第306号 マーケットインを意識した物流活動(2014年12月16日発行)
執筆者 | 髙野 潔 (有限会社KRS物流システム研究所 取締役社長) |
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目次
- 1.はじめに
- 2.物流活動を構成している機能
- 3.物流実務の役割と満足の実現
- 4.物流実務を満足させる物流システム(仕組み)づくり
- 5.物流活動とマーケットイン
- 6.顧客指向を徹底すること。
- 7.最後に
1.はじめに
「必要なもの」を「必要な時」に「必要なところ」に「必要な量」だけ、市場の要求に合わせて、的確に商品を供給するのが物流に求められている役割だと言われています。
即ち、工場や生産地で生産した商品、輸入した商品を顧客に届けるまでの保管、輸配送とそれらに伴う全ての作業活動が物流に求められているのが物流の役割と考えます。
即ち、マーケティングの中の「生産」「仕入」「物流」「供給」に関わる全活動を意味するもので、物流に求められている役割とは、企業競争力を高めるための「マーケットイン」そのものと言えるでしょう。
2.物流活動を構成している機能
物流部門は、開発部門、生産部門・仕入部門、マーケティング部門、販売(営業)部門などの様々な部門と連携して成り立っています。
そこで、各部門と物流部門の特徴を簡単に列挙してみました。
1)開発部門と物流部門の関係
リアルタイムに市場の動きを製品開発に反映させることが必須です。
物流部門は、開発部門が売れる製品を開発できるように製品毎の在庫の動きから集めた情報をスピーディにフィードバックする必要があります。
2)生産・仕入部門と物流部門の関係
市場が必要としている製品を必要な量を生産、補充、仕入、在庫することです。
従来は、製造、仕入部門の最大の目的は、如何に製造原価(大量&ロット生産)や仕入原価を低減するかに力を入れてきていました。
3)マーケティングと物流部門の関係
市場ニーズに適合した商品やサービスを適切な価格やタイミングで売れる仕組みづくりを行うこと、市場ニーズを適切に把握できること、市場ニーズを適切に把握しても過不足(特に欠品)なく供給できる仕組みが必要です。
適切なタイミングで商品やサービスを市場に出すことが必須です。
4)販売部門と物流部門の関係
販売部門(営業)の売上をベースとした評価基準からの脱却がキーポイントです。
販売部門(営業)は、欠品を恐れて在庫を多くもつ傾向にあります。
売上確保のために実需と無縁の押し込み販売をする傾向にあります。(返品に直結)
販売部門(営業)と物流部門が市場ニーズとコスト意識を共有化することが肝要です。
3.物流実務の役割と満足の実現
物流とは、「サービス性」「速配性」「空間の有効利用」「規模の適正化」「在庫の適正なコントロール」などの効果を発揮すること、そして、トータルコストの満足を実現することが役割と考えています。
顧客のサービスとして顧客の要望する納品条件に沿って、品切れがなく、荷傷みなどの事故がなく、ローコストで顧客サービスを実現することです。
さらに、物流施設は、需要地の近傍に立地したり、配送のために高速道路を利用したり、ルート配送、定型配送などを実施して、顧客が求める必要な場所と時間に商品を供給すること、限られた条件の中でサ-ビス性のアップに努めます。
そして、空間の有効利用(Space Saving)を目指して土地の有効利用のための立体化施設やシステム機器の採用、物流施設の集約、分散の適否の検討、機械化、自動化などの設備導入による省力化、情報処理の集中化によるHOST系、WMS系のコンピュータ利用などの適正規模の導入を進める必要があります。
また、在庫量の増大は多くの保管スペースを必要とし、且つ在庫投資による資金の無駄が生じるため、市場の需要の変動に合せて、在庫を適正にコントロールする役割を持つ物流情報システムの導入が必須条件となっています。
4.物流実務を満足させる物流システム(仕組み)づくり
顧客に提供するサービス内容(受注〆時間、納期など)が重要なポイントになります。
先ず、顧客が重要視する物流サービスの内容を決めること、受注〆時間と納期を起点にした顧客への納期条件を策定するところから始めます。
いつまでに受注し、いつまでに届ける(届けられる)かが重要です。
そして、物流センターの拠点配置、拠点規模、保管(在庫)アイテム数、輸送方法、保管規模(物流設備とスペース)、データ収集(納品時間別配送先数、配送先別納品量など)アイテム毎の出荷件数(伝票行数)、出荷量、形状寸法(L・W・H)、重量、などをシステムに反映させます。
さらに、物流拠点の基本内容を決めます。
庫内レイアウト(物流設備・機器)、作業方法と作業タイムチャート、考えられる例外処理、作業人員、コストシミュレーション(配送作業費・・・配送運行、配送車輌台数などの試算)、作業プロセス別庫内オペレーションコストの試算(作業工数、作業人員、人時生産性、など)を行い、最適性を求めます。
そして、物流拠点内の評価基準として、最大在庫量(スペース能力)、在庫量、入出荷能力(作業能力)、生産能力(人時生産性)、評価基準(在庫能力&スペース能力)、工程別作業能力などを試算し、評価・目標基準を定めておくことが重要だと考えます。
そして、日々の実績と評価・目標基準を照らし合わせて物流実務の評価を行います。
評価が劣る場合は、原因究明を行い、改善に繋げ、評価が優れている場合は、更に評価が高くなるように分析して、次に繋げます。
5.物流活動とマーケットイン
物流管理の目的は、「物流サービス」と「物流品質」を維持向上させ、ローコストオペレーションを実現させることです。
そして、物流機能は、マーケットインが基本です。
物流は、実需(市場の動き)による仕入と生産がキーポイントです。
物流実践での取り組みは「売れるだろう」の曖昧な予想による「仕入」や「生産」ではなく、「本当に売れる、売れた」という実需(市場の動き)による「仕入」や「生産」(マーケットイン)につなげることです。
そして、無駄な保管コストの発生を押さえることが重要です。
需要を無視した生産は、的を射た販売に繋がらず、売れて商品不足をきたし欠品、在庫不足、過剰在庫、やがて不動在庫、不良在庫につながって悪さを増幅していきます。
売れる商品の売れる機会を失ったり、無駄な在庫を抱えることにより、無駄な保管コストを発生させることになります。
無駄な移動を行わない、商品を作りすぎると市場に供給する移動機会が増え、無理、無駄が発生します。
市場に無理をして供給(生産→メーカー営業倉庫→卸→小売→消費者)すると無駄(売れ残り)が発生します。
その売れ残りが返品(小売→卸→営業倉庫→廃棄処理)となって無駄を発生させてしまうのです。
6.顧客指向を徹底すること。
「言うは易すし、行うは難し」の典型的な一つですが、顧客の立場に立って考え、マーケットインを意識した物流活動を行うことが最も重要な行動原理の一つです。
物流コストと顧客(小売業など)が要望する物流サービスを確実に、納品価格も極力ローコストで提供できるよう、努力することです。
これが同業他社との優位性のポイントになってきます。
供給側(卸、メーカーなど)は在庫を減らし、作業の生産性(効率化)を図り、配送効率の向上などでトータルコストの削減に努力しています。
物流現場の顧客指向は、物流サービス、物流品質・精度の維持・向上、生産性向上、効率化による物流コストなどの満足の向上を目指すことであります。
特に顧客から見た「サービス、品質・精度、コスト」の満足度が達成できたレベルが物流現場の及第点と考えてよいと思います。
物流サービス (サービスの適性化、取引の正常化が前提))は、顧客が必要とする商品を必要な時に条件通り(納品時間、受注ロット、納品頻度…)にお届けできることです。
顧客の条件通り、確実に商品を供給するというサービス条件は、顧客により様々で日毎(曜日)、月毎(季節)により異なり、納品条件の煩雑さが1年中変化しています。
特に顧客(小売業など)は、販管費の削減指向が強く、納品条件が年々複雑化してきています。
全ての顧客の要望を満足することが理想ですが、全ての要望をクリアするには、物流規模が肥大化してコストが最大化してしまいます。
マーケットインで顧客の満足度を高めながら全体最適を目指したいものです。
物流品質・精度は、受注した商品を顧客の指定した条件で間違いなく納品することが当然求められています。
欠品、商品間違い、数量間違い、納品先間違いなどを発生させないことです。
これは、顧客(小売業など)が物流サービス(企業の物流力)を図る指標にしています。
7.最後に
ものを扱う事業活動を行うと物流が必要になってきます。
いよいよ革新的な物流の必要な時代に入ってきました。
商品は、拠点(物流センター)で保管され、納品先(顧客)からの注文情報(出荷指示)で出荷・配送されます。
物流は、企業毎に全て異なり、同じものはないと言われています。
日常の物流実務のスキルを高めるための物流技術の基礎知識を学んでみたいものです。
物流の基本は拠点(物流センター)と輸・配送、情報の3ツから構成されています。
この3ツを基本にマーケットインの考え方を物流業界が核になり、関係する業種、業態に幅広く浸透させていきたいものです。
以上
(C)2014 Kiyoshi Takano & Sakata Warehouse, Inc.