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第540号 「物流共同化の過去・現在・未来についての考察」~物流共同化実態調査研究報告書より~(後編)~(2024年9月17日発行)

執筆者 浜崎 章洋
(大阪産業大学 経営学部商学科 教授)

 執筆者略歴 ▼
  • (略歴)
    • 1969年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。
    • タキイ種苗、日本ロジスティクスシステム協会、コンサルティング会社設立を経て現職。
    • 2004年度、2013年度日本物流学会賞、第12回鉄道貨物振興奨励賞特別賞受賞。
    (著書)
    • 『改定第2版 ロジスティクスの基礎知識』(海事プレス社)
    • 『物流コストの算定・管理のすべて』(共著、創成社)
    • 『ロジスティクス・オペレーション2級』(共著、社会保険研究所)
    • 『通販物流』(共著、海事プレス社) など
  • サカタグループ2024年3月15日開催 第27回ワークショップ/セミナー「ロジスティクス戦略の新動向」の講演内容をもとに編集しご案内しています。
  • 今回大阪産業大学 経営学部商学科 教授 浜崎 章洋様の講演内容を計3回に分けて掲載いたします。
  • *前号(2024年9月5日発行 第539号)より
     

    目次

    • 5.物流2024年問題について
    • 6.物流2024年問題への対応
    • 7.さいごに・・・これからの物流共同化
    •   

      5.物流2024年問題について

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         では、物流2024年問題が進んでくると、どのような影響があるのでしょうか。
      ①物流会社とか運送会社の売り上げ、利益は減少するでしょう。②ドライバーは、労働時間の制限があるので、収入が減るでしょう。③需要と供給のバランスが悪くなるので、荷主の物流コストは上昇するでしょう。これらは、皆さんご承知の通りです。これは皆さん、頭を悩ましているかもしれませんが、お金で解決できることなのです。
      これらのは3点は、お金で解決できるのですが、皆さんが一番困ることは、荷物を運べなくなることですよね。荷物が運べなくなったら、商取引が完了しなくなる、できなくなるという恐れがあるかと思います。
      本日、荷主企業の方がいらっしゃいますが、怒らないで聞いてください。荷主企業の方は、2024年問題で、物流コスト上がる、運賃が上がると言われています。
      これは実は、今までの運賃とか物流費が安すぎたのです。上がるのでは無くて、今までが安すぎたので、適正な価格に、これから戻していこうとしているのです。逆に言うと、この30年間、荷主企業の方は、安い運賃と物流コストを享受されてこられたのです。物流コストが適正な価格水準に戻ってくるということなのです。この点は、くれぐれも誤解のないようにお願いします。

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        では、何もせずに黙って見ているのかというと、実は、行政も一生懸命取り組んでいます。トラックドライバーの労働時間改善の取り組みについては、全国47都道府県と中央省庁で、協議会(「トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会」)を作って5年ぐらい活動しています。現在も実施していますが、そういった活動を行っているとか、標準運賃を周知するとか、標準化を推進していきますとか、ホワイト物流の推進とか、行政も一生懸命頑張っているのです。
      これは、皆さん見たことがあるかと思いますが、「物流革新に向けた政策パッケージ」のポイント(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/buturyu_kakushin/pdf/20231226_1.pdf)で、政府、および関係省庁より、商慣習の見直しとか、物流の共同化等の具体的な施策が出ています。情報量が多いので、お時間がある時に、お目通しいただければと思います。

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         こちらは、今から半年ぐらい前、新聞の一面に出ておりましたが、こういった「物流革新緊急パッケージ」(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/buturyu_kakushin/pdf/kinkyu_package_1006.pdf)、及び、そのポイントということで、政府、および、国土交通省より出ています。

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         例えば、モーダルシフトにより、鉄道とか船舶での輸送量を増やしていきます、とか、荷主企業に物流経営責任者(CLO)を置くことを義務付けます、と打ち出しています。適正な運賃の確保に向けた値上げ、これはこの前の国会で承認された、ということもあり、政府も本腰を入れて取り組んでいるところです。それでは、産業界の皆さんは何をしているのかというと、例えば幹線輸送、特に長距離輸送のところを、モーダルシフト、鉄道とか船舶(内航海運)の利用拡大を推進しています。

      6.物流2024年問題への対応

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         もう一つ、ぜひ取り組んでほしいのが、今までのビジネスの時間のスケジュールを変えていくこと、具体的に言うと、納品のリードタイムを延長しませんかということです。
      今の皆さんのタイムスケジュールで言うと、今日の例えばお昼の12時とかに受注したものは、今日のうちに出荷作業をして、運送会社さんに荷渡して、翌日の午前中に納品ですね、こういうタイムスケジュールが多いかと思いますが、受注の締め切り時間は夕方の17時でもいいので、翌日に作業をして翌日の夕方、運送会社さんに荷渡して、翌々日納品にしたらどうですかという話です。
      今までは、当日受注し、午後に現場(出荷)作業をして、運送会社さんに荷渡して、翌日納品ですと、この場合、今日の受注量がいくつかわからないから、庫内で作業する人も見込みの人数だし、トラックも見込みで手配します、ピッタリ当てはまるとよいですが、不足したり、余ったりします。
      受注時間は、お昼ではなくて夕方でよいので、夕方に受注時間を締め切って、そして翌日の作業人員とトラックを手配したら、必要なだけの人員とトラックを準備すればよいのです。翌日の夕方に運送会社さんへ荷渡しして、翌々日に納品すればよいのです。
      このように、納品のリードタイムを変更することによって、過剰な庫内作業人員とかトラックあるいはトラックドライバーさんが大幅に効率化できますよ、ということです。この、納品のリードタイム、あるいはタイムスケジュールの見直しをされたらどうでしょうかということです。
      実際に、加工食品メーカーさんが、実施されています。味の素さんとかハウス食品さんとか、いわゆるF-LINE(https://www.f-line.tokyo.jp/)*3 へ参加されている企業さんが、積極的に取り組んでおられます。これらは、日用雑貨業界のメーカーさんにおいても、取り組んでおられます。
      (注釈)*3.食品関連メーカー5社が出資し、参加企業の物流事業を統合し、構築した共同物流ネットワーク
      なぜこういった取り組みが可能かというと、メーカーの納品先の卸さんにも在庫があり、小売業の物流センターにも在庫があるのです、それで、納品リードタイムが1日延長されても何とかなるのではないですか(物流は維持できる)、ということです。
      これには、くれぐれも間違わないでいただきたい点が二つあります。
      一つ目は、命に関わるような取り扱い商品があります。例えば、医薬品とか医療機器とかです。二つ目は、単独の企業でこういった交渉をしても、絶対に取引先から駄目だと言われます。業界団体として、あるいは、業界全体の意向として交渉しないと駄目ですよね。
      加工食品業界とか、日用雑貨業界とか、アパレル業界とかというように、業界全体で取り組まないと、個別に進めてもうまくいきません。あとは、こういった直送化とか共同化を、業界全体で積極的に進めていただきたいと思います。

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        では、2024年問題もあと2週間後と迫った中で、具体的に何をすればいいのか、現場で出来ることは何かというと、ここに掲げているように、①標準化とか、②平準化、③共同化、④省力化、⑤物流サービス・物流品質の見直し、を行い業務の効率化をするということです。
      物流の標準化では、パレットとか、外装表示とかの規格を標準化するということと、もう一つ、誰にでもできるようにするということに、標準化の意味があるのです。これは、裏返して言えぱ、ベテランの人でしかできない、属人化されているということですが、誰にでもできるようにするということは、非常に重要なことなのです。
      平準化は、できるだけ波動を小さくしましょうということですが、平準化や標準化の具体的な説明については、こちらの資料を参照ください。

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         次に、物流サービスとか物流品質の見直しと言いましたが、これは、本日会場に、荷主企業の方、物流会社の方、たくさん参加されていると思いますが、怒らないで聞いてください。

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         日本の物流サービスは過剰サービスだと思います。
         例えば、皆さん建設現場の前を、朝通る時は、いろんな建設現場向けの納品のトラックとかトレーラーがずっと並んでいて、渋滞しています。みんな朝8時納品なのです。8時に行ったら建設現場の方はラジオ体操をしていて、8時納品を誰も喜んでいないのです。
      皆さんの主要な取引先さんや、荷主企業さんが、朝8時半納品とか9時半納品とか、一生懸命取り組んでいるとします。これが本当に必要なんですか、着荷主さんに確認しましたか、ということなのです。昔は、在庫を持っていなかったから、開店前に商品を納品して欲しかったというお客さんも、今は在庫を持つようになったから、別に9時前(開店前)の納品でなくていいよということになるのです。
      そういった着荷主さんは、たくさんいらっしゃいます。営業部門が過剰サービスをしたり、あるいは、誤出荷率が50ppm以下とか言いますが、それは本当に必要なのですか、そのためにどれだけ手間をかけてるのですか、ということなのです。
      医薬品とか医療機器とか命に関わる商品は別ですが、こういったサービスを、皆さん荷主さんや営業部門から言われること、一生懸命愚直に取り組まれているのですが、これが、本当にする価値があるのかどうかということは、本当に疑問です。
      過去20年位前だったら、一生懸命やってできていたからよかったのですが、今は(働き方改革による労働時間の規制により、)できないのです。3年後5年後には、更にできなくなるのです。もし、どうしてもやらないといけないのだったら、それに見合った運賃だとか料金とか、費用をもらわないと、払わないと、本来できないということなのです。皆さんには少し耳の痛い話かもしれませんが、声を大にしてお伝えしておきたいと思います。

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         最後に、一貫パレチゼーションと包装モジュールについて、お話をしたいと思います。
      一貫パレチゼーションとは、パレット単位で流通、物流を行うことですから、メーカーの物流センター、卸さんの物流センターから店舗まで、一貫パレチゼーションを行うためには、包装モジュール化がとても重要なのです。
      包装モジュールとは、パレットのサイズに合わせて外装箱の大きさを決めていくというのものです。これは、中国のスーパーで撮ってきた写真なのですが、パレットのまま、店舗の売り場にドンと置かれているのです。
      例えば、日本でもディスカウントのリカーショップとかだと、第3のビールの特売とか、こんな形で売られています。だから、バラ積み、バラ下ろしをしないのです。パレット積み商品のフォークリフトによる荷役で、トラックから積み込みと、積み下ろし、店舗への納品を行い、日本でもIKEAさんの店舗では、一貫パレチゼーションで納品されています。
      こちらは、トルコで撮ってきた写真なのですが、これは韓国LGエレクトロニクス社の液晶テレビで、ユーロパレットにぴったりの外装箱のサイズですから、パレット単位で海上コンテナに乗ってパレット単位で積み下ろされて、このまま、家電量販店の店舗まで、フォークリフトの荷役により納品されています。
      これは、いわゆる一貫パレチゼーションをされています。一貫パレチゼーションをするためには、包装のモジュール化、つまり、パレットの大きさからダンボールの大きさを決めていき、ダンボールの大きさから、あるいはプラスチックのコンテナの大きさから、商品外装の大きさを決めていく、これを包装モジュールといいます。
      こちらは、ユーロパレットの大きさ(W800mm×D1200mm)を横方向に2分割、縦方向に3分割しているので、このダンボール箱の底面が40センチ☓40センチですね。
      これは、鶏のモモ肉を、スーパーで売っている写真ですが、この食品トレーが4つ載っていますから、一辺が約20センチ☓20センチというのがわかります。こんなふうにして商品外装の寸法を決めていくことを包装モジュールといいます。先程お見せしたものです。
      それで、何が言いたいのかというと、トラックの荷台の大きさからパレットの大きさ、パレットの大きさから外装箱の大きさ、外装箱の大きさから商品の大きさを決めていきます。これを包装モジュールと言い、これによりユニットロードシステムが活用され、物流効率化がされているということなのです。
      だから、一貫パレチゼーションを進めなさいと言うのは簡単ですが、包装モジュール化していないと、なかなか進められないということを、ぜひご承知おきいただきたいと思います。

      7.さいごに・・・これからの物流共同化

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          本日最後に、これからの物流共同化、ということで、今日参加の皆さんだけではなくて、荷主の営業部門とか、経営者の方にぜひ知ってほしいことは、これまでの物流サービスとか、物流コストは、今後とても維持できません、物流を止めないためには、産官学だけではなくて、消費者も交えて対応しないといけないということです。
      共同配送とか物流共同化、物流コストとか、環境負荷軽減だけではなくて、ドライバー不足への対策にもなってきます。従来の物流共同化は、販売物流が中心だったのですが、調達物流とか、幹線物流、館内物流とか、返品物流というように、今後どんどん拡大していくと思われます。
      そして、今私が大いに期待しているのが、AIとかロボット化とか新しい技術です。新しい、物流のベンチャー企業の方が、いろいろな取り組みをされていますので、こういった方々の、今後の活躍により、より高品質・低コストの共同化の実現が期待されるのかなと思っています。
      本日は長時間に渡りご清聴いただき、どうもありがとうございました。以上を持って、終了させていただきます。

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      (C)2024 Akihiro Hamasaki & Sakata Warehouse, Inc.

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