第266号物流拠点を考える(2013年4月23日発行)
執筆者 | 髙野 潔 (有限会社KRS物流システム研究所 取締役社長) |
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目次
- 1.はじめに。
- 2.物流ネットワークは、物流拠点の基本です。
- 3.物流拠点の集約化
- 4.物流拠点は、物流活動の基本です。
- 5.物流拠点づくりの基本条件
- 6.物流戦略拠点の物流システム(機能・仕組み)づくり
- 7.最後に・・・。
1.はじめに。
半導体(LSI)は産業の米、物流は産業の血液と言われています。
その血液で「必要な時に、必要な量を、必要な場所」に正確にお届けする使命を持っているのが物流活動です。
物流拠点の存在は、経営力、物流力の向上に寄与することが第一条件です。
その物流拠点は、企業内外の環境条件によってその位置付けや要件が異なるために個々の用途に最適なシステムを創り出されなければなりません。
さらに環境変化に対応させ効率を追求すべく適時リニューアルされなければなりません。
業種業態で物流拠点の数、立地する場所、納品・配送リードタイム、在庫する商品のアイテム数などで、物流拠点の規模やサービスレベルが決まります。
拠点の数と立地によって調達物流コストと顧客への販売物流コストが決まってきます。
従って、サービスレベルとコストいう物流の主要な要素が物流拠点によって大きく影響を受けてきます。
2.物流ネットワークは、物流拠点の基本です。
工場~物流拠点~納品先(顧客)」を結んだものが「物流ネットワーク」です。
物流拠点の数が多くなればなるほど物流ネットワークが複雑になります。
物流の効率化には、物流ネットワークの簡素化が必須条件と考えます。
現在、日本においても物流ネットワークを簡素化(集約)し、商品の流れを太く単純なものにする傾向にあります。
これまでは、「効率性とサービス性」に基づいた物流管理の視点から構成されていた物流ネットワークと拠点がマネジメントの視点によって「企業戦略性」と「市場適合性」へと目的が変わってきたためと思われます。
その物流ネットワークの構造は、商品が市場に向かって流れるルート、つまり物流チャネルとルート毎の物流拠点の配置(場所設定)で決まってくるといわれ、日本の大手企業が変革のためにダイナミックにネットワークと物流拠点を積極的に見直しています。
この物流ネットワークの中で色々な物流活動が展開し、物流拠点の集約化をおこないながら、物流の変革を実践することで期待する成果を上げている企業が多く見受けられます。
3.物流拠点の集約化
物流業界では、全国に分散している物流拠点を統廃合し、最小限に集約することを盛んに行っています。
物流拠点の集約化の狙いは物流システム(機能・仕組み)の付加価値の向上です。
物流コストの低減、在庫を削減すること、そして、顧客への納期(サービス)、品質を守ることが大前提にあります。
物流拠点の集約化を実現することで物流効率化の大きな潜在効果を生み出すことを狙いとしています。
ここでしなければならないことは、拠点の集約化だけでなく、同時に物流システム(機能・仕組み)と生・配・販と連携すること、全体をより良いものに変えることが絶対条件(全体最適)として目標を立てることです。
即ち、コスト低減、品質向上、サービス性向上を追求しながら無駄を無くすことです。
物流拠点を集約化することで、複数拠点のそれぞれが必要としている人的工数の効率的な活用、在庫の無駄の排除、さらに倉庫施設、物流設備・物流機器、コンピューター資源の重複した投資、維持管理費などを省力化することが可能になります。
さらにローコスト(省力)型で誰でもオペレーション(運用)できる仕組み作りに取り組むことが肝要です。
工場、または仕入先から物流拠点を経由して供給先、店舗などへの直送化によって物流拠点に関わる作業コスト、在庫コスト(適材適所の在庫配置、直送方式の導入)油配送コストを最小限にすることであります。
集約成果を出すための考え方として、物流拠点(ネットワーク)の集約化を実践する際に、実務的な物流改善・改革が伴わなければ効果が得られないのは当然であります。
在庫は、物流拠点を集約化しただけでは減りません。
集約化された新しい物流拠点に適正在庫を持つ仕組み(欠品や過剰在庫という物流最大の無駄を発生させない)とそれを確実にマネジメントしなければ効果が得られないのです。
物流拠点の統合・集約で物流の変革の加速度を増すことを期待したいと思います。
4.物流拠点は、物流活動の基本です。
企業の物流活動の基本は物流拠点にあると考えます。
各企業は、物流拠点を集約、商品の流れを太く単純なものにする傾向にあります。
これまでは、「効率性とサービス性」に基づいた物流管理の視点から構成されていた物流拠点がマネジメントの視点によって「企業戦略性」と「市場適合性」へと目的が変わってきたためと思われます。
その物流拠点の構造と機能は、商品が市場に向かって流れるルート、物流チャネルとルート毎の物流拠点の配置(場所の設定)で決まってくるといわれ、日本の大手企業が変革を活発に行っています。
この物流ネットワークの中で物流活動が展開され、物流拠点の集約化をおこないながら物流の変革(改善・改革)を実践することで期待する成果を上げようとしています。
物流拠点(物流センター)の存在は経営力、物流力の向上への寄与が第一と考えます。
物流拠点が複数ヶ所に点在している場合、集約化を実現することで物流効率化の大きな潜在効果(能力)を生み出すことができます。
ここでしなければならないことは、拠点の集約化だけを実施するのではなく、同時に物流機能(仕組み)と連携する生産や仕入れ、販売、etcをより良いものに変えること、SCLを核にした総合力が発揮できる物流拠点づくりが重要です。
5.物流拠点づくりの基本条件
物流センターの必要性は、2つに集約できると考えます。
1つは納期を守るため、もう1つは、物流コストを下げるためです。
そこで、物流拠点(物流センター)づくりには、倉庫立地、レイアウト、マテハン、情報システム、物流コストの削減、物流品質とサービス性の向上などを意識した拠点づくりが重要になります。 先ず、拠点立地ですが、最適な立地を選択したいものです。
それは、輸・配送先の顧客をカバーできるエリア、及び顧客がどのように分布しているかを把握することが最大の要素で、顧客への納期と物流コスト(特にコストウェートの高い輸配送)に関わってきます。
拠点から圏内配送が主体であれば、主要顧客の近隣や商圏の中心地に立地するのが望ましいと言われています。
さらに輸・配送の環境要素から考えますと鉄道貨物駅、港湾、空港、トラックターミナル、高速インター、工場などに近接していれば、さらに利点が大きくなります。
また24時間稼働が可能か、トラックの進入路や待機場所などで近隣とのトラブルが生じない環境にあるかどうかも重要な要素です。
用地の法規制もきちんと確認しておきたいものです。
用途地域の指定、建蔽率、容積率、拠点用地の道路付け&道路幅、便利な場所を探し当てても土地利用条件に制約が多い日本では、最適な物流拠点を選定しても、そこに思うような物流施設を建設することが難しいケースもあります。
そして、物流拠点の運用には、物流施設(業種・業態)を意識した人員の確保(パート・アルバイトなど)が容易な立地であること、安全・安心な場所の選択も重要です。
交通災害や騒音災害を未然に防ぐ環境を選択することが、まず望まれます。
通行人や自転車の往来が頻繁か、近隣に学校や病院がないか、住宅密集地に近くないか拾い挙げればきりがありません。慎重に取り組みたいものです。
6.物流戦略拠点の物流システム(機能・仕組み)づくり
物流戦略拠点の主な機能は、物流全体の最適化に向けて物流情報システムを活用した現場業務の見える化、物流業務プロセスの効率化、品質向上、マネジメントにおける継続的な改善活動を物流情報システムで支援する物流拠点づくりが重要です。
例えば・・・経営の見える化(経営評価指標)を考えて見ますと物流拠点の日々・月次収支試算、拠点の見える化(物流評価指標)などが必要と考えます。
物流評価指標は、在庫回転率、即納率(&欠品率)、顧客別物流コスト、そして作業の見える化(実務の評価指標)などは、実務マネジメントのポイントで、工程毎の作業生産性(人時生産性)、工程毎の作業精度・品質、さらに作業実績の収集、入出荷作業進捗・実績・工程毎の庫内作業進捗・実績、車両運行実績、工程毎の作業ミス率、etcなどをタイムリーに把握できる物流システム(機能・仕組み)づくりが物流マネジメントの力量の向上に欠かせないものと考えます。
7.最後に・・・。
物流センターは、物流の拠点ですが倉庫とは異なり、物流の目的のために顧客のオーダーに従い、商品を「正確に、安く、顧客の要望(納期)」で届けることが必須です。
そこで、物流拠点の集約や拠点内の業務改善などでのコスト削減は、限られた対応しかできないのが実態にあります。
一般的な企業物流コストの内訳は、約60%を輸・配送コスト、約30%を物流拠点コスト、残り約10%を管理コストが占めており、物流拠点内で改善を行ったとしても、その30%の中での削減効果という限界が生じてきます。
特に昨今の経済状況に当たっては物流コストの削減が企業経営の命題であり、実際に改善活動に積極的に取り組んでいるため、その余地は少なくなってきています。
すなわち、コスト構造が高い輸配送を効率化&コスト削減できるかというところに焦点を当てて考えますと、物流拠点の再配置の重要性がご理解頂けると思います。
そこで、物流拠点を再配置する場合、リンク(輸配送)とノード(拠点)の効率化を融合した納期が守れる範囲の配送エリア毎に拠点を設置(納期から逆算して決める。)、輸・配送コストを意識することに力点を置くべきと考えます。
以上
(C)Kiyoshi Takano & Sakata Warehouse, Inc.