第285号 日付情報表示の標準化による配送効率化に向けて(2014年2月6日発行)
執筆者 | 上田 俊秀 (一般財団法人 流通システム開発センター 流通コードサービス部 流通コード普及推進課 課長 主任研究員) |
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目次
サプライチェーンにおける日付管理の現状と課題
消費者の食品に対する鮮度意識の高まり、食の安全・安心志向に応えるために、小売業の店頭では、商品の日付管理に細心の注意が払われている。徹底した日付管理は、卸売業の汎用センター、小売業の専用センター等においても同様で、入荷時には、「納品期限内であること」や、「前回の納品よりも古くないこと」などの確認を行っている。
このように、メーカーの工場や配送デポ、卸・小売の各物流センターでの在庫管理や入出荷管理等、サプライチェーン上の各場面において、日付情報が重要な管理項目となっている。
例えば、入荷時には、段ボールのどこに日付が表示されているかを探し、日付の表示面が見える位置に置き換え、同一商品でも日付が異なるものは別パレットに積み替えを行う。その上で、段ボールの日付と帳票の付け合せ確認や、ハンディーターミナルへの日付入力作業を行っており、多くの関連作業が発生している。
サプライチェーンにおいて、日付が重要な管理項目であるにも関わらず、日付の表示に関する標準が無いために、表示位置が各社各様となり、そのため日付表示を探す作業が発生し、また表示方法によってはサイズが小さいなど見難く、誤認することが散見されている。
日付表示の課題に対する解決策と期待効果
日付の表示位置や表示方法がバラバラで、「荷卸し作業の効率化」のための阻害要因になっているという現状の課題解決策として、日付の表示位置、大きさを統一するなどの日付表示の標準化があげられることから、製・配・販連携協議会(注1)の昨年度の日付情報等のバーコード化ワーキング・グループにて、日付情報等の文字表示にかかるガイドラインのとりまとめを行った。
賞味期限等の日付表示を分かりやすく標準化した場合の期待効果として、
- 目視による確認時間が大幅に短縮、
- 荷降し作業の効率化、
- 読み誤りの減少による作業精度の向上、等が挙げられる。
さらに、現状の課題解決策として、日付情報等のバーコード化があげられる。日付表示の標準化が進み、入出荷作業の効率化・作業精度が向上したとしても、日付情報をシステムに入力するには、日付情報を手で入力する必要があり、手入力の手間と、入力間違いの発生の可能性が残るからである。
バーコードは、データの入力手段として、バーコードの印刷や、バーコードの読み取り機器など、比較的安価な費用で、データの入力を速く正確に行える特長を持つため、物流現場などでも、広く利用されている。
日付情報などの商品明細情報をバーコード化することにより、商品の付加情報が、モノの流れと同時に速く正確に記録できるため、日付別の入出荷管理や、日付別の在庫管理が可能になるなど、商品の管理レベルが向上する。
すでに日付情報等をバーコード化し、自社内で活用する企業が現れ始めているが、業界標準は今日存在していない。日付情報は企業間で共通して活用することが期待できるが、バーコード化の標準が存在しないまま、各社の独自仕様が拡大した場合、将来的な企業間活用を困難にすることが懸念されるため、日付情報等をバーコード化する際のガイドラインについても、とりまとめを行った。
日付情報等をバーコード化した場合のメーカー側の効果例としては、
- 日付情報をバーコード化することで、一次出荷先までのトレースが迅速・正確に行えるようになった。
- バーコード化に加えて、出荷時にバーコードをスキャンすることで、目視確認・手入力を行う場合に比べ、出荷先への先入先出、ロットの逆転出荷防止などの管理精度が向上した等の効果を確認できた。
- 海外においても、メーカーの貼付した日付情報等のバーコードを、メーカーでの物流上の活用だけではなく、小売業においても活用され、ロケーション管理や、販売期限切れ商品の販売防止などを目的に活用している例もある。
一方、卸売業や小売業の物流センターでは、以下のような期待効果がある。
- 日付等の入力時間の短縮により作業効率が向上する。
- 日付等の手入力による入力間違いが削減できる。
- 出荷の際、出荷期限切れ商品出荷や日付逆転出荷の防止が確実に行える。
- 倉庫内移動、補充、棚卸の際の日付確認も容易になる。
- 荷卸し時の確認・入力間違いにより日付が誤登録されていた場合は、そのリカバリーのために多くの時間が必要となるが、バーコード読取により精度が向上すれば、こうした対応時間も不要となる。
以上のような期待効果がある一方で、日付情報等の可変情報は、製造ライン上で印字する必要があり、バーコード導入には、印字機器や読取機器の技術・運用面での課題の他、これらの機器を導入・更新するためのコスト面での課題も存在する。
1.ガイドラインの概要
(1)策定の背景<省略>
(2)目的と位置づけ
- 当ガイドラインは、流通業界の問題意識を受けて、物流センター等における日付情報の管理を効率的に行うために望ましい姿を推奨するかたちで示したもので、各社の事情に応じて、対応可能な部分から取り組むことを念頭に置いている。
- 具体的には、サプライチェーン全体の配送効率化、荷卸し作業効率化を目指して、製造業サイドでは、新商品の販売や、段ボールのデザイン変更や、物流システムの更新の時期に合わせて、また、卸売業・小売業サイドでは、物流システムや基幹システムの更新時期に合わせて、各社事情に合わせて、対応可能な部分から取り組むことを推奨する。
(3)構成<省略>
※ガイドラインについては、http://www.dsri.jp/forum/guide.html を参照
ガイドラインの内容
(1)日付情報を印字する際の標準化(短期的取組)
- 文字の表示位置:ITFシンボルが印刷されている面と同一面の無地スペース
※ITFシンボルの付近であることが望ましい。
※積付時は印字面が表になるように配慮することが望ましい。
- 文字の種類、大きさ:32ポイント以上の見やすいフォントが望ましい。
- 表示方法:賞味期限 年:西暦4桁、月、日をドットで区分
表示例:賞味期限 2013.04.26
※年月表示の場合は「賞味期限 2013年04月」、または「賞味期限 2013.04」とすることが望ましい。
<標準化された表示イメージ>
(2)日付情報をバーコード化する際の標準化(中長期的取組)
- バーコードの表示位置:ITFシンボルが印刷されている面と同一面の無地スペース
※ITFシンボルの付近であることが望ましい。
※積付時は印字面が表になるように配慮することが望ましい。
- バーコードの規格:国際標準とされている「AI(アプリケーション識別子)」を使用することができる「GS1-128」図①または「GS1-QR」図②を使用することが、望ましい。
<標準化された表示イメージ>
図①【GS1-128を使用する場合】
図②【GS1-QRを使用する場合】
ガイドラインの普及推進
日付情報等のバーコード化ワーキングでは、配送効率化に向けた日付の情報連携効率化のために、日付情報等の表示位置の標準化、バーコード化に焦点をあて、ガイドラインの策定を行った。
今後、このガイドラインを会員企業以外にも普及していくことが重要となる。協議会参加企業から取引関連企業へのガイドラインの紹介や、業界団体、関連ベンダー、GS1事業者コード登録企業などへのガイドラインの紹介により、ガイドラインに取り組む企業の増加が期待される。
なお、JANシンボルやITFシンボルの標準利用の推進と併せて、当ガイドラインの普及推進及び、日付情報のバーコード化のためのガイドランの詳細化については、流通システム開発センターが引続き行っていく予定である。
ガイドラインについては、http://www.dsri.jp/forum/guide.html
(注1)製・配・販連携協議会は、消費財分野におけるサプライチェーン・マネジメントの抜本的なイノベーション・改善を図ることを目的に、経産省の支援のもと、製配販の43社により設立された会合である。(http://www.dsri.jp/forum/index.html )
以上
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