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物流システム

第419号 共同・協業化の規模の経済性で効率化・省人化を考える。(後編)(2019年9月5日発行)

執筆者  髙野 潔
(有限会社KRS物流システム研究所 取締役社長)

 執筆者略歴 ▼
  • 職歴・履歴
    • 日産自動車株式会社(33年間)
    • (出向)株式会社バンテック(7年間)
    • (起業)有限会社KRS物流システム研究所(平成11年~)
    組織・履歴
    • 神奈川流通サービス協同組合・物流システム研究所所長(5年間)
    • 株式会社湘南エスディ-・物流顧問(5年間)
    • 株式会社カサイ経営・客員研究員(7年間)
    • 物流学会・正会員(8年間)
    • 物流学会・ロジ懇話会事務局(5年間)
    • 日本情報システムユーザー協会・個人正会員(JUAS-ISC)(9年間)
    • 日本情報システムコンサルタント協会(JISCA:東商会員)正会員・理事(平成25年~)
    委嘱(受託)・履歴
    • 通産省(現・経済産業省) 荷姿分科会委員・委嘱(1年間)
    • 運輸省(現・国土交通省)輸送分科会委員・委嘱(1年間)
    • 中小企業基盤整備機構  物流効率化アドバイザー・委嘱(8年間)
    • 中小企業ベンチャー総合支援センター 新事業開拓支援専門員・委嘱(6年間)
    • 中小企業基盤整備機構  企業連携支援アドバイザー・委嘱(6年間)
    • 中小企業大学校(関西校) 非常勤講師・委嘱(4年間)
    • 海外技術者研修協会 [AOTS]関西研修センター 非常勤講師・委嘱(2年間)
    • 座間市観光協会・事務局長(2年間)
    • 座間市・都市計画審議会委員(2年間)
    著書・講師・履歴
    • 日本のロジスティクス (共著:日本ロジスティクスシステム協会)
    • 物流共同化実践マニアル (共著:日本ロジスティクスシステム協会・日本能率協会)
    • 図解 なるほど!これでわかった よくわかるこれからの物流 (共著:同文館)
    • 雑誌掲載:配送効率化・共同物流で大手に対抗(日経情報ストラテジー)
    • 雑誌掲載:情報化相談室回答担当者(日経情報ストラテジー)
    • 雑誌掲載:卸の物流協業化・KRS共同物流センター事業(流通ネットワーキング)
    • 雑誌掲載:現場が求めるリテールサポート・ドラックストア-編(流通ネットワーキング)
    • その他  :執筆実績多数
    • 講師(セミナー、人材育成、物流教育・etc):実績多数

 

目次

*前号(2019年8月20日発行 第418号)より

6.物流拠点の庫内レイアウトと主な物流機能

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  共同・協業化の物流拠点の主な機能と概要の特徴を記述します。
  開発の狙いは、人員削減を前提に在庫と100台近い配送トラックの大幅削減でした。
  さらに、作業(コスト削減)と作業品質、精度、庫内全体(1F~5F)の見える化(作業進捗)などで可視性を重視することにより、作業者の意識付けと作業待ちなどのムリ、ムラ、ムダの発生を極力抑えるシステム(仕組み)づくりに注力しました。
  庫内作業量の平準化と配送量の集約化を狙い、配送エリア・同一商圏を基点に受注〆切時間を1日当たり3回、①8:00、②10:30、③15:30の3回/日にして翌日配送としました。
  大手量販店や専用車両での単独納品、緊急オーダーなどは〆切り時間に関係なく出庫処理を行い該当の配送便がない場合は、特別便を出して対応していました。
  物流拠点の特徴として生命線である5F~1F(庫内全体)に張りめぐらしたケースとオリコンの搬送コンベア(長さ≒1.5km)と制御系コンピュータと連動した倉庫面積≒6,700坪からの出荷品がトラック単位に同期が取れるように出庫アルゴリズム(スケジューリング)を駆使してトラック積込場に集荷できるようにしました。
  拠点内に14ヶ所ある作業エリア毎の流速管理と人時生産性を加味した人員配置で日々の出庫アンバランスを極力抑え、出庫量バランスが大幅に崩れた場合は、各エリアの人時生産性を基本に物量に応じたPM(タクト2~3)からの作業体制を組み換え(物量に応じた人員再配置)で作業終了時間の均等化(残業の抑制)を狙い応援体制を重視しました。
  コンピュータによる物流現場の全体(5F~1F)の稼働状況を監視できる司令塔役を
設置、この司令塔の役割はファイナル工程でもある「配送コース別(シュート)積込作業場」の状態をリアルタイムに把握しながら全倉庫の投入可能な配送コース毎(トラック単位)の商品集荷(同期)が取れるシステム(現場のアンドン表示、PC端末、CCR監視装置)を構築、商品集荷と作業進捗を現場にて管理できるようにしました。

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  建物は、フロア-4層の5階建、総面積6,700坪、1階の天井高が≒9m、2階は吹き抜け、1階は、パレット単位の高積み、高層用パレットラックの設置を可能にしました。
  流速区分、形状毎に倉庫スペースを14のエリアに分類、それぞれに最適なマテハンシステムを導入、IQ分析で出荷効率、保管効率を勘案した棚割のレイアウトとしました。
  荷主の内訳としては、化粧品・日用雑貨卸4社、菓子食品卸1社、日雑メーカー1社、装飾品卸1社、TC扱いで玩具卸1社が物流拠点として活用していました。
  取扱金額は、年間280~300億円を目標に月約23~25億円、1日約0.9~1.0億円の出荷、在庫アイテム数は約3万点で1~4階1万点(共通在庫)、5階2万点(各社独自在庫)を保管、在庫月数の目標を月2回転(年間24回転)とし、ほぼ達成していました。
  出荷物量は1日当り約1万個口で、これを超えると残業が必要との判断をしていました。
  納品先は6,500軒、関東圏の神奈川、東京、千葉、埼玉、静岡で、神奈川が主流でした。
  仕入れ先数350社で桁はずれに多く入荷はエレベーター、出庫は一気通貫でそれぞれのフロアでピッッキング後、即、搬送コンベヤで自動搬送を行い、流通加工作業がある場合は、3F経由、その他は1階に、配送コース(トラック単位)毎に自動集荷としました。
  配送コース毎に自動集荷を行う際にコンベア上に荷物が滞留などで作業が停止しないようにシュート本数の能力オーバーをしない監視システム(仕組み)を導入しました。
  指示された以外の荷物が自動仕分装置に搬送された場合、ミスラインに強制出荷します。
  荷物の流れをアンドン表示とPC端末で各エリアの作業進捗を監視・管理していました。
  さらに、オリコン自動段バラシ機、自動組立機、出荷ラベル自動作成&自動貼付機、オリコン自動切り出し機(フットSW付)の導入で大幅な省力化、省人化が図れました。
  各階物流現場に端末機を配置(14ヶ所)、エリア毎に責任者や作業者が運行管理・進捗状況(アンドン、PC端末)が一目で把握できることで競争原理が働いていました。
  4Fのバラエリアに長さ約0.3kmの破材回収搬送ラインを設置、1Fの破材庫に自動集荷、毎日、業者の回収で大量の空段ボールの始末に人手を不要とすることができました。
  さらに、拠点の目玉の追い越し式DPSやマーカー板システム、シールシステムなどの有効活用でバラピッキングの人員削減(効率化、省力化)に効果を発揮しました。
  3Fは、流通加工作業場とし、得意先別自動仕分装置を9シュート導入、さらに、倉庫全体の作業と設備を監視するCCR(センター・コントロール・ルーム)を設けました。
  1Fは、パレットラック(フリーレーン/フリーロケ)、配送コース別自動仕分装置18シュートのフレキシブル割付(拠点全体の作業待ちの解消)を可能にした自動仕分装置を導入、省力化・省人化(人員削減)に大きく貢献、想定以上の定量効果を実現しました。
  さらに、各フロアの作業量にバラツキがある場合、午後の作業に入る前にフロア責任者
が食堂に集まって各フロアの人時生産性と物量から配置人員を試算、フロア単位の人員のやりくりでフロア毎の作業負荷と作業終了時間の平準化、残業の抑制を行っていました。
  人間は目標を与えられると知恵を出し始めるので、達成すべき数値を設定して作業進捗、人時生産性などの可視化を重視、全員で知恵を出しながら対応していました。

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7.配送システムの概要と配送革新を考える。

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  共同・協業化の配送システムは、コスト低減の目玉です。
  積載充填率の向上と時間、距離の短縮を考え、参加卸の商圏を「20エリア」に区分けし、配送個口数、店舗数などを基本にコンピュータにより自動積載量計算を行い、配送コース、配送店舗数、配送(逆)順、納品個口数などでのシミュレーション結果をもとに積載量、積載率の試算データを確認し、その結果をもとに配送責任者と配送委託先の運行管理者が微調整を行い、車両台数と配送コースを決定していました。
  積載率を80%以上、納品先数20ヶ所以内の目標を持ち、配送コスト低減にチャレンジ、
高い目標に挑戦した配送責任者・担当者と運行管理者の日々の努力で平均トラック台数1日当たり85台から68台(≒▲112百万円/年)へと大幅に減らすことができました。
  そこで、配送の革新は、共同・協業化で同一商圏の荷量(メリットのネタ)を同一タイミング(配達密集地域をつくる)で扱える条件をつくりだすことが必須と知りました。
  中小・中堅企業がいま以上の積載率の向上を目指すには、同一商圏の納品先に時間をかけて折衝、同一タイミングで納品できる条件を意図的につくり出すこと、この商圏づくりが台当たり積載率の向上、即ち、配送コストの低減に寄与できるポイントだと考えます。
  さらに、「納品の速さ至上主義」を転換して中1日空けての地域毎のAM、PM配送で同一車両での一日、複数回の配送に取り組みたいものです。
  よい事例として、セブンイレブン、生協などの配送事例があります。
  国土交通省の発表によりますとトラック積載量の平均は約44%だそうです。
  物流量を充分に扱える大企業は別にして、中小・中堅企業の非効率な積載率の改善を優先度高く取り組むことが肝要でトラック積載率の平均を80%以上に増やすには、前述の如く同一商圏の同業種、異業種を問わず同一タイミングでの配達密集地(商圏)をつくることで積載率の向上に寄与できるものと考えます。

8.最後に・・・。

  最近では、様々な場所で「ロボット化」や「自動化」が進んでいます。
  日本は工場での生産工場におけるロボット化に関しては、世界有数と言われていますが物流拠点での自動化・ロボット化に関しては、まだまだ普及段階です。
  ネット通販市場を見てみると大手小売店(量販店、etc)のほとんどのネット通販が当たり前になるなど、販売する商品の多様化も進んでいます。
  このような社会変革の状況下で人手不足が大きな社会問題になっています。
  少子高齢化が課題の日本では、物流業界の人員確保が年々難しくなっています。
  物流業界でも本格的な自動化システムを進める動きが出てきており、完全自動化には、一握りの大手企業と資金力のある個別企業に限られてきています。
  これからは、工数の短縮や作業精度の必要な個別作業をできるだけ自動化で行い、駆動CV、自動搬送台車(AGV)などとのネットワーク化で費用対効果を試算しながら自動化システムを構築していきたいものです。
  現在、人手不足解消の対応策の決め手は、見つかりません。
  物流現場の省力化・省人化は拠点の核となる個別作業をできるだけ自動化すること、毛利元就の三本の矢の如く複数の企業の共同・協業化で強みを伸ばし「作業品質・精度、サービス・納期、コスト」と「人手不足の解消」に対処したいものです。
  「流通業務効率化促進法」の契機と言われた中小企業を束ねた自動化・半自動化で作業者の負荷軽減、質の高い物流力の醸成、コスト低減、高齢者の働きやすい環境づくりなど、既存の物流拠点で効率よく導入する術(すべ)や技術が中小企業にも求められています。

以上



(C)2019 Kiyoshi Takano & Sakata Warehouse, Inc.

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