第240号商品データベース(JICFS/IFDB)の利用(2012年3月21日発行)
執筆者 | 山口 範行 (財団法人 流通システム開発センター 流通コードサービス部 主任研究員) |
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執筆者略歴 ▼
目次
1. JICFS/IFDBとは
JICFS/IFDB※1(ジクフス/アイエフデービー)は、JANコードとこれに付随する商品情報を一元的に管理するデータベースサービスである。昭和62年(1987年)に基幹となるデータベースシステムを開発するとともに、メーカーから商品情報を収集し当センターで整備した後、ディストリビュータ及び再販業者を通じて利用者へ提供する基本的な運用の枠組みを整え、昭和63年(1988年)からサービスを提供している。
JICFS/IFDBは、小売業におけるPOSシステムやEOS等の導入運用に必要な商品マスターやインターネットのショッピングサイト等で共通に利用される商品情報を収集整備し、誰もが低コストで迅速に正確な商品情報を得られることを目的に、流通情報システム化の基盤として普及促進に取り組んでいる(図表-1:全体イメージ)。
※1:JICFS/IFDB(JANコード統合商品情報データベース)
・JICFS:JAN Item Code File Service
・IFDB :Integrated Flexible Data Base
(図表-1:全体イメージ)
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※JICFS/IFDBの概要は当センターのホームページをご参照ください。
URL:http://www.dsri.jp/company/jicfisdb/top.htm
2.JICFS/IFDBの仕組み
商品情報はメーカーからの任意の登録を基本とし、連携している業界商品データベースからも入手している。さらにJICFS/IFDBでも独自に商品情報を収集している。収集した商品情報は、そのまま利用者に提供するのではなく人手で必要な整備を加え上でデータベースに登録し、商品情報の提供業者であるディストリビュータおよび再販業者を通じて、利用者である小売業や卸売業等に提供している(図表-2:仕組み)。
平成24年1月現在、JICFS/IFDBと連携の取れている業界商品データベースは以下の通りであり、メーカーは商品情報を業界商品データベースに登録すれば、JICFS/IFDBにも連携して登録でき、商品情報を登録するための作業負荷を軽減できる。
<業界商品データベース>
・プラネット(日用品、化粧品)
・JSM-DB(家庭医薬品)
・ファイネット(酒類・加工食品)
・JD-NET(家庭電気製品)
(図表-2:仕組み)
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3.JICFS/IFDBの登録状況
平成24年1月時点の商品情報の総登録件数は、約563万件であり、そのうちJICFS/IFDBの独自基準により市場で流通していると推測される商品情報は約252万件である。 内訳は、食品:111万件、日用品:62万件、文化用品:37.5万件、耐久消費財:21万件、衣料・身の回り品・スポーツ用品:20万件、その他:0.5万件である。
(図表-3:サンプルデータ)
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※サンプルデータの()内はコードに対する値
4.JICFS/IFDBの利用例
JICFS/IFDBは、従来から流通情報システム化の基盤として、製配販の流通三層で幅広く利用されてきた。最近ではインターネットや携帯電話のショッピングサイトでの利用も広がっている。
(1)POSシステムの商品マスター作成支援
POSシステムの普及期においては、JICFS/IFDBの商品情報は、食品スーパー、コンビニエンスストアを中心に、POSシステム導入時における商品マスターの作成負荷を軽減するために広く利用されていた。
しかしながら、POSシステムが広く普及した現状では、新しい店舗やリプレース後のPOSシステムの商品マスターを作成する場合には、一般的に既存のPOSシステムの商品マスターから新しい商品マスターを作成するため、JICFS/IFDBの商品情報がセットアップに利用される機会は減少している。
一方、既に導入されているPOSシステムの商品マスターを最新の状態に保つためには従来からJICFS/IFDBの商品情報が広く利用されている。
とりわけ、中小の小売業においては、取引先の卸売業やメーカーから商品情報をタイムリーに入手できない場合もあり、ディストリビュータや再販業者が提供するサービスを利用する企業も多い。
(2)地域流通VANでの利用
同じ地域内の卸・小売業が共同でVANを利用する地域流通VANでは、小売業の発注データを卸売業に中継するサービスがあり、受発注データの確認や小売業への発注一覧を提供するサービス等を行うためにJICFS/IFDBを使用している。
地域流通VANに参加する卸・小売業は協力して商品マスターを最新の状態に保つようメンテナンスを行っているが、メンテナンス負荷が大きいため、JICFS/IFDBの商品情報を利用し、作業負荷の軽減を図っている。
(3)ショッピングサイトでの利用
①ショッピングサイトの状況
当初、インターネットのショッピングサイトには一般ではなかなか入手ができない商品や個性的な商品が取り扱われる場合も多く、利用者はサイトを次々に閲覧して新しい機能をもったものや独自の価値がある商品を探して購入していた。これは実際のショッピングモールに行ってそれぞれ特色のある専門店をまわり買い物を楽しむのと似ている。
その後、インターネットの利用者が増えたことと、いつでも、どこからでも購入でき、決済手段も多様で、かつ購入した商品は届けてもらえるなどの利便性もあって、ショッピングサイトで取り扱われる商品は、いくつかの小売店を見て回り価格や機能、デザインなどを比較して購入する買回り品に加えて、近所の小売業で日常的に購入する食品や日用品などの最寄品まで多種多様な商品が取り扱われるようになってきた。
②ショッピングサイトへの商品情報の登録
小売業やメーカーなどの出店者がインターネットのショッピングサイトで商品を販売するためには、それぞれの出店者が販売しようとする商品の情報をショッピングサイトのシステム(商品マスター)に登録する必要がある。
インターネットのショッピングサイトには、利用者が購入しようとする商品を探しやすくするために、カテゴリーごとに商品を検索できたり、探した商品を一覧で並べて表示し比較したりするなどの使い勝手を良くするための機能が備わっており、このため出店者は、ショッピングサイトの運営者が指定する方法で商品情報を登録している。
商品情報の登録が正しく行われていないと、商品を一覧で表示したときに見にくい、正しいカテゴリーで表示できない、更には表示したカテゴリーの中に別のカテゴリーの商品が表示されてしまうなど、利用者が必要としている情報をスムーズ(直感的)かつ的確に表示できないこともある。
ショッピングサイトに登録されている商品は極めて大量であり、もし利用者がその情報の中から欲しい商品を簡単に効率よく見つけることができなければ、折角の商品情報は十分には活用されず、ショッピングサイトの魅力を損なうこともあり得る。従来の製配販の流通業と同様にインターネットのショッピングサイトにおいても、商品を一意に識別し、その情報を正確に登録して常に最新の情報に保つことは、地道で基本的なことではあるがショッピングサイトの運営において極めて重要な作業となっている。
③インターネットでも商品識別はJANコード
そこで、インターネットのショッピングサイトを運営する会社では、既に多くの商品に付番され、流通情報システム化の標準となっているJANコードを商品識別として利用することで、商品を一意に識別し商品情報の効率的な登録管理と登録内容の精度を向上させるための対応が進められている。更に一部のショッピングサイトでは出店者が商品情報を登録する際にJANコードの付番を義務付けているところもある。
実際に多くのショッピングサイトにおいて、家電製品や日用品、加工食品などで商品の詳細を説明するページで商品コードとしてJANコードが表示されている場合が増えてきている。
商品識別としてのJANコードの利用が広がるとともに、JANコードをキーとして商品情報を収集整備しているJICFS/IFDBの利用分野も拡大してきている。
以上
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