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第252号3PLによる物流の価値創造~物流品質活動のあるべき姿とは~(後編 )(2012年9月18日発行)

執筆者 増井 秀典
サカタウエアハウス株式会社 取締役 情報開発部長

 執筆者略歴 ▼
  • 略歴
    • 1986年 鐘紡株式会社入社、生産技術研究部門、物流企画部門にて化粧品を中心とした物流センターの構築・設計・システム化を担当(在籍中に第7回流通システム大賞・通産大臣賞を受賞)
    • 1999年 朝日アーサーアンダーセン株式会社入社、2002年 ベリングポイント株式会社にて、SCM/ロジスティクスを中心としたコンサルタント(マネージャー)としてクライアントの業務改革(BPR)および事業・物流戦略の構築・実行を担当
    • 2005年 現職のサカタグループ入社、サカタウエアハウス株式会社、サカタインフォ株式会社にて倉庫・3PL事業の推進、SCM・ソリューション事業の推進を担当
    • (社)日本ロジスティクスシステム協会認定 ロジスティクス経営士

 

前編(2012年9月6日発行 第251号)より
*サカタグループ2011年11月16日開催第18回ワークショップ/セミナーの講演内容をもとに編集しご案内しています。
*今回は2回に分けて掲載いたします。

目次

Ⅳ.物流品質活動の推進

それでは、どのような取り組みを行っているのかを紹介します。

1.物流品質管理の取組み① ~全体像~

弊社における物流品質管理の取り組みとしては、「魅せる物流品質の実現により、現場力を強化する」ということを目的として進めています。ここでは、どうやって現場の力を強くしていくかといったところをポイントとして、その取り進めを紹介します。
まずは、現在の品質状況を把握するというところから入ります。次に、課題を整理の上、分析、改善していきます。ここでは、弊社だけでは解決できないような事項も当然出てきますので、お客様と協業・協力して全体の最適を実現することが必要です。それによって、お客様との信頼関係も築け、弊社社員の品質に対する意識を向上させていくということが可能になると考えています。そして、それを継続的に繰り返し実施することが重要と考えています。次に、品質管理、業務改善、営業推進、それぞれの中身について説明させて頂きます。

1.物流品質管理の取り組み② ~品質管理~

品質管理については、大きく3つの観点で考えます。1つは「倉庫内での作業ミス」です。これは倉庫内でのことですからお客様にご迷惑は掛かっていないという状況ですが、この実態を掴んで解決して行くことが重要です。次に、誤出荷ですが、これはお客様にご迷惑を掛けてしまった状況ですから、当然、詳細を把握し、再発を防止しなければなりません。そして、3つ目に輸配送の事故ですが、輸配送時に発生した汚損、破損などのトラブルを掴んでいます。これらをそれぞれ共通のフォーマット、同一の業務範囲で発生件数を集計して、各営業所で比較・検証を行うようにしています。それにより、発生理由の分析と改善活動の展開につなげていくという、品質管理の取り組みを行っています。

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1.物流品質管理の取り組み③ ~業務改善~

次に、業務改善についてお話します。弊社では、いわゆるPDCAの観点で業務改善を推進しています。主要な活動としての「Do」が、「カイゼン活動」ということになります。それに対して、目標「Plan」を設定し、活動の結果を「Check」評価して、「Action」調整を行うことで、更に次の目標に繋げていきます。このPDCAの活動は、営業所毎に行っており、月に一回、カイゼン会議を開催し、それを基準に1つのサイクルとしてPDCAをまわしていくようにしています。また、年に2回、全社的な会議を開催し、そこで各営業所から実績の報告を行い、更に改善を高めていくという取り組みを行っています。

1.物流品質管理の取り組み④ ~営業推進~

最後に、営業推進についてお話します。まずは、お客様満足度の向上が大切と考えています。そのために、「5S活動」を推進しており、お客様にアピールさせて頂けるようなポイントを多く作って、弊社に業務を委託して頂いていることに対して、安心感を持って頂けるように、「カイゼンプロジェクト」として推進しています。次に、営業所全体の意識向上としては、掲示物、ポスターの掲示を行ない、また、お客様と定期的なミーティングを開催させて頂き、レポートや提案を行うようにしています。

2.弊社改善活動取り組み例の紹介

ここで、今までご説明したことの取り組み事例として、「全日本物流改善事例大会の優秀事例受賞」の紹介をさせて頂きます。受賞自体は、2009年ということで、既に2年以上経過していますが、その後も活動は継続的に推進しており、進化している状況です。この受賞事例の内容については、この後、紹介していきたいと思います。また、最後にビデオもご用意しております。

3.全日本物流改善事例大会 優秀事例受賞①

全日本物流改善事例大会での受賞テーマは、「CS・ES実現を目指した品質向上の取り組み~情報の活用による物流ミスゼロへの挑戦~」です。改善目標としては、作業品質改善の目標として、①ピッキングミス率の改善を400PPM以下、②誤出庫率の改善として50PPM以下ということにしておりました。一方、現在の社内取り組み目標としては、ピッキングミス率が200PPM以下、誤出庫率は20PPM以下にすべく、目標のハードルを上げて進めています。ちなみに、1PPMは0.0001%(100万分の1)ということになります。作業効率の目標としては3点で、①間違い探しの改善、②柔軟対応の改善、③特別作業の改善、としています。

3.全日本物流改善事例大会 優秀事例受賞②

この事例では、改善するにあたり、問題の発生原因を掴むために、出庫作業に関するミスの現状把握を行う必要があると考えました。物流センターの業務としては、ご承知の通り、入庫、入荷検品から出荷検品、出荷までの大きな流れがあるわけですが、このプロセスで特徴的なのは、梱包してから納品書を発行するというプロセスを採用していること、また、毎日棚卸しを行い、その確認の後に出荷するといったところです。
このプロセスにおいて、間違いの発生頻度を詳細に調査したところ、ピッキングにおける数量間違が全体の88%を占めていることが判明しました。それに対して、どういった改善を行っていったかということを次にご説明します。

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3.全日本物流改善事例大会 優秀事例受賞③

これは毎年私共が、弊社主催のセミナーにおいてお客様にアンケートさせて頂いている結果です。これは昨年のものですが、物流の品質・精度を向上したい、或いはコストを下げたい、コストの分析を行いたい、そういったところに非常に多くの方々が関心を寄せられているという結果になっています。そういう意味で、私共3PL業者としては、こういったところにお客様が価値を見出して頂けるようなサービス、ご提案をしていかなければならないと考えています。本日もアンケートをお願いするかと思いますが、是非ご協力の方をお願い致します。

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3.全日本物流改善事例大会 優秀事例受賞④

次に、検品システムへの出荷支援機能の導入について紹介します。これは、システムによる改善に取り組んだ結果で、チェック機能の強化ということになります。これはビデオで見て頂いた方が分かりやすいかと思いますが、検品システムに作業指示機能という機能をつけ、また、画面と音声で指示を行うようにしました。その上で、検品の作業フローの見直しも行い、複雑、煩雑な作業を同時に行うのではなく、後工程で分けて処理するように変更し、間違いを軽減できるようにしています。また、その結果として、熟練者に頼ることのない運用の実現に成功しています。

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3.全日本物流改善事例大会 優秀事例受賞⑤

最後に、履歴管理システムの導入について紹介します。受賞事例の現場では、無線ハンディターミナルを使って作業しており、作業者が作業前にIDを入力することで、誰がどこでどういう作業をしたかということを全て記録する仕組みとなっています。現場では、毎日、棚卸しを行っており、在庫差異があった場合は、誰が作業したかを割り出せるようにしています。また、図にあるようなエクセル形式で、現在の作業状況、オーダーがどう進捗しているのかが、ほぼリアルタイムに分かる仕組みになっています。

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3.全日本物流改善事例大会 優秀事例受賞⑥

次に、物流品質の商品化に向けた考え方(取り組み)について整理します。ここでは、マーケティング・ミックスに基づき、製品、価格、流通、プロモーションという切り口で考えています。では、どういった製品(サービス)を作っていくのか、価格競争にならない形にするにはどうすればいいのか、どういった品揃えでやっていくのか、あるいは、お客様にどのようなアピールをしていくのかを考える必要があります。そういった中で、弊社しては、「物流品質の商品化」ということで、お客様から見て魅力のある物流品質の商品、サービスを提供していく必要があるのではないかと考え、鋭意、取り組んでいます。

Ⅴ.まとめ

では、ここから、まとめに入っていきたいと思います。

1.物流品質活動のあるべき姿①

ここからは、まとめとして、「物流品質活動のあるべき姿」として整理していきます。物流品質というのは、どのような視点があるかを整理してみると、その中には、我々3PL業者だけでは実現できない項目が存在するということがわかって頂けるかと思います。まず、製品(商品)の品質としては、保管条件の管理や輸配送時の損傷を防ぐことが3PL業者の責任ではありますが、製品そのものに問題がある場合は品質を維持することは困難です。例えば、少し持っただけで変形してしまう(外装に問題がある)製品であれば、物流における品質の維持は非常に難しいといえます。次に、サービスの品質を考えると、物流面でいくら丁寧な対応を行ったとしても、それに関わる企業が法令を遵守していなければ、無意味なものになってしまいます。お客様満足の品質においては、お客様との接点となるドライバー、いわゆる配送業者さんの応対(接客態度)がそれを左右する場合があります。弊社のような、自社で配送を行わない3PL業者にとっては、配送業者さんとの協調、共同というものがなければ実現できない品質であるといえます。最後に、情報の品質という面では、物流に関与する企業が、正しい情報を的確にやりとりすることが品質を維持することになると考えます。そういった意味では、お客様あるいはお取引の企業様とコミュニケーションをしっかりと取って、寄り良いパートナーシップを形成した上で展開していくことが、物流品質を維持するあるべき姿であると考えます。

2.物流品質活動のあるべき姿②

先程、サービス品質のところで、法令遵守の必要性をお話しましたが、ここでは、弊社の法令遵守対応について紹介します。弊社では、現在、化粧品、医薬部外品製造業許可を取得して、例えば、輸入化粧品業界様の改正薬事法の対応支援などを行っています。弊社ホームページにも記載させて頂いておりますが、弊社の業許可取得状況の一例を紹介します。まず、化粧品製造業、医薬品部外製造業につきましては、門真第2、門真第3、堺営業所、高槻営業所で取得、医薬部外品製造業、医療機器製造業については、泉大津営業所で、化粧品製造業、医薬品部外品製造業に加えまして、医療機器製造業を取得しているのは市川営業所です。荷主企業様には、物流業務の実行に際しては、このような業許可についても確認される必要があると考えます。関心がお有りの方は、弊社ホームページ、あるいはスタッフまで声掛け頂きたいと思います。

2.物流品質活動のあるべき姿③

物流品質活動のあるべき姿の3つ目として、KPIの導入を挙げております。物流品質を荷主様、3PL業者がパートナーシップを組んで向上させていくという過程においては、物流管理指標(KPI)の導入が望ましいと考えます。これは、弊社でも継続的な課題になっていますが、荷主企業と3PL業者の間で、その活用目的と評価軸、評価レベルを設定する必要があります。また、どういった組織、管理体系で取り進めるかを取り決めて、KPIを評価していく必要があります。例えば、目標管理を行わずにコスト削減などの交渉だけを進めてしまうと、品質が落ちてしまうなどの歪みが出てしまうことが想定されます。このような場合、やはり品質、精度においても、コスト同様に目標を設定して、両方のバランスを見ながら取り進めることが良いと考えます。弊社としても、KPIについては、継続的な対応課題であり、引き続き検討、対応を進めていくつもりです。

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2.物流品質活動のあるべき姿④

物流品質活動のあるべき姿の最後として、弊社で最近取り組んでいる「WEBシステム」を紹介します。これは、先程、情報の品質でもありましたが、的確な情報提供の実現を目指すための仕組みになります。ここでは、「WEB受注システム」を1つの事例として挙げています。このシステムの特徴は、WEB経由にてリアルタイムで必要な情報を登録、閲覧することができるというもので、お客様にはIDを管理頂き、操作を制限できるため、閲覧、入力の制限による管理を行うことが可能となっています。また、弊社の物流拠点における倉庫管理システムと連動した形で情報管理(お客様からWEBを通して弊社の方にオーダーが入ってくる)でき、オーダーもしやすいような仕組みとなっています。弊社としては、今後、このような情報提供の仕組み、情報管理ツールの機能を強化して、様々な情報をお客様にご提供し、お客様にご満足頂ける物流品質を実現したいと考えています。

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以上



(C)2012 Hidenori Masui & Sakata Warehouse, Inc.

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