ロジスティクス・レビュー

第434号 SDGsロジスティクス(前編) (2020年4月21日発行)

執筆者  長谷川 雅行
(株式会社日通総合研究所 経済研究部 顧問)
    執筆者略歴 ▼

  • 経歴
    • 1948年 生まれ
    • 1972年 早稲田大学第一政治経済学部卒業 日本通運株式会社入社
    • 2006年 株式会社日通総合研究所 常務取締役就任
    • 2009年 同社顧問
    保有資格
    • 中小企業診断士
    • 物流管理士
    • 運行管理者
    • 第1種衛生管理者
    活動領域
    • 日本物流学会理事
    • (社)中小企業診断協会会員
    • 日本ロジスティクス研究会(旧物流技術管理士会)会員
    • 国土交通省「日本海側拠点港形成に関する検討委員会」委員ほか
    • (公社)日本ロジスティクスシステム協会「物流技術管理士資格認定講座」ほか講師
    著書(いずれも共著)
    • 『物流コスト削減の実務』(中央経済社)
    • 『グローバル化と日本経済』(勁草書房)
    • 『ロジスティクス用語辞典』(日経文庫)
    • 『物流戦略策定のシナリオ』(かんき出版)ほか

目次

1.はじめに

  2020年代のスタートにあたっての明るい話題ということで、SDGsを取り上げた。
  日本でも既にSDGsの達成に向けた取り組みが始まっているが、物流・ロジスティクス分野ではどのように取り組むかを考えてみた。
  結論的に言えば、2030年のゴールに向かって目標を掲げて、社会へのマイナスを減らしながらプラスを増やすように、本業である物流ビジネスを展開することが、荷主・物流企業を問わず、また企業の規模を問わず必要である。

2.SDGsとは?

  SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、「エス・ディー・ジーズ」と呼ぶ。
  SDGsは2015年9月の国連サミットで採択されたもので、国連加盟193か国が2016年~2030年の15年間で達成するために掲げた目標である(既に3分の1である5年間が経過し、残り3分の2の10年間である)。
  SDGsは、17の大きな目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成されている。
  そして、最も重要な理念は、「誰一人として取り残さない(leave no one behind)」ということである。

(1)SDGsの17の目標

図表1 SDGsの17の目標(その1)
*画像をClickすると拡大画像が見られます。

  まず、1~6の6目標では、貧困や飢餓、健康や教育、さらには安全な水など開発途上国に対する開発支援を思わせる。

図表2 SDGsの17の目標(その2)
*画像をClickすると拡大画像が見られます。

  次の7~12も目標になると、エネルギー、働きがいや経済成長、まちづくり、産業と技術基盤など、先進国にも関係あることが分かる。

図表3 SDGsの17の目標(その3)

(出所:図表1~3とも国連広報センター。和訳は、SDGsの目標・ターゲットとも外務省による)

*画像をClickすると拡大画像が見られます。

  13~17の目標は、気候変動、海・陸まで広がり、開発途上国や先進国だけの話ではなく、もっとグローバルな包括的なテーマであることが分かる。
  SDGsが世界や国内で広がりを見せているのは、開発途上国だけではなく先進国も、2030年まで取り組まなくてはならないためと言える。

(2)SDGsの169のターゲット

  次に、169のターゲットを見てみよう(イマココラボのHP参照)。
  同HPでは、例示として「8.働きがいも経済成長も」を以下のように掲げている。目標8.以外にも、17目標それぞれに同じようなターゲットが並んでいて、合計で169のターゲットと言われる。
  働きがいについては、物流・ロジスティクスでも「人手不足」「働き方改革」への取り組みが課題になっているので、分かりやすいと思う。

8.1 各国の状況に応じて、一人当たり経済成長率を持続させる。特に後発開発途上国は少なくとも年率7%の成長率を保つ。

8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上およびイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。

8.3 生産活動や適切な雇用創出、起業、創造性、およびイノベーションを支援する開発重視型の政策を促進するとともに、金融サービスへのアクセス改善などを通じて中小零細企業の設立や成長を奨励する。

8.4 2030年までに、世界の消費と生産における資源効率を漸進的に改善させ、先進国主導の下、持続可能な消費と生産に関する10カ年計画枠組みに従い、経済成長と環境悪化の分断を図る。

8.5 2030年までに、若者や障害者を含むすべての男性および女性の、完全かつ生産的な雇用およびディーセント・ワーク、ならびに同一労働同一賃金を達成する。

8.6 2020年までに、就労、就学、職業訓練のいずれも行っていない若者の割合を大幅に減らす。

8.7 強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終わらせるための迅速で効果的措置の実施、最も劣悪な形態の児童就労の禁止・撲滅を保障する。2025年までに少年兵の徴募や利用を含むあらゆる形態の児童就労を撲滅する。

8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。

8.9 2030年までに、雇用創出、地元の文化・産品の販促につながる持続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する。

8.10 国内の金融機関の能力を強化し、すべての人々の銀行取引、保険、および金融サービスへのアクセス拡大を促進する。

8.a 後発開発途上国のための拡大統合フレームワークなどを通じて、開発途上国、特に後発開発途上国に対する貿易のための援助を拡大する。

8.b 2020年までに、若年雇用のための世界的戦略および国際労働機関(ILO)の仕事に関する世界協定の実施を展開・運用化する。

(筆者注:目標番号の枝番には1,2,3と…の数字と、a,b,c…のローマ字があるが、ここではその理由説明は省略する。後述する企業目標の選定には影響ない。また、ターゲットの目標年次には、他の2020国連計画等との整合性で「2020年までに」等が散見される)

  8.2の「(略)労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上およびイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する」とは、まさに労働集約的な物流業界を対象としているようにも感じる。
  また、8.5の「(略)同一労働同一賃金を達成する」は、まさしく物流業界の課題である「働き方改革」であり、2021年4月から中小企業でも施行されることが、働き方改革関連法(パート・有期雇用労働法)で定められたのは、本ロジスティクス・レビュー421号でも報告したとおりである。
  2024年4月までに自動車運転者の時間外労働を法定上限(年間960時間)までに削減しなければならないが、SDGs達成にも通ずると感じられる。
  ちなみに、筆者は厚生労働省・国土交通省のトラック運送「取引環境・労働時間改善」のパイロット事業・アドバンス事業のお手伝いをしている。発着荷主・物流業者が連携して、「1日15分ずつ労働時間を削減する」ことを4年間積み重ねれば、1日1時間の短縮(年間約200時間)になり、年間3516時間の拘束時間(時間外労働時間は約1100時間余りと想定)が、年間960時間の時間外上限に収まる。つまり、そのような年次計画的取り組みが必要である。
  このように、目標年次から逆算して取り組む方法を、SDGsでは「バックキャスティング方式」として推奨している。
  このように、17の目標と169のターゲットは、物流業界にとっても決して他人事ではない。

  なかには、8.5の「ディーセント・ワーク」のように聞きなれない用語があるが、これは1999年にILO(国際労働機関)で定められた「Decent Work=適正な働き方」による。上述の長時間労働など、決してディーセント・ワークとは言えないのではなかろうか。

  上記ターゲットを見ると、8.1のように「年率7%の成長率を保つ」(先進国の低成長率からは、中国や新興国のことかと思う)という具体的な数値もあれば、8.3「中小零細企業の設立や成長を奨励する」という定性的なものもある。
  そのため、169のターゲットのさらなる詳細版として、Tier1(ティア1)、Tier2(ティア2)、Tier3(ティア3)の3種類(3層)に分けた230の指標が策定されたが、17の目標だけでも覚えきれないのに、煩雑になるのでここでは省略する。

  ターゲットについては、後述する取り組み課題の選択でも幾つか掲げる。

※中編(次号)へつづく


(C)2020 Masayuki Hasegawa & Sakata Warehouse, Inc.


このページのトップへ戻る