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第538号 「物流共同化の過去・現在・未来についての考察」~物流共同化実態調査研究報告書より~(前編)~(2024年8月20日発行)

執筆者 浜崎 章洋
(大阪産業大学 経営学部商学科 教授)

 執筆者略歴 ▼
  • (略歴)
    • 1969年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。
    • タキイ種苗、日本ロジスティクスシステム協会、コンサルティング会社設立を経て現職。
    • 2004年度、2013年度日本物流学会賞、第12回鉄道貨物振興奨励賞特別賞受賞。
    (著書)
    • 『改定第2版 ロジスティクスの基礎知識』(海事プレス社)
    • 『物流コストの算定・管理のすべて』(共著、創成社)
    • 『ロジスティクス・オペレーション2級』(共著、社会保険研究所)
    • 『通販物流』(共著、海事プレス社) など
  • サカタグループ2024年3月15日開催 第27回ワークショップ/セミナー「ロジスティクス戦略の新動向」の講演内容をもとに編集しご案内しています。
  • 今回大阪産業大学 経営学部商学科 教授 浜崎 章洋様の講演内容を計3回に分けて掲載いたします。
     

    目次

    • 0.はじめに
    • 1.物流共同化が注目されている理由
    •   
         皆さんこんにちは、只今ご紹介いただきました大阪産業大学の浜崎です。
      本日は物流共同化のお題をいただきましたので、私が所属している日本物流学会において、これまで長年にわたり物流共同化の研究を行ってきましたので、このことを踏まえてお話していきたいと思います。
      では、最初に簡単に自己紹介をさせていただきます。
      大学を卒業後、京都のタキイ種苗とういう会社に勤めた後、日本ロジスティクスシステム協会に転職し、そのときに社会人大学院に通っていました。その後、物流会社、コンサル会社を経て、現在、大学の教員を勤めています。
      また、本の執筆を行って、日経ビジネスに取り上げていただいたり、最近では、『「物流コストの算定・管理」のすべて』(創成社, 2024年)を出版しています。

      0.はじめに

      はじめに 1)商取引における物流の重要性

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        まず、はじめに、商取引における物流の重要性についてですが、ご承知の通り、商取引には、物の取引とサービスの取引があります。サービスの取引、散髪に行くとかマッサージを受けるとかですね、サービスの取引の場合は物流は発生するでしょうが、微々たるものです。物の商取引の場合は、実際に物を売買するので、物流が発生します。
        企業経営にとって、商流と物流という、大きな役割・機能が二つありますが、営業部門の方は、販売活動とか取引条件を交渉する、物流部門、もしくは、物流会社の方が、その取引条件に沿って商品をお届けする、ということなのですが、この商流と物流が完了しないと商取引は成立しません、これは、ごく当たり前のことです。
        今特に、物流2024年問題が、あと2週間で始まります、トラックドライバーさんの時間外労働時間の規制に関して言うと、この物流(輸送)が、できなくなるかもしれない、ということです。企業の方々は、いろいろ危惧をされていたりとか、いろんな改革を行い対応されていると思いますが、本日のテーマである物流共同化というのは、持続可能な物流といいますか、納品を継続していくために非常に重要な役割を担うということを、お話していきたいと思います。

      1.物流共同化が注目されている理由

      1.物流共同化が注目されている理由

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        なぜ、物流共同化が注目されているのかというと、労働人口の減少とトラックドライバーの減少があります。少子高齢化が言われて久しいですが、特に若年層、生産年齢人口と言われる方々の人口減少が著しいのです。
        公益社団法人 鉄道貨物協会(https://rfa.or.jp/)の調査 *1 によると、今から数年後(2028年)には、トラックドライバーさんが30万人近く足りなくなると言われています。来月4月から、トラックドライバーさんの時間外労働時間の規制が始まると、これについて、何も対策を行わなかった場合は、輸送力が約15%不足する可能性があると言われています。
      (注釈)*1.令和元年5月,「平成30年度本部委員会報告書」p104 4.4営業用トラックドライバー受給の予測, 公益社団法人鉄道貨物協会
      (参考サイト) https://rfa.or.jp/wp/pdf/guide/activity/30report.pdf

      参考:物流2024年問題とは

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        では、物流2024年問題とは何なのかということですが、この詳しい説明は省略しますが、要は、トラックドライバーさんの時間外労働時間の上限が規制され、年間960時間以内になるということなので、年960時間を単純計算し割り算すると、月80時間とか週20時間とか1日4時間以内となってしまいますが、これでもかなりの長時間労働なのです。
        長時間労働については、4月1日から始まる物流2024年問題に向けて、皆さんいろいろ対応されていると思いますが、これはゴールではないのです、ここから始まりますという認識で、ぜひ今後の対応を考えていただきたいと思います。
        時間外時間の上限規制については、960時間の次は840時間になって、その次は720時間になります。何年かかるかわかりませんが、今後この規制はもっと厳しくなり、これはゴールではなくて、スタートなのですということを、ぜひご承知おきください。
        私は、職業柄、経営者の方々、物流会社の担当者の方、あるいは荷主企業の物流部門の方々と交流があって、昨年秋位まで、この物流2024年問題に関する相談がとても多かったのです。では、秋まで皆さん何もしていなかったのかというと、私にはすごく疑問なのです。
        新聞やニュースの報道を見ていると、当初、丁度1年位前、物流2024年問題というのは、宅配が運べなくなります、こんな話ばかりじゃなかったでしょうか。通信販売が増えてきているため、このままでは宅配が運べなくなります、というニュースだとか報道が多かったように思います。きっと、企業の経営者の方々、荷主の物流部門の方々は、宅配サービスの問題だと思っていたのでしょうね。だから、宅配会社さんが何とかしてくれるだろうと考えていたのだと思います。
        それが昨年秋ぐらいから、いわゆるBtoB企業間の貨物も運べなくなりますとか、特に農産物とかが運べなくなります、という報道が始まってから、私のところへ相談にくることが増えてきたのです。
        何が言いたいのかというと、物流2024年問題について、1年半前から工夫されていたのは物流会社さんだけで、荷主企業の経営層とか物流の担当者さんは、あまり関心がなくて、物流会社さん4が何とかしてくれるだろうと考えていたのではないかな、と思っています。

      1.物流共同化が注目されている理由 2)最も効果のあった物流コスト削減策

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        では、物流共同化が、なぜ注目されているのかというと、こちらに、日本ロジスティクスシステム協会が毎年出している「物流コスト調査報告書」(https://www1.logistics.or.jp/data/cost.html)があります。
        ロジスティクスシステム協会が毎年、売上高物流コスト比率5%ですよとか、製造業とか卸売業、小売業、業界・業種ごとに、売上高物流コスト比率を出していることは、皆さんご存知ですね。ここでは、調査結果の中に、物流コストだけではなく、「物流コストの削減に効果が大きかった施策は何ですか」、これについて、荷主企業へのアンケート結果を掲載していて、輸送の改善とか、コンテナラウンドユース *2 とか、帰り便の活用とか、輸配送の共同化、こんなキーワードが出ているのです。
      (注釈)*2. 輸入コンテナを積み降ろし後に、空のコンテナに輸出の貨物を積み込み利用すること
      これから、物流の共同化とか、コンテナラウンドユースとか、混載化というのは、物流コスト削減に効果があることがわかると思います。
        では、物流共同化のメリットは何なのか、ということですが、中央職業能力開発協会が実施する「ビジネスキャリア検定」(https://www.javada.or.jp/jigyou/gino/business/)は、皆さんご存知ですか。
        知っている方は、挙手いただけますか。若干名ですね、では、少しだけ説明します。今から20年ぐらい前ですが、ブルーカラーの方向けの資格は、例えば、危険物取扱責任者など、たくさんあります。それで、ホワイトカラーの方向けの公的資格があまりないということで、当時の厚生労働省が、事務系従業員を対象とする資格認定制度として、平成5年にビジネス・キャリア制度を作り、平成19年に、「ビジネス・キャリア検定試験」を開始し、物流(ロジスティクス)分野を加えてリニューアルしました。
        ここには、物流(ロジスティクス)だけでなく、例えば生産管理とか、営業・マーケティングとか、経理・財務管理、企業法務・総務など、全部で計8分野があります。
        この物流分野で言うと、荷主企業向けの「ロジスティクス管理」と、物流事業者向けの「ロジスティクス・オペレーション」があり、この中には3級と2級があって、3級は若手社員向けで、2級は中堅の管理職向けとなっています。自主学習向けの標準テキストも発刊されていて、年に2回、検定試験があります。本日はこの説明をしにきた訳ではないので、お時間のある時に、ホームページを検索してみてください。とてもよくできたテキスト、試験なので、社員の方の研修に使われるとよいと思います。
      (参考サイト)JAVADA, ビジネス・キャリア検定「ロジスティクス」分野https://www.javada.or.jp/jigyou/gino/business/logi.html

      1.物流共同化が注目されている理由 3)物流共同化のメリット①

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        こちらに、物流共同化のメリットについて書いていますが、共同化、例えば配送では、共同化せずに個別に直接納品をしていくと、発地☓着地のトラックの便数が必要になります。この場合、発地が3で、着地が4だとすると、3☓4=12便必要です。これが例えば、共同配送センター、いわゆるトランスファーセンター(TC:通過型物流センター)が間に入ると、発地3+着地4=7便必要、つまり掛け算から足し算になり、大幅な便数の削減が可能になります。それだけではなくて、トラックの車格も大きくできます。小口の貨物でしたら2tトラックで納品しますが、大口貨物でしたら、10tトラックで一度に納品すればよいのです、そういったメリットもでてきます。
        一般的に言われている共同配送のメリットはこのあたりまでですが、それだけではなくて、CO2排出量が減りますとか、着荷主側の荷受け作業の負担が減りますとか、いろいろなメリットがでてくるのです。
        この物流共同化が成功していく要因として、どのようなことが挙げられますかということですが、一つ目は、着荷主側の物理的な制約です。
        百貨店をイメージすると一番わかりやすいと思いますが、百貨店は一等地の駅前にあります。そんなところに大きな駐車場がないですし、たくさんのトラックが納品できるような大きな地下の駐車場もないのです。ということで、納品場所の制約があるので、納品のトラック台数を減らすために、百貨店納品代行会社が誕生したのです。これが物理的な制約なのです。
        二つ目は、取引先/納品先の要望です。主要小売業の店舗がまさにそうです。コンビニとかスーパーでは、店舗が広くなくて駐車場も狭く、アルバイトの人数も少ないことから、仕入先ごとにバラバラに納品されると荷受けに時間がかかるため、一括物流(納品)してくださいということになるのです。
        三つ目は、エコノミーとエコロジーの両立です。もちろん、物流コストが下がるとか、荷受業務が楽になるということだけではなくて、物流コスト、輸配送コストが削減できます。
        四つ目は、エゴの排除です。荷主の営業の方からすると、ライバル企業と一緒に運んで欲しくないとか、緊急出荷ができなくなるみたいなことで、そういったことを言っていると、なかなか共同化が進まなくなるので、そういったエゴを無くしていきましょうということです。
        最後に、これはつい我々が陥ってしまうことなのですが、手段が目的化してしまうということがあります。そうではなくて、何のために物流共同化するのかについて、もう一度考え直さないといけません。物流共同化する事自体が目的になってしまわないように、目的の明確化と共有化をすることが必要なのです。
        物流共同化が成功する要因としては、概ねこの5つについて、きちんと対応されていることが必要になってきます。

      1.物流共同化が注目されている理由 3)物流共同化のメリット②

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        物流共同化のメリットについて、ここで整理しておくと、まず、物流コストを削減できます、例えば輸送の費用だとか、荷受け側、着荷主側の荷役の費用を削減できます。更に、物流の効率化が可能です。これは輸送だけではなくて、着荷主の荷受け業務も効率化できます。環境負荷軽減、CO2の削減とか、そういったことも可能です。
        今までの物流共同化の話だとこれで済んだのですが、今後のことについて言うと、ドライバー不足、ドライバーだけではなくて、倉庫内で作業をする人、店舗で働く人も足りなくなってきますので、そういったところにも対応可能です、ということなのです。
        次に、共同配送による効果ですが、皆さん、プラネット物流という企業をご存知でしょうか。今は解散されていますが、日用雑貨業界の物流共同化をされていた会社、プラネット物流におられた、津久井先生という有名な先生がおられます。
        津久井先生は、元々ライオンにおられて、その後プラネット物流に移られて、日用雑貨業界の物流共同化を推進された方で、定年退職されてから、我々の所属する日本物流学会に来られて、物流共同化の研究を長らくされておられました。先生によると、共同配送の効果には、①束ね効果、②均し(ならし)効果、③段取り効果、の3点があると言われていました。
        ①束ね効果とは、複数の荷主が、貨物まとめることによってスケールメリットを生かせるということです。2t車5台で10tの貨物を運ぶよりも、10t車1台で10tの貨物を運ぶ方がコストが安いですよね。そういったことで、貨物をまとめることによってスケールメリットを生かせるのです。
        ②均し(ならし)効果とは、閑散期の異なる貨物を束ねることによって、貨物量をならす(平準化する)ことです。物流では、物量にはかならず変動があります。多かったり少なかったり、物量の変動が大きければ大きいほど、物流コストが上昇する要因になるのです。
        極端なことを言うと、物流の変動はありません、常に一定ですと言ったら、必要なだけのトラックと人員を固定で手配すればいいのですから、物流コストを大きく削減できます。物量の上下、波動があるから物流コストは、どうしても増加傾向になるのです。もう一つは、いろいろな荷主さんが集まることによって、この物量の変動を減らして、平準化することができます。日曜雑貨業界ですと、夏によく出るものと冬によく出るものを合わせることにより、年間の変動を吸収することができます、ということです。
        ③段取り効果とは、共同配送とか物流共同化をすると、そこへ参加されている荷主さんや物流会社さんに、ルールを守っていただかないといけません。
        例えば、A社さんは、荷物引き取り時間は何時です、B社さんは何時です、という具合に、ルールを守っていただかないと、共同配送、物流共同化ができないのです。このルールを守ることにより、結果的に、倉庫内作業の効率化が進んでいきます。目に見えないメリットかもしれませんが、こういったメリットもあるのです。
      ※中編(次号)へつづく



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