ロジスティクス・レビュー

第461号  GS1 Digital Linkのご紹介: GS1識別コードからウェブへつながる情報発見(2021年6月10日発行)

執筆者  佐藤 友紀
(GS1 Japan ソリューション第2部 RFID・デジタル化推進グループ)
    執筆者略歴 ▼

  • 略歴
    • 平成21年より慶應義塾大学・Auto-ID Lab. Japanに所属し、電子タグ及び、EPCIS等のGS1標準の情報システムの研究に従事。
    • 平成29年 アールト大学Department of Communications and Networking訪問研究員。
    • 平成30年 慶應義塾大学政策・メディア研究科特任助教。
    • 令和2年よりGS1 Japanに所属し、EPCIS・GS1 Digital Link等のデジタル化関連標準を担当。

目次

  本稿では、現在GS1が力を入れている標準の一つである、GS1 Digital Linkを紹介する。GS1 Digital Linkは、GS1識別コードと、関連するインターネット上の情報・サービスをつなげる仕組みである。

GS1 Digital Linkはサービス発見のための仕組み

  商品情報ページやキャンペーン、リコールの通知など、商品に関する様々な情報やサービス(ここでは「サービス」と総称する)がブランドオーナーなどによりインターネット上で公開されている。消費者に、そのようなサービスに一意に辿り着いてもらうにはどのようにすればよいか。商品名を検索エンジンに入力するのでは、検索エンジン最適化などの施策を取ったとしても、これらのサービス以外の結果も大量に表示されてしまう。一般に、商品に対応するサービスを提供したい場面では、それらサービスの場所を指し示すURLをQRコードなどにエンコードして商品やパッケージに印字しておく手法が広く取られている。しかしこれでは、複数のサービスを提供するためにはその数だけURLをエンコードしたシンボルを印字しなければならず、商品やパッケージのデザインが制約を受ける。消費者も読み取るシンボルを間違えてしまうかもしれない。さらには、提供するサービスの種類や場所が変わるたびに商品やパッケージのデザインを変更しなければならない。
  本稿で紹介するGS1 Digital Linkは、商品に付けられるGTIN(JANコード等)などのGS1識別コードから、これらサービスの所在を発見するための仕組みである。図 1に示す通り、サービスが複数あろうとも、それらサービスの場所が変更されようとも、それらを発見するための最初の端点は常にGS1識別コードであり変わらない。GS1識別コードとサービスとの紐づけを後から変更することもでき、そうすれば、例えば期間限定キャンペーンへの案内などをパッケージデザインの変更なしに実現できる。サービス発見の仕組みはウェブの技術に基づいており、一般的なウェブラウザで利用できる。GS1 Digital Linkによるサービス発見は、商品を識別するGTINだけでなく、様々なGS1識別コードとそれらにより識別される対象に対しても適用でき、上述したB2Cの用途の他にも、B2Bの用途に利用することもできる。


図 1 GS1 Digital Linkでは常にGS1識別コードがサービス発見の端点となる
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GS1 Digital Linkの基本

  GS1 Digital Linkではまず図 2のように、GS1識別コード及び付随する属性情報を該当するGS1アプリケーション識別子と併せてウェブで用いられるURLの形で書き表す。この形式のことをGS1 Digital Link URIと呼ぶ。GS1 Digital Link URIの文法は、GS1 Digital Linkの標準文書にて規定されており(https://www.gs1.org/standards/gs1-digital-linkからアクセス可能)、GS1アプリケーション識別子を用いて表すことのできる全てのGS1識別コードと属性情報をこの形式で書き表すことができる。このようなGS1 Digital Link URI、ひいてはGS1識別コードに実際のサービスの所在を紐づける役割のシステムとして、GS1 Digital Linkではリゾルバと呼ばれるシステムを規定している。リゾルバはウェブサーバとして実装され、GS1 Digital Link URIにそのドメイン名が充てられる。図 2の例で用いられているid.gs1.orgはGS1本部が運用しているリゾルバのドメイン名である。その他にもGS1加盟組織やブランドオーナー、サードパーティなど、リゾルバは誰が運用しても良い。


図 2 GS1 Digital Link URIの例
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  GS1 Digital Linkでは、ウェブブラウザなどでGS1 Digital Link URIにアクセスすることでサービス発見を行う。GS1 Digital Link URI にアクセスするということは、GS1識別コードと付随する属性情報を与えてリゾルバに問い合わせを行うと言い換えられる。問い合わせを受けると、リゾルバは与えられたGS1識別コードに対応するサービスの所在を指し示すURLを問い合わせ元に返し、そのURLにアクセスするように促す。一般に、問い合わせを受けたウェブサーバが別のURLを指し示してそちらへのアクセスを促すことはリダイレクトと呼ばれており、ウェブの世界では極めて一般的な技術である。ウェブブラウザは、ウェブサーバからのリダイレクト指示を受けると、自動でリダイレクト先のURLにアクセスしなおす。これにより、GS1 Digital Link URIにアクセスすると、自動的にサービスに辿り着くことができる。この流れを図 3にシーケンス図として示す。


図 3 リゾルバへの問い合わせからサービスへのリダイレクトまでの流れ
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リゾルバによるリダイレクト先の選定

  GS1 Digital Linkによりサービス発見を行う際、Link TypeというパラメータをGS1 Digital Link URIの末尾に指定することで、対象のGS1識別コードに対して複数のサービスがあるときに要求するサービスの種類を指定できる。例えば、商品情報ページにアクセスしたいのであれば、パラメータlinkType=gs1:pipをGS1 Digital Link URIに付け加える。この例にあるgs1:pipは商品情報ページを意味するLink Typeである。その他にも様々なLink TypeがGS1 Web Vocabularyの中に定められており、https://www.gs1.org/voc/?show=linktypesで一覧を確認できる。また、GS1識別コードに対応する全てのサービスをLink Typeに関わらず一覧にして返すようにリゾルバに要求することもできる。
  上述のGS1識別コード及び属性情報、またLink Typeの他にも、リゾルバは様々な情報・状況に応じてリダイレクト先を選定することができる。一般に、ウェブブラウザがウェブサーバにアクセスするときには、アクセス先のURLだけでなく様々な情報がウェブサーバに送信されている。典型的な例はユーザの言語である。同じURLにアクセスしても、ユーザの言語によって違うページが表示されるようなウェブサイトは、アクセス時にブラウザが送信するユーザの言語情報を参照している場合がある。その他にも様々な情報がウェブブラウザからウェブサーバに送信されている。さらに、ウェブサーバはアクセス元のネットワーク的な所在も当然分かり、それに基づいて表示する内容を変化させている例もみられる。GS1 Digital Linkでも、このような情報に基づいてリダイレクト先を変更するようにリゾルバを実装して良い。例えば、ある製品のGTINについて取扱説明書(Link Type=gs1:instructions)が要求されたときに、ユーザの言語が日本語であれば日本語の取扱説明書、それ以外であれば英語の取扱説明書にリダイレクトする、などといったことができる。

GS1 Digital Linkとデータキャリア

  GS1 Digital Linkは、あくまでもGS1識別コードからのサービス発見を行う仕組みなので、そのGS1識別コードを記録しているデータキャリアの種類には依存しない。GS1標準で規定されている既存のデータキャリアからGS1アプリケーション識別子と対応する情報を取り出し(JANシンボルのようにGS1アプリケーション識別子を含まないデータキャリアの場合には適宜補完する)、それらからGS1 Digital Link URIを構成することができる。一方、GS1 Digital Link URIはウェブで用いられるURLの形式をとっていることから、これをそのままQRコードなどの二次元シンボルにエンコードすることもできる。そのようなシンボルは、消費者が持つスマートフォン等の一般的なQRコード読み取りアプリで読み込むことができ、そのままアクセスすることで直接サービスにアクセスすることができる。また、GS1 Digital Link URIからGS1アプリケーション識別子と対応する情報の対を取り出すこともできるので、GS1 Digital Link URIをエンコードしたシンボルを既存のGS1標準データキャリアと同様な用途で用いることもできる。また、GS1 Digital Link URIをエンコードしたQRコード等のシンボルの出力に対応したバーコード出力ソフトウェアも現れている。

GS1 Digital Linkに関わる最近の動向

  本稿執筆時点では、GS1 Digital Linkの標準文書はバージョン1.1が公開されており、これを改定するバージョン1.2の策定作業がGS1のワーキンググループで行われている。バージョン1.2では、リゾルバの応答を機械処理するための標準的な応答仕様など、バージョン1.1で定められたリゾルバの挙動をブラッシュアップする内容が追加される見込みである。
  GS1 Digital Linkの普及に向けた取り組みとして、GS1では、上述の通りリゾルバid.gs1.orgを運用している他、様々なプログラム・ツールを提供している。id.gs1.orgで実際に利用しているGS1Digital Linkの標準に準拠したリゾルバの実装(GS1_DigitalLink_Resolver_CE)や、GS1アプリケーション識別子を利用した既存の表記とGS1 Digital Link URIの相互変換ツール(GS1DigitalLinkToolkit.js)、独自に実装されたリゾルバがGS1 Digital Linkの標準に準拠しているか検証するテストツール(GS1DL-resolver-testsuite)などがある。これらはGS1のGitHub組織アカウント内にオープンソースで公開されている。GS1のGitHub組織アカウントにはhttps://github.com/gs1からアクセスできる。
  海外では、GS1 Digital Linkの導入・実証事例が見られるようになってきたほか、GS1 Digital Linkのリゾルバを提供するソリューションプロバイダも複数社現れている。また、GS1 Hong KongやGS1 India、GS1 Switzerlandなど一部のGS1加盟組織もリゾルバの提供を開始している。これらの中には、リゾルバの基本的な動作であるGS1識別コードと属性情報及びLink Typeに基づくサービスへのリダイレクトに加えて、アクセス解析の機能を有するものもある。例えば、ある製品のGTINについて、どのような地域からのアクセスが多いのか、どのような時間帯でのアクセスが多いのか、どのような種類(=Link Type)の情報が頻繁に求められているのか、などといった情報を収集でき、消費者等の動向の把握に役立てることができる。

おわりに

  本稿では、GS1識別コードからのサービス発見を行う仕組みの標準であるGS1 Digital Linkを紹介した。GS1 Digital Link URIによりGS1識別コードが付された存在を標準化された形式でウェブ上に表現し、そこからさらにリゾルバを介して様々なウェブ上のサービスに繋がる様子は、物理的な存在をデジタル世界上に表すデジタルツインの最も基礎にあたる部分と言えるのではないかと筆者は考える(図 4)。そこまで大きく捉えなくとも、標準の識別コードはもちろんのこと、それらに関する標準化されたサービス発見の仕組みは、商品・流通のデジタルトランスフォーメーション推進の基礎となるものである。ぜひご活用いただきたい。また、関連する不明点やご要望については、GS1 Japanまでお問い合わせいただきたい。


図 4 GS1 Digital Linkの世界観
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以上



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