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第421号 働き方改革関連法改正と実務的対応(その2)【前編】 (2019年10月10日発行)

執筆者  長谷川 雅行
(株式会社日通総合研究所 経済研究部 顧問)

 執筆者略歴 ▼
  • 経歴
    • 1948年 生まれ
    • 1972年 早稲田大学第一政治経済学部卒業 日本通運株式会社入社
    • 2006年 株式会社日通総合研究所 常務取締役就任
    • 2009年 同社顧問
    保有資格
    • 中小企業診断士
    • 物流管理士
    • 運行管理者
    • 第1種衛生管理者
    活動領域
    • 日本物流学会理事
    • (社)中小企業診断協会会員
    • 日本ロジスティクス研究会(旧物流技術管理士会)会員
    • 国土交通省「日本海側拠点港形成に関する検討委員会」委員ほか
    • (公社)日本ロジスティクスシステム協会「物流技術管理士資格認定講座」ほか講師
    著書(いずれも共著)
    • 『物流コスト削減の実務』(中央経済社)
    • 『グローバル化と日本経済』(勁草書房)
    • 『ロジスティクス用語辞典』(日経文庫)
    • 『物流戦略策定のシナリオ』(かんき出版)ほか

 

目次

1.はじめに

  働き方改革関連法が改正公布され、順次施行されていく。
  「施行されるが、どう対応したらよいのか」とお困りの物流企業も多いと思うので、前回「その1」から、改正のポイントと実務的な対応方法について紹介している。
  「その1」では、「時間外労働の上限規制」「年休の付与義務」「時間外労働における割増賃金率の見直し」を時間外不払い問題と併せて説明した。
  今回の「その2」では、「同一労働同一賃金」について説明する。
  なお、「その1」については、読者からご質問・ご意見を頂き、この場を借りて、感謝申し上げたい。
  ご質問のあった「所定労働時間」と「法定労働時間」の違いについては、「同一労働同一賃金」3項(5)-1)で説明する。
  また、「時間外不払い問題」で触れた、不払い残業代の消滅時効(2年)は、本稿執筆時点では、その後の政労使のやりとりで、「変更なし=2年」ということに落ち着きそうである。
  2020年4月1日施行の改正民法では、消滅時効が一律5年になるので、不払い残業代の消滅時効も5年になるはずであった。しかし、経営者側の反対が強かった。
  元々、賃金は、飲み屋のツケと同様に1年の短期消滅時効であった。しかし。「労働者の生活の糧が、1年で時効消滅するのはヒドい」と、労基法では「2年」に延長された。
  法の主旨からすれば、当然、「労働者の生活の糧が、他の消滅時効よりも短いのはヒドい」となるので、遠からず「5年(あるいはそれ以上)」に延長されると想定される。
  「『働き方改革関連法』は改正ポイントがたくさんあって、どこから実務的な対応を始めたら良いか分からない」というご感想も多かった。
  そこで、図1に再掲した施行時期をみて、期限の早いもの順に対応しないと、労基署等の指導に間に合わない。
  施行順では、
「年休の付与義務(2019年4月)」→「時間外労働の上限規制(2020年4月=中小企業で自動車運転を除く)」→「同一労働同一賃金(2021年4月=中小企業)」→「時間外割増賃金率の見直し(2023年4月=中小企業)」→「時間外労働の上限規制(2024年4月=自動車運転者)」
となるので、その順番で急いで着手されたい。
  しかし、各ポイントは相互に関連しているので、施行時期の差はあっても並行して進めることが必要である。「その1」でも説明したように、施行時期や猶予期間はすぐ来るのである。


図表1 働き方改革関連法改正のポイント
「その1」に表示したものを再掲した。
*画像をClickすると拡大画像が見られます。


  とくに急ぐのは、既に2019年4月から施行されている「年休の付与義務」である。
  トラックドライバーなどは改善基準があるので、休日や年休を計画取得しやすいとも言える。
  むしろ、多くの中小企業では、内勤者の年休付与をどうするかということが課題である。
  先日、某紙で、中小企業の総務部門(在籍の中高年女性・パートタイム労働者の女性・子育て中の女性・定年後再雇用の男性)で、年休どころかパートタイム労働者・子育ての女性を早く帰すことに追われて、とくに再雇用のベテラン男性に仕事が集中していることが出ていた。
  そこで、4人でもう一度ムダな仕事はないか見直し、ここで15分、あそこで30分と仕事を少しずつ削って、「塵も積もれば山」となり男性の年休5日取得計画を作ったそうである。
  ぜひ、「他山の石」として参考にされたい。
  筆者たちが厚生労働省のパイロット事業をお手伝いして、トラックドライバーの長時間労働の削減に取り組んだ時も、業務を見直して、1日あたり15分、30分の時間を削減するという同様の手法が効果的だった。
  一気に「労働時間を減らす」「年休を与える」「賃金を上げる」という方法では、会社経営がもたない。「長時間労働の削減」「年休付与」「同一労働同一賃金」も、毎日の地道な取り組みしかない。

2.「同一労働同一賃金」に関わる働き方改革関連法

  物流現場では雇用構造が多様化して、それ自体が、雇用管理・労務管理上のリスクとなっている。
  各企業で雇用区分名は異なるが、例えば物流センターでは、「正社員」「準社員」「契約社員」「パート(正しくは短時間労働者。本稿では厚労省資料に従い、以下「パートタイム労働者」という)」「アルバイト(有期雇用労働者)」「派遣社員」など、いろいろな人たちが働いており、そのなかには、「賃金」「昇給」「休日」「福利厚生」などの待遇差に不満を持っている人もいる。
  物流センター長は、そういう人たちへの雇用管理・労務管理などに配慮しながら、日々の業務を遂行しなければならない。
  上述の多様化した物流現場の雇用構造のうち、正社員を除いた労働者は通常「非正規労働者」とされている(政府では、「非正規」という言葉をなくそうと取り組んでいる)。
  日本では雇用者5,596万人のうち、非正規労働者が2,120万人(全体の37.9%で、その内訳はパートタイム労働者1,035万人、アルバイト(有期雇用労働者)455万人、契約社員294万人、派遣社員136万人、嘱託120万人などとなっている(2018年)。また、正規労働者になりたい非正規労働者は255万人いる(意外であるが、正規労働者になりたくない非正規労働者の方が多い)。
  賃金面でも、2017年の時給ベースでは、一般労働者・正社員の1,937円に対して、短時間労働者・正社員以外は1,081円とほぼ半分である。
  この格差是正のため、国は最低賃金1000円に向けて取り組んでおり、2019年秋には東京都と神奈川県では、最低賃金が1000円を超えることになる。

(1)「同一労働同一賃金」関係3法

  今回説明する「同一労働同一賃金」に関係するのは、「その1」で述べた働き方改革関連8法のうち、
1)労働契約法
2)パートタイム労働法→パートタイム・有期雇用労働法に名称変更
3)労働者派遣法
の3法である。
  なお、このうち「2)パートタイム・有期雇用労働法」(正式には、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律 」)は、実務面での中心になるので、ぜひご一読願いたい。
  なお、法律名は、厚生労働省が解説等に使用している省略形の表記にしたがっている。
  パートタイム労働者・有期雇用労働者は、同法第2条により以下の通り定義されている。
「第二条 この法律において「短時間労働者」とは、一週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者(当該事業主に雇用される通常の労働者と同種の業務に従事する当該事業主に雇用される労働者にあっては、厚生労働省令で定める場合を除き、当該労働者と同種の業務に従事する当該通常の労働者)の一週間の所定労働時間に比し短い労働者をいう。
2 この法律において「有期雇用労働者」とは、事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者をいう。
3 この法律において「短時間・有期雇用労働者」とは、短時間労働者及び有期雇用労働者をいう。」

(2)「同一労働同一賃金」関係3法の改正点

1)労働契約法
  ①均衡規定をパートタイム・有期雇用労働法に移行(旧法第20条の規定を削除)
2)パートタイム・有期雇用労働法
  ①従前のパートタイムに、有期雇用労働者を対象に追加
  ②均等・均衡規定の整備、待遇に関する説明義務化
3)労働者派遣法
  ①均等・均衡規定の整備、待遇に関する説明義務化(パートタイム・有期雇用労働法に同じ)
  したがって、従来アルバイト等の名称であった「有期雇用労働者」についても、パートタイム労働者同様の処遇が法的にも義務付けられたことになる。
  また、3)は「派遣元」である派遣会社が施行の主な対象となるので、「派遣先」の各企業については、必要な項目だけ説明する。

(3)「同一労働同一賃金」関連法の施行期日

  大企業においては2020年4月から、中小企業においては2021年4月から施行される(図表1参照)。

(4)「均等待遇」と「均衡待遇」

  上記「パートタイム・有期雇用労働法」「労働者派遣法」の条文や解説等を読むと、「均等待遇」「均衡待遇」という言葉が、あちこちに出てくるので、最初に理解して欲しい。
1)均等待遇
  通常の労働者(正規社員)と非正規社員(パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者)について、下記の①②が同一であれば、同一の待遇を求めること
2)均衡待遇
  通常の労働者と非正規社員について、下記の①②③についての合理的理由によるバランスのとれた待遇(待遇差)を求めること
  ①職務内容(業務内容・責任の程度)
  ②職務内容・配置変更範囲(いわゆる「人材活用の仕組み」)
  ③その他の事情
  (①~③については、後ほど説明する)
  パートタイム・有期雇用労働法第8条では、「不合理な待遇の禁止」として、以下の通り定められている。
「事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。
  つまり、均等待遇は「同一の待遇」であるが、均衡待遇は「バランスがとれた待遇」なので、合理的な理由(条文の「適切と認められるもの」)があれば待遇差は認められることになる。
  とくに、ドライバーの定年後再雇用などで賃金を引き下げる場合には、「③その他の事情」に該当するかどうかが問われることになる。

3.同一労働同一賃金ガイドライン

  厚労省では、昨年末も押し詰まった12月28日に、上記「同一労働同一賃金」関連3法の円滑・適正な運用を図るために、「同一労働同一賃金のガイドライン」を公表した(その概要は図表2~4)

図表2 同一労働同一賃金のガイドライン概要①

(出所:厚生労働省ホームページ。図表3・4も同じ)
*画像をClickすると拡大画像が見られます。


図表3 同一労働同一賃金ガイドラインの概要②
*画像をClickすると拡大画像が見られます。


図表4 同一労働同一賃金ガイドラインの概要③
*画像をClickすると拡大画像が見られます。


  詳細は、上述の「同一労働同一賃金関連法」並びに図2~4の「同一労働同一賃金のガイドライン」をご覧いただくとして、ここでは、物流現場に即しての対応策を述べることにしたい。
  また、事例として2018年6月のトラック運送会社H社・N社に対する最高裁判決を取り上げた(参考資料3.4.参照)。

(1)「通常の労働者と同視される非正規労働者」の均等待遇

1)職務内容と変更範囲が同じなら、待遇も同じ
  2項-(4)-2)の①②の説明である。トラックドライバーで例示する。
  非正規労働者であるトラックドライバー(以下「非正規ドライバー」という。短時間勤務・有期雇用・定年後再雇用など)のうち、正規ドライバー(常時選任運転者など)と職務内容が同じで、職務内容や配置の変更が同一な人(「通常労働者と同視される非正規労働者」という)には、短時間労働者や有期雇用労働者であることを理由に、基本給、賞与その他の待遇で差別的な取り扱いをしてはならない。
  同一か否かは、業務内容と責任の程度、つまりドライバーが従事する業務が実質的に同じかどうかで判断される。中核である運転業務が同じなら、接客などの付随業務に差があっても同じ業務である。
  責任の程度は、権限の範囲、成果に対して求められる役割、トラブル発生時などに求められる対応の程度などで総合的に判断される。
  実態として、非正規ドライバーだから「運転技術は未熟でも良い」「少々の貨物事故はやむを得ない」「トラブル対応しなくても良い」ということはないので、「通常の労働者(正規ドライバー)と同視される非正規労働者」と判断されることになる。
2)「職務内容・配置の変更範囲が同じ」とは
  職務内容と配置の変更は、転勤、異動による部署や業務の変更、昇進などが含まれる。この変更範囲が正規ドライバーと実質的に同じかどうかで判断される。
  就業規則には、「正規社員(正規ドライバー)は、転勤がありうる」と想定されていても、非正規ドライバーと同じ職務内容の正規ドライバーには、転勤がほとんどない場合などは、「配置の変更範囲」は異ならない。
  この点は、トラック運送事業者H社に対する最高裁判決で確定している(参考資料3.参照)。
  通常のドライバーと同視される非正規ドライバーは、賃金以外の、福利厚生・教育訓練などの全ての労働条件について、正規ドライバーと同じにしなければならない。賃金査定でも非正規ドライバーだからと低く評価することは許されない。
  以上、ドライバーの例で述べたが、物流センター従業員でも同様である。

※中編(次号)へつづく



(C)2019 Masayuki Hasegawa & Sakata Warehouse, Inc.

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