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物流システム

第280号物流総合効率化法(略称:物効法)を考える!(2013年11月19日発行)

執筆者  髙野 潔
(有限会社KRS物流システム研究所 取締役社長)

 執筆者略歴 ▼
  • 職歴・履歴
    • 日産自動車株式会社(昭和36年~平成5年)
    • (出向)株式会社バンテック(勤務先:神奈川流通サービス協同組合) (平成5年~11年)
    • (独立)有限会社KRS物流システム研究所・設立(平成11年~現在に至る)
    参加組織・履歴
    • 株式会社湘南エスディ-  物流顧問(平成8年~12年)
    • 株式会社カサイ経営  客員研究員(平成12年~18年)
    • 物流学会  正会員(平成12年~)
    • ロジ懇話会・事務局(平成15年~19年)
    • 日本情報システムユーザー協会 個人正会員(JUAS) (平成15年~20年)
    • 情報システムコンサルタント(JUAS認定No161)
    委嘱(受託)・履歴
    • 通産省(現・経済産業省)  荷姿分科会委員・委嘱(平成8年頃)
    • 運輸省(現・国土交通省) 輸送分科会委員・委嘱(平成8年頃)
    • 中小企業基盤整備機構  物流効率化アドバイザー・委嘱(平成10年~17年)
    • 中小企業ベンチャー総合支援センター 新事業開拓支援専門員・委嘱(平成13年~18年)
    • 中小企業基盤整備機構  企業連携支援アドバイザー・委嘱(平成15年~21年)
    • 中小企業大学校(関西校) 非常勤講師・委嘱(平成14年~16年、18年)
    • 海外技術者研修協会 [AOTS]関西研修センター 非常勤講師・委嘱(平成20年~21年)
    著書・寄稿・その他
    • 卸の物流協業化事例研究(雑誌)・・・流通ネットワーキング
    • 業務革新・物流配送効率化(雑誌)・・・日経情報ストラテジー
    • 中小企業のロジスティクスは共同物流が決めて(雑誌)・・・SCAN
    • 日本のロジスティクス物流協業化事例研究(出版物・共著)・・・JILS
    • 物流共同化実践マニアル(出版物・共著)・・・日本能率協会
    • 共同物流の動向と共同物流の進め(雑誌)・・・物流情報
    • ドラック・ストア編ここがポイント!(雑誌)・・・流通ネットワーキング
    • 物流を核にした現場密着型のコンサルタントを目指して(論文)・・・JUAS/ISC
    • 需要予測で適正な発注を実現するには!(情報化相談室)・・・日経情報ストラテジー
    • 図解 なるほど!これでわかった よくわかるこれからの物流(出版物・共著)・・・同文館

 

目次

1.はじめに・・・。

  私は、1986年(昭和61年)に物流の共同化を目指している神奈川県を基盤とする化粧品、日用雑貨卸業4社と某物流企業のプロジェクトチームに縁あって招請され、それを機に共同在庫・共同物流、共同情報システム、共同配送との出会いがはじまりました。
  設置の背景は、地域卸共通のマーケットである800万人の消費者を抱える神奈川県下の中小企業卸が全国卸や東京、静岡を拠点とする強力な卸に対抗する「物流」の強みをバックボーンに商流を強化することにありました。

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  また、物流の効率化は、情報ネットワークの構築なくして成り立たず、当事(平成の初め頃)は、情報システムも汎用機時代で膨大なコストや人材を必要としていました。
  地域卸1企業では負担しきれない背景から中小の複数卸企業が共同で施設の近代化、物流ネットワークの強化に取り組み、参加企業の商流強化に貢献しました。
  その時の物流の仕組みが物流効率化法の雛型になったと言われています。
  物流を総合的かつ効率的に実施することで物流コストの削減や環境負荷の低減などを図る事業に対して、計画の認定、関連支援措置などを定めた新しい「物流総合効率化法」が2005年(平成17年)10月から国土交通省により施行されました。

2.物流総合効率化法(物効法)とは・・・。

  経済と生活の大きな波動を吸収すべく流通(物流)機能のハイレベルな技術とノウハウの収得を支援する物流総合効率化法の物流要請への対応を抽出してみました。
  物流を総合的かつ効率的に実施することで、物流コストの削減、環境負荷の低減などを図る事業に対して、その計画の認定、関連支援措置などを定めた法律です。
  これは、輸送網の集約、輸配送の共同化、長距離輸送・大量輸送の効率に優れた輸送機関へのシフト(モーダルシフト)で効率的で環境負荷の小さい物流を構築すること、効率的で国際競争力のある物流力を醸成することが求められているのです。

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  輸送・保管・荷さばき・流通加工を総合的に効率よく実施すること、物流拠点を集約し、高速自動車国道・港湾・空港等の隣接地に設置すること、共同輸配送などによる配送ネットワークを合理化し、トラックターミナル・卸売市場・倉庫・上屋、高速道路IC・貨物駅等の社会資本周辺に立地し、物資の仕分及び搬送の自動化、荷捌きの合理化を図るための設備、受注・発注を円滑化するための情報処理システム、流通加工用設備を有するものを中核として輸送・保管・荷捌き・流通加工を一体的に行うことで流通(物流)業務総合化を図るとともに輸送網の集約・配送の共同化など、輸送の合理化、総合的な物流業務の効率化を図るものであり、この方針に照らして適切な計画であるとの認定を受けることにより、計画する物流業務施設についての税制特例、事業許可の一括取得などの支援措置が施される制度が物流効率化法です。

3.物流総合効率化法(物効法)の動き

  2005年(平成17年)に施行された物流総合効率化法は、拠点を集約して輸送・保管・荷捌き・流通加工などを行う物流施設を整備する際に、さまざまな特例が受けられるため、これまでに168件の計画が認定(2011年度末現在)されています。
  物流総合効率化法は、輸送網の集約による国際競争力の強化、輸配送の共同化やモーダルシフトを通じた環境改善に寄与することから、物流大綱の重要な核になっています。
  認定基準は、高速道路IC、鉄道貨物駅、港湾・空港・流通業務団地などの社会資本から5kmの区域内に立地し、施設の規模は普通倉庫で平屋1,500㎡以上、多階建ては3,000㎡以上、設備要件として流通加工用設備などが求められています。
  これまで認定された168件のうち、中小企業(組合含む)による計画認定は94件と半数以上(56.0%)を占めますが、大規模投資が必要となることから、今後は複数の事業者による共同事業も視野に入れた負担を減らす方策、新設限定から物流効率化法の目的が果たせる新設と既設施設との組み合わせを含めた認定を望む声や東日本大震災で問題となった物流施設の災害対策などが挙げられます。
  被災地では荷崩れが発生し、非常用通信や電源供給(発電)設備のない物流施設は入出庫作業が停滞してしまい、復旧に時間を要したとのことでした。
  さらに、日本列島の周辺には、四つの地殻プレートが存在していると言われており、大規模災害の発生が予測されています。
  災害に強い物流施設を構築するための法整備も検討されています。

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4.物流総合効率化法を上手に活用したいものです。

  この物効法の認定方針に照らし、自社の物流機能を近代的で先進的な物流機能に再構築する機会とすることをお勧めします。
  昨今の国交省関係各機関においても輸送、保管、荷役、包装などのそれぞれの流通活動の分野で、施設の近代化、輸送方式の効率化、経営方式の合理化などで、より生産性の向上に繋がる力強い諸施策、支援体制が仕組まれています。
  トラックターミナル・卸売市場・倉庫・上屋、高速道路IC・貨物駅等の社会資本周辺に立地し、物資の仕分及び搬送の自動化など、荷捌きの合理化を図るための設備、受注・発注を円滑化にするための情報処理システム、流通加工用設備を有するものを中核として、輸送・保管・荷捌き・流通加工を一体的に行う流通業務の総合化と、輸送網の集約・配送の共同化など、輸・配送、流通(物流)業務の効率化、合理化を図り、環境負荷の低減に資することなどが認定要件として求められています。
  認定を受けることにより、物流施設の税制特例や、事業許可の一括取得等の支援措置が受けられ、特に高度化事業(長期貸付制度)として、物流総合効率化法の認定を受けた場合は無利子で、組合を設立しなくても貸付対象となるようです。

5.物流総合効率化法(物効法)の主なメリット

  物効法は、輸送や保管、流通加工を総合的に行える施設づくりや拠点集約などを進めることで、効率的で環境負荷の少ない物流を実現するのが狙いですが、中堅・中小企業が新しい物効法の認定を受け、物流を核に強い企業に変革していくこと、税制特例、市街化調整区域の開発許可などのメリットを享受して、物流力をバックボーンに強い企業への変革を期待したいものです。

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  物効法で貸付対象として認められたものに限りますが施設設置資金の80%以内で、貸付期間20年(うち据置期間は3年以内)で借り受けなどができます。
  概算ですが、物効法(無利子)と高度化融資(0.85%)の返済事例(概算)をグラフにしてみると物効法が断トツで有利、物流施設の計画時に物流総合効率化法の上手な活用(注視)も一考すべきです。

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6.最後に。

  2005年(平成17年)に施行された物流総合効率化法は、1992年(平成4年)に施行された中小企業流通業務効率化促進法(中小物流法)と比べると認定条件が明確で広い範囲の物流力向上、物流環境づくりなどに取り組み易いと感じています。
  物流業務機能のパターンは沢山ありますが、複数の事業者、特に中堅・中小企業の物流力の強化、取り組みに対して企業の負担を減らす施策をさらに求めたいものです。
  中小・中堅企業の物流部門の集約(一括物流・共同物流)や商物分離で物流機能を再構築し、スケールメリットと商流部門の力量向上の醸成が肝要と考えています。
  特に同一業種、同一業態の共同事業には難題、課題が山積していますが、単独事業では享受できない成果物の要素が沢山潜在していることを中小機構・補助事業で担った外部委員の経験(実務の立場で支援)の中で知ることができました。
  例えば、歴史的に形成されてきた商慣行(帳合と仕入条件、規模と仕入価格の低減、リベート、etc)に対する工夫、施設拠点の重要性、拠点の集約による人材と既存資産の有効活用、共同在庫による在庫負担の軽減、中小・中堅企業では対応しにくい豊富な品揃え、流通・物流の近代化、合理化に貢献できること、参加企業の利害が絡む投資負担(人材、土地、建物、物流設備、コンピュータハード・ソフト)運営費(人件費、維持管理費)得意先との配送条件(納品回数・多頻度、曜日と時間指定、近距離、遠距離、物量・大口・小口、異形状、重量)などの諸条件の改善で企業基盤の強化が図れること、さらに荷姿の統一(標準化)、コード体系、受発注〆時間、伝票類、作業帳票、管理資料の統一など、様々な実務の変革を実践、事業活動に欠かせない情報システムの共通プラットホームの投資負担を軽減すべく複数企業による開発環境の整備が急がれます。
  面白い試みとなると思いますが、卸の場合の立地選択として主要仕入先の営業倉庫の隣接地に物流拠点を構えて在庫、輸送などの負担軽減に挑戦して欲しいものです。
(例えば・・・日雑業界の場合、プラネット物流の隣接地に日雑卸の拠点を構える。)
  物流総合効率化法を柱に、日本企業の物流力の強化につながる拠点配置、施設規模、先進的な物流設備・省力化と自動化のための機器機能の選択、コンピューターシステム、配送体制、人員、在庫、走行距離、台当り積載率、入出荷車両の削減、中小・中堅企業集団が1地域事業から複数地域・全国地域事業へと事業変革、新たなビジネスチャンスと業容拡大・商圏拡大を試みる企業が、現れることを願っています。

以上


(C)2013 Kiyoshi Takano & Sakata Warehouse, Inc.

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