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グリーン・ロジスティクス

第472号 一貫パレチゼーションのすすめ(中編)(2021年11月16日発行)

執筆者  長谷川 雅行
(株式会社日通総合研究所 経済研究部 顧問)

 執筆者略歴 ▼
  • 経歴
    • 1948年 生まれ
    • 1972年 早稲田大学第一政治経済学部卒業 日本通運株式会社入社
    • 2006年 株式会社日通総合研究所 常務取締役就任
    • 2009年 同社顧問
    保有資格
    • 中小企業診断士
    • 物流管理士
    • 運行管理者
    • 第1種衛生管理者
    活動領域
    • 日本物流学会理事
    • (社)中小企業診断協会会員
    • 日本ロジスティクス研究会(旧物流技術管理士会)会員
    • 国土交通省「日本海側拠点港形成に関する検討委員会」委員ほか
    • (公社)日本ロジスティクスシステム協会「物流技術管理士資格認定講座」ほか講師
    著書(いずれも共著)
    • 『物流コスト削減の実務』(中央経済社)
    • 『グローバル化と日本経済』(勁草書房)
    • 『ロジスティクス用語辞典』(日経文庫)
    • 『物流戦略策定のシナリオ』(かんき出版)ほか

 

目次

*前号(2021年11月4日発行 第471号)より

2.標準化の現在地

(3)標準化の歴史
  標準化の歴史は長いが、ここでは物流標準化について、2人の先人を挙げたい。

①平原 直(ひらはら すなお)氏
  荷役機器の標準化、荷役の機械化について、忘れてはならない先人として平原直氏(1902~2001)が居られる(筆者も、ご講演を拝聴したことがある)。同氏のことだけでも誌面が足りなくなってしまうので、以下、簡記する。ご関心があれば、同氏の「物流史談 物流の歴史に学ぶ人間の知恵」(流通研究社、2000)を参照されたい。
  同氏は、戦後まもなく国鉄駅頭における貨車積卸し作業の激務実態(作業者の肩や腰の変形、痛み、後遺症)を憂えて、パレット荷役を導入し、荷役研究所を創設される等、生涯をかけて「荷役の改善」に取り組まれた。同研究所が母体となって日本パレット協会や、パレットレンタル企業などが生まれた。その後、半世紀以上経ったが、今でもトラックドライバーは長時間の手荷役が多く、1-(2)で述べた通り、「ホワイト物流」に賛同した企業等の5割が「パレット等の活用」を挙げている。
  パレチゼーションの推進には、国鉄も大きな役割を果たした。現在、ユニットロードシステム通則に定められているT11型パレットは、国鉄貨車の寸法に依っている。国鉄はパレチゼーション普及のため、パレット荷役用の貨車を大量に整備し、運賃面でもパレット貨物を優遇した。パレット貨物割引制度・返回送パレット割引制度は、今日のJRコンテナ運賃にも引き継がれている。

②マルコム・マクリーン氏
  個品の国際海上輸送におけるグローバル・デファクトスタンダードである、コンテナによる複合輸送システムは、米国トラック業者のマルコム・マクリーン(1913~2001)氏が考え出したものである。実は、マクリーンが考えた規格は、当時の米国トレーラ規格の35ftで、現在のISO規格である20ft・40ftではなかったが、同氏の標準化思想が現在の国際貨物コンテナのISO規格に繋がっている。
  マルク・レビンソン著「コンテナ物語(増補改訂版)」(日経BP社 2019)に詳しく描かれている。
  コンテナによる複合輸送システムは20世紀最大の発明と言われ、ビル・ゲイツほかも絶賛している。

(4)標準化のレベル
  標準化のレベルは、以下のように5段階に分けられ、それぞれの対象分野・業界で進捗度が異なるとともに、各レベルが混在している例もある。

①企業内標準化
  まず、企業や事業所などの社内規格である。

②団体標準化
  次に、事業者団体(業界団体)や学会などが内部で適用する団体規格である。例えば、パレットであれば、後述のビールパレット・製紙パレットなどがある。

③国家的標準化
  1国内で利害関係者の合意を得て国の機関が制定する国家規格である。後述のJISなどがある。

④地域標準化
  国を超えた一定の地域(ASEAN、EU等)で適用する規格である。例えば、EUのユーロパレットなどがある。

⑤国際標準化
  国際標準化機構(ISO)等による、各国合意の国際規格である。グローバルスタンダードとも言われる。上述の国際貨物コンテナ(ISO規格)などが挙げられる。
  事実上の国際規格や業界標準などは、デファクトスタンダードと言われており、EVや自動運転などではデファクトスタンダードを巡って激しい競争が繰り広げられている。

(5)標準化の対象
  物流標準化の対象は、以下の通り、多岐にわたる。本稿では、③包装(外装=輸送包装)、④パレットについて述べ、その他は省略する。
  3-(3)で述べるユニットロードシステム通則では、①⑦等も対象としている。

①荷役設備
  フォークリフト主要諸元、ローラーコンベヤ基準寸法、荷役機械能力表示など

②情報システム
  情報機器・システム、EDI等によるデータ交換(通信プロトコル及びデータフォーマット)、コード体系、物流情報システム(受発注、貨物追跡、VAN等)

③包装
  包装寸法、重量、表示、その他(共同利用・再利用の推進、プラスチック包材の見直し)

④パレット
  強度・材質、寸法、 共同利用

⑤コンテナ(クレートを含む)
  強度・材質、寸法、 共同利用

⑥建物
  梁下高さ、柱間隔、床高さ、床荷重

⑦車両
  車両の床高さ(床面地上高)、トラック荷台の内寸寸法、車両規制の緩和(重量・長さ・高さ等)

⑧安全基準・環境基準
  安全基準、作業環境、 環境基準

(6)JISと標準化
①工業標準化法(旧JIS法)
  日本における標準化の歴史は、「工業標準化」の歴史であった。工業製品の規格、およびその生産過程の諸要因を、全国的に統一・単純化するために、「工業標準化法(旧・JIS法)」が1949年に定められた(当時の所管省庁は、通商産業省工業技術院)。
  同法の対象は、工業製品(鉱業品含む)の種類・形状・寸法・構造・品質,性能・安全度など広範囲に及び,また生産や設計の方法、使用方法、さらに包装や試験の方法・内容、技術用語や記号の統一も工業標準化に含まれていた。
  経済産業省所管の独立行政法人産業技術総合研究所の日本工業標準調査会で制定された工業標準が、日本工業規格(JIS)である。
  同法は、その後国際標準化(ISO規格など)の促進や、「役務(サービス)」にも拡大された。

②産業標準化法(改正JIS法)
  2019年に大改正が行われ、役務(サービス)や情報も対象とする「産業標準化法」(新・JIS法)となった(JISは「日本工業規格」から「日本産業規格」に)。
  同法第1条(目的)では、「適正かつ合理的な産業標準の制定及び普及により産業標準化を促進すること並びに国際標準の制定への協力により国際標準化を促進することによって、鉱工業品等の品質の改善、生産能率の増進その他生産等の合理化、取引の単純公正化及び使用又は消費の合理化を図り、あわせて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。」と定められている。
  また第2条(定義)では、第10~13項で、対象とする「役務(サービス)」を定めている。輸送・保管・荷役等の物流活動は、この「役務(サービス)」に含まれる。そして、同法でいう「役務(サービス)」分野の主務大臣は、内閣総理大臣・総務大臣・文部科学大臣・厚生労働大臣・農林水産大臣・経済産業大臣・国土交通大臣又は環境大臣と、各省に及んでいる(第72条第5項)。
10 役務(農林物資の販売その他の取扱いに係る役務を除く。以下同じ。)の種類、内容、品質又は等級
11 役務の内容又は品質に関する調査又は評価の方法
12 役務に関する用語、略語、記号、符号又は単位
13 役務の提供に必要な能力
  なお、包装は、第3項に「3 鉱工業品の包装の種類、型式、形状、寸法、構造、性能若しくは等級又は包装方法」と定められている。
  「物流標準化」の法律的な建て付け・枠組みは、上記の通りである。

③ISOとJIS
  国際的な標準化については、さまざまな国連機関・国際機関が推進している。なかでも国際標準化機構(ISO)が、物流だけでなく、品質関係のISO9000、環境関係のISO14000など、多くの国際規格を定めている。
  ISOの目的は、「商品とサービスの国際的な交換を容易にし、知識・科学・技術・経済に関する活動において、国際的な協力を助長するため、国際的な規模の標準化とこれに関連する諸活動の発展・促進」とされており、日本の「工業標準化法」が情報やサービスも対象とした「産業標準化法」に改正されたのもISOの影響がある。
  1995年に世界貿易機構(WTO)でTBT協定(Agreement on Technical Barriers to Trade「貿易の技術的障害に関する協定」。国内規格によって貿易を制限することは、 非関税障壁としてWTO協定違反となる)が締結され、日本も批准したので、ISO規格がJIS規格に優先されることとなり、国内標準から国際標準へ、JIS規格からISO規格への整合性を確保するための修正作業が進められている。
  また、産業標準化法第1条では目的の一つとして、「国際標準の制定への協力により国際標準化を促進する」ことを挙げており、1-(2)で述べたように「大綱」でも、「国際的な標準化への取り組み姿勢」が示されている。

(7)物流関係の主な現行JIS
  JISとは、日本の工業標準化の促進を目的とする工業標準化法(当時)に基づいて制定された国家規格で、2020年3月末現在で、10,858規格が制定されている。
  JISには、分類用に番号が付いている。
  このJIS番号は、分野を表すアルファベット文字と原則として4けたの数字との組合せからなる(その後ろに、最新の改定年次が西暦で付く)。
  ところが、物流分野を表すアルファベット文字は見当たらない。「物流関係の主な現行JIS」のように、各分野にバラまかれるか、Z(その他)に押し込められている。
  例えば、立体自動倉庫は機械なので「B:機械」、フォークリフトは原動機(エンジン等)が付いているので「D:自動車」、物流バーコードは「X:情報処理」に分類されている。
  物流は、日本の産業や国民生活を下支えする重要な役割を担っているのであるから、空いているアルファベット文字を充当して「物流分野」を作るべきというのが、筆者の提案である。
  JISで定められている、物流に関連する標準規格は、7領域・162規格ある( 「JISハンドブック62『物流』2019」による)。以下、詳細なJIS規格は省略し、包装・パレットに関する規格のみ概観する。

①ユニットロード寸法、用語など基本的事項に係る規格(詳細は省略)
  上述の「JIS Z0111 物流用語」や、物流標準化の基本である「JIS Z0161 ユニットロード寸法」などは欠かせない。

②商品の保護、安全性の確保等から、包装、容器などの適正化に係る規格
  包装関係としては、「JIS Z0105 輸送包装系列寸法」が定められている。
  段ボール関係としては、「JIS Z1506 外装用段ボール箱」「JIS Z1507 段ボール箱の形式」が定められている。

③商品の運搬の合理化及び安全確保のための各種機器類及び国際流通におけるコンテナリゼーション促進のための各種コンテナ類の規格
  パレットやコンテナ、トラック等について定められている。パレット類については、その種類や寸法・材質等が定められている。特に、「JIS Z0601 プールパレット(一貫輸送用平パレット)」は、「JIS Z0650 JISユニットロードシステム通則」とともに、物流標準化を推進するうえで重要な規格である。
  コンテナについては、上述のISOとの整合性を図りつつ、種類や寸法・材質等が定められている。「JIS Z1651 非危険物用フレキシブルコンテナ」(フレコン)や、「JIS Z1655 プラスチック製通い容器」(オリコン、クレート等)も定められている。
  さらには、運搬機器設備関係として、「JIS D4002 トラック荷台の内のり寸法」が定められている(Dは自動車分野の規格)。

3.一貫パレチゼーション

  一貫パレチゼーションの前に、貨物を一塊(かたまり)にまとめて輸送・保管するユニットロードシステムについて、簡単に説明する。それは、一貫パレチゼーションを実施するためのガイドラインであるユニットロードシステム通則が、昨2020年大幅に改定されたことによる。

(1)ユニットロードシステム
  上述の「物流用語」では、ユニットロードについて「複数の物品又は包装貨物を、機械及び器具による取扱いに適するように、パレット、コンテナなどを使って一つの単位にまとめた貨物(以下、略)」と定義している。
  また、「貨物をユニットロードにすることによって、荷役を機械化し、輸送、保管などを一貫して効率化する仕組みをユニットロードシステムという」と、ユニットロードシステムを定義している。
  ユニットロードシステムには、パレットを利活用するパレチゼーションと、コンテナを利活用するコンテナリゼーションがある。
  上記、物流用語では、パレチゼーションとは、「物品又は包装貨物をパレットに積み,パレット単位で物流を行うこと。パレットによるユニットロードで荷役を機械化し,物流の効率化を図る手段である」と定義し、「発地から着地まで一貫して同一のパレットに貨物を積載したまま物流を行うことを、一貫パレチゼーションという」と定義している(コンテナリゼーションは本稿では省略)。
  いずれも、貨物(物品・物資)をユニット化して荷役を機械化することが要件となっている。そこで、標準化推進団体の1つである日本パレット協会では、「ユニットロード3原則」を示している。

①機械化の原則
  個々の物品を1つの貨物としてまとめ、荷役の機械化が可能な荷姿となっていること。

②標準化の原則
  荷役・運搬の機械化を行うために、パレットの大きさや形式を標準化すること。
  この際に、パレットと積載貨物の寸法の整合化、パレットとフォークリフト、トラック等との整合化並びに各々の標準化を推進することが望ましい。

③荷扱い最少の原則
  貨物(ユニットロード)が、発地から最終目的地まで輸配送される過程において、荷役回数を最少化(least handling)すること。

  ユニットロードシステムの効果や問題点は、一般的には、次のように言われている。

①効果
・荷役の合理化 ・荷役コストの低減 ・輸送機関の効率的な運用 ・労働条件改善 ・荷傷みや錯誤の減少 ・貨物事故や貨物管理の合理化(高品質化) など
  3-(1)-①の平原先生は、上記のうち「労働条件改善」を目的に取り組まれた。「ホワイト物流」推進運動の目的の1つであるトラックドライバーの長時間労働の改善も、同様である。

②問題点
  ところが、効果が「光」の部分とすれば、「影」の部分もある。
・運用管理に手間 ・積載効率の悪化 ・関連施設の導入資金が必要 など
デメリットを指摘する声が多いのも事実である。

  ユニットロードシステムを導入するためには、上述の「3原則」のように、まず、互換性を有するパレットやコンテナの寸法・構造の標準化と、パレットやコンテナに効率良く積載されるための包装寸法の一定の基準が必要である。次に、パレット積みのまま保管する保管棚の寸法・強度や、輸送機関としてのトラック・鉄道・航空機・船舶の内法寸法も標準化の重要な対象である。
  これが、「ユニットロード寸法」(JIS Z0161)と言われるもので、平面寸法として以下の4つが定められている。
①1200 mm×1000 mm
②1200 mm×800 mm
③1100 mm×1100 mm
④1219 mm×1016 mm
  ①③は、1984年版で定められた寸法であり、②④は2015年版で追加された(②はEU規格、④は米国規格に基づいている)。

(2)包装とユニットロード寸法
  また、包装の基本寸法としては、「包装モジュール寸法」(JIS Z0105)が定められている。この規格は、上記「ユニットロード寸法」で規定する4種類(上記①~④)の平面寸法に対して、600 mm×400 mm、600 mm×500 mm及び550 mm×366 mmを基準(モジュール)とする一連の直方体輸送包装の平面寸法について規定されている。具体的には、上記モジュールの倍数系列及び分割系列から算出されている。例えば、550mm×366mmについて、長辺の550㎜は11型パレットの1100mm÷2から、短辺の366mmは同じく1100mm÷3から算出される。したがって、550mm×366mmの段ボール箱であれば、6個をT11型パレットに積み付けることができる。
  ①~④の平面寸法ごとに、輸送包装寸法が細かく定められているが、ここでは誌面の都合で割愛する。
  つまり、輸送包装寸法とパレット寸法の整合化が図られているのである。
  逆に言えば、包装モジュール寸法に基づいて輸送用段ボール(外装)を設計すれば、パレット寸法にピタリ合う。さらに、その外装寸法を基に、個装・内装にも展開すれば、輸送効率・保管効率の向上が期待できる(JIS Z0105包装モジュール寸法を参照)。
  欧州における物流標準化の「都市伝説」として、「角砂糖のサイズは、パレットサイズから決められている」と言われるが、合理性・効率性を重んじる欧州では考えられることである。
  筆者は入社数年目に、生鮮流通の調査団に帯同して欧州諸国を訪問し、卸売市場流通、生協活動、冷凍輸送、港湾荷役などを見学した。その際に、EEC(当時。現EU)本部を訪問した際に、団員のパレット専門家が「11型のISO化」を強く訴えていたことを覚えている(当時は、国内規格でしかなかったが、その後11型パレットもISO規格として採択された。当時は未だ「T11型」ではなかった)。
  2-(1)で述べたように、物流の6機能については、「輸送」「保管」「包装」「荷役」「流通加工」「情報」という順番で並べられるのが一般的である。JILS「物流コスト調査」によれば、物流コストの大半は「輸送」「保管」であり、多くの荷主も輸送・保管の効率化・コスト削減に努力している。
  筆者は物流に長年携わってきて、「包装」は物流過程の入り口であり、包装の良否は、その後の「輸送」「保管」効率に大きく影響すると感じている。コストの点で言えば、「包装」コストは「製造原価」に含まれることが多いので、物流コストとしての意識が薄いのではなかろうか。また、包装は製造(生産)部門の所管であるという意識が強いのかも知れない。
  物流・ロジスティクス部門が、商品設計・包装設計まで関与しているのは、少数のロジスティクス先進企業だけではないだろうか。以前に、自動車部品メーカーで、「嵩高の自動車部品が輸送用段ボールに3個しか入らなかったのを、物流部門から製造部門に要請して、個装の高さを低くすることで4個入るようになって、輸送費が単純計算で25%低減した」事例があった。
  パレタイズの際には、荷崩れ防止のために、ストレッチフィルム巻き・シュリンク包装・ダンネージなどが必要となる場合が多い。筆者たちがお手伝いした、青果物を産地選果場から中央卸売市場までパレット輸送実験をした際も、使用したパレットと段ボールの大きさが合わず、輸送中に段ボールが横ズレしたことがあった。
  荷崩れ防止資材も、着地での包材廃棄物削減のためフィルム等の多用は避けることも求められる。筆者は、プラスチックごみとしては、レジ袋よりも大量ではないかと感じている。
  また、ユニットロード輸送用のロールボックスパレットは、ユニットロードシステム通則では、最大平面寸法·高さ(長辺×短辺×高さ)は,1140mm×1140 mm×1800 mm及び1240 mm×1040mm×1800mm、積載質量の最大は500kgと定められている。それ以外のロールボックスの外寸は、「ユニットロード寸法」に合わせてあるので、内寸は少なくなることを計算に入れて、段ボールやオリコンのサイズを決める必要がある。

(3)ユニットロードシステム通則
  JISでは、パレット輸送(パレチゼーション)やコンテナ輸送(コンテナリゼーション)を推進するためのガイドランとして、発荷主・着荷主・輸送業者・保管業者などの関係者のために、ユニットロードシステム通則を定めている。「皆さん、このルールでパレット輸送やコンテナ輸送をやって下さい」と言っているのである。
  2003年版では、1100mm×1100㎜のパレット寸法を唯一の基本とするものであった。筆者は、アジア地域との国際輸送の拡大を考えれば、アジア標準パレットのもう一つの寸法である1200mm×1000mmにもユニットロードシステム通則を適用すべきと思っていた。
  今般、2020年の改正により、「ヨーロッパの現状及びアジアとの輸出入の増大を鑑み、フォークリフト1100mm×1100mm及び1200mm×1000mmのパレット寸法を基本とするパレチゼーションによる一貫輸送をはじめ,体系化されたユニットロードシステムを構築し,物流の合理化を図るための指針となる事項について規定するとともに,ユニットロードシステムの中心となるパレタイズド貨物の運搬,保管などに関係する機械及び器具について規定」された(JIS Z 0650抜粋。主務大臣は経済産業大臣)。
  ユニットロードシステム通則は、「適用範囲」に始まって、「用語および定義」「平面寸法」「最大総質量」「全高」「荷くずれ防止」「パレット」等のほか、「荷役機器」として、 フォークリフトトラック、無人搬送車(AGV)、パレットトラック、コンベヤ等、「保管設備」「貨物コンテナ」「輸送機関(トラック及びトレーラ、航空機、鉄道及び船舶)について、詳細に説明しているので、物流標準化のルール・ガイドラインとして一度ご覧頂きたい。
  平パレットに積載する際に各40mmのオーバーハングを認めている(プラン・ビュー・サイズ)が、実務上、オーバーハングは避けた方が良い。

  ユニットロードシステム通則では、「物流ではサプライチェーンの全階層(製配販)にわたる整合性を図ることが重要である」とし、規格については、各階層間(ユニットロードシステム通則本文では「受渡当事者間」と言っている)のユニットロードについて,各階層間の関係を考慮して標準を定めることが望ましいとの考え方に基づき,ユニットロードを規制する要因と荷役及び運搬·輸送のための機械及び器具を整理したうえで,パレットサイズレベルのユニットロードを対象として標準を作成した。適用範囲においても、「ユニットロードシステムの中心となるパレタイズド貨物の運搬,保管などに関係する機械及び器具について規定する」とされている。
  つまり、ユニットロードシステム通則は2種のパレットを基本にして、包装(外装=輸送包装)・コンテナや、ハンドリング(MH)の標準を定めていると言えよう。
  ただ、残念なことに、ユニットロードシステム通則に従ってパレットを運用する際には、「構造、寸法、材質などが統一された互換性のあるパレットを、広範囲の利用者間で共同運用する仕組み」であるパレットプールシステムが有効であるが、そのプールパレット(JIS Z0601)は、未だに1100㎜×1100mmの1サイズだけである(早く1200mm×1000㎜も加えて欲しいと思う)。
  ちなみに、「受渡当事者間」というのは、発荷主と着荷主、荷主と倉庫業者・運送業者のことであり、それぞれが連携・協力しなくては、ユニットロードシステムが円滑に機能しない。
  筆者は、そのためにもユニットロードシステム通則の「手引書」「ハンドブック」を作成して、関係者が活用できるようにしてほしいと思っている。

※後編(次号)へつづく



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