第259号物流情報システム、あれこれ!(2013年1月10日発行)
執筆者 | 髙野 潔 (有限会社KRS物流システム研究所 取締役社長) |
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執筆者略歴 ▼
目次
- 1.はじめに。
- 2.物流活動を支える物流情報システム
- 3.物流情報システムで全体最適、競争優位を目指す。
- 4.活用したい物流情報技術
- 5.物流情報システム(WMS)で進化する物流センター
- 6.最後に。
1.はじめに。
情報システムの進展と共に、大企業、中小企業の事業活動、物流活動には、物流情報システム(WMS)が欠かせない存在であり、重要なツールになりました。
上手に使えているか、いないかで、物流センターの運営(効率化)に大きな影響を与えるキーポイントになるのが物流情報システムです。
受発注・入荷~出荷(発送)までの物流現場の実績、進捗などのデータをタイムリーに収集、経験と勘、シミュレーションなどでリアルタイムにセンター全体を可視化し、コスト削減、サービス性、品質の向上を追求、物流情報システムを戦略的に駆使して、フレキシブルなセンター運営で効果をあげている企業が目立つようになりました。
物流は多種多様で複合的であり、さらに業務、管理、戦略レベルなど多面的です。
物流分野の対象範囲は様々で実務に立脚した物流情報システムの構築は理想やパーフェクトを追求せず、物流の役割や目的、具体的な改善課題(できれば数値を・・・)を十分認識し、戦略を明確化することが物流情報システムを有効に設計・開発する秘訣です。
物流も情報システムの高度化と先端技術を追い求める時代になりました。
2.物流活動を支える物流情報システム
物流情報システムは情報と物の動きを同期させ、受発注から出荷、輸配送までの一連の流れを支援し、作業の効率化から経営全体の最適化を実現させるものです。
機能は3ツ、物流の意思を決定する物流戦略(計画)、物流活動を支援する物流管理、戦略と管理のリアルな結果を求められる物流業務から構成されています。
3.物流情報システムで全体最適、競争優位を目指す。
物流は原材料の調達、在庫保管、商品荷揃え、顧客への配送などSC全体に関わるだけにコスト削減と同時に企業価値の向上、業務のボトルネック解消と環境負荷低減や安心・安全といった時代の要請に応える物流へと変革していかなければいけません。
物流情報システムの出発点は物を中心とする物流情報です。
特に物と情報の同期により物流サービスの最大化とコストの最小化を担います。
そして、在庫実態を即時正確に把握、適正化すること、店頭(POS)情報から販売動向を把握分析すること、営業、財務(経理)、物流の各部門と在庫情報(在庫数量)を共有化して物流管理を数値化、高度化、経営、製配販の最適化を狙います。
さらに、経営戦略と連動する物流戦略として、物流拠点の集約化、統廃合、受発注センターの集約、物流技術や物流情報システムを駆使した物流力のアップが必須です。
業務レベルに直結した物流戦略・計画を踏まえた輸配送、人員配置、需要予測、在庫計画など、柔軟な対応が必須になり、経営戦略や物流戦略を立案するための意思決定策として実際の物流データ、物流拠点(物流センター)の活動を情報データや経験と勘を使いシミュレーションしながら評価を具体化し、経営、物流戦略(計画)のタイムリーな意思決定と実行により、全体最適と競争優位を確立することが肝要です。
4.活用したい物流情報技術
物流業務の高度化に向け物流情報システムの技術が多岐に取り入れられています。
近年注目されるのは作業効率向上に向けたWMS、LMS(レイバー管理システム)、VOICE(音声システム)、YMS(物流拠点ヤード管理)などがあります。
WMSは倉庫内全体業務を管理するシステムで倉庫の側から物流を見ています。
LMSは物流全般を対象にした作業効率向上(人件費削減)のための技術ですが、この技術の導入を目指している企業が増えてきています。
LMSにて、リアルタイムにシミュレーションを行い、今までメスを入れにくかった「人時生産性」を把握、状況に応じた従業員、パート・アルバイトの適正な人員配置計画(変更)の策定が可能になりました。
これにより人件費の損益情報をリアルタイムに得ることができるようになりました。
5.物流情報システム(WMS)で進化する物流センター
1)物流情報システム(WMS)を核にした物流センターの基本機能が多くなりました。
物流センター内に無線LAN用アクセスポイントを設置することで全ての情報をリアルタイムに作業とデータを一元化(融合)するシステムの導入が多く見受けられます。
2)情報システム(WMS)で変わる物流センター
3)EDI(電子データ交換)で無駄のない運用
事前に入出荷情報を仕入先、納品先から授受することで作業計画、人員計画、伝票レス(納品書、送状)、作業精度アップ、 貨物追跡などの運営が容易になります。
4)物流情報システムによる物流拠点(物流センター)構内の見える化
物流センターの作業進捗、入出荷状況、在庫状況、人時生産性などを構内ランで、遠隔地はインターネット経由で顧客、本社、管理部署、営業所などにリアルタイムに必要情報(作業進捗、在庫情報、管理情報など)を提供します。
6.最後に。
物流の情報化はモノの流れの中核的な存在であり、企業内の在庫、販売、予測データの共有による事業活動、物流活動に欠かせないツールになっています。
各地の中堅・中小企業のリアル(実務)物流の改革・改善の指導に出向いた際、沢山の企業がWMSを導入していましたが使いきれていないのが実態でした。
例えば、商品の保管場所とWMSのロケーションが不一致、実在庫とWMS在庫が合わないなど、物流情報システムを導入したけれどという企業が多く見受けられました。
WMSやTMSの導入も着実に増えていますが企業間SCMの情報化は前進の兆候はありますが、一部の大手企業を除くと一向に進んでいないのが現実と思われます。
個別の企業によって、業務効率化(物流)、社内統合(ロジスティクス)、企業連携(SCM)、企業間統合(次世代SCM)の導入期、成熟期がマチマチで、業務やプロセスの標準化、規格化が浸透せず、部分最適は達成していますが、全体最適が遅れていることが日本の物流力(&経済力)の足かせになっているものと危惧しています。
これからの物流業界にとって1つの企業の内部に限定することなく、業種業態、企業規模の大小を問わず、業務プロセス全般の大胆な変革を行い、企業内、企業間のSCM/DCM(原材料の調達から生産、販売、物流に至る供給.)、標準化(コード、ラベル、タグ、データ交換)などが容易に統合化され、一気通貫による全体最適が実現してこそ、物流情報システムの成熟、21世紀の物流(&ロジスティクス)本来の情報化へと飛躍することを物流&物流情報システムの大好き人間として期待したいものです。
以上
(C)2013 Kiyoshi Takano & Sakata Warehouse, Inc.