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ロジスティクス

第443号 物流拠点(物流センター)のあれこれ(前編)(2020年9月3日発行)

執筆者  髙野 潔
(有限会社KRS物流システム研究所 取締役社長)

 執筆者略歴 ▼
  • 職歴・履歴
    • 日産自動車株式会社(33年間)
    • (出向)株式会社バンテック(7年間)
    • (起業)有限会社KRS物流システム研究所(平成11年~)
    組織・履歴
    • 神奈川流通サービス協同組合・物流システム研究所所長(5年間)
    • 株式会社湘南エスディ-・物流顧問(5年間)
    • 株式会社カサイ経営・客員研究員(7年間)
    • 物流学会・正会員(8年間)
    • 物流学会・ロジ懇話会事務局(5年間)
    • 日本情報システムユーザー協会・個人正会員(JUAS-ISC)(9年間)
    • 日本情報システムコンサルタント協会(JISCA:東商会員)正会員・理事(平成25年~)
    委嘱(受託)・履歴
    • 通産省(現・経済産業省) 荷姿分科会委員・委嘱(1年間)
    • 運輸省(現・国土交通省)輸送分科会委員・委嘱(1年間)
    • 中小企業基盤整備機構  物流効率化アドバイザー・委嘱(8年間)
    • 中小企業ベンチャー総合支援センター 新事業開拓支援専門員・委嘱(6年間)
    • 中小企業基盤整備機構  企業連携支援アドバイザー・委嘱(6年間)
    • 中小企業大学校(関西校) 非常勤講師・委嘱(4年間)
    • 海外技術者研修協会 [AOTS]関西研修センター 非常勤講師・委嘱(2年間)
    • 座間市観光協会・事務局長(2年間)
    • 座間市・都市計画審議会委員(2年間)
    著書・講師・履歴
    • 日本のロジスティクス (共著:日本ロジスティクスシステム協会)
    • 物流共同化実践マニアル (共著:日本ロジスティクスシステム協会・日本能率協会)
    • 図解 なるほど!これでわかった よくわかるこれからの物流 (共著:同文館)
    • 雑誌掲載:配送効率化・共同物流で大手に対抗(日経情報ストラテジー)
    • 雑誌掲載:情報化相談室回答担当者(日経情報ストラテジー)
    • 雑誌掲載:卸の物流協業化・KRS共同物流センター事業(流通ネットワーキング)
    • 雑誌掲載:現場が求めるリテールサポート・ドラックストア-編(流通ネットワーキング)
    • その他  :執筆実績多数
    • 講師(セミナー、人材育成、物流教育・etc):実績多数

 

目次

1.はじめに・・・。

  従来の物流拠点(物流センター)は、荷捌きや荷物の積み下ろしなど、荷物を保管したり、仮置きするための場所が物流拠点でしたが、現在は大手企業が主流としているサプライチェーンのための物流拠点、あらかじめ在庫を抱える必要性の高い調達物流拠点、複数の仕入先からの納品を集約、店舗単位に配送コースをまとめて商品を納品する一括納品拠点などがあります。さらに、次世代型(高度化)の高度なマテハン、情報システムを備えた物流拠点、人手不足を補う自動化(無人化・半自動化)で業務を迅速に正確に無駄なく行い、物流全体のプロセスを最適化する次世代型物流拠点、どんどん需要が伸びているEC物流拠点、それぞれの物流拠点に戦略的な物流機能が必要とされています。
  これからの物流拠点はどのようなタイプでも市場への商品の供給を円滑に行う条件を背負っており、「納期、品質・精度、コスト」を達成するために追求する戦略的な物流拠点が必要とされています。そこで、物流拠点における配置、目的、保管の仕組み、新技術、物流拠点の在り方、配送コストの負担軽減などを考えてみる機会にしたいと思います。

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2.物流拠点の配置場所は、物流の重要事項

  「顧客への納期を守るため」「物流コストを下げるため」が重要なポイントですが、物流費の中でコストウェートの高い配送コストをいかに下げるかを意識すると、どこに設置するかが、さらに重要になってきます。特に販売物流などでは、同業他社との競合に打ち勝つための「納期遵守、コスト競争力」が担える物流拠点の最善・最適な配置場所を第一義として取り組みたいものです。さらに、メインの顧客が数多く点在している商圏エリアに物流拠点を構えることでトラック積載率の向上、1日1車両(車扱い)で複数回の納品が可能になる立地を選択すること、この条件が実現すると物流コストが大幅に低減できます。
  重要なことは、納期、サービスの遵守は、受注締め切り時間から納品時間までのリードタイムを勘案して納期の神れる場所に物流拠点を設置することです。不可能な場合は、商圏エリア毎に物流拠点を複数に分散することも検討の視野に入れるべきと考えます。
  勿論、リードタイムが長い場合や納期サービスの順守が可能な場合は、物流拠点を1ヶ所に集約することが望ましく、優先順位を決めて立地を吟味し、定めたいものです。
  また、アイテム当りの受注ロット数が小さく、アイテム数が多いと棚数(間口)が多くなりアイテム数が少ないと棚数(間口)が少くなり、これも物流拠点の規模に影響します。
  さらに、意識的に在庫の分散を行い、物流拠点を複数ヶ所、構えて配送をしている企業もありますが、複数拠点配送(在庫分散)の条件は、配送費用を更に抑えること、配送スピードの向上(納期)で顧客(得意先)満足度などを高めることが前提と考えます。
  そして、複数拠点(在庫分散)を実施する場合は、拠点当たりの在庫数の削減と配送費コストの軽減がしやすくなり、複数拠点で行う庫内作業(保管費・荷役作業費)などとのトレードオフでトータルコストの削減が期待できるか、検証、精査する必要があります。
  さらに、複数拠点で適正な在庫菅理、併せて在庫維持費の検証も必要です。
  基幹システムとリンクする共通のシステム(WMS)の導入やイニシャルコスト、ランニングコストなどのトータルコストを勘案して取り組むことも肝要と考えます。
  諸般の事情で複数拠点方式にする場合も拠点の配置場所がキーポイントになります。
  配送エリア内の最も需要の多い地域に設置すること、納期から逆算して例えば、リードタイムが24時間以内(≒100km圏内)になる条件が望ましいと言われています。
  そこで、地域配送は、納期と配送車輌回転数の頻度を考えて納品先(得意先)の密集エリアの近隣に物流拠点を設置することが望ましく、広域配送は、大量商品の輸送化が必要となるため幹線道路に面したインターチェンジに近い場所、採算の合う、地価、賃借料などであることが重要と考えます。そして、良質な人材が多数、確保できること、例えば、大型団地や大学などが近隣(徒歩≒15~30分、車≒10~30分)にあるのが望ましいと言われています。人(パート・アルバイト)が採用し易い最適な立地場所の確保は難しいのですが、物流拠点のトータルコストを考えると無視できない条件になると思われます。

3.物流機能の目的と規模の適正化を考える。

  物流には、原材料の調達から生産、消費、廃棄など、広範囲の流れ(工程)があります。
  物流拠点には「輸送、保管、荷役、包装、及びこれらに関連する作業と情報と設備・機器の諸機能を有機的に結合し、「サービス性」「スピード」「空間の有効利用」「規模の適正化」「在庫調達」などの機能を駆使して「物流作業コスト、物流品質・物流サービスレベル」の向上に寄与することが物流拠点の配置の大前提と考えます。物流拠点の目的をいくつか列挙してみますと顧客ファーストとして必要とする商品を「いくつ(数量)、どこに(場所)、いつ(時間)」を満足することだと考えます。そこで、物流拠点の設置場所(所在地)は、商圏エリア(需要地)の近場に立地したり、配送のために配送車毎にルート(走行経路)を決め、そのルートに従って配送したり、鉄道ダイヤの時刻表の如く、配送ルート毎に配送順、出発時刻、配送先への到着時刻などを見極めて配車する定時・定ルート配送が必要になってきます。次に重要なのが顧客サービスです。欠品がなく荷痛みなどの事故がなくサービス性、生産性が確保できる仕組みで商品を供給することです。人の採用や利便性の高い交通網の確保ができる適材適所で応分の土地の広さの建設用地探しが難航し、さらに、地価の高騰で必要面積の確保が難しくなり、近年は土地を有効活用するための高層化やシステム機器(立体・自動倉庫)で空間の有効利用が求められています。
  倉庫の規模である保管スペースの適正化を考える中に日々の波動、将来の伸び率(売上推移)などを予測を加味した物流拠点の規模の適正化が重要視されています。
  次に適正な荷役・保管スペース、人材と作業に適合したシステム(仕組み)の確保です。
  保管アイテム数、在庫量の増大など、適正な保管スペースの確保と在庫投資による資金の無駄を省くため需要の変動に合せた在庫(生産・仕入)をコントロールができる人材とシステム(仕組み)が必要になります。これからの重要なポイントとして、3Kからの脱却と省エネ対応です。安全な職場づくりは、昔から言われている3K(危険、きつい、汚い)からの脱却、省エネと環境対応に重点を置きたいものです。

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4.物流拠点の効率的な保管の仕組み

  物流拠点の業務運営の目的は、顧客満足度を高め最小のコストを追求することです。
  そこで、物流拠点内作業(特にピッキング以降)と配送計画の同期が重要になります。
  顧客からの納品条件を意識した出荷しやすい保管(流速別、カテゴリー別、顧客別、メーカー別など)を優先することが配送計画と作業効率化の起点(司令塔)になります。
  配送計画をベースに拠点内作業、配送コストが最小になるような作業計画と拠点内人員配置、配送車両の手配(台当たりトラック積載率を意識)を組むことが求められています。
  物流拠点のレイアウトと効率的な在庫保管・配置が業務効率化のスタート、効率的な保管を行うには、ロケーション(フリー/固定)管理が原則でどの棚にどの商品をどれだけ保管するかをIT用の商品マスターに設定し、運用で管理することが必要です。
  物流センターの保管能力以上に商品を在庫できないようにすることが賢明(ITで歯止め)、商品が棚から溢れたり、あちこち狭い場所に無作為に置かないこと、商品を探しまわったり、保管場所の確保で右往左往の移動をなくし、必要最小限の動線で作業を行い、与えられたスペースの中でミスのない効率的な仕事につなげることがポイントになります。
  保管と棚割は、商品特性と形状、カテゴリー、出荷頻度(IQ)などのデータを分析、流速管理による最適な棚配置(庫内レイアウト)が業務効率化に直結します。
  その最適な棚配置を活かすべく維持すべき在庫量に応じて棚間口のサイズ(幅)を決定し、流速の高い商品を入出荷口の近くに割り付け、ピッキング作業エリアを狭く動線を短くし、作業者が商品を探し回らないようにロケーションでの管理を徹底したいものです。
  但し、「言うは優し、行うは難し」です。努力あるのみです。

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※後編(次号)へつづく



(C)2020 Kiyoshi Takano & Sakata Warehouse, Inc.

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