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物流システム

第445号 物流への活用が期待される日付情報等のバーコード表示ガイドライン(2020年10月8日発行)

執筆者 清水 裕子
(GS1 Japan(一般財団法人流通システム開発センター) ソリューション第1部グロサリー業界グループ グループ長)

 執筆者略歴 ▼
  • 著者略歴等
    • 2004年よりGS1 Japan勤務
    • これまで電子タグ(EPC/RFID)標準、バーコード標準の調査研究、普及活動に従事。
    • 現在はグロサリー業界を中心に、GS1標準の普及推進を担当。

 

目次

はじめに

  日本国内ではJANコードや集合包装用商品コード(ITFコード)として広く知られる、GS1標準の商品識別コードGTIN(ジーティン)は、加工食品、日用品・雑貨をはじめとする一般消費財の商品流通にかかせないインフラとなっています。コロナ禍においては、インターネット通販、宅配の伸長、セルフPOSやレジレス店舗等の取組みなど、標準コード、標準バーコードの活用場面は広がり、その重要度も増してきています。
  流通の場面では、商品確認以上のきめ細かい管理が求められています。例えば、加工食品の流通においては、メーカーの工場や配送デポ、卸・小売業の物流センター等、サプライチェーン上の各場面において賞味期限、消費期限情報が重要な管理項目となっています。例えば入荷時には「納品期限内であること」や「前回の納品よりも古くないこと」の確認が行われています。
  こうした業務の効率化のためのツールとして、2020年9月、GS1 Japan(一般財団法人流通システム開発センター)は、「ケース単位への日付情報等のバーコード表示ガイドライン」(以下、ガイドライン)を発行しました。

図表1 ガイドライン表紙
*画像をClickすると拡大画像が見られます。

1.効率化が求められる日付確認作業

  ケース単位の商品確認は、ITFシンボルなどのバーコード読取りで行われますが、日付情報はバーコード化されていません。多くの場合、商品の段ボールケースに表示された賞味期限等の文字を目で確認し、ハンディスキャナ等に手入力することによって、システムに取り込まれます。人手や時間を要する作業であり、見間違いや入力間違い等のミスが起きるリスクがあります。その上、日付の表し方やフォント・サイズなどもまちまちで、統一されていないため、効率を上げることも難しい状況です。昨今の人手不足の深刻化もあり、システム化やIT技術を活用した解決方法が望まれてきました。
  段ボールケースの日付等表示の標準化に関しては、2013年に製・配・販連携協議会において検討が行われ、文字表記する際の推奨事項がまとめられて公開されています。バーコード表示の標準化については、中長期的な取り組みとしてGS1 Japanにて検討することになっていました。今回発行したガイドラインは、そうした動きを受けて、メーカー、卸・小売業の協力を得て、GS1 Japanがまとめたものです。

2.ガイドラインの対象

  ガイドラインの対象は、段ボールケースなど、同じ商品が複数個入った包装形態(集合包装)の一般消費財です。「ケース単位」と名前が入っていますが、集合包装であれば、ばんじゅうや袋など、段ボールケース以外の包装形態にも応用することが可能です。
  加工食品や飲料、菓子など、賞味期限のチェックが重要な管理項目になっている商品カテゴリを念頭に、バーコードに表示するデータを整理しました。同時に、商品分野別に細分化された標準とならないよう、日用品や雑貨の場合は、データ項目を有効期限としたり、表示や設定のないデータ項目は省略可能としたり、このガイドライン1つでさまざまな商品カテゴリに応用できるようになっています。
  関連する分野のガイドラインとしては、業務用の食品原材料・資材を対象とした「原材料識別のためのバーコードガイドライン」がありますが、基本的な内容は共通しています。

3.ガイドラインのポイント

  ガイドラインでは、バーコードに表示するデータと、バーコードの種類、バーコードの表示位置を定めています。また、製・配・販連携協議会にて取りまとめられた文字表記の推奨事項も、参考情報として記載しています。
①推奨データ項目
  バーコードに表示する項目は、商品コード(GTIN)、製造日、賞味期限・有効期限などの「期限情報」、ロット番号の4つです。こうした複数の情報をバーコード表示するには、GS1アプリケーション識別子(GS1 Application Identifier: AI)と使って情報を表します。GS1アプリケーション識別子は、データの先頭につける2桁から4桁の数字で、データの種類を表します。またデータの長さ(桁数・文字数)や使用可能な文字等が定められています。国際的に定められたルールにしたがってバーコード表示することで、どの国のどの企業との間でも共通の方式で、データをやり取りすることが可能になります。また、バーコードデータの中から、GS1アプリケーション識別子を基に、自社に必要な情報のみを取り出すことができます。

図表2 GS1アプリケーション識別子(AI)のメリット
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  具体的なデータの表現形式は、図表3のようになります。

図表3 ガイドラインのバーコード表示データ項目とデータフォーマット
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1)商品コード(GTIN)
  AI(01)の後ろに、数字14桁で商品コードを入れます。ITFシンボルに表されているコードがそのまま入ります。
2)製造日
  AI(11)の後ろにYYMMDDの数字6桁の形式で、日付を入れます。製造日の表示をしていない商品の場合は、このデータを省略することも可能です。
3)期限情報
  賞味期限、消費期限、有効期限、使用期限など、バーコード表示する商品の期限情報の種類に応じてデータを入れます。日付の形式は、製造日と同じくYYMMDDの数字6桁です。期限情報の種類によって、GS1アプリケーション識別子の番号が異なります。賞味期限は、AI(15)で、消費期限、有効期限、使用期限は、AI(17)です。
  近年、加工食品の賞味期限の年月表示化が進められていますが、そのような商品にも対応可能です。例えば“2021年3月”のように、賞味期限が年月表示の場合は、YYMMDDのDD(日付)の部分を“00“にします。
4)ロット番号
  ロット番号は、メーカーが必要な管理情報として入っています。
  AI(10)の後ろにメーカーが定義するロット番号を入れます。表せるのは20文字(桁)以内で、数字と英数文字、一部の記号が使用できますが、かなや漢字などの特定言語の文字は使うことができません。
②推奨バーコードシンボル
  GS1 QRコードとGS1-128シンボルの2つを、推奨バーコードシンボルとしています。GS1 QRコードは、GS1標準のQRコードで、一般的なQRコードとの違いは、GS1標準のデータ形式のルールに則っているところです。読取りには、イメージスキャナと呼ばれるカメラ式のバーコードスキャナが必要です。そのため、レーザー式のハンディターミナルを使っている場合は、機器を入れ替えなければなりませんが、表示面積が小さく、さまざまなサイズの商品に対応できることや、誤り訂正機能により、汚れや欠けなどにも対応できることから、特に国内では期待されています。

図表4 推奨バーコードシンボル
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  GS1-128シンボルは、海外への輸出や輸入品を考慮して推奨シンボルに加えています。GS1標準では二次元シンボルの利用条件が、原則「一次元シンボルの追加シンボル」とされているためです。国内流通では、GS1 QRコードで問題ありませんが、海外に輸出する際は、相手先によっては、一次元シンボルの表示を求められる可能性があります。
③バーコードの表示位置
  GS1標準では、複数のバーコードを表示する場合、関連するバーコードシンボル同士を近くに置くことが推奨されています。そのため、まず商品コードが表されているITFシンボルの左右いずれか近いところへの表示を検討します。それが難しい場合は、ITFシンボルの上側に配置します。

図表5 バーコード表示イメージ
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  ITFやJANシンボルの表示をGS1 QRコードに置き換えることはできません。これは、GS1 QRコードの表示が始まっても、当面の間は、ITFシンボルやJANシンボルのみを読み取るシステムが継続利用されることが見込まれるためです。
  また、賞味期限の文字表示を置き換えるものでもありませんので、文字表示を省略することはできません。

4.ガイドラインの期待効果

  今後、さらに日付情報やロット番号などの管理が必要になったり、得意先から求められたりする場面は増えていくと思われます。標準的なガイドラインがないと、バーコード表示が行われても、企業ごとにバラバラで、企業間で活用できない問題が起きる可能性があります。バーコード表示の共通の指針があることで、表示を行う際に、同じ方式で行うことができるようになります。
  ガイドラインに沿ったバーコードの活用効果として、最も期待が大きいのは、卸売業や小売業の物流センターに、ケース単位で商品受入れや出荷検品を行う場面です。賞味期限情報の登録・チェックを、バーコード読取りでできるようになり、現場スタッフの作業時間や負荷を減らすことが期待されます。同時に、情報はより正確になり、先入れ先出し管理をこれまで以上に徹底できるようになります。
  商品メーカーにとっては、商品の製造段階で賞味期限やロット番号をバーコード表示する必要があり、必ずしも簡単ではありません。ただ、ロット番号などがバーコード化されていれば、メーカー側にも活用の場面があることが確認されています。商品の製造後に自社倉庫での移動や拠点間で横持ちを行うことがあり、その際には、ロット番号や日付情報も連携する必要があります。しかし、実際の運用では、伝票など紙でのやりとりが多く残っていると言われています。バーコード活用により、業務をペーパーレス化、システム化することで、接触機会を減らしつつ、情報の精度を上げる効果が期待できると思われます。
  また、HACCPの義務化をはじめ、きめ細かな情報の記録・管理が求められるようになりつつあります。日付・ロット番号の入ったバーコードは、ロット単位の在庫記録を取りやすくし、効率的なトレーサビリティの確保にも役立つものと思われます。

5.今後の展望

  物流の標準化は、国においても重要視されています。国土交通省では、加工食品分野における物流の標準化に向けた検討が行われました。2020年3月27日には、標準化の実現に向けて官民が取るべき方策を取りまとめた「加工食品分野における物流標準化アクションプラン」が発表されています。アクションプランでは、「納品伝票」、「外装表示」、「パレット・外装サイズ」、「コード体系・物流用語」の4項目について、物流標準化に取り組むこと、としています。今回のガイドラインは、この外装表示の標準化の一部に応えられるものと考えています。
  まずはこのガイドラインを、関係する消費財や物流に携わる方々に広く知っていただくことが、普及の第一歩です。PDF版のガイドラインは、近日中に当財団のウェブサイト(www.dsri.jp)に掲載する予定です。今後は、展示会やセミナー等での紹介に力をいれていきますが、業界や企業の会合・勉強会など、機会があれば、ぜひお気軽に相談いただきたいと思います。

以上



(C)2020 Yuko Shimizu & Sakata Warehouse, Inc.

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