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物流人材

第343号 物流業界のおける人材不足の対応に関する考察(前編) (2016年7月7日発行)

執筆者 浜崎 章洋
(大阪産業大学 経営学部商学科 教授)

 執筆者略歴 ▼
  • (略歴)
    • 1969年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。
    • タキイ種苗、日本ロジスティクスシステム協会、コンサルティング会社設立を経て現職。
    • 2004年度、2013年度日本物流学会賞、第12回鉄道貨物振興奨励賞特別賞受賞。
    (著書)
    • 「ロジスティクスの基礎知識」(海事プレス社)
    • 「ロジスティクス・オペレーション2級」(共著、社会保険研究所)
    • 「Logistics Now 2005」(共著、輸送経済新聞社)
    • 『通販物流』(2014)海事プレス社 など

 

目次

【はじめに】

  物流業界では人手不足と言われて久しい。特にトラックドライバーの不足が深刻である。また、庫内作業のパート・アルバイトも不足感があり、首都圏では時給が上昇、しかも時給を上げても必要人数確保が難しいという声を聞く。
  少子高齢化による労働人口の減少だけでなく、東京オリンピック・パラリンピックや震災復興の建設・土木事業のラッシュ、景気回復による小売業や飲食業の人手不足による人材の奪い合いなどの外部環境の変化が原因と言われている。しかしながら、筆者は、外部環境だけでなく、特に若い世代が「物流業界に魅力を感じていない」ことも原因だと痛切に感じている。物流業界における人手不足は、一過性のものではなく、物流業界の魅力を高めない限り、今後も続くのではないだろうか。
  人手不足を前提にした「新しい物流の姿」を物流業界、あるいは荷主業界が考えていかないと、物流が成り立たなくなると筆者は危惧している。これらを解消するために、物流業界が取り組む課題として、自動化、標準化・平準化、IT化などによる省力化や省人化などが挙げられる。また、荷主など産業界全体で取り組む課題として、過度な時間指定や納品先での付帯作業など納品条件・物流サービスの見直し、一貫パレチゼーション導入による荷役効率化、共同配送などの物流共同化などが挙げられる。
  ドライバーや庫内作業スタッフなどの現業職の人手不足を解消するには、現状の物流のあり方そのものを見直し、人手不足を前提にした五年後、十年後も継続できる「新しい物流の姿」を考えていかなければならないのではないだろうか。そのためには、物流業界は優秀な学生を採用し、近未来の物流のあるべき姿を企画し実行する必要があると思われる。
  このような問題意識から私のゼミの学生が行った物流業界に対する学生へのアンケート調査の結果について、本号で紹介したい。

【就活を終えた学生へのアンケート調査概要】

昨年度(平成26年度)、浜崎ゼミの学生が、就職活動を終えた四年生以上の大学生を対象に、「陸運会社に関する調査アンケート」を実施した。アンケート調査概要は以下の通りである。

・対象: 関西の私立大学の就職活動を終えた四年生以上の学生
(筆者が勤務している大学、および非常勤講師でロジスティクス関連の科目を履修している学生が対象)
・内容: 陸運会社に関するイメージなどについて調査を実施
・回答: 144名(男子98名、女子46名)から回答を得た

【アンケート調査結果】

調査結果について、以下、抜粋して紹介する。

1. 東証一部に上場している陸運会社を列挙し、知っている会社をチェックする方法で、「知っている陸運会社」についての質問では、ヤマト運輸、日本通運などはほぼ全ての学生が知っていた。しかしながら、企業間(B2B)物流の会社の認知度は、大手二社が50%程度、それ以外は10~25%程度であった。
ロジスティクス関連の科目を受講している学生ですら、東証一部に上場している陸運会社の認知度が高くないことは残念なことである。
2. 陸運会社に対するイメージは、男女とも、「ドライバー職」、「肉体労働」が多い。男子では「拘束時間が長い」、「仕事と私生活のバランスが取れない」、女子では「縁の下の力持ち」、「女性が働いているイメージが湧かない」といったものであった。いずれにしても、良いイメージを持っている学生は少なく、就職先としての魅力は感じていないようである。
3. 陸運会社の会社説明会、採用選考、内定に関する質問では、説明会に参加した学生は144名中、約10%の15名。採用選考に進んだのは7名(約5%)、内定をいただき陸運会社に就職を決めた学生は1名のみという結果が出た。
4. 陸運会社の説明会、採用選考に進まなかった理由としては、男女とも「体力に自信がない」、「トラックの運転をしたくない」といったものであった。また、男子は、「休みがなく就業時間が長い」、「深夜まで働く」、「給料・休日が少ない」、「将来のキャリアパスがイメージできない」、女子は「男性が活躍するイメージ」、「グローバル展開をしていない」などが挙げられた。


  大学生にとって、陸運会社イコールトラックドライバー、長時間労働で給料が安いというイメージで、営業、企画、管理の業務は想像できないようである。

【調査結果より導きだされるアイディア】

陸運会社の認知度を高めるとともに、業務内容を大学生に理解してもらう。
・会社説明会や学内業界セミナーなどに積極的に参加するとともに、物流・ロジスティクス関連科目に外部講師として参画し講義を行う
・会社説明会や学内業界セミナーなどでは、若手社員や女性社員に話しをさせる
・インターンシップ(短期間が望ましい)で具体的な業務を理解してもらう
キャリアパスを明確にする
・営業、企画、管理などドライバー以外の仕事があり、25歳、30歳、40歳、50歳などになったら、どのような仕事をしているかなど、将来の仕事のイメージを明確にする

【小括】

  本号はゼミ学生が昨年度に実施した陸運会社に対する学生のイメージについて調査した結果を整理したものである。多くの大学生にとって陸運業界は、あまり魅力的ではないようである。次号では、物流会社・物流子会社に入社した若手社員への就職活動時のアンケート調査結果を報告する。
  本調査は、平成26年11月に開催された第6回物流関連ゼミ生による研究発表会(NS物流研究会)において、浜崎ゼミの学生(鷹野君、三上君、柳君)が調査・発表した内容をもとに筆者が整理したものである。誤謬は全て筆者に帰するものである。

※次号へつづく


【参考文献】

  • 柳ジンスル(2014)『陸運会社が優秀な学生を採用するための考察- 陸運会社に関するアンケート調査 -』「平成26年度 大阪産業大学 浜崎ゼミ卒業論文集」
  • 鷹野健太、三上将太、柳ジンスル(2014)『陸運会社が優秀な学生を採用するための考察』(第6回物流関連ゼミ生による研究発表会、発表資料)


(C)2016 Akihiro Hamasaki & Sakata Warehouse, Inc.

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