第284号 当たり前の物流活動を考える(2014年1月21日発行)
執筆者 | 髙野 潔 (有限会社KRS物流システム研究所 取締役社長) |
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執筆者略歴 ▼
目次
1.はじめに
最近、日本情報システムコンサルタント協会の立ち上げに尽力している人達やITベンダーと商社がコラボレーションしているプロジェクトと接する機会がありました。
そのプロジェクトは学術的な知識人が主体で編成され、実務経験の浅さが災いしたのか開発途上のシステムが頓挫しているのを垣間見る機会がありました。
私の持論である実務に裏付けされた高邁な物流理論を実務に落とし込める技術力をバックボーンに実務にしっかり寄り添い実行できる物流システム(仕組み)を物流活動の基本とすること、物流という幅広い分野の基本をしっかりとひとつ、一つ理解し、実践することだという思いを強くしました。
そこで、実務の中の物流活動は、多肢多彩で多すぎますが、私なりの当たり前の物流活動を記述してみました。
2.物流活動を構成している機能
モノを扱う事業活動を行うと物流が必要になってきます。
物流(ロジスティクス)は、産業の血液と言われています。
その血液を 「必要な時」に、「必要な場所」に、「必要な量」を正確にお届けする使命を持っています。
物流の基本は、①拠点(保管場所、倉庫、物流センター、etc)②輸・配送、③情報の3ツから構成されています。
上記の3ツの物流の基本を核に無駄なく、無理なく、ムラなく物流活動することが求められています。
物流活動の最大の役割は、物流サービスの維持・向上と物流品質を確保して、それを徹底したローコストで行うこと、即ち生産から消費に至るまでの物流を一貫した流れ(SCL)として捉え、輸送、保管、荷役、流通加工・包装、情報システム(基幹系、WMS、TMS、etc)の機能を結合、経路の短縮、作業の合理化、最先端の物流情報システムなどを駆使して前述しました「物流品質・精度、物流サービス、物流コスト」の満足を得ることだと考えます。
3.物流部門と関連する部門の役割と特徴
物流活動は、様々な部門が連携して成り立っています。
開発部門は、リアルタイムに市場の動きを製品開発に反映させることです。
物流部門は、開発部門が売れる製品を開発できるよう製品毎の在庫の動きから集めた情報をスピーディに開発部門(自社、他社含む)にフィードバックする必要があります。
生産(仕入)部門と物流部門は、市場が必要としている製品を必要なだけ「生産・補充・仕入・在庫」することです。
従来は、製造・仕入部門の目的として、如何に製造原価(大量生産、ロット生産)や仕入原価を低減させることができるかが最大の目標としての力の入れどころでした。
マーケティング部門と物流部門は、市場ニーズに適合した商品やサービスを適切な価格やタイミングで売れる仕組みづくりを行うことです。
市場ニーズの適切な把握、製品や商品を過不足(特に欠品)なく供給できる仕組みが弱いのが中堅・中小企業の現状です。
適切なタイミングで商品やサービスを市場に出すことが望まれています。
販売部門と物流部門の関係は、販売部門(営業)の売上をベースとした評価基準からの脱却が待ち望まれています。
販売部門(営業)は、欠品を恐れて在庫を多くもつ傾向にあります。
売上確保のために実需と無縁の押し込み販売(営業活動)をする傾向にあります。
これは、返品に直結します。
さらに販売部門(営業)と物流部門とのコスト意識(ex.売上に占める作業量、など)の共有化を醸成することが必須条件です。
4.5ツの基本的な物流活動
生産から消費に至るまでの物流を一貫した流れとして捉え、「①輸送、②荷役(搬送・
ピッキング)③仕分け・包装、④保管、⑤情報」の5ツの物流活動を有機的に結合し、経路(及び動線)の短縮、作業の合理化、最先端の物流システムなどによりトータルコストの低減を図ることにあると考えます。
5ツの基本的な物流活動を実践する中で、市場!が求めている物流(ロジスティクス)機能を満足させる方策を日々物量の変動に対応し、実行していくのが物流活動です。
①輸送を考える。
輸送は、生産場所と消費の距離的隔たりを克服するための移動であって、そのために利
用される技術的手段が輸送です。輸送は、生産場所と消費の距離的隔たりによって陸上、水上、空中の各輸送に分類され、その手段の選択は物流の合理化を図る上で極めて重要な要素になります。 なお、輸送という言葉の他に、交通、運輸、運送、運搬、及び配送といった物や人をタイミング良く、前述の如く必要な時に必要な場所に必要な量を正確に運ぶ手段を見つけ、緻密に取り入れることが求められています。
②荷役・搬送を考える。
荷役作業は、輸送と保管の橋渡しで、倉庫内作業などを総称するのが荷役です。
荷役の役割は、輸送と保管、あるいは異なる輸送機関の積み替えなどの橋渡しでトラックの積み下ろし、施設内での移動、ピッキング、仕分け、コンテナ化、パレット化などの荷役作業があります。
③包装・仕分けを考える。
包装、仕分け作業には、輸送、荷役、保管に便利なユニット化、輸送中の商品などを保護するための目的を持っています。
包装には、作業手順から「個装」、「内装」、「外装」の3種類があります。
機能面からは、商業包装と工業包装に分類されます。
包装・仕分けの機能は、商品の保護のほか、「輸送」「保管」「荷役」など作業の効率化を促進する狙いがあり、商品価値や商品状態を維持するために適正な材料や容器を使用して商品を保護します。
④保管を考える。
保管の語義からすると、商品を貯蔵・保管し、管理することを意味しています。
即ち、単に商品を貯蔵・保管するのみでなく、貯蔵・保管に加えて物理的管理を行い、商品の価値を維持することが求められています。
この保管は、経済生活において生産と消費の時間的ずれの調整という機能を果たすため、倉庫にいったん保管、需要と供給ののみならず市場価格の調整を果たす役割も担っています。
⑤情報システムを考える。
企業における物流情報は通常、顧客からの受注に始まり、在庫管理、注文品の出荷、及び商品の仕入れ(又は生産)に伴って必要な情報(データ)が発生します。
企業の物流活動を支える物流情報システムの体系として以下の3つがあげられます。
●作業管理システム
受発注から出荷、顧客に届けるまでの物流実務を効率よく、正確に行うための情報システムがあります。
●計画統制システム
販売、調達、需給、在庫などの計画業務と作業管理システムの受発注、庫内作業、輸配送などの実績データを使い、次の計画に生かす需要予測、生産計画、最適在庫計画などのシミュレーションが実用化されつつあります。
●戦略計画システム
事業戦略の一環として、物流チャネル(商品経由方式)、倉庫立地、輸送方式、在庫方式、サービス方式の戦略を計画立案し、最適な戦略を決定します。
そのために、想定される実績データ、予測データを使用してシミュレーションを行い、評価分析などが実用化されつつあります。
情報システムの進化に伴って、企業内だけでなく、企業間での情報の交換、共有化が必須となり、物流情報システムの更なる進展が期待されています。
5.最後に
長い間、売上を伸ばしてきた企業も近年、売上減に苦しんでいます。
例えば、日本を代表する大手電機メーカーは、国内の半導体主力3工場を分社化し、イスラエル企業に株式の過半を売却するとのことです。
海外の半導体工場も台湾企業に売却をするとのこと、2013年度中にプラズマモデルの生産終了と国内の個人向けスマートフォン事業からの撤退、不振の半導体事業を切り離すことで、一連の構造改革にめどをつけ、成長戦略の推進に大きく舵を切り始めています。
企業の破綻は、消費者ニーズへの対応の遅れが起因していると言われています。
消費者の欲求は、うつろいやすい、その速度はますます速まっています。
変わらずに守り続けるべき伝統もありますが、変化をチャンスと捉え、変わることを楽しみつつ、しなやかにしたたかに新しいものにチャレンジ・チェンジすることも
生き残りのための必要な方策と考えます。
社内外を問わず、新しい物流にチャレンジするバックボーンとして当たり前の物流活動(基本)を考える機会にしたいと思います。
以上
(C)2014 Kiyoshi Takano & Sakata Warehouse, Inc.