第450号 コロナ禍後の厳しい時代の物流のあれこれを考える。(後編)(2020年12月22日発行)
執筆者 | 髙野 潔 (有限会社KRS物流システム研究所 取締役社長) |
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目次
- 5.商物分離で新たな商流(営業)を考える。
- 6.売れる営業マンのひな形づくり
- 7.ラストワンマイルの協業化(一括納品)を考える。
- 8.ラストワンマイルのこれからの配達方式を考える。
- 9.最後に・・・。
5.商物分離で新たな商流(営業)を考える。
顧客から選ばれる営業にするために「商物分離」で泥臭い物流を切り離し、個別企業の体力を商流に注ぎ、リテールサポート(CRM:顧客との関係構築、SFA:営業担当者の活動の範囲に特化)を充実することで経営資源を投入できる体制をつくりたいものです。(参考6:参照)
さらに、都道府県別の主力商圏を対象に営業力を集中投入し、いつ・どこに・いくつ・何を届けていくらで売ればいいのか、小売業のMD(マーチャンダイジング:お客様が注目する商品価格の設定、顧客が見やすく購入しやすいゴンドラの陳列、宣伝を行い販売促進をすること)で新たな商圏に商流(営業マンと売り方)を充実させ、物流を正面から支援する体制を築きたいものです。コロナ禍後の中小企業の営業の在り方として対面と足で稼ぐ営業からリモートを主体にした音声や動画、アニメに切り替え、移動時間、夜の宴席、長時間労働などを改善した営業マンのための成果が得やすく働き易い新たな環境を準備し、商流(売り方)を整えていきたいものです。
6.売れる営業マンのひな形づくり
従来の売れる営業マンには、本人が持っている感性が働き、結果を得ている人が多いようです。従って、資質のある人材選びが重要でしたが、これからの売れる営業マン選びとひな形づくりの研究や新たなリモート営業での売れる営業活動とひな形を研究し、売れる営業資料(データと映像)を増やしていきたいものです。 売れる営業マンづくりは永遠の課題です。(参考7:参照)
これまでは、営業マンの上位20%が利益の80%を稼いでいる実績があるそうです。下位80%の人たちが稼いでいるのは、残りの利益20%だけと言われています。 また、ある企業では、「売れる営業」、「普通の営業」、「売れない営業」に識別すると“2:6:2”の割合になると言っています。そこで、ビジネスモデルの成功のためにも「売れる営業マン」のひな形つくりのために売れる営業マンの調査・分析でひな形を作ることが重要だと考えます。 営業と一言で言っても様々なパターンとシーンがあり、ひな形と研修・教育の実務を合わせた対応をしたいものです。(参考8:研修概要)
7.ラストワンマイルの協業化(一括納品)を考える。
ラストワンマイルとは、ストックポイントである物流拠点(営業所)から着荷先(顧客)まで商品を運ぶ「配送」の最後の区間を言います。流通業・物流業では昔から「物流を制するものがビジネスを制する」と言われています。ラストワンマイルが抱える問題点として、ラストワンマイルの配送は、大手宅配事業社への依存度が高く、EC(ネット通販)の拡大によって宅配サービスの取扱量が急増し爆発寸前です。ラストワンマイルの物流サービスのあり方を考える時期に来ていると思われます。国土交通省によれば、国内の宅配便の取扱個数は、益々増加する傾向にあり、増加要因の一つにECの驚異的な成長にあることは間違いないところです。(参考9:参照)
日本における小売業のEC化率は、まだやっと5~7%を超える程度と言われています。コロナ禍での「非常事態宣言」で外出の自粛要請が発せられた時にネット通販を利用して欲しい旨の要望が出ていました。従って、これからの宅配便取り扱い量が、さらに急増加することは明らかで日本における宅配便個口数は、ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の大手3社によって、約90%程が扱われています。これからも増え続ける宅配便は大型車両での幹線輸送、特にラストワンマイルでの驚異的な個口数を処理するために宅配とメール便の配達エリアを集約、一括納品(TC事業)で新たなラストワンマイルの配達スタイルを実現したいものです。(参考10:参照)
8.ラストワンマイルのこれからの配達方式を考える。
今後ますます増加する宅配個口数の対処のために配達条件、人員増強、高齢者・女性の活用、荷受方法・場所の多様化など、多面的な対策が必要とする局面に来ています。各社共に既に許容量の限界に達しているとも言われ、宅配事業者は、各社各様の課題を抱え、今後増えるであろう宅配個口数にどのように対処すべきか、苦慮しているのが実態のようです。日本のドライバーの賃金水準が低いと言われており、この賃金水準では、新規採用は簡単ではありません。賃金水準を引き上げて人員を確保するには配送料の値上げという方法を採らざるを得ません。また、対策として宅配ロッカーの新設、コンビニ受取などの対応が進んでいます。さらに、佐川急便の場合は、個人(BtoC)よりも、法人(BtoB)に力を入れる傾向にあり、急成長が予測される法人宅配の吸収力も未知数です。日本郵便は宅配便を仕分ける拠点の整備がいまいちで集荷と送り出しに時間がかかっているとの評価をされているようです。こうした宅配各社の条件下で、配送料の値上げが避けられず、値上げがそのまま、ECの負担増加にもつながりかねず、値上げにしても各社各様の考え方や限界があります。これらの個口増対策として人員増加の努力と配送の効率化が必須となります。現状を効率化するラストワンマイルの新たな配達方式(多様化)に知恵を出したい所です。そこで、宅配事業者同士のラストワンマイルでの協業化(一括納品)、新聞配達の総合店方式、さらに、私が若い頃に活用したJARL(アマチュア無線)の不特定多数のQSLカード(交信証明書)の溜め込み方式、自動車補修部品の緊急性、定期性の供給方式、コンビニ(セブン)の曜日とエリア分けの2回転(AM・PM)方式など、あらゆる分野の効率的な方式の研究で顧客の許容範囲で配送できる配達条件の検討を行い、配送頻度、積載率の向上、料金などの抑制に繋げたいものです。宅配個口数の驚異的な伸びを克服する知恵出しのタイミングが訪れています。(参考11:参照)
9.最後に・・・。
日本の製配販は、戦後の技術と進歩、働く人の努力で生産性向上、成長率の上昇、人口増加などで日本経済は人口ボーナス(労働力の投入増加)で順調に成長してきました。2000年の前半から人口の減少、少子高齢化で人口オーナス(労働力の投入減少)におちいり、日本経済の成長率も先々の鈍化が懸念されています。 さらに、新型コロナの感染を抑え込む対策(社会活動や企業活動の休止)が日本(世界)経済を凍てつかせています。成長率のマイナス予測、製品や商品の衰退期を迎える前にコロナ禍の影響で売上と利益が過去に類のない減り方を始めています。そのコロナ禍で巣ごもり中の日本国民にコロナ対策の専門家会議からも買い物を控えて通販を利用して欲しい旨の助言がありました。 日本の物流を取り巻く環境は、コロナ禍以降、日本経済の成長率(参考12:参照)の大幅なマイナス予測、リーマンショックを超える経済危機を迎えると言われています。GDPの70%以上を占める中小企業の衰退、自動車・電機などのグローバル企業への波及、金融恐慌の発生などで社会環境が一変すると言われています。さらに、物流を活性化させる流通業は、より多くの顧客を呼び込む稼ぎ方が通用しなくなり、その現実を受け入れ、勝ち方を再定義し、ビジネスモデルを実行する時です。業種・業態を問わず、立ち止まってはいられません。コロナ禍での経済の落ち込み、少子・高齢化で労働人口(参考13:参照)の先細りの中、ピンチはチャンス、業容拡大への対応策を考えて前に進むしかない時代が訪れています。
以上
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