ロジスティクス・レビュー

第449号 コロナ禍後の厳しい時代の物流のあれこれを考える。(前編)(2020年12月10日発行)

執筆者 髙野 潔
(有限会社KRS物流システム研究所 取締役社長)
    執筆者略歴 ▼

  • 職歴・履歴
    • 神奈川流通サービス協同組合・物流システム研究所所長(5年間)
    • 株式会社湘南エスディ-・物流顧問(5年間)
    • 株式会社カサイ経営・客員研究員(7年間)
    • 物流学会・正会員(8年間)
    • 物流学会・ロジ懇話会事務局(5年間)
    • 日本情報システムユーザー協会・個人正会員(JUAS-ISC)(9年間)
    • 日本情報システムコンサルタント協会(JISCA:東商会員)正会員・理事(平成25年~)
    委嘱(受託)・履歴
    • 通産省(現・経済産業省) 荷姿分科会委員・委嘱(1年間)
    • 運輸省(現・国土交通省)輸送分科会委員・委嘱(1年間)
    • 中小企業基盤整備機構  物流効率化アドバイザー・委嘱(8年間)
    • 中小企業ベンチャー総合支援センター 新事業開拓支援専門員・委嘱(6年間)
    • 中小企業基盤整備機構  企業連携支援アドバイザー・委嘱(6年間)
    • 中小企業大学校(関西校) 非常勤講師・委嘱(4年間)
    • 海外技術者研修協会 [AOTS]関西研修センター 非常勤講師・委嘱(2年間)
    • 座間市観光協会・事務局長(2年間)
    • 座間市・都市計画審議会委員(2年間)
    著書・講師・履歴
    • 日本のロジスティクス (共著:日本ロジスティクスシステム協会)
    • 物流共同化実践マニアル (共著:日本ロジスティクスシステム協会・日本能率協会)
    • 図解 なるほど!これでわかった よくわかるこれからの物流 (共著:同文館)
    • 雑誌掲載:配送効率化・共同物流で大手に対抗(日経情報ストラテジー)
    • 雑誌掲載:情報化相談室回答担当者(日経情報ストラテジー)
    • 雑誌掲載:卸の物流協業化・KRS共同物流センター事業(流通ネットワーキング)
    • 雑誌掲載:現場が求めるリテールサポート・ドラックストア-編(流通ネットワーキング)
    • その他 :執筆実績多数
    • 講師(セミナー、人材育成、物流教育・etc):実績多数

目次

1.はじめに・・・。

  コロナ禍時代の内閣府の発表によると2020年4~6月期の景況判断指数(大企業▲47.6、中小企業▲61.1)は過去最低の水準に沈むとのこと、コロナ禍の影響から多くの企業が業績に大きなダメージを受けています。企業には感染予防と新たな売上確保という戦いが課せられ危機を乗り切る新たな経営資源の確保、資金調達とコロナ禍後の社会の変化に合わせたビジネス戦略への転換を迫られ、原材料メーカーや卸売業では、大手企業の減産の影響を受け、受注量や仕入量の確保が深刻となっています。こうした問題を克服する経営資源の取り込みや市場の積極的な開拓を行う企業が増えてきています。またAI、ビックデータ、IOTといった技術革新が注目される昨今、これからは、中小企業単独では生き残れない場面が増えることが予想され、生き残りをかけて技術の導入やビジネスモデルの転換で業容拡大を進める企業も増えてきています。一方、中小企業として優秀な人材の中途採用を試みても資金の豊富な大手企業に採用される傾向が強く、必要な人材の確保が進まず、既存の社員を時間をかけてでも自社の経営方針に沿った人材として育てる取り組みが必要になってきています。そして、物流分野に携わる企業の売り上げの確保としての「営業マンの育成」、「物流の新分野、マルチ事業への取り組み」など、このコロナ禍後の厳しい時代の物流企業の活躍の場のあれこれを考えてみたく思います。(参考1:参照)

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2.日本の物流実務の現状

  日本のこれからの物流は倉庫の自動化・ロボット化などで大きく変わろうとしています。今後、AIの発達により物流業界では、出荷頻度などから導き出されるロケーション設定の自動化、在庫情報を元にした販売戦略の提案など、様々な事業の進め方が変わっていくと思われます。これからの時代も毛利元就の3本の矢の如く、企業が束になり、スケールメリットを発揮、勝負できる事業環境をつくり出し、物流は勿論、商流の変革に対応できるようにしたいものです。物流は、物流拠点(活動の足場)を中心に輸・配送、保管、荷役、包装、流通加工、情報システム、さらに、納品先別仕分けなどの活動が行われています。輸・配送(配送プラットフォーム)を含めた、これらの活動が相互に密接に関連しながら存在し、物流活動が構成されています。近年では、環境汚染対策のためのリサイクルできる包装材を用いたり、繰り返し使える(リターナブル)容器を採用するなどの工夫がなされています。次に輸・配送業務は、物流の中でもコストウェイトの高いトラック、鉄道、船舶、航空機などの様々な輸・配送手段を使っての製品、商品を運ぶ作業を行います。そして、環境負荷低減のために最も燃料効率が高い輸・配送手段を選ぶことなどの工夫を行っています。さらに、物流実務を効率的に遂行するためにIT化が進んでいます。コンピューターや通信回線を使うことによって輸・配送中の荷物がどこにあるか、経路・温度・湿度などの輸・配送状況を確認・記録したりしています。これらの輸・配送記録は日々蓄積され、そのデータはより効率的な輸・配送経路や輸・配送環境の策定に役立てられています。物流企業は、これらの工程を請け負うことで日々顧客の要望に応える努力をしています。

3.コロナ禍のこの機会に社会インフラとしての企業基盤を確立したい。

  コロナ対策で社会活動を自粛、老若男女が家に巣ごもり、繁華街、職場から人が消えました。巣ごもりしている人達は、生きていく為に最低限の必要な食料品、医薬品、日用雑貨品などを購入し消費しています。この様な消費活動の中で生活消費財を扱う企業は売上アップ、その他の企業は大幅な売上げダウンとのこと、コロナ禍による非常事態宣言で工場を停止させざるを得ないという事情もありますが需要そのものの減少が原因のようです。一方、物流業界では、コロナ禍商品、巣ごもり商品、ネット通販などの荷動きが大幅にアップ、コロナ禍により社会の経済活動が激変する中で物流は社会インフラとして国民の生活を支えています。さらに、非常事態宣言による行動の自粛で学校が休校、在宅勤務が増え、仕事帰りの一杯、家族との外食などが無くなり、学校給食、飲食店、レストランなどへの食材の供給が減少してしまい、その代わりに家食の食材の購入でスーパー、コンビニなどが賑わい、製配販の荷物の取り扱い作業は昼夜共に超多忙、このコロナ禍の中で、製配販は、コロナ感染防止対策、安心・安全対策に腐心していました。このような状況下で製配販の一部で万が一感染者が出た場合、製配販の閉鎖で消費者への供給ができず、社会生活に大きな混乱を与えることのないよう努力していました。これまでの製配販の中小物流事業者は日々、業務を確実にこなす事(指示された事を確実に行う)に専念し、物流改革に取り組んできませんでした。その結果、現状の物流業務には沢山のムダや課題(生産性、品質、安全、コスト、雇用問題)を抱えていました。コロナ禍の中、物流が果たす役割の重要性が見直されているこの機会にコロナ終息後を見据えた新しい生活基盤を物流改革に取り入れる事が避けられません。また、日本の労働人口は減少し、物流従事者は、ますます雇用困難に陥るとみています。今回のコロナ感染症、いつ発生するか分からない自然災害(地震、津波、台風)などへの対応策として、この機会に企業の業務再編、M&A、物流業務の自立化などで生き残り策と社会インフラとしての安全・安心が担保できる業務再編、企業基盤を緊急性をもって確立したいものです。

4.新たなビジネスモデルで経営資源の拡大を考える。

  私が商物分離で物流システム(仕組み)の構築と強化のお手伝いを経験した卸企業で強く感じたことがあります。中小企業を成長させるカギは、商流の充実と営業マンの活動が一番と感じていました。勿論、経営理念、理想のあるべき姿、経営目標、全体戦略、個別戦術、具体的計画、実際の行動が重要なことは百も承知しています。中小企業の戦略責任は全ての方針を立てた社長にありますが商物分離はこれらを実行する主役である社員一人一人に実施責任が伴います。そこで、営業、物流の役割を明確にして情報システムと連動した営業力の強さ、物流サービスの向上、及び効率化を図ることが重要です。中小企業である卸業や自社製品を持っているメーカーを除く物流事業者は特に大手の下請けに甘んじている企業が多く、コスト、納期、品質を満足していれば、それで良しとの現実があります。これからの物流事業は提供するサービス以上に頼られる企業、期
待される企業になりたいものです。中小企業にも100年に一度と言われる変革の時代が訪れようとしています。そこで、それぞれの企業の強い商圏に各社の物流部門を集約、同業種・異業種を問わず、経済性を享受できる規模の範囲で顧客密度の高い商圏に物流拠点を構え、物流現場、配送業務などの生産性向上、利益を生み出す業務改善に取り組み経営資源の強みを発揮し、競合相手の物流企業を凌駕する物流水準を確保していきたいものです。(参考2、3:参照)

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  そして、その商圏での営業力の強化(売上アップ)で中小企業の基盤強化と自立化する環境を整え、この未曽有のコロナ禍の変革の時代に中小企業同士が力を合わて業容拡大に乗り出す共同・協業化拠点を構え、運営体制の一本化で地区毎の拠点「商物分離(DC事業)、横持ち(TC事業)、ラストワンマイル(宅配事業)、人材育成(教育事業)」の多様化の成長戦略を基本にビジネスモデルをつくり出し、経営資源の拡大を実践したいものです。(参考4、5:参照)

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  さらに、参加企業の強い都道府県毎の商圏に進出、横展開で業容拡大(売上アップ)に繋げ、トータル的な事業規模の拡大を目指したいものです。企業を成長させる大前提として商物分離で参加企業の物流作業の負担軽減、商流の強化で少子・高齢化社会やコロナショック後のマイナス成長を克服するカギにしたい。中小企業の成長のキーポイントは、スピード感と力強い「物流力・営業力(売上アップ)」の発揮と考えます。そして、「物流部門」の「連携・協業」で「物流は任した、任せろ」で従来の慣習、組織の壁を越えるために各社の得意技を持ち寄り物流部門の「共同事業体」としての「ワンチーム」になり、共同・協業物流を支え、この変革の時代の中小企業の生き残りと成長に繋げたいものです。さらに、経営と営業は競争、物流は共存共栄で各社が頑張れる土俵と環境、実務に精通した人材づくりを行い、中小企業の成長の場をつくり出したいモノです。

※後編(次号)へつづく


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