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第24号化粧品物流共同化実現への取組み(2003年01月24日発行)

執筆者 真田 孝雅
カネボウ株式会社化粧品事業本部 化粧品物流グループ 部長
コスメ物流フォーラム21・共同化推進室 事務局長
    執筆者略歴 ▼
  • 経歴
    • 1973年 早稲田大学理工学部卒業
    • 1973年 鐘紡株式会社(現・カネボウ株式会社)入社・生産技術研究部門配属
    • 1990年 新事業開発部門配属
    • 1997年 技術企画部門配属
    • 2001年 化粧品物流部門配属
    • 現在  カネボウ株式会社化粧品事業本部統括室 化粧品物流グループ 部長
    主たる業務
    • 工場等の生産技術開発、生産管理システム開発
    • 物流センターの設計・構築
    • 新規事業向け装置開発・営業築
    • 設備投資等全社技術管理
      等を経て、現在は化粧品物流におけるセンターシステム改善、
      業務効率化、共同物流企画などに従事

目次

1.はじめに

「コスメ物流フォーラム21・共同化推進室」は、制度品化粧品メーカー6社(アルビオン、花王化粧品販売、カネボウ、コーセー、資生堂、マックスファクター)の物流部門担当者が参加して’97年に設立した事業者団体で、受発注も含めた物流共同化の可能性検討を行っている。今回はここでの取組み状況の一端をご紹介する。

2.ネットショッピングにおける2つの型

制度品化粧品の流通は、メーカーと小売店様との間で売買契約を取り交わしてメーカーから直接納品する形を基本的なスタイルとしており、この点が受注あるいは商品の供給においての要件であり特徴ともなるところ。つまり商品供給のステップとしては自社センター⇒お店様と極めてシンプルなものだが、最近のように販売チャネル・流通チャネルともに多様化している状況においては、自社販売戦略のみならず流通からの要求事項をも直接的に受け止めなくてはならず、受注面でも商品供給面でも多様な対応が必要となっている。

3.共同物流の可能性について

化粧品の共同物流検討の出発点は、制度品メーカーの有力な取引先の団体である全国化粧品小売組合連合会(当時)からの、物流の共同化、一本化をすべきではないかというよびかけから始まっている。制度品のお取引は、必ずしも1店1メーカーではなくて複数メーカー取扱い店(いわゆる併売店)が結構あり、受発注作業にしろ納品受け入れにしろ各メーカーの取引分が同じ手順で、あるいは同じタイミングで処理できればお店の業務効率化メリットは間違いのないところ。一方で私どもメーカーにしてみれば営業面では各社競争関係にあり、「共同化」に歩調を合わせるのはそう簡単なことではない。そこで「物流共同化可能性の検討」のため6社の物流部門長が集まり議論を始めたが、そのよりどころは、社会的要請としての「地球環境問題への対応」と経営課題としての「物流コストの低減」ということに代表できる。
では、共同物流の可能性は具体的にはどんなところにあるか、というと
・お店からの受発注の仕組みの共同化
・配送を中心とした物流の共同化
という2点に大別できるが、検討の具体事例を以下にご紹介する。

4.受発注の共同化

当フォーラムでの受発注の共同化の取り組み事例として、共同受発注端末の導入、EDIの業界標準化、百貨店取引のBPR推進などがある。
まず、共同発注端末(愛称ECO21)の開発・展開事例であるが、これは一つの端末で各社の発注ができる仕組みで、いわゆるハンディーターミナル(プリンター・スキャナー付)を店頭に置き、各メーカーが第三者としてのVANに商品マスターを登録し、契約の商品マスターだけお店にデータを送っている。また、発注データはまとめてVANに送信され、各メーカー単位に振り分けて各社に配信されるので、他社のデータは見えないしくみとなっている。新しいプログラムも回線から配信できる。’99年4月に本格稼働し、2002年末現在全国で約5000台が稼働している。
EDIの業界標準化は、急速に展開が進んでいる電子商取引の分野で、お取引先のEDI化要請に対し速やかにかつ同一仕様で対応できるよう業界としての標準タイプ(JEDICOS仕様)を準備したもので、お取引先とメーカー共にメリットが大きいと考えている。導入マニュアルを準備し、必要なお客様に提供できるようにもしている。また、業界標準の商品マスターデータベースの作成やXMLの研究なども進めている。
百貨店BPRについては、EDI化や検品効率化をキーワードに、お取引先にもご協力いただきながら納品効率化の検討を進めてきた。具体的には、百貨店協会BPR協議会と共同で、ASN/SCMによるEDIと納品効率化をセットにした新ビジネスモデルを実現し、三越殿を皮切りに、多数の百貨店様に採用されている。

5.物流の共同化

配送の共同化はお店にとっては、荷受の効率化ができる、スケジュール管理が容易になる、環境対策として、などのメリットがある。一方、メーカーのメリットとしては、環境問題への対応と配送コストの削減を挙げることができる。
物流の共同化においては、各社が既に持っている物流拠点などのインフラをどう活用していくかということも重要で、場合によっては新たに共同物流拠点を準備したり、化粧品以外の製品(薬品、食品など)を含めた共同配送の可能性も選択肢として存在する。実際の共同配送事例としては、北海道と沖縄の事例がある。
北海道地区では3社が参加しており、各メーカーごとに商品を店舗単位で仕分け梱包して集配センターで合流し、店舗に配送するという形をとっている。拠点からの距離などを考慮して、拠点近郊のお店へはBメーカーから横持ちをしてAメーカーのセンターで合流して市内に配送する形、遠隔地へはBメーカーを起点として積み込んでAメーカーで残りを積み込み地方の拠点へダイレクトに発送する形、または少量の場合は拠点に持ち込んで合流、各方面別に仕分けをして地方拠点に持っていき各店舗に配送するという形など、最適運用が行われている。共配スタート後は、定期的に仕組みの見直しを行うため、より良い方向へ持っていくための調整の場を設けている。 沖縄地区の事例では4社が参加しているが、この場合は各社拠点から現地へ店別梱包ケースを持ち込み沖縄で合流する形をとっている。
共同配送の効果には、全体の荷物の量が増えてコストの低減が可能となる「ボリューム効果」、各社が地域で別々に配送していたものを統合して配送効率が上がる「ルート効果」、1店舗に対して複数メーカーの配送が一度で済むことによる「束ね効果」等の形で効果が期待できる一方で、システムの開発・維持や横持ちなどの新たな費用発生もあり、かつその額は各社異なるので、得られた効果の配分の考え方の事前合意が重要である。
他の地区での共配の可能性探求モデルとして、東京地区を選んで共配シミュレーションをおこなったが、このケースでは共同配送の効果として約51%のコストの削減、環境効果として約45%のCO2の削減が期待できるとの結果を得ているが、まだ検討途上である。

6.さいごに

私見ながら、実際に物流共同化に取組んでいると共同化への課題とともにしばしば自社の物流の課題が見えてくるが、物流がメーカーとしての事業の視点からみると目的ではなく手段であることを考えあわせると、課題そのものの存在がズレていると感じることがある。
その意味において、共同物流への挑戦はお店様も含めた物流全体最適の一つのあり方ではないかとも感じながら共同化へ取組んでいるが、皆様はどう思われるだろうか?

以上



(C)2003 Takamasa Sanada & Sakata Warehouse, Inc.

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