輸配送

第523号 【緊急寄稿】100日を切った物流2024年問題(前編)~(2024年1月11日発行)

執筆者  長谷川 雅行 ((一社)日本物流資格士会 顧問)  執筆者略歴 ▼ 経歴 1948年 生まれ 1972年 早稲田大学第一政治経済学部卒業 日本通運株式会社入社 2006年 株式会社日通総合研究所 常務取締役就任 2009年 同社顧問 2017年(一社)日本物流資格士会 顧問 活動領域 日本物流学会 (一社)日本SCM協会 (一社)日本物流資格士会会員 流通経済大学客員講師 港湾短期大学校非常勤講師 (公社)日本ロジスティクスシステム協会「物流技術管理士資格認定講座」ほか講師 本論文は、前編と後編の計2回に分けて掲載いたします。 目次 1.はじめに「物流2024年問題」とは何か 2.今すぐ取り組むべき対策 (1)労働時間管理を適正に行う (2)運行計画を見直し拘束時間を減らす (3)労働環境・労働条件を改善する   新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。 いよいよ「2024年」になりました。「物流2024年問題」がスタートする4月1日まで、100日を切りました。 1.はじめに「物流2024年問題」とは何か   国土交通省(以下、「国交省」と略す)の資料によれば、「物流2024年問題」とは、以下のように説明されている。 ①物流業界は現在、担い手不足やカーボンニュートラルへの対応など様々な課題を抱えている。そのような中、2017年6月改正の「働き方改革関連法」に基づき、自動車の運転業務の時間外労働についても、2024年4月より、年960時間(休日労働含まず)の上限規制が適用される。 ②併せて、厚生労働省がトラックドライバーの拘束時間を定めた「改善基準告示」(貨物自動車運送事業法に基づく 行政処分の対象)により、拘束時間等が強化される。 ③この結果、我が国は、何も対策を講じなければ物流の停滞が懸念される、いわゆる「2024年問題」に直面している。   新聞・テレビなどのメディアは、売上げや視聴率至上主義のためか、4月になれば、すぐにでも「ドライバーがいなくなる」「貨物が運べなくなる」かのように、いささか無責任に、あるいは面白おかしく「オオカミ少年」のように、こぞって危機感を煽り立てているのではないだろうか。   筆者は、本ロジスティクス・レビュー誌 第500号(2023年1月17日)と 第502号(同2月21日)の「 100日を切った物流『2023年問題』500日を切った『物流2024年問題』(前編・後編)」で、早期の対策取り組みを提案した。   しかし、最近の各調査を見ていると、取り組みは捗々しくないようである。このままでは、行政・荷主・トラック業界が懸念している「2024年問題」が、4月以降に現実のものとなってしまう。   そこで、取り組みが遅れている(と思われる)中小トラック運送事業者が、3月末までに今すぐ行うべき対策に絞って、取り組みを進めることを再度訴えたい。一部が、500号・502号と重複することはご容赦されたい。   なお、お断りしておくが、上記の「自動車の運転業務の時間外労働の上限規制」オーバー即ち、「労働基準法」違反による罰則(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)も、4月1日に即日課されるのではない。   各労働基準監督署(労基署)が4月以降に、時間外労働時間の実態を踏まえて(現認して)適用されることになる。これまで同様に、重大交通事故を起こした事業者や悪質な事業者から適用されるのではないだろうか?仮に、時間外手当の不払いなどがあると、ドライバーが労基署に駆け込んで調査が入るということも想定される。   繰り返すようであるが、冒頭述べたように、「物流2024年問題」は4月1日からスタートするのであって、「4月1日(あるいは前日の3月31日)」がゴールではない。4月1日以降も引き続いて取り組んでいかねばならないのである。 2.今すぐ取り組むべき対策   「対策」以前に、まずは、いま一度「物流2024年問題」とは何か、正しく理解する。それには、(公社)全日本トラック協会(以下、「全ト協」と略す)のサイト「知っていますか?物流の2024年問題」をご覧頂きたい。 https://jta.or.jp/logistics2024-lp/ 図1 全ト協サイト「知っていますか?物流の2024年問題」トップページ (出所)全ト協ホームページ *画像をClickすると拡大画像が見られます。 […]

第522号 「トラック6割空車」の正体(2023年12月19日発行)

執筆者 山田 健 (中小企業診断士 流通経済大学非常勤講師)  執筆者略歴 ▼ 著者略歴等 1979年日本通運株式会社入社。 1997年より日通総合研究所で、メーカー、卸の物流効率化、コスト削減などの コンサルティングと、国土交通省や物流事業者、荷主向けの研修・セミナーに携わる。 2014年6月山田経営コンサルティング事務所を設立。 著書に「すらすら物流管理(中央経済社)」「物流コスト削減の実務(中央経済社)」 「物流戦略策定のシナリオ(かんき出版)」などがある。中小企業診断士。 URL:http://www.yamada-consul.com/   目次 1. スーパーの物流センターで 2. 2024年問題と共同配送 3. 「6割空車」の根拠 4. 積載効率は低下しているか 5. 容積換算されているか 6. 運行方法による積載効率低下 7. 「6割空車」の必然    1. スーパーの物流センターで   少し前のことであるが、商品の自動認識技術にかかわる実証実験の立ち合いで、大都市にある大手スーパーマーケットの物流センターを訪れた。150店舗以上への広域商品配送を担う2万坪ほどのセンターである。センター内の運営は大手卸とその物流子会社に委託されている。   実験の立ち合いに3日間通ったわけであるが、お恥ずかしながら長く物流に携わっていながら、大規模小売りの物流センター内部をこれほど長時間にわたって観察するのは初めてであった。おかげで、実証実験の成果はともかくとして、現場レベルで小売り物流を体感(?)する大変いい機会となった。   まず驚いたのはその商品アイテム数の多さと在庫規模である。2~4階には、低温では農産・水産・畜産・惣菜・日配食品、常温では加工食品・菓子・酒類・米・たばこ・日用品・衣料品・店舗資材まで在庫されている。典型的なフルライン卸の在庫である(うかつにもアイテム数を確認していなかった!)。   在庫エリアでピッキングし、オリコンに収納された商品はベルトコンベアで1階の仕分け、出荷エリアへ運ばれる。ここで通過型の入荷商品と合流し、ロールボックスに積載された後、店舗別のトラック接車バースへ移動される。メーカーや業種別卸の物流経験しか持ち合わせていなかった筆者としては、フルラインのスケールは圧倒的であった。   もう一つ関心を持ったのは、店舗配送トラックの運行である。トラック・バースには配送店舗ごとにトラックが接車される。このトラックはA店舗向け、B店舗向けといったように行き先の店舗がある程度決められている、店舗別貸切トラックである。このトラックが一日中回転しながら絶え間なく店舗へ商品を補充する。おそらく近隣店舗の回転数は多く、遠方は少なくなるのであろう。スーパーへの商品配送に特化した、クローズドな物流システムといえる。 2. 2024年問題と共同配送   今回のテーマは「2024年問題と共同配送」「トラックの6割空車」である。以前も触れた話題をなぜ蒸し返すのかというと、冒頭の立ち合いでこの共同配送を連想したからである。一般的に、2024年問題で取り上げられる対策として多く見られるのが、「不在配達をなくす」「置き配を増やす」「送料無料の表示をやめる」といった宅配便に関わるもの、そしてもうひとつが共同配送である。   この欄でも繰り返し取り上げているが、2024年問題に限らず共同配送がドライバー不足の主要テーマとして期待されているのは、日本のトラックの「6割は空車で走っている」という前提があるからである。6割も空車で走っているトラックの積載率を少しでも高めることができれば、ドライバー不足も2024年問題も容易に解消できるように思える。   実際、筆者もよく受ける相談である。「トラックの空車なんかネット上でマッチングを行えば簡単に埋まる」との発想で、Web上での求貨求車システムを検討するIT関連企業などがいまだ後を絶たない。   しかし、筆者の拙い経験ではあるが、運送の現場でそれほど積載率が低いトラックを運行しているとはとても思えないのである。そのようなトラックに出会ったことがない。先の小売り物流センターでの店舗配送でも、トラックへの積込みには数多く立ち会ったが、ロールボックス1台も欠けることなくすべて満載で積み込まれていた。   筆者が支援している中小運送事業者の配車実績をみても、積載率が100%となることはないにしても(もっとも100%というのはほぼありえない)、4割の積載で走っているケースなどまずお目にかかれない。   これは、以前勤務していた物流事業者でも同様である。運送事業者は可能な限り貨物をかき集め荷台を埋める努力をしている。もちろん集めた貨物と自社トラックの積載能力がぴったり一致することなどないので、超過した部分を協力運送事業者とのやりとりで調整しているのである。   長距離輸送の場合は帰り便を優先して確保するのは常識である。たとえば、仙台に拠点を置く運送会社が仙台から関東地区への配送オーダーを受けた場合、まず関東から仙台へ配送した帰り便を探す。こうすれば車両は往復で無駄なく運行できるうえに、帰り便だから安い運賃で配送できる可能性がある。どうしても帰り便を見つけられない場合にやむを得ず、仙台からの便を仕立てるのである(これを仕立て便という)。この場合、同時に関東から仙台への帰りの貨物を探すことも当然行う。このようにして長距離輸送の往復の荷台はかなりの率で埋まっていく。   もっとも、通常はこうした運行実態を荷主に正直に報告することはない。そんなことをすれば、「あ、帰り便を使うのだったらもっと運賃下げられますよね」といわれるのがオチだからである。往復の貨物を見つけるのは運送事業者の経営努力の結果であるから、その利益は運送事業者に帰するのは当然である。   発着が異なる荷主の同士による長距離往復輸送が共同配送の事例として紹介されることがあるが、運送事業者としての本音を確認したいところである。大っぴらには言えないけど、本当はしっかり別の往復貨物を確保していたのではないか、共同配送として帰り便を依頼され運行の中身がオープンになり、かえって迷惑などでは、などと勘ぐってしまいたくなる。逆な見方で、もし本当にそれまで長距離を片道輸送していたとすれば、それはそれで運送事業者として相当ずさんな配車だったといえなくもない。   また、日帰りができる短距離地場配送では、車建て運賃を払ってくれる「奇特な」荷主はまれである。よほど量がまとまるパターンを除いて、運んだ距離と量で運賃が決まる「トンキロ制」の運賃タリフを適用しているケースが多い。必然的に運送会社は複数の品物や届け先、荷主の貨物を混載して配送することになる。荷主は運んだ分(重量、容積など)しか運賃を払わないので、当然の運行であるが、この場合も「おたくの貨物はどこそこの貨物と混載して運んでいます」などと報告する事業者はまずいない。「だったら運賃もっと下げて」などと要求されかねないからである。そもそもトンキロ制の運賃とは他社との混載を前提としているのであるから、このような要求は見当違いである。ただ、現実にはこのような非常識な対応が少なからず見受けられのも事実である。   トンキロ制運賃の例ではないが、A地点からB地点まで一般道を使って配送していた運送事業者に、荷主から配送リードタイムを短縮する要請があった。そこで運送事業者は高速道路を使って輸送時間を短縮することを提案、荷主に高速代の実費請求を申し出た。ところがそれに対する荷主の回答は「高速を使えば車両の回転が上がるのだから、逆に運賃を下げてくれ」だった。サービスレベルを上げるために発生する費用を負担するどころか、むしろ値下げをしろという理屈である。サービスレベルとコスト負担の関係をまったく無視したこの話を聞いたときは、よくもそこまでと逆に感心してしまった。   率直に言って、共同配送は「労多くして益少ない」取り組みである。筆者もいくつか手掛けたことがあるが、とくに荷主主導による共同配送はよほどの条件が整わなければ成功は難しい。物量の少ない同士の「弱者連合」ではまず無理である。6割以上の物量を持つ「ベースカーゴ」の荷主にその他が相乗りするような形態が理想であるが、ここでは共同配送の成立要件を議論するのが趣旨ではないのでこれ以上触れるのは省略させていただく。   問題は、共同配送の根拠となる「6割は空車」である。この数字、どうも現実感に乏しい。このテーマは、本コラムの「第474号 数字の独り歩きに注意(2021年12月21日発行)」でもすでに取り上げているが、少し別な視点も交えてその正体を再度明らかにしていきたい。 3. 「6割空車」の根拠   そもそも「6割空車」という数字は、おそらく国交省が公表している「自動車輸送統計年報」が根拠と思われる。同年報では、約9,800両の営業貨物車を対象に輸送トン数や品目、輸送回数などについて計14日間を調査し、その数字から全体量を推計している。   積載効率は、「輸送トンキロ÷能力トンキロ」で算出される。調査データの該当部分を2010年度から直近2022年度まで3年分を抽出し、計算したのが図表1である。対象車両は営業用普通車(最大積載量3トン未満~16トン以上)である。   2022年度の積載効率は40.1%。つまり6割が空車であることを示している。「6割空車」の出どころはこの統計とみてまず間違いない。 図表 1トラックの積載効率(営業用普通車) 出所:国交省「自動車輸送統計年報」より筆者作成 *画像をClickすると拡大画像が見られます。 4. 積載効率は低下しているか   積載効率は、多頻度小口配送などの進展により近年低下してきたというのが通説である。大手コンビニなど小売りの発注が「元凶」扱いされるが、データを見る限り、この12年間では積載効率は低下するどころか、むしろ上昇している。   2024年問題を取り上げた先日の報道番組では、積載効率が低い原因として、物流DX系ベンチャーの「トラックに貨物1個しか積まないで運ぶこともある」とのコメントも紹介されていた。こうした情報に接すると一般視聴者は「トラックはなんて無駄なことをしているんだ」という印象を受けてしまうだろう。「そんな無駄なことをしているなら、共同配送で積載効率を高めるなんて簡単」という短絡した連想になってしまう。   ところが待って欲しい。実際にトラックはそれほど無駄な運行はしていない。荷台に貨物1個など、よほどの緊急輸送でない限り、きわめてまれなケースであろう。その場合でもせいぜいライトバンや赤帽をチャーターするのが常識である。極端な例外をもってして全体の傾向であるかのように表現してしまうのは危険である。 […]

第518号 2024年問題で忘れられていること~(2023年10月17日発行)

執筆者 山田 健 (中小企業診断士 流通経済大学非常勤講師)  執筆者略歴 ▼ 著者略歴等 1979年日本通運株式会社入社。 1997年より日通総合研究所で、メーカー、卸の物流効率化、コスト削減などの コンサルティングと、国土交通省や物流事業者、荷主向けの研修・セミナーに携わる。 2014年6月山田経営コンサルティング事務所を設立。 著書に「すらすら物流管理(中央経済社)」「物流コスト削減の実務(中央経済社)」 「物流戦略策定のシナリオ(かんき出版)」などがある。中小企業診断士。 URL:http://www.yamada-consul.com/   目次 1. ファミレスの進化 2. 2024年問題を見つめて 3. 政府が本気に? 4. ロボットに期待しすぎない 5. ドライバーの賃金を忘れずに 6. 運賃を引き上げることが最優先    1. ファミレスの進化   仕事柄、ファミレスを利用することが多い。訪問先近隣のファミレスでランチをしたり、時間調整をしたり、とにかく便利な存在である。勤務先を持たないフリーランスの身では、wifiを利用できるのもありがたい。   あらためて言うまでもないが、そのファミレスをはじめとした外食産業の進化がすごい。いまや注文はもちろんタブレット、届けは配膳ロボットが当たり前である。注文した品をロボットがおしゃべりしながら運んでくる様はなんとも愛らしい。もはや配膳という「作業」を超え、一種のエンターテイメント性さえ感じてしまうのは筆者だけだろうか。ロボットを楽しみにしている子供たちは、たまたま店員が届けたりするとがっかりして泣き出してしまう、という話も聞く。たしかに、店員が注文取りに来る従来型の店に入った時は違和感を覚えることもある。   さらに驚くのはその普及のスピードである。たしか、今のシステムは新型コロナ対策で非接触型のサービスが求められ、くわえて店員不足が深刻化したころからではなかったか。ここ数年のことである。これだけの短期間で自動化、ロボティクス化が進んだ業界は例を見ないのではないか。 2. 2024年問題を見つめて   さて「いまさら」感はあるが、今回のテーマは「ドライバーの2024年問題」である。業界内での比較的ニッチな話題であったが、実施まで1年を切って頻繁にマスコミに取り上げられることが多くなった。 残念なことに相変わらず、「トラック輸送=宅配便」というとらえ方に偏っている。必然的に話題は、「再配達を減らす」「送料無料という表現をやめる」など宅配向けのメッセージが中心である。消費者にとって宅配はもっとも身近でわかりやすい物流であるからやむを得ない事情とは思うが、これでは問題の核心をはずしてしまう。   以前にも書いたが、営業トラック輸送に占める宅配便の割合は重量ベースで数パーセント程度。もちろん、ドライバー数でいえばもっと割合は多いが、大企業中心で賃金、待遇とも業界の中では恵まれている宅配便業界のドライバー不足はまだましである。最近では軽トラックによる個人事業者も増えているなど、それほど絶望的な状況ではない。   深刻なのは社数で97%以上を占める従業員規模50人以下で、BtoBの物流を担う中小零細規模の運送会社である。 3. 政府が本気に?   ご承知のとおり、2023年6月2日「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議(第2回)」が開催され、物流の2024年問題への対応に向け、荷主企業、物流事業者(運送・倉庫等)、一般消費者が協力して、我が国の物流を支えるための環境整備に向け、抜本的・総合的な対策として「物流革新に向けた政策パッケージ」が決定された。   さらに、早急に取り組むべき事項をまとめた「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」も公表された。6月20日には西村経産大臣が、トラック業界は価格転嫁率が極めて低いという数値を示しながら、「トラック業界は強気で交渉しなさい。荷主は価格転嫁を認めなさい。そうしないと運べなくなって、結局自分の首を絞めることになりますよ」との踏み込んだ発言を行った。2024年問題対策に政府が本気になったのである。 この政策パッケージのアウトラインは (1)商慣行の見直し (2)物流の効率化 (3)荷主・消費者の行動変容 の3つから成り立っている。ここでは詳しく触れないが、ドライバー不足に対応するための施策が多面的に網羅されている。実践的な内容は、会議のメンバーに物流に詳しい有識者や物流実務者が多く含まれていたことによるものと想像する。   本稿ではこの政策パッケージに関連して、日ごろから気になっているテーマを2つ取り上げ、考えを述べてみたい。 4. ロボットに期待しすぎない   自動化やロボットについて一点指摘しておきたい。政策パッケージ(2)物流効率化の中の「物流DXの推進」に該当するテーマである。配送面では、物流ドローンや宅配ロボ、トラックの隊列走行などがその対象と思われる。   これらについては、もう何年も前から政府の補助金による実証実験が繰り返されてきた。 ・山間などの過疎地域、離島への宅配物のドローンによる配送 ・街中や過疎地域での宅配ロボによる配送 ・高速道路上でのトラック隊列走行 ・RFIDを活用した検品 などである。   実証実験はもう何回繰り返されているのだろうか。その割にはいまだ実用化されたという話は聞かない。実用化され普及したというのは、冒頭で紹介したファミレスでのロボットのような、日常の中で目に見えるレベルをさす。   筆者もこうした実証実験には何度かかかわったことがあるので他人事として批判するのは気が引けるが、あえていえば「実験のための実験」の域を出ていない。参加企業も「政府からお金が出ているのでお付き合いポーズをとっている」のが実情としか思えない。   ファミレスの例を挙げるまでもなく、そもそも市場が本当に必要とし、かつ実用価値がある技術や商品であれば、初回はともかく実証実験などの補助を頼りにせずとも自ずと普及していくものである。補助金に頼っている限り実用化は覚束ない(例外はあるが)。   そうした観点から、個人的に注目している分野がある。それはドローンによる山小屋への物資輸送である。   楽天は、2021年8月から9月までの約2カ月にわたり長野県白馬村の山岳エリアで行った、ドローンを活用した物資配送の実証実験に参加した。本実証実験では、長野県白馬村の白馬岳の登山口にある宿舎から山頂直下にある山小屋までの往復約10km、高低差約1,600mを配送ルートとして、ドローンの往復飛行による物資配送の検証を行った。補助員を配置せず、2人体制の運用でドローン配送に成功し、運用体制の省人化を推進した。さらに、新機体を用いることで機体性能の向上を図り、最大7kgの物資の配送に成功したほか、航空法に基づく許可承認のもと、安全性が高くエネルギー効率の良い、高度1m以下からの物件投下による配送を行い、往復飛行での配送を実現した。補助者を配置しない目視外飛行での物件投下による往復配送の実現は、本実証実験が国内で初の事例という。 図表 1 ドローンによる白馬山荘への物資輸送実験(楽天HP) […]

第477号 続々・軽トラ運送が熱い(後編)(2022年2月10日発行)

執筆者  長谷川 雅行 (株式会社日通総合研究所 経済研究部 顧問)  執筆者略歴 ▼ 経歴 1948年 生まれ 1972年 早稲田大学第一政治経済学部卒業 日本通運株式会社入社 2006年 株式会社日通総合研究所 常務取締役就任 2009年 同社顧問 保有資格 中小企業診断士 物流管理士 運行管理者 第1種衛生管理者 活動領域 日本物流学会理事 (社)中小企業診断協会会員 日本ロジスティクス研究会(旧物流技術管理士会)会員 国土交通省「日本海側拠点港形成に関する検討委員会」委員ほか (公社)日本ロジスティクスシステム協会「物流技術管理士資格認定講座」 ほか講師 著書(いずれも共著) 『物流コスト削減の実務』(中央経済社) 『グローバル化と日本経済』(勁草書房) 『ロジスティクス用語辞典』(日経文庫) 『物流戦略策定のシナリオ』(かんき出版) ほか   目次 4.軽トラック・バンのEV化 *前号(2022年1月18日発行 第476号)より 4.軽トラック・バンのEV化   軽トラックのEV化については、第448号の「6.軽トラックの未来」でも紹介したので、併せて読まれたい。   本稿が配信される頃(2022年春)には、日産・三菱自動車が実質200万円(補助金等による)でEV乗用車を発売していると思う。   ここでは、まずエコカー(HV・EV・PHV・FCV)について簡単にお浚いして、執筆時点(2021年11月)における軽自動車のEV化動向についてご紹介したい(自動車技術は専門ではないので、EV化技術については省略する)。 (1)エコカー(HV・EV・PHV・FCV)とは   環境に優しい自動車については、「低公害車」「エコカー」「環境適合車両」など、いろいろな呼び方があり、省庁・関係団体等によっても違うようである。   ここでは、トラック経営として関心が高い「税制」である「エコカー減税」の対象となる、「エコカー」を使うことにする。 ①HV(Hybrid Vehicle ハイブリッド自動車)   2021年現在、日本で最も普及しているエコカーがHVである。HVはエンジンとモーター、2種類の動力を搭載して効率的に使い分け、あるいは組み合わせて低燃費を実現する。乗用車のほかにバスにも活用されている。   HVは、パラレル方式、シリーズ・パラレル(スプリット)方式、シリーズ方式に3分類され、走行特性も異なる。パラレル方式はエンジン駆動主体で、発進・低速時などのエンジンが苦手とする領域でモーターが補助をする。シリーズ・パラレル方式は、エンジンとモーターの動力使い分け可能なタイプで、発進・低速時はモーター、通常走行時はエンジン、急加速時はエンジン+モーターと、走行条件に合わせてエネルギー効率の最大化を図る。シリーズ方式はエンジンを発電専用とし、モーターで駆動する方法で、鉄道でもディーゼル機関車等に導入されている。 ②EV(Electric Vehicle 電気自動車)   EVは、自宅や充電施設などで車載電池(リチウムイオン電池)を充電して、モーターを動力として走行する。エンジンはないので、走行中にCO₂を排出しない。夜間電力などを上手に活用して充電すれば、ガソリン・ディーゼル車よりも燃費を低減できるケースもある。   最も注意すべきは電池切れで、充電施設の整備が十分でない地域もあるので、常に電池残量、充電施設をチェックしておく。充電に必要な時間も考慮する。エアコン・補機も電力を要するので、夏季や冬季には電池切れのリスクが高まる。   国内では、2~4トン車の小型トラックでの導入が進められている。   ヤマト運輸では、2020年1月から、ドイツポストDHLグループ傘下のストリートスク-ター社と共同開発した、バンタイプのピックアップ型小型EVを首都圏で導入しており、筆者も横浜市内で二度見かけたことがある。2030年までに小型集配車の半数5000台を置き換える計画とされている。   また、SBS […]

第476号 続々・軽トラ運送が熱い(中編)(2022年1月18日発行)

執筆者  長谷川 雅行 (株式会社日通総合研究所 経済研究部 顧問)  執筆者略歴 ▼ 経歴 1948年 生まれ 1972年 早稲田大学第一政治経済学部卒業 日本通運株式会社入社 2006年 株式会社日通総合研究所 常務取締役就任 2009年 同社顧問 保有資格 中小企業診断士 物流管理士 運行管理者 第1種衛生管理者 活動領域 日本物流学会理事 (社)中小企業診断協会会員 日本ロジスティクス研究会(旧物流技術管理士会)会員 国土交通省「日本海側拠点港形成に関する検討委員会」委員ほか (公社)日本ロジスティクスシステム協会「物流技術管理士資格認定講座」 ほか講師 著書(いずれも共著) 『物流コスト削減の実務』(中央経済社) 『グローバル化と日本経済』(勁草書房) 『ロジスティクス用語辞典』(日経文庫) 『物流戦略策定のシナリオ』(かんき出版) ほか   目次 2.ラストワンマイルのその後 3.新たな軽トラビジネス *前号(2022年1月6日発行 第475号)より 2.ラストワンマイルのその後   最後に、「黒ナンバーの取得方法(貨物軽自動車運送事業者としての事業経営届出)」である。第372・373号で貨物軽自動車運送を紹介したところ、読者から「定年後に始めたいから、具体的な手続きを教えてほしい」とメールを頂戴した。第372号の手続きのポイントを再掲する。 ①貨物軽自動車の準備   貨物軽自動車を用意する。新車・中古車・レンタル・リースすべて登録できる。 ②運輸支局への事業届出   上記1-(1)項の事業用ナンバー(黒ナンバー)を取得するには、事業の本拠を管轄する運輸支局に、以下の提出書類等を揃えて届出る。提出書類等の記入方法等は、運輸支局の窓口で相談すると教えてくれる。行政書士に依頼することも可能であるが、費用が掛かる。   「事業用自動車等連絡書」「貨物軽自動車運送事業運賃料金表」「貨物軽自動車運送事業経営届出書」「車検証」「認印」   なお、車庫の基準は、軽自動車では1両当たり8㎡となっている。 ③軽自動車検査協会へ書類提出・黒ナンバー交付   運輸支局の窓口で、②で提出した書類に受領証となる印を押してもらった後、「事業用自動車等連絡書」の原本と認印を持参して、支局指定の軽自動車検査協会(同じ場所にある)へ行き、所定の用紙に必要事項を記入し提出する。   自家用から事業用に変更する場合は、自家用の黄ナンバーを車両から外して返納する。   印紙で黒ナンバーのプレート購入費(税込1,900円)を支払うと、黒ナンバープレートが交付される。 (3)ライフ・コーポレーション   コロナ禍の巣ごもり消費の拡大で、ネットスーパーが伸びている。また、新規にネットスーパーを始める量販店も多い。   コンビニもウーバーイーツ等を活用して宅配を拡大している(ローソンでは1,000店舗以上で実施)が、軽トラックの利用ではないので、ここでは省略する。   ここでは、ライフ・コーポレーション(以下、「ライフ」)の事例を紹介したい。これまで、ライフはアマゾンと提携して、上記AFを利用して店舗商品を近隣エリアに配送し、逐次、取扱いエリアを拡大してきた。2021年度のネットスーパー売上は100億円を目標にしている。   ネットスーパーの売上が増加してきたので、AF以外に自前のラストワンマイル網を構築する方針を打ち出している。具体的には、総合物流事業者である間口ホールディングス(大阪市港区。グループ総資本803百万円、グループ売上高502億円。同社HPから)のグループ会社、スリーエスコーポレーションおよび間口ロジスティクス関東とライフで、新会社ライフホームデリバリーを設立し、2021年6月から「軽貨物配送」「梱包作業支援」「コールセンター」業務を開始した(ライフホームデリバリー社HP)。 […]

第475号 続々・軽トラ運送が熱い(前編)(2022年1月6日発行)

執筆者  長谷川 雅行 (株式会社日通総合研究所 経済研究部 顧問)  執筆者略歴 ▼ 経歴 1948年 生まれ 1972年 早稲田大学第一政治経済学部卒業 日本通運株式会社入社 2006年 株式会社日通総合研究所 常務取締役就任 2009年 同社顧問 保有資格 中小企業診断士 物流管理士 運行管理者 第1種衛生管理者 活動領域 日本物流学会理事 (社)中小企業診断協会会員 日本ロジスティクス研究会(旧物流技術管理士会)会員 国土交通省「日本海側拠点港形成に関する検討委員会」委員ほか (公社)日本ロジスティクスシステム協会「物流技術管理士資格認定講座」 ほか講師 著書(いずれも共著) 『物流コスト削減の実務』(中央経済社) 『グローバル化と日本経済』(勁草書房) 『ロジスティクス用語辞典』(日経文庫) 『物流戦略策定のシナリオ』(かんき出版) ほか   目次 1.はじめに 2.ラストワンマイルのその後 1.はじめに   2017年9月の第372・373号「軽トラ運送が熱い」と、2020年11月の第447号・448号「続・軽トラ運送が熱い」の二度にわたり、軽トラ運送についてレポートさせて頂いた。   性懲りもなくというか、三度目のレポートをさせて頂きたい。主なテーマは、「ラストワンマイルのその後」と「軽トラのEV化」という最新の動向である。 (1)軽自動車の規格   後段の「軽トラのEV化」については、軽自動車の規格も関係してくるので、第372号の「2.軽トラックとは」を参照されたい。   軽自動車の規格については、1949(昭和24)年の制定以来、何回も改正されている。   「現行規格では、排気量660㏄、全長3.4m、全幅1.48m、全高2.0m(それぞれ未満)である。   積み荷制限は、貨物重量350㎏、積荷高さ2.5m、荷台からのはみ出し積載は道交法で荷台長の1.1倍までとされている。」(上記、第372号記事を再掲)   車両重量については制限がないので、なかには1tを超えるスーパーハイトワゴンのように、「軽自動車」とは思えないような車種もある(1980年代のカローラ・サニーなどの車重は800~900kg)。お値段の方も200万円を超えている。   なお、軽バンも車両重量は1トン近いものが多く、乗車定員2名(110kg)、貨物重量350kgと燃料を加えると、1.5トン近くなる。軽バンは2021年9月以降、法規整備と安全装備の充実により、ライトを自動的に点消灯させるオートライトや、横滑り防止装置を装着するなど、改良が図られている。   以前の軽自動車には、「農耕作業車」という区分があり、後に「小型特殊自動車(小特)」になった、耕運機(小型トラクター)や市場などで使われているターレットが、小特に分類される(小特は普通自動車運転免許で運転できる)。   超小型モビリティについては、トヨタ「コムス」などが「原付ミニカー」(ナンバープレートは青色)として、乗員2名(110kg)、貨物の最大積載量30kg(自転車と同じ)であった。2021年6月に規制が緩和され、最大貨物積載量が90kgまで拡大された。   トヨタでは、2022年にコムスの後継車両として、電動超小型モビリティ「C+pod」を、法人向けに発売予定である。 写真1 トヨタの超小型モビリティ「コムス」 (筆者撮影) *画像をClickすると拡大画像が見られます。   また、軽自動車のナンバープレートは、1975(昭和50)年に現在の黄色に黒文字(事業用車両は黒に黄色文字)になった。その理由は、次の2点と言われている。 ①高速道路の料金所で軽自動車を識別しやすくするため ②高速道路での速度超過取締りをしやすくするため(当時、軽自動車の最高速度は80km/h。現在は100km/h) […]

第474号 数字の独り歩きに注意(2021年12月21日発行)

執筆者 山田 健 (中小企業診断士 流通経済大学非常勤講師)  執筆者略歴 ▼ 著者略歴等 1979年日本通運株式会社入社。 1997年より日通総合研究所で、メーカー、卸の物流効率化、コスト削減などの コンサルティングと、国土交通省や物流事業者、荷主向けの研修・セミナーに携わる。 2014年6月山田経営コンサルティング事務所を設立。 著書に「すらすら物流管理(中央経済社)」「物流コスト削減の実務(中央経済社)」 「物流戦略策定のシナリオ(かんき出版)」などがある。中小企業診断士。 URL:http://www.yamada-consul.com/   目次 I.ピンとこない議論 II.数字の持つ力 III.トラックの6割は空で走っている? IV.「6割は空」の根拠 V.貨物には偏りがある VI.運行方法で積載効率は低下 VII.数字の独り歩きを疑わないと間違える I.ピンとこない議論   適切ではないかもしれないが、今回は新型コロナにかかわる素朴な疑問から始めたい。誰もが感じていて、たぶん聞き飽きている例の疑問である。日本の人口1,000人あたりの病床数は13.0床とOECDで最多で、G7の中でも2位のドイツ(8.0床)を大きく引き離す。一方で感染者数は欧米よりはるかに少ない。なのに、感染ピーク時になぜ医療崩壊の危機に瀕するのか、という問題である。   その理由についてはおおむね、「日本は政府や自治体が指示できる公立、公的病院の数が少ないので、受け入れを強制できない」といった趣旨で報道されている。   わかったような、わからないような、筆者には今一つピンとこない話である。同じような印象を受けておられる方も多いのではないか。   腹落ちしない理由が何かはっきりしないままひたすら自粛の毎日であったが、先日の日経新聞の記事で少し納得できた(図表1)。以下に記事の一部を引用する。 ******** *画像をClickすると拡大画像が見られます。   日本の医師数は約32万7,000人。人口1,000人あたりでは2.5人とドイツ(4.3人)や英国(3.0人)を下回り、経済協力開発機構(OECD)加盟37カ国の中で27位に甘んじる。   それ以上に深刻なのは1病院あたりの医師の少なさである。米国(137人)やドイツ(114人)が100人を超えるのに対し、日本はわずか38人にとどまる。決して多くない医師が、海外よりも数が多い病院に散らばっている。一般に病床数は医療インフラの充実度を示すが、日本の場合は病床が多すぎ、患者に寄り添う現場で医療人材の手薄さが際立つ。米国や英国は医師1人がほぼ1病床を診るが、日本は1人で5つの病床を受け持つ。先進国では異例の「低密度」医療の体制になっている。(日経新聞2021年5月30日付け朝刊より一部引用) ********   病床や病院の数こそ多いけれど、医者も看護婦もまったく足りないということである。これに診療部門や経営主体の偏在要因が加わって崩壊の危機に瀕したのであろうが、これまでは病床数の多さだけが強調され、肝心の医療関係者の数や配置が報じられていなかった点が理解を難しくしていたのではないか。 II.数字の持つ力   いうまでもなく筆者はこの分野についてはまったくの門外漢であり、日本の医療体制を論じるつもりは毛頭ない。ワイドショーのコメンテーターでもあるまいし、素人が論じられるわけもない。もちろん日経新聞を持ち上げるわけでもない。   ここで申し上げたいのは、「数字の持つ力」と「数字の独り歩き」である。いうまでもなく、数字の持つ力は大きい。定量的な説明は何よりも説得力がある。その一方で気を付けなくてはならないのは、一方向からだけの数字が独り歩きすることである。コロナの例では、病床数の多さだけが独り歩きをしていたから問題の核心をわかりづらくしていたのではないか。   疑問が一定程度解けた理由の一つが、当初の「欧米より病床が多い」という数字に加えて、「日本の医師数が少ない」という別の角度からの数字が示されたことである。たとえば、人間ドックでは計測されたさまざまな数値から総合的に判断して真の病気を突き止めるように、多面的な数字をとらえることによって、真実が明らかになることがある。 III.トラックの6割は空で走っている?   ここからが今回のテーマであるが、最近の物流を取り巻く動きにも同じようなことがいえるように思う。   業界では物流DX(デジタル・トランスフォーメーション)を目にしない日はない。物流DXの正確な定義はともかく、物流にもようやくデジタル技術による変革の波が到来しつつあるのは喜ばしいことである。本来の意味である「経営の意思決定」や「戦略」などといった大げさな取り組みではなくても、この連載で繰り返し述べてきたように、日々の非定型的で荷主ごとに異なる手配業務やさまざまな帳票類、報告、連絡業務などが標準化、デジタル化されることを大いに期待している。   ただ、この大きな波の中でひとつ気になることがある。正確に言えば、物流DXでなくともそれ以前からずっと気になっていたことである。それはいま進行している取り組みの多くが「トラックの6割(あるいは5割)は空で走っている」という前提で進められていることである。   最新の話題である「フィジカル・インターネット」が典型である。筆者の理解が間違っていなければ、フィジカル・インターネットとは、物流をどこか特定の拠点や幹線輸送に集めて運ぶのではなく、業種や事業者に関係なくバラバラに最適な単位(ロールボックスやパレットなど)に分けて目的地に到達させることだという。ちょうどWeb上で送り手の情報がパケット単位に分割され、さまざまなルートを経由して受け手のルーターに届くインターネットのような仕組みであることから、この名称となったといわれている。インターネットのデータ送信と同様の概念で同方面に向かう大量の貨物を分散し、自社・他社を問わず空いている倉庫スペースを経由し、トラックの空いている荷台で運ぶ。その際、一人のドライバーで長距離を走るのではなく、インターネットが世界各地の通信設備を細かにつないでいくように、網の目の結節点を最適に選択して短距離を緻密につないでいく。この場合、AIなどのデジタル技術が最適なルートを指定する。これがフィジカル・インターネットのイメージである。   考え方としては理解できないことはないが、実業への落とし込み、実現に至るプロセスなどについて詳細に議論されているようには思えない。業界の人間としては、現時点ではかなり乱暴な構想という印象を拭いえない。   少し本筋からそれてしまったが、本稿はフィジカル・インターネットを評するのが目的ではない。   フィジカル・インターネットが成り立つためには、目的地の方向へ向かう荷台の空いたトラックがあちこちに走っていなければならない。こうした多くの物流DXが「トラックの大半が空で走っている」ことを前提として構想されているのである。業界では常識とされている、この数字は事実であろうか、というのが今回のテーマである。 IV.「6割は空」の根拠   「トラックの6割は空」の根拠はおそらく国土交通省が公表している「自動車輸送統計月報」であろう(図表2)。   直近2020年9月の営業用トラック「積載効率」が39%つまり約4割である。積載効率とは、実際に輸送した「輸送トンキロ」を「能力トンキロ(荷台に目いっぱい積載した状態でのトンキロ」で除した数値である。トンキロとは走行した距離と貨物の輸送重量を掛け合わせたものであり、輸送の規模を表す。たとえば、4トン車に2トン積載して20キロ走行すれば“輸送トンキロ=2トン×20km”÷“能力トンキロ=4トン×20km”で積載効率は50%となる。   この統計を見る限りでは、たしかにトラックの6割は空で走っている。 *画像をClickすると拡大画像が見られます。 V.貨物には偏りがある   しかし、長年物流の実務に携わってきた人間として、この数字には大いに違和感を覚える。実感として、トラックはそんなに空で走っていない。実情を肌で感じている物流業界からそうした声が聞こえてこないのは不思議である。   そこで、この空車がどのような状況で生じているかという別の角度からの数字で検証してみよう。結論から言えば、こうした空車の多くは往復貨物の偏りと運送会社のトラック運行方法により必然的に生じている可能性が高い。   往復貨物に地域的な偏りがあることについては、国道交通省が5年に1回実地している「全国貨物純流動調査2015年」を参照してみる(2020年度は新型コロナにより中止)。この調査は、2016年10月の3日間の品目別、輸送機関別などの貨物の動きについて、全国6万5千事業所にアンケート調査した結果をまとめたものである。筆者が以前所属していた会社が事務局を務めていたこともあり、貨物流動の実態を反映している点での信頼度は一定程度あるものと考えられる。 *画像をClickすると拡大画像が見られます。 […]

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