第487号 高度物流人財になろう(後編)(2022年7月7日発行)
執筆者 | 長谷川 雅行 (株式会社NX総合研究所 経済研究部 顧問) |
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目次
4.ロジスティクス・オペレーション2級
それでは、高度物流人財への1ステップとして、物流事業者の課長・マネージャー志望者を主な対象とした、「ロジスティクス・オペレーション2級」の受験について述べたいと思う。
図2のリーフレットによれば、「ロジスティクス管理」は「荷主企業でロジスティクス業務をご担当の方、物流業でロジスティクスの企画・管理職等の業務をご担当の方など」、「ロジスティクス・オペレーション」は「物流業で輸送・保管・荷役・包装・流通加工のオペレーション業務をご担当の方、荷主企業で自主物流をご担当の方など」を、受験者として想定して試験問題が作成されている。
係長・リーダー向けとされているロジスティクス・オペレーション3級の受験も基本的に同じである(受験者によれば、4択式(3級)から5択式(2級)と選択肢が増えると、一気に難しさを感じると言う)。
ここでは、誌面の都合で「ロジスティクス・オペレーション2級」について述べるが、以下の記載は、受験対策を含めて、同3級やBASIC級、ロジスティクス管理2・3級にも共通していることが多い。
(1)費用と時間
必要最小限な費用は上述のように、テキスト代と受験料(2級は税込7,700円)、それと都道府県ごとの試験場への交通費だけである。上述のJMFIなどの受験講座は、別途、費用が掛かる。
受験勉強に必要な時間は、上記JMFIの2級(管理、ロジスティクス・オペレーション)受験講座の場合は、合計で4時間/日×13日=52時間となっている。予習・復習を加えれば、その2~3倍が一つの目安となる。
なお、運行管理者試験(貨物)では、受験対象となる実務経験1年の(ある程度の知識・経験がある)受験者でも、50~100時間の受験勉強が必要で、1日1~2時間の勉強で約4カ月掛かると言われている。
(2)標準テキスト
問題の多くは標準テキストから出題されているので、まずは標準テキストを購入する。ほぼ5年ごとに改訂されているので最新版(2022年現在は第3版)を購入する。ネットでは第2版以前も売られているので注意されたい。
(3)受験勉強
多くの「資格受験本」でも書かれているが、「インプット」と「アウトプット」の二本立てが必要ではなかろうか。
「インプット」とは「標準テキスト」を読むころであり、「アウトプット」とは問題を解いてみることである。「標準テキスト」は各章の終わりに「理解度チェック」がある。さらには、JAVADAホームページに掲出されている「過去問題」を解いて、理解を深めるとともに、類似する問題への応用力を養う。
1)テキストを読む
テキストを読むことは最低限の受験準備である。ここでは、どんな問題が出題されるかというイメージづくりのために、ロジスティクス・オペレーション2級テキストの目次(章・節)を列記する。
受験者にとっては、読んで分からない章・節、不得手な分野など自分の知識・経験を棚卸して、どこを重点的に勉強すれば良いかが分かる。
社員を受験させる企業側でも、いま物流企業にとって何を求められているのか参考にされたい。
3-(3)-1)で述べたように、細切れでも良いから、時間があればテキストを通読されたい。
第1章 輸送包装の適正化・標準化
第1節 輸送包装の適正化 第2節 物流機器と包装モジュール
第3節 包装貨物試験の種類 第4節 データキャリア
第2章 輸送包装設計と輸送包装技法
第1節 輸送包装設計 第2節 輸送包装技法
第3章 代表的なユニットロードシステム
第1節 一貫パレチゼーション 第2節 コンテナリゼーション
第4章 物流拠点計画
第1節 基本分析項目 第2節 物流拠点のレイアウト計画
第3節 オペレーション計画 第4節 機械化・自動化
第5章 物流センターの管理と運営
第1節 品質管理手法 第2節 作業改善の分析手法
第3節 コスト分析手法 第4節 荷役作業の安全
第6章 輸送機関の特性と選択
第1節 輸送機関の特性 第2節 輸送機関の選択
第7章 輸配送システムの構築
第1節 輸配送システムの基本設計 第2節 輸配送計画のためのツール
第3節 共同配送 第4節 特殊輸送
第8章 国際輸送
第1節 国際輸送に関する諸条約・諸規定 第2節 海上輸送
第3節 航空輸送 第4節 国際複合輸送
第5節 リスクマネジメントと貨物保険
第9章 社会への適合
第1節 環境問題とモーダルシフト 第2節 企業の社会的責任
物流の6大機能と言われる「輸送」「保管」「包装」「荷役」「流通加工」「情報」については、ロジスティクス・オペレーション3級テキストに詳しいので、そちらを参考にされたい。
ロジスティクス管理にも言えることであるが、「情報化」「国際物流」は日常の業務経験が少ないためか、「難しい」と言う受験者が多い。
2)過去問題
過去問題を解くというのは、トラックの運転で言えば練習コースでの「教習」である。「コース教習」をしないで「路上運転」ができないように、問題を知らず(解かず)に、合格できる資格試験もないと思う。
せっかく、JAVADAホームページで「受験者の皆さん、効率的に勉強して下さい」と過去問題を公開しているのだから、利用しない手はない。
JMFIからは「過去問題集」が発売されているが、それを見ると繰り返して出題されている過去問題も多いようだ。
ロジスティクス・オペレーション2級の過去問題(令和元=2019年度後期)から抜粋して掲げるので、受験の参考にされたい。なお、「合格基準」は、「試験全体として概ね60%以上の正答」とされている。
問題1 輸送包装において検討すべき点として最も不適切なものは、次のうちどれか。
ア.流通過程において受ける外力に対する内容品の保護性
イ.包装の機能を生かして競争優位性を出す等の商品価値向上
ウ.荷扱いや保管・輸送の効率向上
エ.製作費、輸配送費、デポ費、廃棄物処理費等を含めたコスト整合性
オ.3Rへの対応、廃棄のしやすさ、再生可能資源活用等の環境適合性
正解 イ
問題4 データキャリアに関する記述として不適切なものは、次のうちどれか。
ア.データキャリアとは、1次元シンボルコード(バーコード)、2次元シンボルコード、RFID(非接触ICカードを含む)等の総称である。
イ.2次元シンボルコードは、日本ではQRコードが多く利用されているが、米国ではDataMatrix、PDF417、MaxiCode等、複数のコードが利用されている。
ウ. 日本の集合包装商品コードITF-14は、国際的な流通標準化機関GS1が定めるGTIN-14に対応して使用されている。
エ.1次元シンボルコードの1つであるGS1 DataBarは、口紅、医薬品、果物等のような小さな商品に利用する省スペースのためのシンボルコードである。
オ.EPCglobalでは、RFIDの国際標準化を進めており、国毎に利用する周波数が異なると読取性能に差が生じるため、UHF帯RFID( パッシブ型)の周波数帯は統一され、主要国では同一の周波数のRFIDを利用している。
正解 オ
問題9 一貫パレチゼーションに関する記述として適切なものは、次のうちどれか。
ア.アジア一貫輸送用平パレットは、1,100mm×1,100mmと800mm×1,200mmである。
イ.欧州向けに輸出する貨物は、T11型パレットを使用すれば欧州圏内でも一貫パレチゼーションが可能である。
ウ.APSF(アジアパレットシステム連盟)では、アジア各国のレンタルパレット企業がアライアンスを組み、国際レベルでの一貫パレチゼーションを推進している。
エ.海外への一貫パレチゼーションは、海上輸送のみ可能であり、航空輸送ではワンウェイであっても適合できない。
オ.ユーロパレットは、米国でも標準パレットとして認められている。
正解 ウ
問題16 倉庫業における人材育成について最も不適切なものは、次のうちどれか。
ア.パートやアルバイト等の非正規労働者の比率が正規社員に対して極めて高い場合は、倉庫を有効に運営する正規社員の育成と配置が特に必要である。
イ.対外的に荷主や配送先への対応や提案営業を行ったり、事業として管理運営したりする人材が求められている。
ウ.厚生労働省が作成した「倉庫業部門の職業能力評価基準」は、仕事をこなすために必要な「知識」と「技術・技能」等が、職種・職務別に、4つのレベルで区分・整理されている。
エ.倉庫業部門の職業能力評価基準を活用した人材育成の基本は、仕事を明確化し、職業能力の目標を明確化し、人材育成計画を策定して実施することにより、個人・企業の成長を目指すものである。
オ.倉庫業部門の職業能力評価基準には、作業要素(能力ユニット)毎に「能力細目、職務遂行のための基準、必要な知識、作業マニュアル」が記述されている。
正解 オ
問題19 以下の<事例>を踏まえた場合、この卸売業者が物流センターにおいて取るべき対処方法に関する記述として最も適切なものは、次のうちどれか。
<事例>
多品種の日用雑貨品を取り扱っているある卸売業者では、2 階建てで延べ坪が2,400坪の物流センターにおいて、小売店舗向けの商品の入出荷・保管業務を行っており、1階を入出荷・保管スペース、2階を保管スペースとして利用している。
このセンターにおいて、ワークサンプリング調査を実施した結果、「商品を探す」のに多くの時間がかかっていたことが明らかとなった。
ア.在庫商品の棚によるロケーション管理を徹底する。
イ.垂直搬送機を増設する。
ウ.受注締切時間を早くして、十分な作業時間を確保する。
エ.ピッキング作業者を熟練者に変更する。
オ.パレート分析を行い、Cランク品を1階に、Aランク品を2階に保管するレイアウトに変更する。
正解 ア
問題29 配車業務と運行管理に関する記述として誤っているものは、次のうちどれか。
ア.小口積合せで配車支援システムを活用する場合、最終的判断や調整業務は、配車担当者が行う。
イ.納品を急がない貨物等は、客先へのサービスを含め物流品質を落とさないよう考慮しながら、求荷求車システムを利用するなどして、コスト削減や環境対策を行う。
ウ.事業者に代わって事業用自動車の運行の安全を確保する任務を負っている運行管理者は、運転者の点呼、乗務記録の保存、運転者の過労防止、事故の記録、過積載の防止等を行う。
エ.通称29告示(改善基準告示)を遵守し、運転時間は2日を平均し1日当たり11時間以内とする等、運転者の労働強化にならないように配慮する。
オ.車両の動態管理をして、遅延防止と定時運行に役立てると同時に、配達先に到着予定時刻を通知するサービスや、貨物追跡サービスを行うことが望ましい。
正解 エ
問題34 インコタームズ2010に関する記述として適切なものは、次のうちどれか。
ア.貿易を行う場合の取引条件は、国際商業会議所(ICC)が制定するインコタームズに基づかなければならない。
イ.FOB条件では、輸出者が本船に貨物を積み込むまでの費用を負担し、輸出者が保険会社と貨物海上保険契約を結ぶ。
ウ.FCA条件では、輸出者が指定された場所で運送人に貨物を渡すまでの費用を負担し、それ以降の運賃は輸入者が負担する。
エ.CFR条件では、輸出者が海上運賃を負担し、輸出者が保険会社と貨物海上保険契約を結ぶ。
オ.CIF条件では、海上輸送中に貨物に損害が生じた場合の危険負担は輸出者となる。
正解 ウ
問題39 モーダルシフトに関する記述として最も適切なものは、次のうちどれか。
ア.交通政策では、モーダルシフトは、トラックから鉄道、海運、航空等の他の輸送機関に切り替えることを指す。
イ.フェリーは、トラック等が直接乗り降りできるため、LOLO船とも呼ばれる。
ウ.鉄道貨物輸送は輸送力に余裕があるため、トラックからシフトした貨物が急増している。
エ.内航海運と鉄道貨物輸送の1トンキロ当たり二酸化炭素排出量を比べると、鉄道貨物の方が少ない。
オ.エコレールマークの表示は、日本貨物鉄道株式会社(JR貨物)が認定し、荷主に交付している。
正解 エ
さて、読者の皆さんの正答率はいかがだろうか?
やはり、問題4「情報化」や問題34「国際物流」は難しかっただろうか?
3)一般的な対策
多くの「資格受験本」に書かれている対策ではあるが、以下に再掲する。
①難しい問題は後回し
100点満点を取る必要はない。「試験用紙」に「概ね60%以上の正答」と明記されているのだから、分からない問題は飛ばして、とにかく40問を読んで、手当たり次第に解いていくことである。
②無答はダメ
2級の試験時間は40問で110分(全分野共通)である。見直し時間も要るので、10分を見直しに回すと、40問で100分、つまり1問当たり2分30秒で解く必要がある。1問3分以上掛かっていては、たとえ正解できたとしても、最後の問題40まで間に合わない可能性が高い。
筆者自身、運行管理者や衛生管理者の受験で、試験本番は時計の進み具合が早すぎると感じるほど、時間が足りなかった。
先ほどの過去問題が出たら、筆者なら問題4・16・29は後回しにする。残り5問に正解すれば、5問/8問なので、単純計算で検定試験全体の40問に対しては25問の正答で60%をクリアでき、目出度く合格ラインに達する。
解答可能な問題を済ませた後で、時間があれば飛ばした問題に取り掛かる。
無答は避けたい。解答が分からなくとも何とか「選択肢」を選んで答えれば、5択であれば単純計算で2割の正答率である。
③見直し時間は必要
見直しは、問題が「適切」「不適切」いずれを求めているのか、勘違いして解答していないか?あるいはマークシートの記入欄を間違えていないかなどのチェックが必要である。
1問飛ばした際に、次の問題でマークシート欄を間違えて(詰めて)しまい、以下、全問とも欄違いで「誤答」では泣くに泣けない。
気になる(どこか引っ掛かる)問題が、見直しに際に「正答」がパッと閃くこともある。
1)~3)は、ビジキャリに限らず、運行管理者等の他の資格受験にも使えるので、応用されたい。
4)次の段階へのステップ
2-(2)で紹介したJILSの各資格と、JAVADAのロジスティクス1・2・3・BASIC級は、図3のように関連付けられている。
企業や受講者にとっては、いわば「相互乗り入れ」的な利活用も可能ということである。
図3では、両団体における物流関連の各資格のレベル等も一覧で分かる。
具体的には、JAVADAのロジスティクス(管理・オペレーション)の3級取得者はJILSの物流技術管理士補資格認定コースを、2級取得者は物流技術管理士資格認定講座を、1級取得者はロジスティクス経営士資格認定講座を割引料金で受講できるというものである。
さらなる「高度物流人財」としてのステップアップに活用されたい。
5.終わりに
「高度物流人財」とブチ上げてみたが、最後は受験対策になってしまった。
しかし、資格はスキルアップのためのステップであり、そのチャレンジが企業にとっても「人的資本」である優秀な人材の育成・確保に繋がる。
筆者はリタイア後、①物流人材(財)の育成、②社会的弱者の支援、③40年以上在住する地元(横浜)への貢献」を心がけている。①は、JILSほか各種セミナー講師のほか、流通経済大学・港湾カレッジ横浜校で非常勤講師を務めている。学生の皆さんに教えることは、若さを貰うとともに学ぶことでもある。②は、社会保障関係の仕事をしている。③は、港湾カレッジで教えることが横浜港の発展にも繋がっており、①③の一石二鳥となっている。
今回、運行管理者・衛生管理者の受験経験の恥を晒して投稿したのも、本稿が①の一つであれば良いと思っている。
振り返ってみると、30年以上も前に、会社からJILS物流技術管理士の前身資格である「物流管理士」を取得したのが、大きな資産となっている。
サカタウエアハウス株式会社の田中社長も物流管理士であり、長くご指導賜っている。長らくロジスティクス・レビュー誌に投稿させて頂いたのも、物流管理士としてのヒューマン・ネットワークのお蔭と感謝している。
今回が最終稿となるが、これまでお読み下さった読者の皆さんと、長い間お世話になったロジスティクス・レビュー事務局の吉井宏冶さん(物流技術管理士)・井上文花さんにこの場を借りて御礼申し上げたい。
以上
【参考資料】
- 1.「総合物流施策大綱(2021年~2025年)」「同(2017年~2020年)」
- 2.国土交通政策研究所「物流分野における高度人材の育成・確保における研究」2021年
- 3.JILS「物流・ロジスティクスにおける人材育成支援ガイド」2022年版、「物流技術管理士資格認定講座パンフレット」各期
- 4.ロジスティクス・ビジネス誌「特集『物流を学ぶ』」2021年7月号
- 5.JAVADA「ビジキャリ ロジ検定」リーフレット
- 6.日経新聞 2022年2月18日付「人材価値の開示、投資選別基準に日米欧が年内にルール」
- 7.日経流通新聞 2022年4月20日付「学び直し支援企業、転職市場で好感」
- 8.長谷川雅行「高度物流人材に関する体験的な考察」(流通経済大学物流科学研究所報『物流問題研究』72号。2022年)
- 9.その他、厚生労働省・JILS・JAVADA・愛知県トラック協会のホームページ等
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