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ロジスティクス ・レビュー

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経営戦略・経営管理

第27号 企業経営とロジスティクス(2003年03月07日発行)

執筆者 増井 秀典
ベリングポイント株式会社 SCMチーム マネージャー
    執筆者略歴 ▼
  • 経歴
    • 1986年 鐘紡株式会社(現・カネボウ株式会社)入社
      生産技術研究部門にて化粧品を中心とした物流センターの構築・設計・システム化を推進
      物流企画部門にて同上の業務を発展的に展開
      第7回 流通システム大賞 通産大臣賞受賞
    • 1999年 朝日アーサーアンダーセン株式会社入社
      コンサルタントとしてクライアントの業務改革(BPR)および事業・物流戦略実行を支援
    • 2002年 KPMGコンサルティング株式会社入社
      (朝日アーサーアンダーセンとの事業統合による)
    • 現在 ベリングポイント株式会社
      (2002年10月:KPMGコンサルティングが社名変更)
      大阪オフィス所属 SCMチーム マネージャー
    【ベリングポイントの紹介】  ベリングポイントは世界最大手のビジネスコンサルティング会社の一つであり、ビジネスとテクノロジーを連携させることにより、グローバル企業ならびに政府機関のビジネスをサポートしている。世界中で約16,000名、日本で約1,000名におよぶプロフェッショナル・スタッフが、顧客企業の事業戦略立案、財務再構築、ビジネスモデルの再構築から業務変革、ITソリューション導入、システム・インテグレーション、組織と人の変革、システムの保守、業務の運用に至るまで、総合的に提供している。
    2002年、アンダーセンのビジネスコンサルティング部門との統合後、社名をKPMGコンサルティングからベリングポイントに変更した。

目次

1.はじめに

「物流(物的流通)」という概念が米国から日本に定着して約40年。その過程において、近年「ロジスティクス」への転換が必要と言われてきた。しかし、一般的な言葉の定義に対し、その考え方や取り組み方は、企業(経営者)によって大きく異なっているのが実態である。特に、現在のような経済状況において、経営者はどうしても販売部門の営業力強化、および売上の拡大に注力し、ロジスティクスはその後方支援であると認識している傾向が強い。そのため、例えば自社の物流コストが高いと問題提起する経営者はいても、物流コストの中で何のコストが高いのか、また、その原因が何であるのかを具体的に把握している経営者は少ない。即ち、ロジスティクスに関心はあるが、経営に直結した考え方では無く、現場担当者任せ、あるいは物流業者任せになっているのである。
本稿では、主にロジスティクスに関わる製造業、物流業に視点を当て、企業経営におけるロジスティクスの重要性を考えてみる。

2.社会環境とロジスティクス

現在、社会環境はデフレ不況下にあり、多くの企業は、経営方針・事業の方向性を見直している。具体的には、①選択と集中による事業の再編、②異業種への参入や事業の拡大、③グローバル化による海外への生産シフト、④流通チャネルの再編等である。
加えて、バブル期に定着した多頻度少量配送、短納期対応、JIT対応等の顧客サービスは、この厳しい企業環境下でも存続し、大きな経営負担となっており、ロジスティクスを取り巻く環境は大きく変化している。

3.ロジスティクス再構築のフレームワーク

経営再建のためのロジスティクス再構築策としては、①組織(人材)改革、②制度・業務プロセス改革、③情報システム改革の観点から対策を整理する必要がある。まず、組織改革においては、ロジスティクスを一元的に管理する組織の設置と人材の確保が必要である。特に、製造業においては、自社の物流を総合的に理解した組織・人材を有している企業が少なく、この機能補完が再構築実現に必要不可欠である。次に、制度・業務プロセスの改革としては、バブル期に構築された高コスト構造の仕組みを抜本的に見直す必要があり、同時に合理化された仕組みとCSの両立を支える情報システム(ITソリューション)の構築が必要である。そして最も重要なのは、以上の3点を連携して検討し、対策を講じることである。(図1参照)

4.ロジスティクス実現の基盤

ここでは、ロジスティクスに対する他のファクター(組織・在庫・コスト・情報化・グローバル化)との関連性について述べたい(図2参照)。これまで物流(あえてロジスティクスとは言わない)は、他のファクターと関連を持ちながらも、個別に対応してきた。
これは、物流がこれまで経営に対して受身的な立場を取ってきたことが主要因として挙げられる。そのため、それぞれのファクターの結果を受けているだけで、物流として独自のPDCAを実行・定着させている企業は極めて少ない状況である。これでは、物流が企業経営を支える機能として独立することはできない。では、物流はロジスティクスとして、どのように他のファクターと連携すれば良いのだろうか。それには、ロジスティクスを中心とした他のファクターとの総合的に網羅された均一な連携が必要である。
これこそが先述したフレームワーク(図1参照)を実現するための基盤と言えるのである。また、この体制を支え、具現化することがロジスティクスにおいて独自にPDCAを実現・定着し、企業経営に対して重要な機能を果たすことになるのである。

5.グローバル化の進展とロジスティクス

(1)グローバル化の現状と課題

近年のロジスティクスにおけるトレンドとしては、グローバル化が挙げられる。製造業(生産拠点)の海外移転が加速した結果、国内生産拠点の廃止・縮小による産業の空洞化が進んでいる。そのためロジスティクスとしては、国内を主体とした保管、あるいは搬送する物流量が少なくなる一方、日本から海外への輸出、海外から日本への輸入の物流量は、年々増加の傾向にある。例としては、近年、日本から中国に向けてのIT関連を主体とした原材料や部品の輸出が着実に増加しており、また逆に中国から日本へは、パソコンなどの製品輸入の増加が進んでいる。
この状況下におけるロジスティクスの課題は、①国内物流体系の改革(国内拠点間物流の減少と輸出入物流増加への対応)=物流ネットワークの再構築、②グローバル化に適応した品質・サービスの実現にあるだろう。また、製造業の中には、海外に生産拠点を移し、生産コストの削減を実現することができても、拠点間(国内-海外、国内-国内)の物流コストが上昇し、利益が上がらないという悪循環を生じている企業(特に低単価、不定形品を扱う企業)もあるようだ。そのような製造業の課題としては、物流業と連携した事業形態(実態)に合った物流ネットワークの再構築が急務であり、生産拠点だけでは無く、物流拠点、および仕組みも同時に再構築する必要がある。

(2)グローバル化における今後の対応

グローバル展開における生存競争に勝つため、先述したように製造業は、優秀な物流(3PL)業との連携を望んでいる。物流業もその要求に応えるため、海外に拠点を設け、日本から人材を派遣している。しかし、実際は海外の物流業と提携したサービスを行っているところが多く、自社独自でグローバルな品質維持・管理を行っている(常に物流のステータスが把握できている)物流業は少ない。そのため、既にグローバルで事業展開を行っているIT関連企業や自動車関連企業は、ロジスティクスに関して、国内と同一の品質を海外で実現できていない状況にある。これは、そもそも日本国内の物流における品質レベルの高いことが要因ではあるが、言葉の壁や物流業の人材・スキル不足、およびグローバルで仕組みを支えるITの不備が主たる要因である。
今後は、以上述べたことから、海外における物流品質を維持できる人材・スキルを育成し、グローバル化に対応したITを導入・活用できる製造業・物流業が台頭できることは容易に予想される。また、グローバル化に伴う国内物流の競争激化への対応(国内物量の減少、輸出入業務の増加)については、これによる物流業の再編(合併・統合・共同化)が加速すると考えられる。特に、輸出入業務の増加については、業態の改革を早急に実現するために、相互の強みを活かした事業統合が進むものと思われる。
一方、製造業においては、グローバル化に伴う「物流ネットワークの再構築」を進める必要がある。それには、まず自社における物流コストの把握(定義付け)とその検証を早急に行う必要がある。特に重要なのは、海外と国内の物流コストを明確な定義・基準の下でその状況と内容を整理し、バランスの取れた(利益を生み出す)体制(ネットワーク)を創出することである。

6.さいごに

現在、ロジスティクスの推進は、サプライチェーン・マネジメント(SCM)の中で検討されることが多い。しかし、その過程で問題なのは、物流部門をSCMプロジェクトの主要メンバーに加えない、あるいは生産・販売部門を中心にして進めた結果を受けて、後から参画させる企業(経営者)が多いことである。
この理由は先に述べたが、グローバル化の成功が益々重要となる事業環境において、企業(経営者)は、客観的に自社を分析し、最適な手段を選択・構築・実現する必要がある。そのためには、コンサルティング会社などの有効活用を1つの手段としてお勧めしたい。

以上



(C)2003 Hidenori Masui & Sakata Warehouse, Inc.

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