン業界は月曜日が定休日)月曜日に多様なセミナーを開催していました。
  ここ数年は、コロナ禍のこともあり、リアルセミナーの開催も中々厳しい状況でした。

――コロナ禍が起因して、労働時間の問題で休まないといけない、また働き過ぎなどがクローズアップされる傾向がありますが、影響はありますか。
  ありますね。理美容師さんは技術職なので、若い時にしっかりとした技術や接客力、人間力を一生懸命勉強して、近い将来スタイリストとして活躍できる土台創りの時期がとても大切なのですが、コロナ禍のこともあって若い美容師の方々のレッスンや教育に投資する時間は少なくなっています。この時期の経験量が将来少なからず影響が出てくる様な気がします。

――オンラインのセミナーが増えてきていると仰っていましたが、オンラインでは身につき難いことはありますか。
  基礎の所がしっかり習得されている美容師の方にはオンラインの画像を見て参考になる所は多いと思うので、それはそれで活かし方というのは良いと思います。
  しかしながら、お客様にその技術を自分で行う時に、技術の土台がしっかり出来ていないと、頭で理解できたけれども、実際現場で再現出来るかどうかというと、ギャップは間違いなくあると思います。熱心な方はオンラインであろうが、リアルのセミナーであろうが、こういう時代の中でも一生懸命頑張っていらっしゃる方は業界の中には沢山います。ただ、自分自身に投資する勉強の量が以前に比べて、平均的に少なくなってきているように感じます。

―― 物流に対する課題認識について教えてください。
  物流に対する課題認識ということですが、弊社の場合、お客様からご注文いただいた商品の納品業務は、基本営業担当者がお客様へ自社配達により納品しています。軒数の割合からいくとまだまだ(自社配達が)多いですね。
  ただ、お客様によっては、商業施設内の店舗や大型店様で、1つの店舗の中に沢山のスタッフがいらっしゃる場合に、1回の納品量が多い場合や商業施設に商品を抱えてお持ちし難い店舗の場合は、配送を外注に依頼し納品しています。
  数年前と比べると、人手の問題などもあって、独立される時の店舗の規模は1人もしくは2人で開店されるようなお客様が多くなってきています。以前は著名なタレントさんがTVドラマ等で美容師役をやっていて、なりたい職業の上位に美容師の職業が入っていて、美容師になりたい人がすごく多かったのですが、その後、美容師の成り手の数が減少していって、離職率の問題もあり慢性的な人手不足が業界の大きな課題となっています。
  さらに、お店の規模が全般的に小規模になってきているので、お客様からの商品の発注量が小口になってくるので、物流アウトソーシングをする規模を考えた時に、経費とのバランスを考えながら組み立てていかないといけないという所があります。
  基本、営業がルートを組んで週に1回訪問させてもらいながら、営業のご案内をさせていただくなど、自社配送で商品を納品している状況です。

――営業の方が顧客を廻られているということですが、その場合は御用聞きや新商品情報をお伝えするために訪問していますか。
  基本は自社配送がメインなので、納品業務と合わせてお伺いさせていただく時に、新製品の案内やプロモーション、資料などを準備して訪問しています。
  登録上、全国に25万軒以上の美容サロン様があります。ただし、規模的には平均1店舗あたり従業員2人前後の規模です。法人経営のサロンでは数百人雇用されているお店も全国にあるのですが、本当に超大型店というのは、25万軒の中でごく一部で、あとは1人、2人で運営されている規模のサロン様が圧倒的に多い業界です。
  どうしても経営者の方が仕事やサロンワークをされながら経営されている場合が多いので、弊社の営業がお伺いした時に、サロンのお客様の対応に経営者の方が入られていると、日中時間を割いてお伝えすることができない場合もあります。
  以前は、お店の営業時間が終わってからミーティングや、業界的には臨店講習という呼称なのですが、お店の経営者の方との打合せ、スタッフの方へ、新製品の体験をしてもらうなどの機会も多かったです。

――営業のアプローチ方法はいくつかあると思いますが、その中でSNS等を利用した情報発信はされていますか。
  ホームページの活用やLINE登録頂いたお客様への情報発信を行っております。

――配達の頻度としては1店舗に対して1週間に1回位訪問するという形ですか。
  基本的には週に1度、ルート営業の中で訪問させて頂いております。

――1日何軒ぐらい回られていますか。
  平均すると15軒前後です。
  1人あたりの担当するお店の数は、少ない人は60軒ぐらいで、経験を積んでいくと、1人で80軒から90軒近くを担当していくようになります。大型店などは、経験が必要なので、経験の少ない若手メンバーは最初、個人店の先生方が経営されるお店を担当させて頂いて、社会勉強も含めて、経験を重ねていく場合が多いです。

――1軒あたり商品1本単位で配達しているのですか。
  私たちの同業他社(美容ディーラー)というのは、地域ごとに結構あって、大型店だけではなくて、お一人で自宅の一室で営業されている美容室も沢山あるのですが、そういう規模のお店でも同業他社が平均3社ぐらい入っている場合が多いです。
  そうすると、主で取引いただいているサロンでも月単位の発注量を小口で納品という場合があって、カラー剤1本、シャンプー1本からでも、納品にお伺いするような機会があります。

――現在オークボ様でどれくらいのアイテムを管理されているのでしょうか。
  取扱い商品数は3,000品以上あると思います。

―― 物流に対する貴社または業界での取り組み事例について教えてください。
  サカタウエアハウス様が理美容業界のメーカー様と構築されているように、各メーカー様から弊社のような代理店への物流では、メーカーごとに配送していたものを、配送の効率化に向けて、サカタウエアハウス様が共同物流を構築していこうとしていることは、大きな変化だと思いますし、2024年問題や、これから人手不足の問題、エコ対応を考えた時に、理美容業界が横のつながりを持つことにより、改革出来ることは沢山あるのではないかと感じます。

―― DX、ECに関連したサービスや取り組み事例について教えてください。
  DXに関しては、まだまだ業界的には他の業種・業界と比べると遅れているのではないかと思います。
  ECに関しては、サロンの担当者の方から勧められたヘアケア剤をお客様がホームケア用品として購入される場合が多いのですが、来店周期の間に使用されている商品が無くなった場合、近年ECサイトからの商品購入が定着してきています。
  現状、サロン業界のECサイトは、大手メーカーごとのサイトやサロン様ごとのサイト等が構築されておりますが、一般大手のアマゾンや楽天サイトと比較されると商品アイテム数やポイント還元等、消費者(お客様)目線でまだまだ改善の余地はあると思いますし、美容業界全体のECプラットホームに各社が紐づければ大きなEC市場が創れる可能性があると思います。

―― 今導入しているECが、これから活性化していく状況でしょうか。
  元々、理美容業界のお客様の売上というのは、カット、カラー、パーマなどお店でサービスを受けて支払われる金額の売上が圧倒的に多く、お客様がホームケア商品を買われる売上は、平均的に売上全体の10%ぐらいなのです。
  これから少子化、高齢化がもっと加速していく中で、客数の増加により売上を上げていくということが難しくなってくるのでお店での技術売上に、ホームケア、物販の売上げを上げていく、プラスアルファの価値提供をしていく、そこに対しての変化は強く出始めているので、ECはこれから一層活性化していくと思います。

―― 環境の変化に対応するために、準備されていることはありますか。
  これについては、しっかり個々のお客様の課題をどのようにサポートしていけるのかが問われていると感じています。
  具体的には、美容サロンは全国で25万軒以上営業されており、これから人口が減っていくのに、軒数はまだ微増傾向です。そのため、必然的に1店舗あたりのお客様の来店数が減少し稼働率が低くなってきていて、このため経営的に厳しいお店様も増えています。
  だからこそ商品ありきではなく一軒一軒のサロン様へどのようにして繁盛のお手伝いを結果として残せていけるのかが私どもの仕事の本質だと思います。サロンへ行かれるお客様数が減少する中で、新しく美に関連するメニュー提案など、まだまだ新しい市場の可能性もあると思います。課題解決に向けて、どう発信していくのか考えながら取り組んでいるところです。
  1件1件、時間がかかりますが、お店に寄り添いながら課題解決をしていく形が弊社の方向性に合っているのかなと考えています。
  お客様への出し方、見せ方について、資料などきちんとフォーマットを共有し、社内で若手の営業マンからベテランまで誰でも使えるような形のコンテンツを作り上げて、進めていきたいと思っています。

――いちから作りあげることは大変だと思いますが、どのように作成しているのですか。
  よく使うテーマとしては、集客方法、売上管理など、スタッフを雇用されているサロン様であればスタッフの育成、場合によっては離職への対応など、お店によって各々問題や課題が違います。
  ただ1年前、ある事例に基づいて、すごくタイムリーに話ができて興味を持ってもらえた内容が、1年も経てば、過去の事例になるので、その辺は日々、お客様の課題に対して、継続的に引き出しの数を増やしていくことが必要だと思います。
  そういった成功事例があった場合は、私たちのお付き合いのあるサロン様であれば、ヒアリングの機会や必要なデータを開示して協力していただけるお客様も多いので、現場での成功事例として、必要なノウハウをアップデートしていけます。

――営業にすごく力を入れられていますね。
  コロナ禍前は、サロンでの営業時間が終わってからミーティングやアポイントを取って、話をしたり、聞かせてもらったりしていて、そういう対面での機会が普通にあったのですが、コロナ禍になってそういう対面での接点が少なくなり、未だに元通りには戻っていない事も多いです。
  サロン様もコロナ禍の中で、営業時間を短縮されていたのが、コロナが明けてからも人手不足の状況や就労時間の問題で短縮時間のまま営業されているサロン様も多いです。
  こういう状況だからこそ”Face to Face”、お客様と顔を合わせて、お客様の課題をお預かりしながら、膝を合わせて課題解決していく、アナログ的な結びつきも大切にしてお客様に寄り添って、お客様へ美容商材を通じた付加価値の提供を継続していきたいと考えています。

――お忙しい中、インタビューにご協力いただき、ありがとうございました。
(聞き手:サカタウエアハウス株式会社 営業開発部)


(C)2024 Yuuzi Suyama & Sakata Warehouse, Inc.

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