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物流システム

第385号 多言語商品情報提供サービスの実運用開始(2018年4月12日発行)

執筆者 上田 俊秀
(一般財団法人 流通システム開発センター コード管理部 次長
製・配・販連携協議会・多言語商品情報プロジェクト事務局)

 執筆者略歴 ▼
  • 著者略歴等
    • (学歴)
    • 1985年 東京都立大学経済学部卒業
    • (職歴)
    • 1985年 日本アイ・ビー・エム株式会社に入社。
      -主に、消費財製造業/卸売業を担当
    • 1999年 サン・マイクロシステムズ株式会社に入社。
      -主に、ISVソリューション・ビジネスを担当
    • 2003年 アビームコンサルティング株式会社に入社。
      -主に、流通業関連プロジェクトに参画
    • 2005年 一般財団法人 流通システム開発センターに入職。
      -コード管理部に所属

 

目次

<背景>

  訪日外国人客が、2017年には2,869万人に達し、「明日の日本を支える観光ビジョン」において、2020年に4千万人、2030年に6千万人の目標が設定されている。訪日外国人客の旅行消費額に占める買い物代の割合は、約37.1%(注1)を占め、買物消費額も、大幅な増加が見込まれる。こうした中で、訪日外国人客が、日本で買い物をする際には、言語の問題(説明・価格表示等)で不満や心配を感じるケースが多い。
  そこで、製・配・販連携協議会(注2)では、こうした不満点を軽減し、買物需要を一層拡大すべく、2015年度より、商品情報多言語化に関する検討を開始し、基本的な考え方をとりまとめた。さらに、2016年度は、実証実験システムを構築し、マツモトキヨシ都内店舗とファミリーマート都内店舗にて、実際に中国人観光客にスマートフォンを使用して頂き、アンケートによる利用調査を実施した。
  店頭実験の結果、中国語の商品カテゴリー名と商品画像、およびメーカーのウェブサイトによる中国語の商品詳細情報の提供について、8割~9割強が「とても役に立つ」「まあ役に立つ」と有用性を評価し、8割~9割弱が「ぜひ利用したい」「まあ利用したい」と利用意向を持っていることが分かった。
  こうした結果を受けて、今後さらに内容や運用の充実を図りながら、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けてより多くの企業の商品情報登録により、オールジャパンでの本格運用を目指すこととなった。
(注1) 「訪日外国人の消費動向 平成29年間値(速報)」 国土交通省 観光庁 より
(注2) 製・配・販連携協議会とは、消費財分野におけるメーカー(製)、中間流通・卸(配)、小売(販)の連携により、サプライチェーン・マネジメントの抜本的なイノベーション・改善を図り、産業競争力を高め、豊かな国民生活への貢献を目指すことを目的に、2011年5月に正式発足した。

<概要>

  当サービスでは、JANコードをベースに、多言語商品情報を提供するシステムを開発、専用のアプリ(Mulpi)を利用し、大変安いコストで、多言語化の取り組みを推進する。
  また、訪日外国人客向けの商品情報提供による販売促進、メーカー発信の正確な商品情報の収集/提供サイクルの確立をめざしている。
  ①商品のバーコードをスキャンする事で、商品基本情報(JANコード、商品名(日本語)、メーカー名(日本語)、商品画像、および商品カテゴリー名(JICFS(ジクフス)分類))を多言語(英語、中国語簡体字、中国語繁体字、韓国語、日本語)で提供。
  さらに多言語化されたメーカーの商品詳細情報ページ(Webサイト)がある場合は、当該ページにリンクを行なって表示する。

*画像をClickすると拡大画像が見られます。


  ②商品基本情報は、プラネット、JSM-DBC、ジャパン・インフォレックス(FDB)の各業界商品DBに加えて、その他業界分に関しては、流通システム開発センターが運営する流開DPより提供される。

*画像をClickすると拡大画像が見られます。


  また、会員となったメーカー各社の商品詳細情報ページへのリンク先情報も登録、保持される。
  ③多言語商品情報提供サービスは、メーカー発信の正確な商品情報伝達インフラとして、この取り組みに賛同する既存の関連サービスベンダーなどが展開するアプリやWebサービスにも開放する。また小売業が展開するPB品の登録などにも対応していく。

<進捗状況>

  専用のアプリ(Mulpi)に関しては、Android版とiOS版に関して、それぞれの公式ストア(Google PlayとApp Store)にて無料で、ダウンロードできるように一般公開している。
  バーコード・スキャンできる商品カテゴリーに関しては、ドラッグストアなどで販売されているOTC医薬品から開始し、順次、飲料・食品、日用品・化粧品などに拡大予定である。
  初期は、業界DBが出典元となる基本情報のみの場合が多いと思われるが、順次、メーカーによる多言語商品情報の整備を推進し、会員を拡大、商品詳細情報ページのリンクについても拡大予定である。
  訪日外国人は、あらかじめ購入予定商品を決めている従来の爆買いスタイルから、店頭で商品を見定めて購入するスタイルへ購買行動の変化の兆しが出てきている。買物環境の整備を図ることで、買い物の利便性を高めると共に、幅広い買い物需要の喚起などの効果が期待される。
  会員となるメーカーは、売り場で自社商品を手に取った訪日外国人に対し、商品詳細情報を自社ホームページを通じて提供できるほか、どの程度のアクセスがあったかのアクセスログが入手できるなど、販売促進とマーケティングデータの入手が可能となる。
  会員募集要項など詳細は、多言語商品情報プロジェクトのホームページを参照されたい(http://www.dsri.jp/forum/pro.html)
  ラグビーワールドカップ2019日本大会、2020年の東京オリンピック/パラリンピックなど、今後益々増大する訪日外国人の買い物支援に向けたオールジャパンによる多言語化の取組みの一環としていきたい。

以上



(C)2018 Toshihide Ueda & Sakata Warehouse, Inc.

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