第300号 輸・配送システムのあれこれ!(2)(2014年9月16日発行)
執筆者 | 髙野 潔 (有限会社KRS物流システム研究所 取締役社長) |
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執筆者略歴 ▼
目次
1.はじめに
今や、国民生活、経済活動には、不可欠なトラック輸・配送ですが、日本の経済構造改革が重要視されるなかで、そのシステムの再構築や高度化に関心が高まっています。
なかでも、物流の効率化は荷主企業、物流企業の双方にとって重点課題であり、政府の基本政策のひとつとなった「総合物流施策大綱」でも、国家的な課題と位置づけられています。
物流効率化の道筋は、道路や港湾、物流拠点などインフラの整備を含むハードと、規制緩和などの施策やさまざまな効率化システムの導入が必要とされています。
物流の効率化は、物流コスト低減などの経済効果があると同時に、地球温暖化防止など環境面への効果が併せて注目されています。
日本の高コスト構造の是正と同時に、地球環境保全策として、輸・配送の位置づけはさらに大きくなってきています。
そして、物流効率化のためのIT技術は、情報通信技術の急速な進歩によって対象分野が拡大され、物流関連システムの開発とともに導入の動きが活発になってきました。
将来的には、ITS(高度道路交通システム)の実用範囲の広がりとともに、より高度なものへと発展する可能性が膨らんでいます。
輸・配送効率化システムを構成するうえで、核になると思われる主なツールとして移動体通信手段(携帯電話、スマ-トホン、クラウド、自動車用無線、etc)などをベースに、GPSによる位置確認システム、路上ビーコン(道路上に設置されたビーコンから電波や赤外線を発し、渋滞、通行止め、所要時間などの情報を発信します。)などを活用、ITによるデータ処理はもちろん、車両に搭載されるITや各種センサ-、端末機器で構成されていくものと思われます。
物流業務の中で、輸・配送業務は、物流コストウェイト(構成比50~60%)が高く、経営的にも輸・配送コストの削減やCO2排出量低減によるグリーン物流への寄与、管理面では、荷主に対するCS向上に加え、厳しくなる道路交通法への対応など、重要な位置を占める輸・配送業務は、全ての企業にとって大きな課題となっています。
2.ルート配送とは
1台のトラックが複数の納品先を回る場合、あらかじめ配送ルート(配送順と道筋)を決めておく方法、これにより効率的で安定した配送が可能になります。
効率的な物流システムを実現させるために顧客納品の詰めの部分といえる高いサービス性、品質・精度、ローコストで配送を運行管理することが求められています。
ルート配送には、固定ダイヤグラムと変動ダイヤグラムと言うシステムがあります。
1)固定ダイヤグラムシステム(定時定ルート配送)
事前に配送順序を決めて配送ルートを固定しておく方法です。
2)変動ダイヤグラムシステム
配送のたびに顧客別の納入量や交通情報などを判断して、配送効率が最大になるようにルートを設定する方法です。
配送・配車計画(配送スケジューリング)は、積載率を高め、走行時間や走行距離、車両台数を最小化するための計画です。
最適な配送ルートと配車・配送条件(到着順位、到着時間、車種制限など)と配送ル-ト(積載能力、ドライバーの運行時間、荷卸時間、検品時間、陳列時間など)を考慮して移動時間を計算、最適な配送ルートと配車を行うことです。
配送・配車計画の主な手順は、事前に商品、容器(通い箱、カゴ車、パレット)、車両規模(L・W・H)などを用いて積載量計算(容積計算と質量計算)を行い、車種毎に容器の最大積載量(出荷量)を求め、必要配送車両台数を算出します。
配送コースの設定(ルート計算)は、移動時間、移動所要時間、及び納品作業時間を含めて行います。
ルートにおける配送順序は、近くから順次配送する往路納品、遠くからの復路納品、行きも帰りも納品を行う往復納品の3タイプがあります。
配車計画は、配送ルートが決定したら車両手配、配車確認で配車計画が完成します。
配送スケジュールでは、積み込みリスト、運行計画表、メモリーカード(車載端末用)などを作成します。
3.配送リアルタイム運行管理システム
運行管理システムは、得意先、荷主ニーズの高度化、サービス・品質、規制緩和と安全強化、地球環境保全の要請(排出ガス規制)などに対応するために導入されます。
運行管理システムの概要は、車両に車載端末、デジタコ(デジタル式運行記録計:速度、時間、距離)、各種センサ-(速度、温度など)、GPS装置などを装着し、車両内で発生するデータと拠点(営業所・倉庫)とのデータの送受信を行います。
一般的に送信されるデータは、車両位置(GPS,PHS)、車両状況(速度、温度、空車、実車、待機、休憩、荷おろし、荷積み)と運行指示(配送スケジュール変更、集荷指示)や運行完了(配達、集荷)、荷物追跡、動態情報などのやり取りがあります。
拠点から車両に送信する情報は、運行変更や集荷指示のデータなどがあります。
車両からの受信データに基づき、クライアントサーバーでは、車両管理、運行実績管理、ドライバー管理、安全運転管理などを行います。
車載端末の運行記録から運転日報が作成され、ドライバーは事務処理から開放され、運行記録から輸配送回数、走行キロ、燃費、安全運転などが分析できるようになり、「見える物流、追跡する物流」が可能になります。
4.自動配車・動的配車計画
輸送はこれまで「公共空間を移動」するため、監視や管理に限界があり、またIT活用も限定されていましたが、通信技術の進展とともに、輸送におけるIT(情報技術)の活用は急速に高度化してきています。
IT(情報技術)による自動配車で必要車両台数を最少化し、輸・配送コストの削減が可能となります。
独自ノウハウで統計処理されたVICS交通情報を利用し、渋滞状況を考慮した最適なコース設定や所要時間の策定をより高精度に行うことができます。
配送先の増減や納品先条件の変更にともなう配送ルートの見直しにもシミュレータとして活用することができます。
輸・配送活動の効率化に向けては、出発前までに配送ルートをすべて決定する従来の配車計画を発展させ、移動中の道路・交通事情、納品先事情(納品時間、etc)を含めて配車効率の実現を狙ったシステムが動的配車です。
5.運行支援システムが進んでいます
人、車両(IT)、道路が三位一体となった運行支援システムが進んでいます。
次世代の輸送インフラ!として、ドライバーの運転技術の挌付けが検討されています。
運行データをクラウドサービスで管理・分析し、環境性や安全性の視点でドライバーの運転技術を全国レベルで評価するサービスです。
自社のドライバーの運転技術を全国レベルで確認しながら、各ドライバーのレベルに応じて、よりエコで安全な運転に向けた指導や育成をきめ細かく行い、ドライバーの技術向上、および意識改革につなげていくことを目論んでいます。
ドライバーの運転技術を支援するインフラを少し紹介してみます。
人、車両、道路を最先端の情報通信技術(ネットワーク化)を駆使して、交通事故、渋滞、道路交通上の問題を即時に情報支援する交通システムがあります。
渋滞情報、所要時間、道路規制、事故情報、工事情報、直近のサービスエリア、パーキングエリアの案内、混雑状況のお知らせなど、ナビゲーションで走行中に情報を提供する道路交通情報通信システム(VICS)が進化しています。
さらに、自動料金収受システム(ETC)の普及で料金所の渋滞緩和、キャシュレス化が進み、ETCを搭載していない車は、高速道路では肩身の狭い思いをしています。
また、ドライバーの安全運転を支援する技術には、走行時の安全性を高め、危険回避で事故を未然に防ぎ、ドライバーにも危険予知を認知させる技術が普及しはじめました。
事故のパターン(死亡、負傷、損害)別に分析、事前に事象を察知して、事故防止に繋げるサービスなどの提供が活発になっています。
例えば、TVなどでよく見かけますが、前方障害物衝突防止、カーブ進入危険防止、車線逸脱防止、出会い頭衝突防止、右折衝突防止、横断歩道での危険察知、歩行者衝突危険防止、路面危険察知、車間距離保持などが普及しはじめています。
6.最後に
物流の効率化は、物流企業、荷主企業にとっても重点課題であり、物流コストの低減などの経済効果と同時に、地球温暖化防止など環境面への効果が東日本大震災以後、益々注目されてきています。
日本の高コスト構造の是正と同時に、地球環境保全策として、その位置づけはさらに大きくなって来るものと思われます。
物流効率化のためのIT技術は、情報通信技術の急速な進展によって対象分野が拡大、各種の物流関連システムの開発とともに導入の動きが活発になってきています。
将来的には、ITS(高度道路交通システム)の実用範囲の広がりと、より高度なものへと発展する可能性が膨らんでいます。
物流効率化システムを構成するうえで、核になると思われる物流関連システムのツールとして、移動体通信手段(携帯電話、スマ-トホン、クラウド、PHS、自動車用無線など)をベースに、GPS衛星による位置確認システム、路上ビーコンなどを活用、コンピュータによるデータ処理はもちろん、車両に搭載されるコンピュータ各種のセンサ-や端末機器で輸・配送業務が成り立つ時代になると思われます。
さらに、車両を提供する自動車(トラック)メーカー各社も輸・配送の効率化システムの開発に着手、すでに商品化されているものも少なくありません。
上記のように輸・配送業務を取り巻く環境は、物流業務のコストウェイトの占める割合、安全・環境対策から推測しても急速に様変わりしていくものと思われます。
先進的な輸・配送システムの構築に際しては、心して欲しいのは、効率化だけではない、安全(片荷、重量、積み付け、etc)と人が介在するドライバーの思い(要望事項)を基本に、人(ドライバー)を優先したハード(トラック、物、端末)とIT(情報技術)の三位一体で機能するような開発を望みたいものです。
以上
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