第530号 GS1 Japan Data Bank~商品情報データベースサービス~の発展と業界データベース連携(2024年4月23日発行)
執筆者 | 長田 真央 (GS1 Japan(一般財団法人流通システム開発センター) データベース事業部 研究員) |
---|
執筆者略歴 ▼
目次
- 1. GS1 Japan Data Bankの紹介
- 1.1 GJDBリリースの背景
- 1.2 GJDBの概要
- 1.3 GJDBの登録状況
- 2. GS1 Japan Data Bankと業界データベースとの共同取り組み
- 3. GS1 Japan Data Bankの今後の展望
はじめに
GS1 Japan(一般財団法人流通システム開発センター)では、GTINに関する基本的な情報の登録と適正な管理を実現するため、2019年にGS1 Japan Data Bank(以下、GJDB)のサービスを開始しました。本稿ではGJDBの概要と今後の展望などを紹介します。
1. GS1 Japan Data Bankの紹介
1.1 GJDBリリースの背景
近年、ITやインターネットの発展と普及により、インターネットを介した商品の取引は急速に拡大しています。さまざまな商品がインターネットを通じて、国や地域を超えて販売されていることから、商品を国際的に重複なく識別・管理できるGTINの重要性が一層高まっています。
GTINの需要が増加する中、GS1には「この商品の GTIN は、どの事業者のものか」「この GTIN の番号は、どのような商品に付けられているか」といった問い合わせが寄せられていました。そこでGS1は、GS1事業者コードをより厳格に管理・運用し、またGTINなどのGS1識別コードの情報を一元的に管理していく方針を打ち出しました。
一方で、当財団にも、GS1に寄せられていた問い合わせに加え、新たにGS1事業者コードの貸与を受けたブランドオーナーからは「GS1事業者コードの貸与を受けたものの、GTINの設定方法が分からない」「GTINとその商品情報の管理の仕方が分からない」「GTINからバーコードシンボルを作成する方法が分からない」といった問い合わせや、自社の商品情報を広くPRしたい」といった要望も寄せられていました。このため、GS1のグローバルな動きと連動しつつ、当財団に届いた問い合わせ・要望に応える仕組みとしてGJDBを構築し、2019年10月にサービスの提供を開始しました。
1.2 GJDBの概要
GJDBは、有効なGS1事業者コードを貸与された事業者(ブランドオーナー)が、GTINの付番と、GTINの番号に紐づく商品情報の管理を、より簡易に正確に行うことと、その商品情報を国内外に発信することを主な目的とした商品情報データベースサービスです。GJDBは以下の機能を実装しています。
① GTINの発行:ブランドオーナーが商品を識別するための最低限の情報を入力すると、GTINの番号が自動的に発行される機能
② GTINおよび商品情報の管理:GTINの付番状況や商品情報を管理する台帳としての機能
③ バーコード画像の生成、ダウンロード:発行されたGTINからバーコードシンボルを作成(10件まで無料)し、ダウンロードできる機能
④ レポート機能:登録者に対し、「入力誤りの可能性がある」「見直しの必要性がある」などの改善点・気づきを通知して正確な登録を促す機能
⑤ 商品情報の利用(利用者機能):GJDBに登録されている商品情報をWeb上から閲覧できる機能。なお、この機能を利用するには、別途申し込みが必要です。
⑥ 商品情報のPR(連携先):ブランドオーナーがGJDBに登録した商品情報を、当財団に関連する国内外のデータベースやサービスに広くPR(連携・公開)する機能
1.3 GJDBの登録状況
GJDBのサービス開始から2023年11月末までの商品の分類別登録状況の推移を(図1)に示します。サービス開始以来、順調に登録件数を増やしており、登録事業者数は約3万5千社、登録商品数は約360万件となっています。
図1 分類別登録数
GJDBの登録件数は着実に増加している一方で、登録されている商品情報の中にはデータの品質に課題があることが分かってきています。当財団では登録されている商品情報の「品質」をいかに向上させるかが重要だと考え、そのためにレポート機能(1.2 ④参照)を実装しました。レポート機能実装以降、通知されたレポートを確認したブランドオーナーから、商品情報の修正に関する問い合わせが寄せられるようになっており、このレポート機能を活用して商品情報が修正されることがGJDBのデータ品質向上に繋がっていると考えています。
2. GS1 Japan Data Bankと業界データベースとの共同取り組み
国内外でGTINの重要性が高まりを見せる中、国内の商品流通においてブランドオーナーが登録した信頼性の高いGTINに関する基本的な情報を業界横断的に利用可能とすることを目的に、GS1 Japan、株式会社ジャパン・インフォレックス(以下、JII)(注1)および株式会社プラネット(注2)はGJDB内に商品情報のレジストリーを構築しました。これをGS1 Japan産業横断レジストリー(以下、商品情報レジストリー)と呼んでいます。2022年2月にはJIIから、2022年6月にはプラネットから、ブランドオーナーがそれぞれの業界データベースに登録したGTINに関する基本的な情報(商品名、商品カテゴリー、ブランド名、内容量)のGJDBへの連携が開始されました。これにより、商品情報レジストリーの土台となる情報が日次で蓄積されるようになりました。
商品情報レジストリーの情報は、GS1およびGS1 Japanが管理・運営する各種サービス(GS1 Registry Platform(注3)、GEPIR(注4)やGJDB利用者機能)に連携され、公開されています(図2参照)。
図2 GS1 Japan産業横断レジストリー(商品情報レジストリー)の全体イメージ
3. GS1 Japan Data Bankの今後の展望
商品情報レジストリーの情報は小売業者、卸売業者などが商品を新たに取り扱う際に、ほぼ例外なく確認している重要な情報であるため、必要最低限な商品の情報は商品情報レジストリーで利用することができます。一方で、小売業等からは商品の基本的な情報に加えて業界データベースが持つ詳細な情報も商品情報レジストリー経由で利用したいという要望があり、これに応えるために小売業と業界データベースと共同で、詳細な情報も利用可能な仕組みづくりを検討しています。また、商品情報が利用されるためには、商品情報の充実が不可欠だと考えています。他業界の商品情報データベース事業者(または企業)にも協力を呼びかけ、商品情報の網羅率向上に取り組み、登録を拡大していきたいと思っています。
この取り組みを更に強化し、商品情報レジストリーを広く活用いただきたいと考えています。
GJDBにご興味のある方は、GS1 Japan(一般財団法人流通システム開発センター)のホームページで確認してください。
https://www.gs1jp.org/database_service/gjdb/index.html
※有効なGS1事業者コードを貸与された事業者の方であれば、無料で商品情報を登録することができます。
(注1) 株式会社ジャパン・インフォレックス(JII)
酒類・食品業界の卸売業が共同で商品マスターを登録・管理し、業界の合理化に資することを目的として2006年に設立され、商品マスター情報提供と標準化・合理化推進を行っています。
(注2) 株式会社プラネット
日用品・化粧品業界の主要メーカーが出資して、日本初の業界特化型のEDI(電子データ交換)サービスを目的として1985年に設立され、主に、EDI、商品データベース等のサービスを行っています。
(注3) GS1 Registry Platform
GS1本部が運営するグローバルなデータベースサービスです。
(注4) GEPIR
GS1事業者コードの貸与を受けている事業者の情報を、一元的に提供するデータベースサービスです。
(C)2024 Mao Nagata & Sakata Warehouse, Inc.