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物流品質

第526号 「たかが包装、されど包装」(前編)~(2024年2月20日発行)

執筆者  長谷川 雅行
((一社)日本物流資格士会 顧問)

 執筆者略歴 ▼
  • 経歴
    • 1948年 生まれ
    • 1972年 早稲田大学第一政治経済学部卒業 日本通運株式会社入社
    • 2006年 株式会社日通総合研究所 常務取締役就任
    • 2009年 同社顧問
    • 2017年(一社)日本物流資格士会 顧問
    活動領域
    • 日本物流学会
    • (一社)日本SCM協会
    • (一社)日本物流資格士会会員
    • 流通経済大学客員講師
    • 港湾短期大学校非常勤講師
    • (公社)日本ロジスティクスシステム協会「物流技術管理士資格認定講座」ほか講師
    • 本論文は、前編と後編の計2回に分けて掲載いたします。

目次

1.はじめに

  ロジスティクス・レビュー誌の貴重な誌面をお借りして、これまで物流の6機能のうち「輸送」や「保管」をテーマとして報告させて頂いたので、今回は「包装」を取り上げることにした。
  最初に、「包装」とは何かについて概略を説明した後に、物流コストや経営戦略における「包装」の重要性を述べ、最後に、ロジスティクス・レビュー誌らしく、ロジスティクスの視点からDFL(デザイン・フォー・ロジスティクス)など「包装」の最近の課題について考えてみたいと思う。
  物流事業者としては、荷主から「運んで欲しい」「保管して欲しい」と依頼された貨物の「包装」(梱包・荷姿)は、依頼された時点で所与の条件となっている。途中で荷姿転換(例:ケースからバラへ)がなければ、物流事業者で「包装」を手掛けることはない。表現は悪いが「たかが包装」でしかない。
  しかし、後述するように、包装の設計や方法などを変えることにより、物流・ロジスティクスの面で大きなメリットが生じることが多い。所与であった「たかが包装」が、利益源としての「されど包装」に進化することを期待したい。

2.包装とは

  包装とはモノを「つつむ」ことであるが、ただ「包む」だけではない。
  わが国では「つつみ方」によって「心」を伝えるという、「つつむ」文化がある。例えば、贈答品には「のし」や「水引」を付けて、贈答目的(誕生祝など)や贈答者の「名入れ」を行う。名入れは、今でこそパソコンのデータをプリンタで印刷するが、以前は百貨店などで書道有段者を専任の筆耕者として配置していた。
  このような「つつむ」文化は、世界各地にもみられる。

(1)個装・内装・外装

  日本産業規格(JIS)では、「包装(Packaging)」を、「①物品の輸送・保管・取引・使用などに当たって、その価値及び状態を維持するために、適切な材料、容器などに物品を収納すること及びそれらを施す技術、又は施した状態。②個装、内装及び外装の3種類に大別する。③パッケージングともいう」と定義している(JIS Z 0108:包装用語)。
  そして、用途から「個装」「内装」「外装」の3種類に分類している。
  まず、「個装(individual packaging)」は、「①物品個々の包装で、物品の商品価値を高めるため、又は物品個々を保護するために適切な材料、ようきなどを物品に施す技術、又は施した状態。②又、商品として表示などの情報伝達の媒体にすることもできる。」と定義されている(JIS Z 0108 同)。食料品などをイメージして欲しい。
  次に、「内装(inner packaging)」として、「包装貨物の内部の包装で、物品に対する水、湿気、光、熱、衝撃などを考慮して、適切な材料、容器などを物品に施す技術、又は施した状態」と定義している(JIS Z 0108 同)。菓子類などの「個装」を幾つか入れた「内箱」が相当し、かつては12個入りが多かったので「ダース箱」とも言われたことがある。最近はコンビニなど取引ロットが小さくなったので、6個入りなども多い。
  最後に、一番外側になる「外装(outer packaging, packing)」があり、「①包装貨物の外部の包装で、物品又は包装物品を箱、たる、缶などの容器に入れ、若しくは無容器のまま結束し、記号、荷印などを施す技術、又は施した状態。②パッキングともいう(JIS Z 0108 同)。
  なお、全ての物品(製品または商品)が、個装・内装・外装の三重包装となっているわけではなく、例えば大型家電品のように、個装イコール外装となっている例もある。

(2)包装の目的

  物品を包装する目的は、
①内容品の保護
②取り扱いや保管・販売の利便性確保、
③宣伝媒体としての機能と、情報伝達としての機能を含めたパッケージデザイン機能
④荷扱いの条件づけ
⑤新品性の保証
  の5点が挙げられる。このうち、最も重要な目的は、輸送・保管などの物流過程において、振動・衝撃・水濡れなどから物品を保護する①であり、(3)で述べる。
  とくに輸出貨物については、変化する環境の下で長期にわたって輸送されることから、内容品の保護についても厳重な包装(輸出包装)が施される(図表1)。

図表1 輸出包装の一例
横浜港にて筆者撮影
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  ②の利便性には、物品を「小口に分ける」「組み合わせる」「混同を防ぐ」「荷扱いや販売するときの能率・効率を向上させる」「運びやすくする」などがある。最近では、後4-(3)-⑧~⑫で列挙したような「廃棄しやすいか」「再生利用可能か」ということも求められている。
  ③には「店頭で消費者の目を引く色彩やデザイン」「保存法・使用法などの説明」などがある。さらに、「人に優しい」ユニバーサルデザインの視点も求められる。「情報伝達」機能としては内容品を示すバーコード・二次元コード・RFIDも包装の一部となっている。最近では、JANコード(GTIN)が単品と個数口(ケース売り用)の2種と、さらにITFコードと合計3種類のバーコードが印刷された外装もある(図表2)。

図表2 3種類のバーコードが印刷された外装の例
筆者撮影 3種類のバーコードやケアマークが印刷された外装
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  ④は、「取扱注意」「水ぬれ防止」「上方向」などのケアマーク(JIS Z1050:荷扱い指示マーク)に代表される。荷扱いしやすいような「取っ手(把手)」「手掛け穴」なども考慮されている(図表2の左上「水ぬれ防止」の傘マークを参照)。
  ⑤は、新品を購入したときの「清潔感」「ワクワク感」など、読者も実感したことが多いと思う。

(3)内容品の保護

  内容品の保護には、物流過程で生じるさまざまな流通環境条件を把握することが重要である。主な流通環境条件としては、以下の3つが考えられる。
  医薬品・精密機器・電子部品・食品など物品の種類・特性によって、重視すべき流通環境条件は異なる。
①気象的環境  温度・湿度・塩害
②物理的環境  積重ね荷重(積圧)・振動・衝撃
③生物学的環境 カビ・害虫・害獣類等
  例えば、物理的環境である「積圧」「振動」「衝撃」については、包装貨物を落下させたり、振動試験機に乗せて長時間振動させるなどの「包装試験」を行いながら、内容品の保護に適切な包装を設計する。
  筆者が見学した横浜の試験機関では、20フィィートの国際貨物コンテナに積載した状態で、振動試験・温度試験・散水試験などを実施していた(図表3)。

図表3 MTI社の国際貨物コンテナ試験機
(出所)MTI社ホームページ
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3.包装の種類・材質

(1)包装の分類

  包装には、さまざまな分類がある。2-(1)の個装・内装・外装は、用途による分類ともいえよう。JISでは、以下のように分類されている。
①包装の機能による分類
  「工業包装(industrial packaging)」とは、「物品を輸送、保管することを主目的として施す包装」(JIS Z 0108 同)であり、物流業界で一般的な「輸送包装(transport packaging)」と同義語である。
  「商業包装(commercial packaging)」とは、「小売りを主とする商取引に、商品の一部として、又は商品を取り纏めて取り扱うために施す包装」(JIS Z 0108 同)であり、②の消費者包装と同義語として使われることも多い。
②購買者を主体とした分類
  「消費者包装(consumer packaging)」は、「物品などについて消費者の手元に渡るために施す包装。生活者包装ともいう」(JIS Z 0108 同)とされている。消費者包装への商品表示については、下記の景表法や食品表示法などで細かく規定されている。
  「業務用包装(institutional packaging)」とは、各種事業所(学校、病院、ホテル、食堂など)へ大量に、かつ、継続的に供給する物品を、大型の単位にまとめた包装」(JIS Z 0108 同)とされている。
  さらには、「JIS Z 0108 包装用語」では定義されていないが、一般的に行われている分類として、以下のような分類がある。
③包装設計の善し悪しによる分類
・適正包装
・過大包装(または過剰包装・誇大包装)
・欠陥包装
  「過大包装」以下は、消費者庁が「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法。略して「景表法」)に基づいて、消費者への優良誤認表現などを防止するために、さまざまな基準を定めているほか、各自治体の条例でも定められている。例えば、大阪市の「過大包装基準」では、「必要以上に空間容積の大きなもの=目安は15%以上」「内容品を実量以上にみせかけ、ごまかしているもの(アゲゾコ、メガネ、十二単衣、ガクブチ、アンコ、エントツなど)」「必要以上に包装経費をかけたもの」「包装容器が、他に使えるように見せかけたもの」と例示されている(原文のまま)。( )内の「隠語」は、かつては観光地などの土産品で散見された過大包装事例である(図表4)。

図表4 「十二単衣」包装(商品に何重にも内装を重ねたもの)
(出所)大阪市「過大包装基準について」(2007年12月13日)
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  欠陥包装は、内容品を保護できない包装以外に、適切な表示がなされていない包装なども含まれる。
④包装方式による分類
・段ボール包装
・スリーブ包装
・木箱包装
・フィルム包装
などがあり、それぞれの素材(段ボールなど)については、JISで細かく定められている。
  スリーブ包装の「スリーブ」とは「袖」のことであり、紙やプラスチックを使用した「筒状」の包装である。
  木材梱包材の使用(木箱・木製パレットなど)については、国際食料農業機構(FAO)が2002年3月に定めた、衛生植物検疫措置のための国際規格「国際貿易における木製梱包材料の規制ガイドライン(International Standard for Phytosanitary Measures)ISPM NO.15」という規格があり、同規格に適合した木材梱包材には、ISPM NO.15の表示(マーキング)が義務づけられている。

(2)包装材料

  一般的に用いられている段ボール以外に、以下のような素材が使用されている。なお、誌面の都合で、段ボールについては、またの機会に改めて紹介したい。
①プラスチック
用途:ストレッチ、シュリンク、プラスチックコンテナ、折り畳みコンテナなど
材質:ポリスチレン(PS)、発泡スチロール(EPS)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、塩化ビニル(PVC)、塩化ビニリデン(PVDC)など。
  最近は、海洋プラスチックごみ問題などで、これらプラスチック材料の使用後の回収や廃棄などが課題となっている。
②金属
材質:鉄、アルミなど
③木材
用途:重量品、輸出包装など

(3)包装容器

  上記(2)の材料を使用して、各種の包装容器が製造される。最も多い段ボール箱以外にも、以下のような容器がある。
①プラスチック容器
クレート、オリコン、プラスチックドラム、ポリエチレンボトル、ポリエチレン袋(ポリ袋)など(注)ポリエチレンテレフタレート(PET)製のボトルはPETボトルと略称されている。音読みで「ペットボトル」と言うが、ペット(愛玩動物)とは語源が異なり、「PETボトル」と記すのが正しい略称である。
②金属容器
ドラム缶、ペール缶、18リットル缶(石油缶)など
③副資材
緩衝・固定材(発泡スチロール、段ボール、パルプモールド)
表面保護材(ポリエチレン製フィルム、発泡ポリエチレンシート=気泡入りフィルム)
封緘・結束材
テープ(粘着テープ、ガムテープ)、ポリプロピレン(PP)バンド
  積み付けた段ボールの荷崩れ防止に使われるストレッチフィルムやシュリンクフィルムなども、実務上は副資材の一種と思われる。

4.包装設計

  包装設計とは、物品(製品・商品)の流通過程を最適化するために、物品の形状・特性に応じた包装を設計することである。物流過程において、物品を壊さず輸送・保管するには適切な包装が必要である。荷扱い時の衝撃や、温度・湿度などの流通環境条件による影響など、あらゆる外的要因から物品を保護しなければならない。
  包装を施す最大の目的は、2-(2)-①で述べた内容品の保護であり、コスト削減(包装コストだけではないことに注意)や環境配慮など、設計の際に重視される項目は多様であり、物品ごとに適切な設計が必要である。
  したがって、包装設計は製品(商品)企画・開発・設計部門が担当し、川上の段階で既に決まっており、生産・物流現場には「この包装=荷姿で頼む」と押し付けられることが多い。

(1)標準化

  包装は物流の入口で、包装設計の善し悪しが、その後の物流効率(積載効率・保管効率など)に大きく影響する。
  物流の6機能は、一般的には「輸送・保管・包装・荷役」の基本機能と、「流通加工・情報」という補助的機能の順で、さらに基本機能コスト比率の高い順で「輸送>保管>包装>荷役」と並べられ、結果的には「輸送>保管>包装>荷役>流通加工>情報」と称されることが多い。
  筆者は、学生には、上記の「包装は物流の入り口論」を説明して「包装>輸送>保管>荷役>流通加工>情報」の順で6機能を教えることにしている。
  物流センターやトラック輸配送などの物流現場の深刻な労働力不足もあって、センター内作業や積卸し作業の省力化・機械化・自動化が進められている。
  既に、バスではレベル4の自動運転も始まっており、やがてトラックの自動運転も始まると思われる。
  荷役の省力化・機械化・自動化のためには、荷姿・包装の標準化が大きく寄与するので、包装設計にも標準化の考えを採り入れることが重要である。
  筆者は、(公社)日本ロジスティクスシステム協会(以下、JILSと略す)の物流技術管理士資格認定講座(ロジスティクス・レビュー第486~487号「 高度物流人財になろう」2022年6月・7月発行参照)で、長らく「物流標準化」の単元を担当してきた。漸く、一貫パレチゼーションに追い風が吹き始めたように感じる(閑話休題)。
  標準化を進めるには、その基本寸法である「物流モジュール」と「包装モジュール」に合わせた包装設計が望まれる。
(注:「物流モジュール」「包装モジュール」の詳細については、ロジスティクス・レビュー第472~473号「一貫パレチゼーションのすすめ」2021年11月・12月発行を参照されたい)
  このうち、包装モジュール寸法については、図表5の通りである。図表5の包装モジュールのうち、600×400は物流モジュールの一方である1200×1000から、550×366は物流モジュールの他方である1100×1100から決められている。基準となる包装モジュールの各辺を整数倍あるいは整数分割すると、表中の各寸法が導かれる。
  経済産業省・国土交通省が2040年を目標として推進している「フィジカルインターネット」では、「パレットやコンテナ容器等の物流資材の標準化」に取り組むとされているが、その基本となるのが、この包装モジュールである。

図表5 包装モジュール寸法(抜粋)
JIS Z0105 2015「包装モジュール寸法」から「輸送包装の平面寸法」抜粋して筆者作成
*画像をClickすると拡大画像が見られます。

  学生やJILS上記講座の受講者には、「『外装』サイズについて相談を受けたら、この包装モジュール寸法から薦めなさい。採用してもらえば、パレットの表面利用率が高まり、物流事業者側でも積載効率・保管効率が向上しますヨ」と説明している。

(2)省資源

  上述の通り、包装設計には、脱プラスチックのように環境配慮などが求められるようになって来ている。具体的には、「容器包装リサイクル法」への対応や、包装材料・副資材などの「グリーン購入」が挙げられる。
  とくに「資源有効利用促進法(通称「3R推進法」)は、循環型社会を形成していくために必要な3R(リデュース・リユース・リサイクル)の取り組みを総合的に推進するための法律であり、事業者に対しては3Rの取り組みが必要となる業種や製品を政令で指定し、自主的に取り組むべき具体的な内容を省令で定めている。省令では消費財を中心に10業種・69品目を指定して、製品の製造段階における3R対策、設計段階における3Rの配慮、分別回収のための識別表示、事業者による自主回収・リサイクルシステムの構築などが規定されている。
  この「設計段階」には、包装設計も当然含まれている。
  3Rとは「減量(Reduce)」「再使用(Reuse)」「再活用(Recycle)」を指す。
  行政・消費者・産業界等が緊密な連携のもとに広範なリサイクル国民運動を展開するための相互連絡等を行う場として設立された3R推進協議会では、包装関連として次のような3Rの具体例(「事業者の視点」を抜粋した)を掲げている。
①Reduce(リデュース)
(事業者の視点)
○簡易梱包、簡易包装、詰め替え容器、通い箱等の利用、普及に努める。
②Reuse(リユース)
(事業者の視点)
○使用済製品、部品、容器を回収し、再使用する。
③Recycle(リサイクル)
(事業者の視点)
○製品を設計する時に、使用後のリサイクルがしやすいように工夫をする。
○製品をつくる時に、できるだけリサイクル原材料を使う。
○使用済みとなった自社製品の回収・リサイクルに努める。
○発生した副産物・使用済製品を効率的にリサイクルする(仕組みづくりを含む)。
  リユースの観点に立てば、包装容器もワンウェイからリターナブルへの転換が求められている。
  またリデュース・リサイクルの観点からは、発泡スチロールなどプラスチック包装材料の減量・減容が、海洋プラスチックごみ削減のためにも求められている。
  段ボールは通い箱としての再使用も可能であり、元のパルプ繊維は10回程度まで溶解→再生(リサイクル)可能なので、筆者は3Rの優等生と思っている。
  ビールも、以前はガラス瓶が多く空瓶を回収・再使用していた。横浜のKビール工場では、再使用できなくなった古ビンはカレットに破砕して、ドラム缶に詰めて貨車で新南陽市の製ビン工場に送り、溶解して再生ビンを製造していた(リユース&リサイクル)。最近は缶ビールの比率(缶化率という)が高まり、瓶ビールは飲食店の業務用に限られている。消費者からのアルミ缶回収率のさらなる向上が、SDGsの観点からも望まれる。

(3)包装設計のポイント

  包装設計のポイントは、上記2-(2)「包装の目的」の5項目に即して、以下の7点を重視して行わなくてはならない。
①中身の保護は十分か(保護性)
②ハンドリングに便利であるか(荷役性)
③包装作業の自動化ができるか、あるいは人手による作業がやりやすいか(作業性)
④開梱、あとしまつ等がやりやすいか(便利性)
⑤必要な事項(品名、数量、量目、輸送先、開梱法、荷扱指示等)が表示されているか(表示性)
⑥輸送・保管上、問題が生じないか(輸送性)
⑦コストは妥当か(経済性)
  「表示性」については、上記3-(1)-②で述べた景表法・食品表示法などの規定に従うことは言うまでもない。
上記(2)項のように、近年の環境問題から次の視点が重要視されている
⑧包装容器の減量化(less-material)
⑨繰り返し使用(reusable リユース)
⑩再生利用(recycle リサイクル)
⑪焼却性(incineration)無公害性
⑫埋立て性(bio-degradable)生物分解性プラスチック等
  つまり、①~⑫を考慮しながら包装設計することが必要といえる。このうち、①が必須条件であることは言うまでもない。
  「⑨繰り返し使用(reusable リユース)」ということでは、N社がゴミを出さない引越反復資材「えころじこんぽ」の開発で、「国土交通大臣賞」「JILS物流合理化賞」などを受賞したこともある。大手の引越運送事業者は同種の引越反復資材を導入して、引越ゴミの削減に役立っている。
  リユースの観点では、折り畳みコンテナ(通称「オリコン」)などの「通い容器」が推奨されるが、通い容器に求められる特性としては以下のようなことが挙げられる。
①折りたたみ性
②コンパクト性
③廃棄性
④信頼性
⑤標準化
⑥融通性
  最近のプラスチック製の通い容器(オリコン・クレートなど)は、堅固になり「信頼性」は向上しているが、「標準化」「融通性(互換性)」はまだまだ課題が多い。
  注目されるのは、「物流クレート」の標準化である。
  クレートとはプラスチック製通い容器(JILS「クレート等の標準化に関する調査報告書」2016年)のことであり、主に飲料・日配品の配送に用いられる。
  その種類は多く、物流クレート標準化協議会(日本スーパーマーケット協会・日本チェーンストア協会が設立。経産省・農水省なども協力)の調査では、豆腐84種類、油揚げ58種類、こんにゃく51種類、漬け物56種類、麺66種類、ヨーグルト・プリン182種類にも及ぶ。同協議会の試算では、上記の各カテゴリーで3種類の容器に集約した場合、店舗での仕分・保管スペースのコストが40%に削減可能とされている。
  そこで、同協議会では、「クレートの標準化によるSCMの効率化を目的」を目的に、「食品クレート標準型」2種類(図表6)を制定して共同使用を推進した結果、2020年3月実績で60センター・30チェーンが導入済みであり、2021年10月には1日23万枚の利用実績を挙げている(同協議会ホームページ)。

図表6 食品標準クレート(Ⅰ型)
587×368×132mm
(出所)物流クレート標準化協議会ホームページ
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以上


※後編(次号)へつづく
【参考資料】
1.長谷川雅行「包装」(流通経済大学「日通寄附講座」資料 2015年)
2.長谷川雅行「国際物流論」(港湾カレッジ横浜校「国際物流論」資料 2022年)
3.日本産業規格(JIS)よりJIS Z 0108など包装関連の各規格
4.酒井路朗「空間は金なり=包装効率の指数化(前編・後編)」(2010年 ロジスティクス・レビュー誌No.190~191号)、「包装密度KPI(デンシティー)の活用方法」(ロジスティクス・ビジネス誌2022年12月号『特集 包装を変える』)
5.CGC GROUP 「CSR & CSV REPORT」2021年・2022年
6.ロック株式会社プレスリリース「ぶかぶか梱包をやめようプロジェクト」2023年
7.久保田精一「物流配慮デザイン(DFL)の実態調査結果(概要版)」(サプライチェーン・ロジスティクス研究所 2022年)、「日本企業はDFLを放置したままでいる」(ロジスティクス・ビジネス誌2022年12月号『特集 包装を変える』)
8.「流通用語辞典」「物流用語辞典」「ロジスティクス用語辞典」(以上、日経文庫)並びに、3R推進協議会・大阪市・物流クレート標準化協議会・日本郵便・国土交通省・経済産業省のホームページ



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