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ロジスティクス

第444号 物流拠点(物流センター)のあれこれ(後編)(2020年9月15日発行)

執筆者  髙野 潔
(有限会社KRS物流システム研究所 取締役社長)

 執筆者略歴 ▼
  • 職歴・履歴
    • 日産自動車株式会社(33年間)
    • (出向)株式会社バンテック(7年間)
    • (起業)有限会社KRS物流システム研究所(平成11年~)
    組織・履歴
    • 神奈川流通サービス協同組合・物流システム研究所所長(5年間)
    • 株式会社湘南エスディ-・物流顧問(5年間)
    • 株式会社カサイ経営・客員研究員(7年間)
    • 物流学会・正会員(8年間)
    • 物流学会・ロジ懇話会事務局(5年間)
    • 日本情報システムユーザー協会・個人正会員(JUAS-ISC)(9年間)
    • 日本情報システムコンサルタント協会(JISCA:東商会員)正会員・理事(平成25年~)
    委嘱(受託)・履歴
    • 通産省(現・経済産業省) 荷姿分科会委員・委嘱(1年間)
    • 運輸省(現・国土交通省)輸送分科会委員・委嘱(1年間)
    • 中小企業基盤整備機構  物流効率化アドバイザー・委嘱(8年間)
    • 中小企業ベンチャー総合支援センター 新事業開拓支援専門員・委嘱(6年間)
    • 中小企業基盤整備機構  企業連携支援アドバイザー・委嘱(6年間)
    • 中小企業大学校(関西校) 非常勤講師・委嘱(4年間)
    • 海外技術者研修協会 [AOTS]関西研修センター 非常勤講師・委嘱(2年間)
    • 座間市観光協会・事務局長(2年間)
    • 座間市・都市計画審議会委員(2年間)
    著書・講師・履歴
    • 日本のロジスティクス (共著:日本ロジスティクスシステム協会)
    • 物流共同化実践マニアル (共著:日本ロジスティクスシステム協会・日本能率協会)
    • 図解 なるほど!これでわかった よくわかるこれからの物流 (共著:同文館)
    • 雑誌掲載:配送効率化・共同物流で大手に対抗(日経情報ストラテジー)
    • 雑誌掲載:情報化相談室回答担当者(日経情報ストラテジー)
    • 雑誌掲載:卸の物流協業化・KRS共同物流センター事業(流通ネットワーキング)
    • 雑誌掲載:現場が求めるリテールサポート・ドラックストア-編(流通ネットワーキング)
    • その他  :執筆実績多数
    • 講師(セミナー、人材育成、物流教育・etc):実績多数

 

目次

*前号(2020年9月3日発行 第443号)より

5.物流拠点の職場環境への気遣い

  大量生産・大量消費社会の終焉とともに、日本の物流は、単にモノを運ぶだけから「作業から運ぶ」によって新たな価値を提供する「サービス」への変革が行われてきました。
  きつい、汚い、危険と「3K」職場のイメージの強かった物流拠点(物流センター)が近年の人手不足を背景に自動化・半自動化に変革されることで多くの人手を必要としない時代がすぐ目の前に来ています。物流拠点や納品先においても、IOT、AI、ロボット、RFID、画像認識技術などで荷役、検品、ピッキング、仕分けといった技術革新により、作業の大部分が自動化・半自動化に変わり、人手を仲介する作業についても、デジタル表示、音声端末などで作業指示が容易になり素早く間違いのない作業ができるようになってきました。さらに、人手不足解消のために女性の働き易い就労環境の改善の動きが出てきています。例えば、天井が高く(吹き抜け)、防火壁、避難通路、スポットクーラーなどを備えた物流拠点内の環境整備が進み、安全で清潔な職場が実現してきています。
  さらに、米国物流大手プロロジスでは、複数の取引先企業が共用する「マルチテナント型」と呼ばれる最新鋭の大規模物流拠点を全国で相次ぎ展開しています。
  マルチテナント型は、数多くの企業が入居する形で地域向け共同化を支えています。
  プロロジスの物流拠点では、コンビニ、カフェ、女性のためのパウダールーム、着替えスペース付きトイレまで完備している物流拠点にビックリです。
  ネット通販大手のアマゾンの物流拠点では、ソファでゆったりくつろげる休憩室を備えたり、無料のソフトドリンクを用意、近代的な食堂が好評だそうです。
  私も以前に手掛けた6,800坪(5層)の共同物流拠点に100人以上収容できる食堂、パートさんが手足を伸ばせる和室付きの休憩室、各自専用のロッカー付更衣室、作業者が常駐する作業エリアと詰所には、スポットクーラーを設置、「物流現場が暗い」を払拭するため全フロアのマテハン機器を明るさを求めて全て淡いピンク色にしてしまいました。

6.物流拠点の自動化の動向

  これからの時代は、物流拠点に於いても働き手の確保を目的に「保育施設」「学童施設」などが設置される動きも出てきています。そして、重要な物流拠点は、年々自動化、機械化が進み、その究極の目標といえる人手ゼロの倉庫の自動化が実現しそうです。
  この中でも注目したいのが、無人フォークリフトでパレットの荷役、搬送、棚入れ、棚出しを自動で行うものが現れてきています。商品が入っているパレットを指定位置まで無人で搬送(AGV)したり、デパレタイズロボットは、最新画像認識システムを駆使して無秩序に入り混じったパレットの中から特定のケースを取り出し(ピッキング)、コンベヤに自動投入するものも出てきています。 WMS(倉庫管理システム)でログやITセンサーなどのデータを取得、作業内容の詳細が可視化できたり、工程別、個人別などの人時・生産性の把握が容易になり無駄の排除と作業効率の向上を可能にすることができるようになりました。AI(人工知能)技術の確立で高い自己学習能力を持つようになると物流拠点内のレイアウトなどもAIで判断、作業動線の効率化などが期待されています。
  長らく研究対象になっていた作業者にITセンサーをつけてその行動をAIで分析し、特定の通路、棚での混雑状況の改善案を実践、作業効率が大幅にアップしているそうです。
  また、AIが得意とする画像認識システムとカメラで写した商品映像を一括して読み込む「画像検品システム」などが研究されています。ピースピッキングは倉庫内作業の中で最も手間がかかるもののひとつですが、これを自動化(ロボット:ピースピッキング)で行うことができれば、精度、生産性の向上・効率化につながります。また、商品を運んでくれるAGV(搬送ロボット)と連動することにより、さらなる効率化が期待されます。

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7.物流拠点と配送コスト

  物流拠点の売上高物流コスト比率をみると配送費の割合が半分(50%)以上と大きなウェートを占め、この配送コストが物流コスト全体の課題と考えています。

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  昨今、ドライバーの人手不足などによりトラックの確保が難しい状態が続いています。
  逆に人手不足やトラックの確保の難しさから運賃アップを要求される時代になりました。
  荷主もトラック事業者もトラックの有効活用に知恵を絞るようになってきました。
  行政(国土交通省)の資料によりますと近年の我が国の物流は、トラック積載率が41%で様々な非効率が発生しているとのことです。
  単独企業が積載率の低い状態で荷物を運ぶのでは効率が悪く、同じカテゴリーで同じ納品先に運ぶ荷物あれば一緒に運ぶことで顧客にも喜ばれ、トラック事業者主体の一括納品に繋がり、考え方が荷主にも理解され、荷主協調の動きが急速に広まってきています。
  さらに、荷主・顧客の生産性を向上させることにより、将来の労働力不足を克服、経済成長に貢献していくことにつながると考えます。そこで、荷主同志の協調でトラック積載率の改革、物流拠点の業務を「成長を加速する物流」にシフトしていかなければ、物流業界の先々の成長はありません。さらに、移動時間・待ち時間、スペースなどの物流の様々なムダを効率化し、生産性向上の在り方などの従来に捉われていない改善に着眼し、日本の産業と経済の成長を加速させたいものです。最近の物流業界の動きとして、抜本的なコスト削減の追求策の一つになるであろう物流拠点の配置、集約化、分散化が注目され、取り組みの強化が活発化してきています。また、物流拠点の統廃合により、配送コストの最適化を図るためメイン納品先の周辺に物流拠点を配置、走行距離や配送時間の合理化の模索も始まっています。物流拠点の新設、統廃合などでも1回の輸送量を大きくしたり、コースの集約化、輸送手段の変更で物流拠点から顧客までの走行距離や時間、配送コースの改善で積載率の向上、トラック台数の削減など、大幅なコストを抑えることに注力し始めています。さらに、配送コストの検討を行う中で、物流拠点の新設、統廃合、在庫の統合、物流拠点の分散に取り組み、投資対効果の見極めが重要になってきています。また、複数拠点配送を実現している企業が最近増えてきているように見受けます。複数拠点配送にすると在庫の分散(在庫増)が生じますが、配送費用を更に抑えることで配送スピードの向上とCS(顧客満足度)を高めることが可能になります。それぞれの企業事情により複数拠点を必要とした場合、物流拠点の最終工程である配送計画は、出荷管理と連動した業務効率化を重視した取り組みを考えていきたいものです。

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8.最後に・・・。

  2020年初頭に物流業界の困難に追い打ちをかけてきたのが新型コロナウィルスです。
  感染予防用の製品と非常事態宣言後に在宅勤務が急増し、需要が増えている商品を24時間体制で増産し、事業継続と製品供給を止めない体制を「製・配・販」が協力してサプライチェーンを維持しようと努力しています。また、運送業や倉庫業は、顧客に配送の多チャネルを提案したり製品出荷の準備を早急に進めたりイレギュラーなオーダー、特例需要への積極的な対応を進めるなど、消費者の生活を支えるために必死に協力しあって途絶えないようにしてくれています。欲しいもの(売れるもの)を確実に届けて貰える、そして生活を支えている物流が円滑に動いているからということを、実感することができました。私たちも忘れないようにしたいものです。

以上



(C)2020 Kiyoshi Takano & Sakata Warehouse, Inc.

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