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物流システム

第482号 物流(開発)と共に歩んだ50年(前編)(2022年4月19日発行)

執筆者  髙野 潔

 執筆者略歴 ▼
  • 職歴 補足・説明
    入社・日産自動車(33年間)
    • 本社情報システム部門
    • 座間工場開発プロジェクト(情報システム)部門
    • 相模原物流センター・倉庫システムの開発(プロジェクト)部門
    出向・バンテック(7年間)
    • 協業・共同化物流システム開発(プロジェクト)部門
    • 荷姿分科会委員(現・経済産業省)
    • 輸送分科会委員(現・国土交通省)
    起業・KRS物流システム研究所(21年間)
    • 株式会社湘南エスディ:物流顧問(5年間)
    • 株式会社カサイ経営:客員研究員(7年間)
    • 日本物流学会:正会員(8年間)、ロジ懇話会事務局(5年間)
    • 日本情報システムユーザー協会(JUAS-ISC):個人正会員(9年間)
    • 日本情報システムコンサルタント協会(JISCA):会員・理事(8年間)
    • 中小企業基盤整備機構:物流効率化アドバイザー(8年間)
    • 中小企業ベンチャー総合支援センター:新事業開拓専門員(6年間)
    • 中小企業基盤整備機構:企業連携支援アドバイザー(6年間)
    • 中小企業大学校(関西校):非常勤講師(6年間)
    • 海外技術者研修協会(AOTS)関西研修センター:非常勤講師(2年間)
    その他
    • 座間市観光協会:事務局長(2年間)
    • 座間市都市計画審議会:審議委員(2年間)
    • システムデザインオフィス合同会社:顧問(2020年~)

 

目次

1.はじめに。

  1960年代に所属部員、約180名の大所帯の日産情報システム部門に入社、研修で習った日産の技術を吸収し、スキルを高め、早く一人前になりたいとの思いから直属上司に研修で学んだことを復習したい旨、無茶ぶりと思われるお願いをしてしまいました。上司は、今、職場にとって必要な利用技術(IBM650、HITAC、IBM405、407、各種PCS、etc)を学んで欲しいとのことで、数週間に分けて徹底的にご教示を頂き、実務で技術を磨き同期、後輩からトラブルが発生すると頼りにされる存在になりました。エンジニアとして人に教え、頼られるという心地よさを仕事の原点にしたいと思うようになりました。
  本社情報システム部門、工場設立情報システム部門、部品物流開発部門、関連物流企業への出向、さらに物流コンサルティング業で起業(独立)しました。私の経験した物流の一端を物流に携わる人達にご披露し、一滴の影響を与えられれば幸いと思い執筆しました。

2.部品物流開発部門で取り組んだ物流

  1972年(昭和47年)頃、座間工場情報システム部門から相模原部品物流開設準備室(開発プロジェクト)に移動になりました。所在地は、神奈川県相模原市、敷地(425,000㎡)の広さにビックリでした。
  自動車メーカーは、旧型車、現行車を問わず、廃車されるまでの間、サービス/補修部品を数世代に渡り供給することの責務があり、メーカーによる違いはありますが約15~20年の在庫維持が必要で各社共に部品点数50万~100万点を管理しています。メーカー毎にマチマチですが実在庫を30万から50万点も抱えています。
  当時、膨大な部品点数(在庫)を抱えていた日産の物流部門は、スペース不足解消に巨大な部品物流拠点の建設に踏み出しました。「スペースの有効活用、作業の効率化、納期、品質・精度」などを重視、即納率が高められるシステムの導入を最大の目玉としていました。相模原部品物流部門の最盛期の規模は、敷地面積約425,000㎡、倉庫面積9棟合計、約253,000㎡、管理点数、約33万点、一日当りの入荷件数約41,000件、出荷件数約106,000件でした。
  私の開発部門の担当は、全て高層自動倉庫で2号棟、3号棟、6号棟(ト-クンカード方式)、7号棟(BCR制御)、8号棟(音声制御)と部品輸出流通基地の倉庫棟(川崎市東扇島)の自動化システムの開発でした。コンピュータを駆使して入出庫制御(自動化)と共に格納効率を目指した高度で多岐多彩な運用・緻密な制御処理、情報処理、大容量ファイルによる高速処理、各種マンマシンシステムなど約18年間の開発期間を経て、様々な物流システム、制御システム、多くの倉庫システムの自動化、特例業務に取り組み、開発してきました。その技術を先々の出向、起業(独立)時の物流開発、物流実務に反映させることが出来ました。(参考A、B:参照)

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3.出向時代に取り組んだ物流

  1980年代後半に日産の関連企業のV社(物流)とH社(システム開発)の2社から出向のお誘いを頂き、先行して依頼のあったV社にお世話になることにしました。
  V社は、神奈川県の地域卸4社と化粧品・日用雑貨の協業・共同化物流システムの開発に取り組むとのことでした。卸4社の共同物流の開発の狙いは、経営を継続、大手卸業に対抗するための競争力を高めること、売上の増加、コスト低減と物流の在り方を研究、最先端の物流システムを導入することでした。(参考C:参照)

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  卸4社の物流拠点9か所を1ヵ所に集約、その後、取り扱い物量の拡大を目指し、装飾品・菓子・家庭雑貨(TC)、メーカー在庫、コンビニ在庫を受入、年商約300億円に拡大し、同一商圏での物流の協業・共同化を目指しました。
  出向後、日用雑貨卸の物流実態の勉強のために関西(I社)の先進物流拠点を視察、作業員が少なく床面に多数のコンベアと自動搬送機を接続して効率よく運営していました。次に、越ケ谷(T社)の卸団地にある最新式の物流センターを見学、出庫商品が一斉に1階の発送作業場に自動搬送(終結)され、発送作業場が未コントロール状態、後工程での処理能力不足と集約タイミングのズレで大混乱していました。このマテハンメーカーの導入実績にひかれるものがあり、この教訓を糧に私達のコンペへの参加を打診しましたが、お断りされてしまいました。この視察での教訓を物流拠点の開発に取り込み成功させることを肝に銘じました。
  そして、一番神経を使ったのが配送ネットワークでした。コスト削減の目玉である配送の組み換えを参加卸の専務、常務などと効果が享受できるよう組み換えを検討しました。参加卸の商圏を「20エリア」に分割、毎日約80~100台の配送車両が必要で個口数、納品先数などを勘案してコンピュータで配送コース毎の納品先数・配送順、積載量、積載率などの試算結果を運行管理者の経験で修正、実配車に繋げるようにしました。さらに顧客の商品受入態勢(AM、PM、夜間、納品時間指定、etc)などを考慮し、週毎の納品回数、曜日、時間帯を決めていきました。スタート時は事前に納品先(顧客)の要望を極力取り入れながら徐々に共同物流の効果を目指した配送ダイヤグラムに近かずくように組み変えを実施していくことにしました。従来の個別卸が配達していた納品先は大手量販店を含めて極力、同一曜日と時間を基本にしました。
  これを前提に配送順(時間)などの手順を各社幹部と調整、結果を持ち帰って改善策の検討の予定でしたが検討中の配送ネットワークを閲覧したメイン卸の営業幹部(常務、部長)と営業員5~6人が夜間、仕事をしている所に乗り込んできて「卸は、納品先に足を向けて寝れないほど大切にしている納品曜日や納品回数の変更は、断じて許しません」と提案内容の撤回の抗議を受けてしまいました。深夜まで話し合った結果、共同物流のメリットを享受するウェートの高い配送ネットワークをよりよくしていくためにプロジェクト案を顧客と調整して頂くことを前提条件にその場は決着、条件として各社共に顧客(納品先)の要望を極力取り入れてスタートすることにしました。
  その後、コース毎の配送コスト試算を行い理事長自らが協力頂ける中小の得意先の社長と折衝、改善の努力をしましたが大手得意先の変更が伴わないことには焼け石に水でした。共同物流/共同配送の難しさを実感することになりました。
  さらに総合テスト、初期在庫搬入、現場作業者の訓練に苦労しました。敷地:3,000坪、延べ床面積:6,700坪、建物5階建・床4層)が完成した後、ホスト系、制御系、物流&マテハンシステム系(単体、組み合せ、連動、総合テスト、モニターラン、初期在庫の搬入)などの最終テストを行いました。卸各社のシステムと共同物流センターのホスト系/サブホスト系とのI/F接続、制御系システム、マテハン系、物流センター業務が機能することを確認する稼働前の大仕事でした。総合テストの内容は、制御系(プロコン)と物流設備を接続し、それぞれの条件(機能)通リに動作するかの確認をしながら物流設備の初期トラブルの解消とシステム系の精度アップを図ることでした。
  さらに、動作確認を行いながらコンピュータオペレーション、物流設備の操作、保全担当の維持管理技術の習得、庫内作業者の基本操作を総合テストの中に組み入れ、オペレーションの操作訓練を行い操業本番に備える準備をしました。また、問題点が発生すれば、その日のテスト完了後、深夜までかかっても速やかに対処することを基本に取り組みました。日産相模原部品センターでは、コンピュータによる動作確認を可能にするシミュレーションシステムを作成、作業者の突発残業(労働組合対策)なしでテストに取り組んだものでした。
  初期在庫の搬入は日雑仕入メーカーの協力で在庫商品を本番と同じように発注指示、搬入、本番システムで在庫搬入テスト兼物流&マテハンテストを行い、テストでの棚入商品は、そのまま初期在庫として本番に繋ぎました。
  稼働後、卸各社の旧倉庫の在庫残は、メーカー返品で対応、40日間のテスト後、モニターラン兼本番稼働に入り、一部混乱もありましたが1ヶ月ほどで収束、ほぼ順調なスタートが出来たことに安堵しました。(参考D:参照)

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※後編(次号)へつづく




(C)2022 Kiyoshi Takano & Sakata Warehouse, Inc.

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