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第144号業界標準化によるIT利用促進事例 ~新たな市場創造を夢に~ (後編)(2008年3月18日発行)

執筆者 青木 利夫
ウエラジャパン株式会社
サロン事業本部 管理部 ビジネスサポートセンター
BSC担当マネージャー
    執筆者略歴 ▼
  • 略歴
    • 1951年生まれ
    • 1973年 早稲田大学卒業
      婦人服専門店「三愛」入社 本社経理部勤務 営業経費・償却資産・支店会計担当。
    • 1977年 東急ハンズ入社 本社経理課勤務 決算・税務・企画収支担当渋谷店立ち上げに携わる。
    • 1979年 ウエラ化粧品入社 債権・予算・受注管理・営業データ管理におけるエンドユーザーコンピューティング担当。ZD運動推進・年金理事・SAP/SDモジュールチームリーダー・インターネット関連プロジェクト担当。
    • 全国理美容製造者協会流通委員会において、理美容業界VAN・業界標準WEB-EDI「NBA楽々注文ねっと」構築に携わる。

前編(2008年3月6日発行 第143号)より
*サカタグループ2007年9月4日「第12回ワークショップ」の講演内容をもとに編集しご案内しています。

目次

3.NBA楽々注文ねっとの概要

(1)業界インフラとなる、新しい形のWeb-EDI構築

  私たちの考え方は、まずASPサービスとして立ち上げたいという基本の考えがありました。
  開発に関しては、NBAのメーカーと、他に大手問屋さん情報システム関係者の方のご参加をいただき、業界全体での要件を洗い出して日立さん側の開発技術者と共同で開発にあたりました。
  システムの見積もり検討に際しては、参加するメーカー、代理店が増えれば増えるほど料金が少なくなるASPサービスを目指したいということで、業界の仕組みとしてASPサービスを前提として4社ほどの開発会社にお話をもっていき、最終的に、日立さんと提携することが決定されました。
  また開発にあたっては、受注を出す側にとっても、受ける側にとっても、システム化の進んでいるメーカー、進んでいないメーカー、システム化の進んでいる代理店さん、システム化の進んでいない代理店さんでも利用できる仕組みにしたいとの希望を持っておりました。その考え方をベースにシステム名称を楽に発注、楽に受注ということで「NBA楽々注文ねっと」と名づけました。
  全面協力をいただいた日立さんに、開発された仕組みをASPサービスとして立ち上げていく段階でも、サービス形態、料金体系、契約内容・文言についても、12社の意見調整、法務関係者の見解の相違などの調整を図り、いくつかの山を乗り越えつつ、それぞれの立場、主張はありましたが、業界の共通インフラとしてのご理解をいただき実現いたしました。

(2)(株)日立製作所と取り組んだ理由

  4社の会社さんに見積もりとプレゼンを行っていただき最終的に日立さんとの取り組みに決定いたしましが、日立さんを選んだ理由は、まず4社の中でBtoBに関してのe-コマースサイトを既に3万社との間で運営されているという実績がありました。
  また説明にあたった開発担当者の方が非常に経験豊かな方で、私たちが投げかけた質問に対しては、いったん持ち帰ってお返事しますという形ではなくて、その場でお答えくださったということがあります。加えて日立さんは非常に裾野の広い研究をされていて、将来的な発展を考えたときに、ビジネスの拡大に対しても適応力があるということで日立さんに最終決定いたしました。
  こういった背景がありまして、日立さんとの間で、「NBA楽々注文ねっと」という、WEBでの受発注の仕組みが動き始めたという形になります。もちろん、日立さん側としては、非常にセキュリティの高いデータ管理等の仕組みをお持ちですし、また問題が起きたときの対応も非常に早いものがありました。

(3)NBA楽々注文ねっとの特徴

  先程既にWEB-EDIを立ち上げていたメーカーというのが、わが社も含めて数社あるとお話をさせていただいたのですが、業界の中でこういった形でWEB-EDIをそれぞれのメーカーがどんどん作っていくと、最初は便利だった仕組みも、やがて代理店さんにとっては非常に負荷のかかる仕組みになってしまう、といった点があり、私どもは「NBA楽々注文ねっと」という、このねずみ君の絵がありますが、ここを通すときは、代理店さんはメーカーさんに関係なく一括して商品の発注を出してくる、そこから先は、「楽々注文ねっと」がメーカーごとに商品を組分けて、発注の情報を流すという、こういった仕組みを作りました。
  これはJANコードとメーカーコードの両方の使い分けができるという仕組みになります。

(4)様々な業務シーンに最適な4種類の注文方法

  基本的には4つの発注方法があります。ショッピングカート方式というのは、従来からある、決められたところに数量をいれて発注をかけてくるという方法。
  それから商品番号入力方式は、商品番号、代理店さんがメーカーの受注表を手元に持っていて、メーカーコードと数量だけを入力していくという方式。
  それからデータファイル転送方式では、タブ形式もしくはCSV形式のデータをファイル転送という形でデータを読み込んで処理をかける仕組み。
  最後に、一番好評でありました、ハンディターミナルを利用しての注文方式、という形になります。

4.代理店様への展開事例より

(1)「NBA楽々注文ねっと」稼動に伴う代理店様の声

  実際に代理店さんの展開で私たちが驚いたのは、当初単年度で50ディーラーが繋がればいいなという予定でした。実質的なスタートは去年の6月からスタートで今年の5月末までに50社繋がっていればいいなという予定だったのですが、それをはるかに超える数字になっていまして、これが8月31日現在で89社の代理店との接続が行なわれてきました。
  申し込みは100社を超える代理店さんから申し込みがあり、年商が2億から20億位で、構成人員も少なくて、その代わり取り扱いメーカーが多いという代理店さんの中での利用度合いが多かったという形になります。
  代理店さんの中では、人海戦術で発注作業をメーカーごとに担当を決めて、お店が閉まったあとに行っていた業務が、こういったハンディターミナルを利用した発注に移行することによって、格段に効率が向上したことがありまして、逆に代理店さん側から発注が出来るんだったらこれで棚卸も出来ないかという要望があり、急遽、棚卸に関する仕組みも付け加えました。これによりJANコードの整備とか、在庫の圧縮、在庫回転率の向上とかに貢献ができてきました。
  私どもでは、第1フェーズの代理店さんとメーカーの間の仕組みを作ると同時に、代理店さんが注文を受けるサロンさんと代理店さんとの仕組みについても、基本的な部分について、開発しながら話を進めてきました。この仕組みが今年の10月から正式にスタートします。
  これは玉生社長様に以前お話したときに、それは非常にいいよ、日用雑貨業界では一番うまくいかなかった部分で、問屋さんと小売店との間の標準化がやはり非常に難しかった、そういった意味では、まだ仕組みの標準化が遅れている業界であれば、今のうちに代理店さんとサロンの間の仕組みについても標準化を図ったほうが業界のためになる、というお話しもいただきまして、私どももそれに意を強くしてこの開発に力を注いでまいりました。

(2)楽々注文ねっと Phase2 のスタート

  サロンさんからのWeb受注のサポートについては、代理店さんで独自にWebで取引開始されているところもありました。
  しかし今後インターネットを利用される代理店さんが増えてくると、サロンさんにしてみれば、あの代理店、この代理店で仕組みが違ってはかえって不便なことも出てきてしまいますし、インターネットの世界ではセキュリティも大切です。代理店さんの中でサーバーをたてて、そこに人を配置して24時間監視体制にしていくというのはこれも大変です。
  これを第1フェーズの時と同じように多くの人たちが利用すれば料金も下がり、同じような仕組みで動かせばサロンさんも助かると思い、美容業界の中で統一されたEDIの仕組みができればもっといろんなビジネスチャンスが広がるのではないかという話をさせていただいています。
  私たちは業界の中で、競争関係にありながらも、業界インフラ作りにおいて、こういったプロジェクトXみたいな形で仕事が出来ることに喜びを持っています。
  流通委員会のメンバーも最初はお互いに敵対する会社同士だったのですが、現在は非常に仲がよく、そういった意味では会社の中で仕事をするより、ある部分仕事がしやすい面があります。
  これは最近気がついたのですが、会社の中でもそうですが、何かをやろうとすると、「やれない・出来ない・無理だ」とか「費用対効果があるのか」と言って話が進まないのが常ですが、こちらのほうは意外と、将来こういう業界にしていきたいから、そのためには必要だからやらないといけないと皆が知恵を出し合い何とか形にしていく、そういった仕組みがいつのまにか出来上がってきています。
  これはいろんな意味で新しい仕事のやり方ということで、この委員会の活動というのは勉強になってきていると思っています。
  私たちは基本的な業務のステップはメーカーが違っても同じなんだ、1つの仕組みで複数の企業が共有できるような仕組みを、もっともっとこの楽々注文ねっとだけではなくて、作るべきなんじゃないかということを今考えておりまして、そういったものの知恵を出し合っているという状況です。
  ですから受発注コスト削減だけの考え方で私たちは動くのではなくて、業界全体のコスト削減や、さらには環境保護まで推進できるような形に自分たちの仕事の枠組みを広げていきたいと思っています。

  インターネットで何かを行うとき、皆さんはe-コマースというふうに考えがちなのですが、これはe-ビジネス化、インターネットを活用して生産性の向上や新しい価値の創造、顧客、供給者など企業を取り巻く相手と新しい関係を作ると考えています。この新しい関係を作るというのは非常に大切なのではないかなと考えています。

5.業界標準化に向けた将来構想

  今、私たちはこのようなことを考えています。
  美容室、理容室さんというのは国民のほとんどの方が訪れる場所です。これは店舗数です。理美容室が大体30万店舗。コンビニエンスストアが大体4万1000店舗。郵便局が2万5000店舗。こういった中で30万店舗に商品を配送する機能がもたれているということと、この30万店に全国民が訪れている場があって、ここにITを利用した新しいサービスを展開できれば、もっと面白い空間になるのではないかと考えております。
  私たちはこれを新たな市場作り、マーケットリサーチも含めて、単なるe-コマースだけではなくて、私たちがもっと想像力を豊かにすれば、新しいサービスの創造と需要の創造ができるのではないかと夢を描いています。
  一緒に新しい夢を創りたいなという会社さんがありましたら、どうぞお声かけ下さい。本日はどうもありがとうございました。

以上



(C)2008 Toshio Aoki & Sakata Warehouse, Inc.

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