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物流システム

第483号 物流(開発)と共に歩んだ50年(後編)(2022年5月12日発行)

執筆者  髙野 潔

 執筆者略歴 ▼
  • 職歴 補足・説明
    入社・日産自動車(33年間)
    • 本社情報システム部門
    • 座間工場開発プロジェクト(情報システム)部門
    • 相模原物流センター・倉庫システムの開発(プロジェクト)部門
    出向・バンテック(7年間)
    • 協業・共同化物流システム開発(プロジェクト)部門
    • 荷姿分科会委員(現・経済産業省)
    • 輸送分科会委員(現・国土交通省)
    起業・KRS物流システム研究所(21年間)
    • 株式会社湘南エスディ:物流顧問(5年間)
    • 株式会社カサイ経営:客員研究員(7年間)
    • 日本物流学会:正会員(8年間)、ロジ懇話会事務局(5年間)
    • 日本情報システムユーザー協会(JUAS-ISC):個人正会員(9年間)
    • 日本情報システムコンサルタント協会(JISCA):会員・理事(8年間)
    • 中小企業基盤整備機構:物流効率化アドバイザー(8年間)
    • 中小企業ベンチャー総合支援センター:新事業開拓専門員(6年間)
    • 中小企業基盤整備機構:企業連携支援アドバイザー(6年間)
    • 中小企業大学校(関西校):非常勤講師(6年間)
    • 海外技術者研修協会(AOTS)関西研修センター:非常勤講師(2年間)
    その他
    • 座間市観光協会:事務局長(2年間)
    • 座間市都市計画審議会:審議委員(2年間)
    • システムデザインオフィス合同会社:顧問(2020年~)

 

目次

*前号(2022年4月19日発行 第482号)より

3.出向時代に取り組んだ物流

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  上記のレイアウト(参考E:参照)の特徴として3階にセンター全体の作業や設備の動きを監視・管理するCCR(センターコントロールルーム)室を設けました。端末システム、制御用コンピューターや設備の電源投入(ブザー鳴動、一括と部分の遠隔投入)、バッチ(フレキシブル複数コース)単位の流れ作業の監視、何処かが遅れた場合、全体の影響(停止や遅れ)を最小限にするために全体監視と進捗監視を可能にしました。
  故障の際も、全フロアの故障エリアと故障個所をすぐに感知し、故障状態を庫内放送、インターフォンで知らせることで迅速な対応ができる仕組みにしました。総長約1,500mのケース/オリコン搬送用駆動コンベアを1~5階にくまなく張り巡らせ、どこかが止まれば全体がストップするため人が視認できない場所を含めて監視装置(故障信号)や監視カメラ:ITVでCCR室から遠隔で確認(相模原の経験)できるようにしました。(参考F:参照)

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  さらにスキャン検品システムの導入で顧客の信頼度を高めると同時に顧客サイド、納品サイドの双方での検品作業の省力化と配送コストの低減にもつなげることができました。また得意先からの返品が多くスキャナー式デジタルアソートシステムを開発し、得意先と卸の紐づけで共同物流の弱点を克服しました。さらにオリコン自動組立機・段ばらし機、出荷ラベル作成兼自動貼付機、廃材回収ライン(直接廃材倉庫に流し込む)を導入しました。物流現場の見える化も重視、各階14か所に端末を設置し、エリア毎の作業体制や作業進捗、人時生産性の見える化などを重視しました。
  さらに1~5階の各作業エリアに投入可能バッチ表示機を設置し、搬送コンベアに投入する配送コースが分かるようにしました。これにて1階出荷場の渋滞が起きないようにコントロールすることができました。勿論、指定バッチ以外のケース/オリコンがコンベアに載せられた場合、ミスラインに逃がすようにしました。1階の自動仕分機の各シュート(16ライン)の上に配送コース、進捗状態、横持ち(長尺物、etc)を表示する一体型の表示装置の指示情報をもとに作業が進められるようにしました。この工程がセンター全体の作業を進める司令塔役でした。
  来賓として竣工式にご出席の横浜銀行の熊田さん(当時、副頭取)をセンター内をご案内した際、自動車の生産ラインのノウハウがちりばめられているとの感想とお褒めの言葉を頂きました。受発注に於いても現場作業の省力化に知恵を注ぎました。先ず、在庫過剰(在庫目標2ヶ月以内)を意識しながら最小発注単位をケース/ボールにして発注頻度や現場の作業頻度を少なくすることに注力しました。また、受注も適正な単位を模索、受注頻度も曜日毎に固定(緊急注文可:作業費1%を卸に請求)し、出庫作業の効率化のため〆時間をAM、PM、指定時間(大手量販店)などの設定で作業性を追求しました。

4.起業(独立)時代に取り組んだ物流

  1999年の11月に独立、横浜市中区関内にあるランドマークタワーの見える「シルクビル(SOHO)の9階」の1室に事務所を構えました。(参考G:参照)

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  化粧品・日用雑貨卸のS社のS社長から独立するなら資本金51%以上を出資しなさい。仲間に声をかけて支援するとの話しとV社の営業部のM執行役員から定年後、一緒に組みたいとの2ツの有難い提案を頂いていました。その後、平成のバブルで共同化参加卸各社は、大手日雑卸のP社に営業権譲渡、さらにV社のM執行役員との約束も役員の健康上の理由からご破算になりました。
  その後、卸のS社の役員からドラック系小売業の「一括物流センター」の開発依頼があり、喜んで参加しました。目標は、営業数値の改善、店舗オープン前の品出しと都市部の交通量混雑対策で配送は夜間、店舗オペレーションの改善、MDセンター(商品を店舗に適切に届ける戦略)という位置づけで中小卸と徹夜も辞さずに開発に取り組みました。立ち上げ間がない時期にドラック系のY社長(現・会長)以下幹部が一括物流センターに視察に訪れ、真夏の現場で汗水たらして頑張っていた所、職場環境の改善を促し「請求書」は、社長室に送りなさいとの一言、早速、大量のスポットクーラーを人の集まる場所に設置、中小卸の役員と報告に社長室に立ち寄った際、慰労を兼ねて高級酒をご馳走して頂きました。
  その後、ドラック系小売業に日雑系トップメーカーK社の当時のT社長以下、スタッフが表敬訪問、K社への業務委託の話しになり、ドラック系小売業の幹部全員がもろ手を挙げて賛成した様子でした。中小卸の「物流力、人材力、資金力」と比較すると全てにK社が上回っており、業務委託の継続をS社卸幹部と私が個々に嘆願書を作成、お願いしましたがメーカーのK社に委託する方向を変えることはできませんでした。ドラック系の当時の売り上げは年間約250億円、現在は約3,500億円以上、ドラック系の選択は悔しいですが、適切だったと言わざるを得ません。
  委託解除の際、ドラック系のY社長主催で中小卸の幹部と私を老舗の料理屋にて慰労会を催してくれました。今でも忘れられない思い出になっています。前述のドラック系の一括物流センターの業務委託の継続断念が私の人生の最大の挑戦である「起業(独立)」のきっかけになりました。
  一念発起、サラリーマンを中退、物流コンサルティング会社を一人で起こすことにしました。バックに支援して頂ける企業や組織もなく「有限会社」を起こした当初は、険しい道のりでした。売上も少なく、社会保険庁に失業保険の支給の有無を電話相談、社会保険庁からは、会社を即、閉鎖すれば相談に乗りますとの回答を頂きましたが、会社をたたむ前にまだやるべきことがないかと模索し、個人活動(営業)には限界があることを悟りました。
  暫くして、物流効率化アドバイザー(中小企業庁)を介してコンサルティング案件を頂きました。偶然にも私の知り合いの九州の大学のS教授の教え子が経営している物流会社から敷地≒3,500坪、建坪≒1,800坪、ドライ・要冷品を扱う総合小売業の3PL(物流受託)の支援依頼でした。現地にお邪魔した際の雑談の中でS教授の話で盛り上がりY社長との信頼関係が素早く醸成できたことで自信をを持ちました。
  物流コンサルタントとして起業することは簡単ですが、誰でも成功するというわけではありません。仕事がなく失敗に終わった人も沢山いる業界です。私は、仕事探しに奔走、人伝にコンサルタントを必要とする企業や同業のコンサルティング会社の紹介を頂き、業務委託契約が出来たこと、さらに「浪速商法の精神」我も良し、他も良し、但し、我、他よりもチョッピリ良しを「第一義」に取り組み「評価」されたことが「大成功の源」と思っています。
  「伝手もコネも、知名度もなく」21年間頑張りました。勤務先を1999年(平成11年)10月末に辞め、のんびりする間もなく11月1日に有限会社(自前で起業の手続き)の登記をしました。起業後、喜怒哀楽の道を歩みましたが、皆様に支えられて「物流コンサルティング」を主要業務として21年間歩むことが出来ました。努力したことも沢山ありましたが、幸運に恵まれ業務提携先が沢山見つかったことが「起業(独立)の大成功の要因」でした。(参考H、I:参照)

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5.最後に。

  1970年代の前半から人が羨むほど、沢山の物流システムの開発を経験してきました。最初に取り組んだ物流は、工場のFA(ファクトリィオートメーション)が進んだ頃の自動倉庫中心のシステムでした。「探す、歩く、取り出す(入出庫・保管・在庫管理)」などの作業を自動で行い人手が不要でした。
  現在、大手通販業界では、倉庫の自動化を進めています。手間暇かかる現場作業は、ほぼ自動化されてきています。自動倉庫は、スペースの効率化、省人化、正確なロケーション管理や在庫管理を実現する優れもので、物流業界は、これからの人手不足を見越して物流作業の省人化、省力化を認識する中でAGV(無人搬送台車)や次世代の物流機器システムと言われるロボット、パワーアシストスーツ、ドローン、IOT、AIなどと自動倉庫(制御)システムとのネットワーク化で物流の成長を推進させる新しいテクノロジーの活用を続けることが必要です。これらが物流業界を牽引してくれるものと期待しています。また、楽しみにしています。

以上




(C)2022 Kiyoshi Takano & Sakata Warehouse, Inc.

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