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第532号 物流共同化の過去・現在・未来についての一考察(2024年5月21日発行)

執筆者 浜崎 章洋
(大阪産業大学 経営学部商学科 教授)

 執筆者略歴 ▼
  • (略歴)
    • 1969年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。
    • タキイ種苗、日本ロジスティクスシステム協会、コンサルティング会社設立を経て現職。
    • 2004年度、2013年度日本物流学会賞、第12回鉄道貨物振興奨励賞特別賞受賞。
    (著書)
    • 『改定第2版 ロジスティクスの基礎知識』(海事プレス社)
    • 『物流コストの算定・管理のすべて』(共著、創成社)
    • 『ロジスティクス・オペレーション2級』(共著、社会保険研究所)
    • 『通販物流』(共著、海事プレス社) など

 本稿はサカタグループ「第27回ワークショップセミナー」(https://www.sakata.co.jp/news/wksemi_27/)セッション1、「物流共同化の過去・現在・未来についての考察 ~物流共同化実態調査研究報告書より~」のダイジェスト版として掲載しています。
今後本セミナーの講演内容を編集し、「ロジスティクス・レビュー」へ掲載予定ですので、是非ご期待下さい。

目次

  • はじめに
  • 1. 共同配送のメリットと継続の要因
  • 2. 物流共同化の研究
  • 3. 物流共同化を推進するにあたって
  • さいごに
  •   

    はじめに

      一年くらい前から、新聞やテレビのニュースで「物流2024年問題」が取り上げられるようになったと思います。それにともない、共同配送など「物流共同化」に関する記事が増えました。筆者は、所属している日本物流学会で、2006年ごろから「物流共同化」について、先生方と共同研究をしています。

    1. 共同配送のメリットと継続の要因

      輸送・保管・荷役・包装・流通加工・物流情報といった物流の6つの機能のうち、共同化のメリットが大きい共同配送について、そのメリットと成功要因を整理します。
    ・物流費の削減(輸送費だけでなく、例えば着荷主側の荷受け荷役費の削減など)
    ・物流の効率化(荷受業務の効率化、荷待ち時間の削減など)
    ・環境負荷の軽減(車両減によるCO2排出量削減など)
    このようにメリットが大きい共同配送ですが、さまざまな理由で継続できないケースが
    あるかと思います。共同配送が継続しているケースでは、次のような要因が挙げられます。
    ・物理的な制約(百貨店など納品先側に制約がある、過疎地など1荷主では荷量が少ないなど)
    ・取引先/納品先からの要望(コンビニ等の一括物流など)
    ・エコノミーとエコロジーの両立(物流費削減と環境負荷軽減の両立)

    2. 物流共同化の研究

      筆者は、日本物流学会の先生方と、2006年ごろから物流共同化について共同研究をしています。その成果は、2008、2012、2018、2023の約5年ごとに、「物流共同化実態調査研究報告書」として報告書を発刊しています(2023報告書は近々発刊の予定)。
    物流共同化の事例を報告書では、次のように分類しています。
    ①共同出資による共同物流運営会社等を設立しているケース
    ②協同組合・連合・協議会等を作って共同化を図るケース
    ③流通業に見られる一括物流のケース
    ④物流事業者主導により共同化を行うケース
    ⑤個別企業が複数集まり共同化を行うケース
    ⑥業務提携・資本提携の結果、共同化が図られるケース
    ⑦貨客(客貨)混載サービスにより共同化が図られるケース
    ⑧製造業・流通業・サービス業等の1企業が行う共同化事例
    ⑨賞や公的機関の取り組み事例

    2018の報告書から、⑧貨客(客貨)混載の事例が急増しました。貨客混載とは、路線バスに宅配便の貨物を積載して輸送するなど、旅客と貨物を混載するものです。地域の路線バスにとっては新たな収益源の確保により路線維持に、宅配便会社にとっては効率の悪いエリアの効率化やサービス向上につながります。路線バス以外に、タクシーや鉄道を利用したものもあります。また、宅配便の貨物だけでなく、地域の特産品などを高速バスで輸送し都市
    部で販売するなど、地域経済の活性化に役立っている例もあります。
    また、2018の報告書では、コンテナのラウンドユース、中継輸送、館内物流などの事例も増加しています。
    2023の報告書では、⑧製造業・流通業・サービス業等の1企業が行う共同化事例、⑨賞や公的機関の取り組み事例が増えています。
    ⑧は、例えば、すでに自前で物流インフラをお持ちの企業が「うちの物流インフラを利用しませんか?」と同業他社等に物流共同化を持ちかけたりするものです。⑨は、物流共同化の事例が官庁等に表彰されたり、公的機関と地域の企業等が物流共同化の実証実験をするなどといったケースです。
    従来の①~⑥は、物流費削減や物流効率化、環境負荷軽減が主目的と思われます。一方、⑦~⑨やコンテナラウンドユース、中継輸送、館内物流は、それらに加えて、トラックドライバー不足や労働力不足に対応し、物流の持続性も視野に入れたものと思われます。

    3. 物流共同化を推進するにあたって

      物流共同化を推進するにあたって、筆者が重要だと思っていることは、「標準化」と「エゴの排除」です。
    「標準化」には、「運用や規格を標準化する」、「誰にでもできるようにする」という2つの意味がありますが、本稿では、物流共同化を推進するために重要な運用や規格等の標準化について説明します。「運用・管理の標準化」とは、物流共同化に参加する企業の情報システムや運用ルールに関する標準化です。次に、伝票、荷姿、パレットのサイズ、外装段ボールのサイズ、外装表示などの標準化です。これらの標準化がないまま、物流共同化を進めようとすると、事務や現場の負担が大きくなり、継続が難しくなります。荷姿や外装表示を標準化することは、物流部門だけでは取り組めず、製造部門なども理解や協力が必要です。
    「エゴの排除」とは、例えば発荷主の営業担当者等からの、①競合他社に納品価格(納品数量)がわかってしまう、②当社の納品条件、出荷時間を優先できるのか などといったエゴ(不安や不満という言葉に置き換えられるかもしれません)を排除することです。営業担当者等が不安なことも理解できますが、物流2024年問題等で「運べなくなる、納品できなくなる」リスクがあります。
    筆者は、物流は経営問題と捉えています。物流共同化を推進するにあたっては、製造部門や営業部門の理解や協力が必要なので、経営層からのトップダウンで、物流共同化を推進していく必要があるのではないでしょうか。

    さいごに

      物流共同化は、物流のコスト削減や効率化、環境負荷軽減などだけでなく、ドライバー不足や人手不足の対応としても注目されています。また、これまでは、販売物流(納品)や幹線輸送の共同化の事例が多いですが、今後は、調達物流、返品物流など共同化の領域が拡大していくと思われます。
    トラック運転者への時間外労働の上限規制の適用(年960時間以内)の「物流2024年問題」への対応は、「ゴール」ではなく「スタート」であると筆者は認識しています。今後、規制は、もっと厳しくなると思われます。
    物流2024年問題への対応だけではなく、市民が安心安全に暮らせるよう物流を止めないためにも、経営層に物流共同化の重要性をご理解いただければと切に願います。


    【参考資料】
    日本物流学会(2008)『2008 物流共同化実態調査研究報告書』
    日本物流学会(2012)『2012 物流共同化実態調査研究報告書』
    日本物流学会(2018)『2018 物流共同化実態調査研究報告書』
    日本物流学会(2023)『2023 物流共同化実態調査研究報告書』(発刊予定)
    中央職業能力開発協会編(2017)『ロジスティクス・オペレーション2級(第3版)』
    社会保険研究所
    津久井英喜・近藤武・藤原廣三(2010)『図解よくわかるこれからの物流改善』
    同文舘出版
    浜崎章洋(2020)『ロジスティクスの基礎知識(改訂第2版)』海事プレス社


    (C)2024 Akihiro Hamasaki & Sakata Warehouse, Inc.

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