第231号実務リーダー(現場力)を考える。(後編)(2011年11月04日発行)
執筆者 | 髙野 潔 (有限会社KRS物流システム研究所 取締役社長) |
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目次
3.リーダー力の発揮
まず、リーダーは、前述のごとく、目配り・気配り・心配りができるこ と。実務リーダーの条件として組織内の従業員に主役の場を与えること、 実務現場の目線に立つこと、社内や過去の常識にとらわれないこと、リー ダーとしてぶれない(常に変わらぬ信念を・・・)こと、自分の足で確認をす ることが肝要であります。
1)部下に主役の場を与えること。
サービス部品の物流センターで普段あまり光が当たらない物流現 場(協力会社含む)の従業員に「光を当てる」ことと、現場把握(複数の定点観測)を兼ねて物流責任者(部長)が毎日、朝礼前に 約4万8千5百坪の広い敷地の物流現場を歩きまわり、従業員に声をかけ、安全や作業環境、在庫保管方法などの良くなった点を指摘、褒めることで従業員や協力企業に主役の座を与えていました。こうした地道な活動が部品物流センターの生産性向上、在庫削減 や約1,600人の人達が働いている職場の10万時間以上の無災害・無事故記録に貢献していました。
2)物流現場の目線に立つこと。
ねじ卸(取り扱い点数40万点)で営業&物流現場出身の所長兼物 流センター長が、自身の実務経験を存分に生かし、管理職の立場になっても「物流現場の目線」で約360人もいる作業員の心理を自ら に映し、意思決定を下すように心がけていました。センター長は、常に「管理職にとって部下はお客様」と考えていました。
3)社内や過去の常識にとらわれないこと。
ドラック系の若手(リーダー)管理職は、店舗責任者(店長)の 役割責任を従来と矛盾する複数店舗(エリア)制の導入を提案、業界内で完全に異質と思われたリーダー(店長)の担当範囲の複数エリア制を成功させました。
今では、30店舗から280店舗に成長させた企業の推進力になってい ます。
自社内や同業他社の過去の常識にとらわれない提案を社内幹部の 反対を押し切った社長の頭の柔らかさに脱帽です。
4)リーダーとして常に変わらぬ信念を・・・。
全世界にまたがる自動車部品の輸出物流・流通基地のSCMを港 頭地区に統合、集約効果で年間28億円のコスト削減を提案した某自 動車メーカーのプロジェクト責任者(マネージャー)は、社内の関 連組織、関連企業、取引先に終始一貫して同じメッセージを発し続 け、提案時に懐疑的だった社内、関連企業とプロジェクトを組んで 見事、京浜港頭地区に新しい多岐の物流機能を持った業界初の自動 車部品物流・海外流通基地の導入の成功にこぎつけました。
プロジェクト責任者(リーダー&マネージャー)は、常時ぶれの ない信念で強力にプロジェクトを推進、貢献しました。
社内と関連企業、取引先とプロジェクトの物流活動のパイプ役(連携)に徹した活動で現場とのコミュニケーションを取り続けたことが成功の一助になったと考えます。
5)自分の足と目で確認をすること。
在庫をピーク時よりも約25%引き下げた健康食品卸業の物流リーダーは、とにかく現場を歩きまわり、自分の目と足で商品の保管荷姿、在庫状態、ロケーション、作業動線などを常に頭に叩き込み、 自分なりの理論で現場の状況を本社の仕入部門、営業部門、現場部 門に伝え、在庫削減や欠品を撃滅させるために在庫の持ち方、発注 の仕方、保管の仕方(ロケーションと荷姿)をお願いしましたが、 反発ばかりでした。
反発があるたびに物流リーダーは担当者を伴って仕入部門、営業 部門、現場部門の責任者と現場に出向き、調査や説明、説得を繰り返しました。
関係者が目と足で度々確認した結果、6ヶ月後に在庫削減チームを 社内の関連部署を巻き込んで立ち上げることができました。
4.実務リーダーの心得
多くの従業員のモチベーションを継続的に高めていくことができるの は、リーダーの力量がカギといわれています。
1)やる気を興させる目標の設定をすること。
目標が定まらないと行動の方向が見えず、モチベーションが上がらないものです。
まず、現場レベルで少し背伸びをした実現可能な目標を個々に立てること。
目標が高すぎるとやる気を損なうことに繋がるので注意が必要です。
目標が達成できたら、少しずつ目標をあげていくこと。
中、長期的な大きな目標は、スタッフ(プロジェクト)などを巻き込んで達成することを目指します。
2)自らやって見せ、やらせて、褒めて、叱ること。
目標を設定したからといって、進め方が分からなければ、従業員(社員、パート、アルバイト、派遣社員など)は、先に進めなくな るものです。
自らやって見せたり、方向性を示したりすることが肝要です。
実務力を示すことで、上司の口ばかりを排し、信頼と尊敬の念を醸 成します。
実際の作業で褒めたり、叱ったりで、正しい作業を示していくこ とが大切です。
これは、従業員への徹底した「OJT教育」を行うことにより、従業員と作業の質を向上させることにつながり、信頼関係が強まります。
3)どんな些細なことでも、報告させること。
「ささいな問題だから自己解決しよう」と従業員が思うような問 題の中に、重大なリスク発見のヒントが隠れているかもしれません。
また、従業員が「これはあとで、自分でやろう」と思って一人の 胸にしまってしまうと忘れられてしまう危険も伴います。
これは、仕事の共有化、リーダーと配下のコミュニケーションの基 本となります。
4)問題発見を楽しむムードをつくること。
悪いニュースが入ったときに、現場リーダーが平静に事実を受け入れることは、非常に重要です。
失敗報告を受けて、従業員の責任を追及するようでは、リーダー失格です。
従業員が失敗するのも、失敗から回復するのも、失敗の範囲をコントロールするのも、全部リーダーの日常的責任の範囲内です。
仕事情報の共有化、コミュニケーション(相互情報交換)を充実したいものです。
5)従業員に仕事を割り当てるときは、独裁者になりきること。
一番ふさわしい従業員を指名し、その人の能力を見極めて期限を切るのは現場リーダーの仕事です。
リスクを負う人間が、決定する…これはビジネスの基本ルールです。
解決方針の決定についても、顧客や配下外に影響の無い限り迷ったときは、現場リーダーが決定しなければいけません。
6)従業員に、仕事の優先順位や期限を意識させること。
仕事の着手順序を自由にすると、楽な仕事が優先され、難しい作業がいつまでも後回しとなる恐れがあります。
また、期限なしに仕事を振っても、ずるずると延びる恐れがあり ます。
従業員との対話を通じて、仕事の重要性・緊急性を理解させ、順番と期限を設定し、その期限が守られるかどうかを見守ります。
その繰り返しで従業員に責任感と見積り能力をつけさせるのがよいでしょう。
7)進捗確認は定期的に、なるべく頻繁に行うこと。
現場リーダーとして刻一刻と変化する状況を頻繁にチェックしなければなりません。
週一回の進捗確認では、現代の物流実務のスピードにまったく付いていけません。
最低毎日一回のチェックを習慣づける必要があります。
もちろんレスポンスが求められる現場ではこのチェックの頻度を上げる必要があります。
☆参考:平時の教え!
![](https://www.sakata.co.jp/jp/wp-content/uploads/111104-1.gif)
5.最後に…。
![](https://www.sakata.co.jp/jp/wp-content/uploads/111104-2.gif)
以上
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