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物流システム

第323号 物流現場から強い企業づくりを考える。(2015年9月3日発行)

執筆者  髙野 潔
(有限会社KRS物流システム研究所 取締役社長)

 執筆者略歴 ▼
  • 職歴・履歴
    • 日産自動車株式会社(昭和36年~平成5年)
    • (出向)株式会社バンテック(勤務先:神奈川流通サービス協同組合) (平成5年~11年)
    • (独立)有限会社KRS物流システム研究所・設立(平成11年~現在に至る)
    参加組織・履歴
    • 株式会社湘南エスディ-  物流顧問(平成8年~12年)
    • 株式会社カサイ経営  客員研究員(平成12年~18年)
    • 物流学会  正会員(平成12年~)
    • ロジ懇話会・事務局(平成15年~19年)
    • 日本情報システムユーザー協会 個人正会員(JUAS) (平成15年~20年)
    • 情報システムコンサルタント(JUAS認定No161)
    委嘱(受託)・履歴
    • 通産省(現・経済産業省)  荷姿分科会委員・委嘱(平成8年頃)
    • 運輸省(現・国土交通省) 輸送分科会委員・委嘱(平成8年頃)
    • 中小企業基盤整備機構  物流効率化アドバイザー・委嘱(平成10年~17年)
    • 中小企業ベンチャー総合支援センター 新事業開拓支援専門員・委嘱(平成13年~18年)
    • 中小企業基盤整備機構  企業連携支援アドバイザー・委嘱(平成15年~21年)
    • 中小企業大学校(関西校) 非常勤講師・委嘱(平成14年~16年、18年)
    • 海外技術者研修協会 [AOTS]関西研修センター 非常勤講師・委嘱(平成20年~21年)
    著書・寄稿・その他
    • 卸の物流協業化事例研究(雑誌)・・・流通ネットワーキング
    • 業務革新・物流配送効率化(雑誌)・・・日経情報ストラテジー
    • 中小企業のロジスティクスは共同物流が決めて(雑誌)・・・SCAN
    • 日本のロジスティクス物流協業化事例研究(出版物・共著)・・・JILS
    • 物流共同化実践マニアル(出版物・共著)・・・日本能率協会
    • 共同物流の動向と共同物流の進め(雑誌)・・・物流情報
    • ドラック・ストア編ここがポイント!(雑誌)・・・流通ネットワーキング
    • 物流を核にした現場密着型のコンサルタントを目指して(論文)・・・JUAS/ISC
    • 需要予測で適正な発注を実現するには!(情報化相談室)・・・日経情報ストラテジー
    • 図解 なるほど!これでわかった よくわかるこれからの物流(出版物・共著)・・・同文館

 

目次


 

1.はじめに。

  私は、サラリーマン人生の後半に自動車業界に籍を置きながら流通業界(神奈川県地域卸)、物流業界、運輸業界(関連企業)に縁あって物流の実務開発に取り組む機会を頂き、長年、培った実務密着型の物流技術、物流実務に取り組み、現場実務を通した直接的な経営改善、物流戦略、情報システム、生販物流統合、製配販連携事業、商物分離など、情報システムと物流システム、マテハンシステムとの連動化と仕組みづくりなどの活動をしてきました。私の経験から何事にも当たり前のことですが、個々人の意志(やる気)と企業のトップリーダーの気配りと前向きな姿勢(部下と周囲をやる気にさせる)が重要だと肌で感じていました。大企業、中堅・中小企業を問わず、事業変革・物流変革を起こすには、トップ、及びリーダー格の人達の人間力、即ち、強い意志と努力としつこさを持って何事にも取り組むことが革新の道であり、このエネルギーが物流現場づくりの基本になっていくのではと思うことが多々あります。これからは、人手に頼るのではなく、物流業界も今まで以上に知恵を出す、出せる職場づくりを実践していかないと物流現場が前に進まなくなり、周囲(取引先,etc)からも置き去りにされてしまう時代を迎えてしまうように思いはじめました。少子高齢化社会が確実に訪れ、人手不足が叫ばれはじめた今、物流現場からの強い組織づくり、人づくり、職場環境づくりを目指すべきだと考えています。

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2.雇用の変遷と今後の雇用形態

  これからの時代は、総合職、年功賃金、年功昇進が見直され、雇用期間の定めのない職務、労働時間、就業場所などを限定した総合職的に働く正社員化が進みそうです。
1970年代は、終身雇用、年功序列、企業内組合が三種の神器と呼ばれていました。
1980年代は、経済成長が続き、日本の雇用は、世界の模範とされていました。
1990年代は、人件費の抑制を望む企業は一転、終身雇用、年功序列が弱点になりました。
2000年代に入り、非正規社員の急増で年金制度などの社会的基盤が弱体化し、雇用形態は総務省の就業構造基本調査によると1982年~30年間で雇用者数は3,970万人~5,353万人に増えました。 増えたほとんどは、1,372万人の非正規従業員でした。

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3.物流マンも自己革新を実践しよう。

  社会と企業が変革しつつあります、自分を変えよう!、個の力が会社組織を強くする。
  自分を変える基本は、機に応じて、挨拶すべき時に必ず挨拶できること。企業への依存度を減らし、新たな意識で働いてみよう!、先ず、自分自身を変えよう!自分自身の行動に自覚と責任を持つこと(私の座右の銘)、結婚直後にトヨタ(堤工場)に出張の機会があり、宴会の席で上組の責任者から朝起きたら「おはようございます」、食事の時「いただきます。ご馳走様でした。」、出かける時に「行ってきます」、帰ったら「ただいま」、寝る時には「おやすみなさい」を励行すれば、家庭円満、職場安泰、人格者たるものの礼節だと教わりました。父からはいつでも、どこでも挨拶のできる人間になること。元校長の小学校の担任教師からは自ら手を挙げ、声を出す主体性を持つこと。神奈川流通サービス協同組合元理事長からは、物事を経営者視点で見ること等々を教わりました。そして、前述の元理事長、出向先の執行役員から独自の人脈、専門知識、技能を活かして活動するフリーランス的な行動を取ることが自己革新に繋がる早道だと教わりました。社会環境、雇用環境、企業が大きく変わろうとしています。この機会に社会や企業の変革の先取りで自らの自己革新にチャレンジして企業と共に変わりたいものです。

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  これからは、社内の上司や同僚を取引先と考えて取り組もう! 顧客(CS)と従業員(ES)目線を意識すること、 約束は日程を定めて確実に実行すること。(できない約束はしない)フリーランサーと同様、リピートで期待値を挙げること。(リピートがあれば合格) 移動(業務、部門、転職も・・・。)はつきもの、専門的なスキルを身につけたい、社内外で活用できる個人レベルのキャリアの醸成、自己実現のキャリア形成のビジョンを持つこと、例えば、課題解決能力、対人力、IT活用能力、etcです。個人の能力革新が企業の変革に寄与するのです。

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4.物流現場のマネジメント時代の到来!

  生産量・販売量の伸びの量的増大に対応してきた物流から経営の体質強化・経営の質的充実へと、物流現場の変革が大きな力を発揮し始めています。さらに、変革に拍車をかけているのが情報システムの発達だと思います。物流を構成する活動に対して個別に導入されていたコンピューターが情報ネットワークとWMSの開発によって、物流全体をカバーするようになってきました。長い間、生産量・販売量の伸びの量的拡大に対応してきた物流から、景気後退、高齢化、人口減少などの環境変化が、経営体質の強化・経営の質的充実へと、物流現場の変革(特にドライバー不足)が大きな流れとして台頭し始めています。今まで個別に導入されていた物流コンピューターが情報ネットワーク&インターネットの開発で物流全体をカバーする新しい感覚の物流現場が求められるようになっています。

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5.行動指針と日々の積み重ねが企業を強くする。

  物流現場のマネジメントは、物流現場から「儲かる会社」つくりを積極的に実践すること、成果を享受することです。取り組み姿勢・行動姿勢は、先ず、すべてのことに感謝、競争に打ち勝つためのコストとスピードを重視、変化を新たなチャンスとして捉えることです。サービスの供給が顧客満足につながっていることを理解すること、客観的な事実に基づき判断、自らの可能性に挑戦すること、自信を持って全ての人が参加、組織間の壁を超えて行動すること、 積極果敢な目標を設定、その進捗と成果に対して多いに報いること、報いて貰うこと、全体の成果を重視しながら個人の貢献度合を高く評価することです。仕事と職場の活性化が進みます。お客様のためによいと思うことを「すぐ実践」、もったいないは「すぐ止める&すぐ変更」、もっとよい方法が見つかったら「すぐ変更」、間違えたと思ったら「すぐ止める&すぐ変更」を実践すること。物流マンとしての姿勢「捨てる、止める、変える」、余計な「過剰サービス」をしない、余計な「仕入れをしない」、余計なものは「置かない(保管・在庫しない))、余計なもの「は包まない」、余計な「横持ちをしない」、余計なものを「運ばない」、余計な「作業をしない」、余計な「設備投資をしない」、余計な「情報はカットする」などを日々意識して実践することを心がけたいものです。

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6.物流現場の顧客指向(CS)を常に行動指針とすること。

  物流現場の顧客指向は、物流サービスと物流品質・精度の維持・向上、生産性向上・効率化などと共に物流コストの削減を目指すことです。物流サービス(サービスの適性化・取引の正常化)を念頭に置くこと。顧客が必要とする商品を必要な時に、条件どおりにお届けするように努力すること。ex.納品時間、受注ロット、納品頻度、顧客の条件どおり確実に商品を供給すること。サービス条件は、顧客により様々で年々複雑化しています。日毎(曜日)、月毎(季節)に異なり納品条件の煩雑さが1年中変化しています。 物流品質&精度を常に高める意識を持つこと。受注した商品を顧客の指定した条件で間違いなく納品すること。ex.欠品、商品間違い、数量間違い、納品先間違い、物流コストは、共存共栄の意識で取り組み、顧客の要求する物流サービスレベルをローコストで常に提供できるように日々意識して業務を遂行すること。ex.在庫を減らす、作業効率、配送効率など。

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7.強い物流企業(経営)づくりを考える。

  経営を変えるのは、攻めの人事から変化の先取り、個人が活きる「勝つ組織」をつくることからと良く言われます。物流企業の経営を変えるには、高品質、スピード、ローコストの物流サービスを提供できる力量・仕事力(ビジネスを引っ張る力)を高めることであり、経営力そのものと考えます。日本の企業は、物流部門をアウトソーシングして身軽になることが優先されていますが、その前に生産部門への重点投資と共に物流部門にも重点投資をして欲しいと思っています。日本の企業の国際競争力を強化するために物流コストの低減(生産性向上)が強く要求されていますが、そのためには、これまで製造部門と比較すると長い間、注目されていなかった物流部門にメスを入れることが不可欠となってきています。最近は、行政や個々の企業からも生産部門への投資と共に立ち遅れていた流通・物流部門の近代化のための投資の必要性が叫ばれるようになってきました。物流事業者の役割は、荷主に役立ち、同時に従業員の満足度を高め、企業の発展を成し遂げる役割と考えます。高品質、迅速、低コストの物流サービスを提供していく実現力(ビジネスを引っ張る力)が経営力そのものであります。

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8.強い企業づくりの実践。

  経営トップがリーダーシップ& コミュニケーションを重視していること、常に現場に強い関心を持ち、事象の共有化が図られていること、目標が明快で、目標管理が各層の社員と共有化されていること、従業員が生き生きと働ける環境を整えていること(やる気の醸成モラール) が重要です。さらに、顧客指向(コアコンピタンス)が得意分野であり、向上心があること、管理監督職のリーダーシップのレベルが高いことが挙げられます。リーダーとしての原動力は、存在感を高めることだと思います。参考までに私のサラリーマン時代のトップの行動をご紹介します。毎朝の巡回で、敷地面積が約130,000坪(≒427,000㎡)の自社の物流現場を知る努力をしていました。オーダー件数約206万件/月、大規模な9つの物流センー(倉庫棟)があり、社員、関連企業を含めて約1,600名の職場を纏めるトップ責任者が毎日始業前に約90分、役割責任とご自身の健康管理も兼ねて、巡回していました。コミュニケーションを重視しながら巡回で職場の日々の動きを把握していました。巡回中に挨拶や作業員と談笑しながら職場の雰囲気、前日の作業の様子、在庫量や製品の保管、通路の整理整頓状況、安全確認などを行っていました。良好な職場、頑張っている職場と感じた際は、直接周囲の作業員にお褒めの言葉を投げかけ、問題点、疑問点が生じた場合は、巡回中に現状把握をしっかり行い始業後、職場責任者に現状実態を報告させ、質問や改善案の提示を求めていました。このように自社の物流現場を知ることが物流の基本と考えます。特に定点観測と現場の人達との情報の共有化を意識していました。それぞれの現場責任者は、物流現場を熟知しているトップ責任者からの質問などに答えられるように自分の職場(定点)を常に知ることに力点を置いていました。それぞれの責任者は、トップ責任者以上に何事にも積極的に目配りを行い、事業活動の拠点である現場の実態を自主的に知る努力をしていました。そして、何事にも直接褒める、直接議論をすることを心がけていました。この事例は、物流の基本である自社の物流(現場)を知ること、良いことは直接作業者にお褒めの言葉を与えること、不都合なことがあれば、職場の担当者ではなく、責任者と直接議論することなど、階層的な人心掌握術を駆使していました。さらに、「定点観測」を徹底して実践していた好事例ですが、この行為により、1,600人 を束ねる事業所のトップ責任者と部署毎の責任者の存在感が高まっていました。

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9.最後に

  通信インフラ、社会インフラなどにより、情報(コンピュータ)システムの環境がどのように変わろうとも、物づくりを行った場所で消費しない限り、ネット上で商売をするサイバー企業がドンドン現れても、従来の物づくりの工程や手順 が大きく変わっても生産地から消費地に完成品、準完成品(ユニット)、そして、 部品、原材料という物を運ぶという物流機能はなくならない筈だと考えます。さらに、製品や商品の供給能力と消費能力の必要なタイミングが合致しない限り、物流(ロジスティクス)は、産業の血液の両輪として求め続けられるものと確信しております。物流業務は不滅ですが、通販市場の急拡大に加え、ドライバーと現場作業者の労働力不足があいまって、現在、国内の宅配リソースが飽和状態となっているとのこと、今すぐ、物流業界の変革が求められています。新しい発想の元、今日の仕事をひとつずつ重ねることが強い物流企業(人と社会に必要とされる企業)に繋がると思います。一朝一夕では実現しませんが古くて新しい(革新力)強い物流企業の出現を待望しています。迫りくる人手不足、人口減少、高齢化社会を見つめるだけでなく、何か手段がないか、何かお手伝いすることがないか、何を変革すれば、世の中に寄与できるのか、自問自答しながら、物流大好き人間の一人として解決策、改善策を求め、探し続けていきたいと考えています。

以上



(C)2015 Kiyoshi Takano & Sakata Warehouse, Inc.

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