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第448号 続・軽トラ運送が熱い(後編)(2020年11月17日発行)

執筆者  長谷川 雅行
(株式会社日通総合研究所 経済研究部 顧問)

 執筆者略歴 ▼
  • 経歴
    • 1948年 生まれ
    • 1972年 早稲田大学第一政治経済学部卒業 日本通運株式会社入社
    • 2006年 株式会社日通総合研究所 常務取締役就任
    • 2009年 同社顧問
    保有資格
    • 中小企業診断士
    • 物流管理士
    • 運行管理者
    • 第1種衛生管理者
    活動領域
    • 日本物流学会理事
    • (社)中小企業診断協会会員
    • 日本ロジスティクス研究会(旧物流技術管理士会)会員
    • 国土交通省「日本海側拠点港形成に関する検討委員会」委員ほか
    • (公社)日本ロジスティクスシステム協会「物流技術管理士資格認定講座」ほか講師
    著書(いずれも共著)
    • 『物流コスト削減の実務』(中央経済社)
    • 『グローバル化と日本経済』(勁草書房)
    • 『ロジスティクス用語辞典』(日経文庫)
    • 『物流戦略策定のシナリオ』(かんき出版)ほか

 

目次

*前号(2020年11月5日発行 第447号)より

4.マッチングサービスの台頭

  今まで述べてきたような、赤帽・ADPに加えて、最近は、荷主と軽トラ運送業者をマッチングするサービスも増えてきた。
  このような「求車求貨システム(国交省の表現による)」は、一般貨物自動車運送事業(貸切トラック)では、Web-KIT・キューソー流通システム・トランコム・トラボックス(五十音順)などがある。
  軽トラに特化して求車求貨システムを全国展開したのは、2020年7月9日第439号「物流スタートアップの動向と課題(前編)」で紹介した、前述のCBcloud社(以下、CB)である。
  そのシステム商品である「PickGo(kは反転文字)」の概要およびCBのビジネスモデルについては、誌面の都合もあるので、当該号を参照されたい。
  CB以外にも、軽トラックに特化したマッチングサービスを展開している事業者もある。また、CBは創業時の「軽トラに特化」から、最近は一般貨物自動車運送(貸切トラック)のマッチングサービスにも進出している。
  それでは、赤帽・ADP・CBの業界シェアは、どのくらいあるのだろうか。「独断と偏見」の誹りを恐れず推計してみる。
  まず赤帽であるが、前回のレポートでは、「同組合のHPによれば、全国で組合員1万名、軽トラック1万2000台」とされているので、3年経過したがほぼ同数と推測する。
  次に、ADP全体の台数は公表されていないが、Amazonの取扱量拡大や、ADP各社HPの保有車両台数、あるいは「丸和運輸機関は1万台確保した」という報道などから推測すると、1日4万台(1台1日100~150個=若葉ネットワークHPから、全体で1日400~600万個。年間250日稼働で10億~15億個。ヤマト運輸がAmazonを配送していた当時は、30%がAmazon商品と言われていた)。
  さらにAFでの組織化を入れれば、Amazon傘下の軽貨物車台数はもっと多いと思われる。
  ただ、AFで朝一番の2時間(最小時間で)働いて、その後は、CBのPickGoで働くという「掛け持ち」もあり得るので、台数が重複カウントの可能性もある。
  最後に、CBのHPでは、全国1万5000台登録と掲出されているが、実働台数ではない。
  ということで、全くの概算・推測であるが、赤帽・ADP・CB合計で7~8万台(前述の国交省統計による軽貨物車27万台の3割弱)というところではなかろうか。3年前は大手と言えば赤帽しかなかったので、この3年で寡占化が進んだと言えよう。
(筆者注:国交省のデータ公表時には、AFはまだ事業化していないが、既存の軽トラ運送業者がAF傘下に入ったと考えれば、3割弱という推定も成り立つ)

5.多様化する軽トラ・バン商売

  これまで、ラストワンマイルを担う軽トラ・軽バンの実態・業界動向を眺めてきたが、冒頭述べたように、軽トラ・軽バンをツールに、さまざまな商売・業態が広がっている。「モノを運ぶ」ということでは共通しており、飲食物の配送などでは垣根がなくなりつつあるので、今後の「軽トラ・軽バン商売」ということで、レポートしたい。

(1)フードトラック

  フードトラックは、第373号でも紹介したように、軽トラ・軽バンを移動キッチンとして、飲食物を販売する業態である。屋根を張り上げて荷台で調理するということから、軽トラックの改装車が多い。
  2020年6月1日の自動車専門誌「ベストカー」HPでは、「フードトラック(キッチンカー)開業まで最短3ヵ月 車両代込み232万円~」という記事が掲載されていた。
  軽トラ・軽バン(改造しやすさから軽トラが多い)を改造して、縁日の屋台のように、タコ焼き・焼きそば・クレープから、本格的なランチまで提供するのが、フードトラック)キッチンカー)である。筆者がよく行くオフィス街などでもランチタイムには見かけ、ビジネスマンやOLが並んでいる。

写真5 フードトラック
(東京都港区。許可を得て撮影)
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  新型コロナウイルス禍でイベントは減ったが、Uber Eats・出前館などのデリバリーと同じように、3密対策の「テイクアウト」の流れのなかで台数は増加傾向にあるという。なかには、客足が減った飲食店からの転業もあると聞く。
  フードトラックを営むためには、まず、飲食営業のため保健所の許可が必要である。要は食中毒等を起こさないための設備基準を満たしているかが問われる。その基準は各保健所(自治体)により違う。 車内の設備基準(給水タンク・排水タンク・3槽シンク・冷凍冷蔵庫・換気扇等)は、改造(特装)車メーカーが詳しい。
  一般に、飲食店を開業するには1000万円以上必要と言われるが、フードトラックなら車体価格+改造費用だけなので、その3分の1ぐらいで始められる。
  フードトラックの起業には、①車両、②出店場所の確保、③ノウハウ(品揃え・仕入れ・調理等)が必要で、開業ガイドブックも多い。
  さらには、開業(出店)場所とフードトラックをマッチングするサービスもあり、株式会社メロウでは2020年4月27日から「フードトラックワン」をスタートさせた。
  このサービスは、定額制のサブスクリプション形式でフードトラックを提供し、保険の対応、場所の確保、開業支援など、あらゆるサポート体制がセットになった日本初のサービスなので、軽トラックがなくても開業できる(全てリースのような経営形態)。
  同社には、トヨタ自動車系のトヨタファイナンシャルサービスなどが構成するファンドが出資している。

(2)軽トラ運送の開業資金

  それでは、前述の赤帽・ADP・CBなどで、軽トラ運送業者として開業する場合はどうだろうか?
  赤帽の場合は傘下の組合で異なるが、組合の会員勧誘HPを見ると25万円(車両持込み)~250万円(車両は赤帽サンバーを新規購入)のようである。
  ADPやCBではリース会社を紹介して、車両をリースで入手後に自分で貨物軽自動車運送事業者の届出をすることになっている。
  CBの例では、キャブバンを4年(48ヵ月)リースで月額31,800円とHPに出ている。なお、事業届出も代行してくれるし、リース車であってもCB社以外に「AF等他社のお仕事も自由に引き受けて頂けます」とされている。
  いずれにせよ、フードトラックでも軽トラ運送でも、開業の垣根は低くなっていることは間違いないし、開業支援サービスをする企業もあるので、「フードトラックをやってみるか」「軽トラ運送をやってみるか」という事業選択の垣根も低くなっているので、「物流」だ「飲食」だと既成概念に囚われることも減ってきたと言えよう。
  昨日まで軽トラ運送をしていたのが、トラックを改装して、今日からフードトラックでランチを作って売るようになるのかも知れない。
  なお、本稿では肝心の収入については、誌面の都合もあって割愛するが、「ドライバー職」(軽トラ運送以外にも、バス・タクシー・長距離トラック・トレーラ・フォークリフト・役員乗用車・福祉有償運送=介護ドライバー等)の収入については、いずれ別のところで紹介したい。

(3)移動販売

  第373号でも紹介したが、軽トラックを活用した移動販売も増えている。ここでは、最近全国展開を終えたオイシックス・ラ・大地の「とくし丸事業」について、簡単に紹介する。
  その名のように、徳島県から事業開始した移動スーパーとくし丸は、沖縄県のスーパー、リウボウストア(那覇市)と提携し、8月にも移動販売を始めることで、47都道府県全てに展開する。
  そのビジネスモデルは、図の通りである。

図 とくし丸事業のしくみ
(出所:とくし丸HP)
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  既に全国120社強のスーパー(図では「地域スーパー」)と提携し、500台以上のとくし丸トラック(写真6。図では「販売パートナー」)が走り回っている。

写真6 とくし丸のトラック
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  販売パートナーの開業までの流れは、とくし丸HPによれば、次の通りである。開業資金・日数等は、フードトラックよりもかかりそうである。
1)応募(問合せ)から採用まで
①とくし丸本部へ連絡
開業希望エリアに該当する地域スーパー店舗がある場合は、提携先スーパーの担当者から連絡がある。
②事業説明・面接
該当エリアのスーパー担当者による事業説明、面接を実施する。
③とくし丸試乗、販売同行
希望者はとくし丸の販売現場に同行し、仕事内容を確認できる。
④採用
採用が決まれば、開業に向けて具体的な準備を進める。
2)開業まで
①契約締結
個人事業主(販売パートナー)と提携先スーパー間での契約となる。内容を確認し納得した上で、正式に契約する。
②車両発注
発注から納車まで約2カ月。早めに車種(オートマ・二駆もしくは四駆)を決める。
③研修開始
目安は、6~7週間。この間、収入がないので、その対策が必要。
主な研修内容は以下の通り。
  a. 販売先需要調査(対象地域を歩き、お客様を開拓)
  b. ルートマップ作成(訪問先を住宅地図にマッピング)
  c. 食品衛生責任者養成講習会(座学1日、必ず受講)
  (筆者注:フードトラックと同様に、保健所の許可が必要)
  d. 備品の準備(冷凍冷蔵庫など販売に必要な各種備品の調達)
  e. レジ研修
  f. 販売先への挨拶回り
④開業
  中小企業診断士である筆者の見立てとしては、粗利17%(仮に、1日1台で20万円売って粗利は3万4千円)で生活費・車両償却費・ガソリン代・保険料等を稼ぎ出そうというのでは、1日当たりの売上高のバーは高いのではないだろうか。
  担当エリアの住民から商品の要望を聞いて、仕入れて売るという「御用聞き」「買い物代行」などで付加価値を高めることも必要であろう。
  「買い物代行」については、CBがドラッグストア各社と軽トラ運送業をマッチングするサービスを開始したが、誌面の都合もあるので、別の機会にご紹介したい。
  図を見れば分かるように、CVSのフランチャイズシステムに近い内容である。違うのは、販売パートナーは、とくし丸本部と契約するのではなく、地域スーパーと商品購入契約を結ぶことである。また、商品は買い取りのため、商品ロスリスクは全て販売パートナーを負担する。
  軽トラによる移動販売には、とくし丸のような組織化されたビジネスモデルや、農家の引き売りがリヤカーから軽トラになったような個人営業まで多種多様である。
  新型コロナウイルスによる新常態で、移動販売のニーズはますます増えるものと思われる。
  また、移動販売ではないが、内食の増加によって食材の配送も増加すると思われる。例えば、静岡市に本社があるヨシケイ開発(ヨシケイ)は、15~30分で調理できる1人300円のミールセット(夕食)を配送料無料で宅配している。不在宅には、予め預けた保冷ボックスに入れていく。配送車はキャリイ(スズキ)の専用特装車で、主婦ドライバーを募集している。

写真7 ヨシケイの食材配送
(48Xナンバーなので冷凍冷蔵車ではない。保冷ボックスで配送)
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  このように、「届ける」という切り口で考えれば、フードトラック・移動販売・食材配送・軽トラ運送の垣根は低くなりつつある。

6.軽トラックの未来

  それでは、今後の軽トラック及び軽トラ運送の展開について、これまた筆者の「独断と偏見」で述べてみたい。
  新型コロナウイルス禍で、小売り・外食・サービスに大きな影響が出ているので、それらの事業者や従業者が、新規に軽トラ・軽バンを活用して起業するケースは増えるのでなかろうか。
  また、高齢化等による買い物弱者の支援などで、移動販売のニーズも増えるものと思われる。
  それらの要因以外に、以下のようなことも想定されよう。

(1)多様化

  軽トラック・軽バンの廉価さや利便性を生かして、ますます車種の多様化が進むと思われる。
  軽トラ・軽バン商売ではないが、キャンピングカー(フードトラック同様に特種(殊)車となる)も増えている。
  千葉県柏市のケイソーという軽トラ運送業者では、昇降可能な荷台を備えるリフトアップ車(軽)を導入して、主に家電や家具の輸送・搬入業務に活用する予定である。
  同社では、軽を含む配送車にAED(Automated External Defibrillator。自動体外式除細動器)を搭載して、企業やイベント会場など人の集まる多様な場所へ配備している。また、搭載車両を運転するドライバーは全員AED講習を受けている。
  筆者が住むマンションでも管理事務所にAEDを配備(リース)している。イザという時に作動しないのでは人命に関わるので、高品質品かつ定期的な点検が必要であり、年間維持費もかかる。同社のAED搭載には、CSRやSDGsという点からも感心している。
  リフトアップ車ではないが、電話工事用のクレーン車(スズキ「キャリイ」の特装車)
を見かけたことがある。軽クレーン車なら狭い道路にも入って行くことができるという利点があるのだろう。一方で、クレーン等の器材自体が重量物なので、350kgという積載制限が心配になる。

写真8 NTT東日本の電話工事用クレーン車
(48Xナンバーなので冷凍冷蔵車ではない。保冷ボックスで配送)
*画像をClickすると拡大画像が見られます。


  また、電器店では大型冷蔵庫の配送などに、テールゲートリフトを架装した軽トラックを使用しているのを見掛ける。
  テールゲートリフト専業メーカーである日本リフト社のHPを見ると、軽自動車向けテールゲートリフトは、展開時、幅1275mm×奥行600mmの折り畳み式プレートで、リフト能力は200kg、製品重量は約75kgとなっている。「収穫した農作物、農機具、ドラム缶、家電製品の搬入など、多様な荷役作業に対応できるとのことである。
前述の福祉有償運送では、車椅子ごとリヤゲートから載せられる軽バンも多い。ホンダN-BOXでは、スロープが床面収納となっていて、車いすを載せない場合は平らな床で、通常のバン車として使用できる。
  このように、フードトラックに始まり、キャンピングカー・荷台リフトアップ車・テールゲートリフト車・クレーン車・車いす仕様など、ユーザーのニーズにより特種(殊)軽自動車もますます多様化するであろう。
  軽トラ運送業者としても、荷主ニーズ応じた車種の多様化も検討したい。
  行政の側も規制緩和すれば、宅配と福祉有償運送(車いす)という、貨客混載ではないが「貨客両用」が可能となり、過疎地などでは1台の軽バンを有効活用できると思う。

(2)EV化

  第二には、最近言われているCASEへの対応である。
  トヨタ自動車のHPによれば、
①Conented(コネクティッド)、
②Autonomous/Automated(自動化)
③Shared(シェアリング)
④Electric(電動化)
の新しい4領域で技術革新が進むとされている。自動車業界や物流業界の方はご存知の内容なので、誌面の都合で詳しい説明は省略する。
  軽自動車も衝突被害軽減ブレーキなど、②の自動化に取り組んできた。2-(1)で述べたように、ホンダの軽トラ撤退の一因は「②対応が困難」とも言われている。
  ちなみに、③のシェアリングは、筆者も「所有から使用へ」とマイカーを処分して、タイムズプラスの会員として利用している。ところが、③の最近の動向は、新型コロナ感染の恐れから、ややスピードダウンしているようだ。
  難しいのが④のE(電動化)である。元々、重量制限の厳しい軽自動車に、さらにバッテリーとモーターを積む(HV車の場合)と、肝心の貨物積載量が減ってしまう。
  軽トラに残された2強(スズキ・ダイハツ)にとっても、電動化は難しいところである。
  ところが、EVメーカーのテスラの時価総額がトヨタ自動車を上回ったり、電動3輪バイクがマクドナルド等で導入され始めた。
  さらには、三菱ふそうトラック・バスの小型EVトラック「eキャンター」の販売実績が、グローバルで150台を達成した。航続距離は約100kmで、都心部における近距離配送にトラック運送業者・流通業社では導入している。
  ぼつぼつ「軽では電動化はムリ」とも言っていられない情勢となってきた。既に軽乗用車では、2010年に三菱ミーブでEV(i-MiEV)も発売された(その後2018年に、同車は車長を延ばして登録車になってしまった)。
  また、最近では、ヤマト運輸・佐川急便・日本郵便の3社が同じく三菱製軽EVバン「ミニキャブMiEV」のテスト導入を開始し、台数も増加しつつある。現在は、宅配便という比較的軽い貨物に限定されているようだが、いずれ軽トラックにも広がってくるものと思われる。
  参考までに同車のスペックは、車体が3395(L)×1475(W)×1915(H)、荷室が1830(L)×1370(W)×1230(H)、車両重量1100kg(2シーター。母体のミニキャブバンは870kg)、最大積載量350kg、1回の充電走行距離150kmとなっており、都市内配送であれば実用上問題ないと思われる。
  軽トラックメーカーも開発を進めているし、テスラのように、全くの異業種(例えばITや電機など)からの参入もあり得る。電動3輪バイクでは、既存のバイクメーカー以外からの参入が起こっている。

写真9 日本郵便の三菱自動車製軽EVバン
*画像をClickすると拡大画像が見られます。

(3)軽自動車規格の見直し

  第三に、軽自動車規格(第372号で詳述)の見直しである。
  現在の規格は1998年秋つまり18年前に拡大されたものである。その後の安全技術、自動車のCASE化等の進展は著しい。
  軽トラが緑ナンバートラックの2割を占めるようになり、ラストマイルを担って、国民生活を支えている今日、再度、軽自動車の規格を検討し直す時代に来ているのではなかろうか。
  乗用車の車名別販売実績を見ていると、「軽乗用車ばかり売れて、(小型・普通)乗用車が売れない」との嘆き節が聞こえてくるが、トヨタ・日産ですらOEMで軽乗用車を売る時代である。
  (2)で述べたように電動化が進むと、重量の増加やコストアップになってしまうという心配がある。
  コストアップについては現在のEV同様に、ある程度の市場が形成されるまでは補助金が必要となろう。
  重量増加に対しては、規格の拡大が必要となろう。規格改正後の18年の間に、軽自動車の最大のメリットであった税制が改正され、軽自動車ユーザーにとっては増税になっている。
  軽自動車税の増税に対する還元、ゼロ・エミッション化などを踏まえて、次の10年~20年先を見通した軽自動車規格の見直しを求めたい。
  おそらくは、フードトラック・移動販売・宅配などの事業者・ドライバーは、「もうちょっと積めたらナア」と思っているに違いない。それは、収益はもちろんのことだが、お届け先が喜ぶことが、規格見直しの最大のメリットであろう。

(4)ドライバーの労働環境の確保

  最後に、ドライバーの労働環境の確保が何より重要である。第372・373号で述べたように、軽トラ運送のドライバーは、その多くが個人事業主(一人親方)で、労働基準法や改善基準告示、最低賃金法などが適用されない。また、国土交通省も一般貨物自動車運送事業の管理監督だけで手一杯で、貨物軽自動車運送事業の監査指導は行っていない。
  死亡事故等の重大交通事故が発生したときに、警察が事故原因を探るくらいである。
  松本CBcloud社長が、2019年6月20日付のGEMBA「インタビュー記事」に答えているように、軽トラ運送のドライバーは過酷な労働環境下で働いている(それが、同社がPickGoを開発した切っ掛け)。
  筆者も、軽トラ運送を含め、ドライバーの労働環境(長時間労働・低賃金等)を改善しなければ、安定的な輸送サービスの供給は難しくなると思っている一人である。
  この問題については、厚労省・国交省も注目しており、現在、労働基準法の時間外労働の上限規制に伴って、改正が進められている改善基準告示と併せて、軽トラ運送のドライバーについても何らかの規制がなされるのではないかと、筆者は想定している。
  既に、同じような一人親方である建設業については、検討が進んでおり、物流分野でも「ホワイト物流推進運動」のなかで、荷主と物流事業者が協力した取り組みが求められている。
  軽トラ・軽バンは、本稿で紹介したように、フードトラック・移動販売・宅配など様々なスタイルで、外食・小売り・宅配の垣根を越えて消費者へのラストマイルを担っている。
  さらなる軽トラ・軽バンの改良と、関係者(事業者・ドライバー)の発展や、新たな事業の展開を期待したい。

(2020年7月12日記)
以上


  
【参考資料】

  • 本稿に記載した各社・団体・省庁のホームページ等
  • 総務省・国土交通省・経済産業省・環境省・厚生労働省・(一社)全国軽自動車協会連合会の統計資料やマニュアル、ガイドライン等
  • モーターファン別冊「2020年軽自動車のすべて」(2020.4.6)
  • ロジスティクス・レビュー第372号・373号「軽トラが熱い」(2017.9)


(C)2020 Masayuki Hasegawa & Sakata Warehouse, Inc.

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