第427号 次世代物流(100年に一度の変革)を探る(考える)(前編)(2020年1月9日発行)
執筆者 | 髙野 潔 (有限会社KRS物流システム研究所 取締役社長) |
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執筆者略歴 ▼
目次
1.はじめに
物流業界に様々な変革の波が押し寄せてきています。
人口減少・高齢化問題、ネット通販の拡大、ドライバー不足、人件費問題、ドローンの利用、宅配ラストワンマイル問題・再配達など物流に新たなイノベーションを起こす 「ロジスティクス4.0」の登場が始まっています。
これは、ロジスティクス分野において社会環境を背景に拠点内に自動倉庫、自動ピッキングシステム、パワーアシストスーツ、スマートパレット(RFIDなどで在庫管理、位置管理の容易化)などを活用、主にIOTでモノをインターネットに接続、自動制御、遠隔制御ができるようにして、これまでの人手作業を自動化、効率化や働き方改革が進展、人手に頼らない「スマート物流」に変革する動きが出てきています。
さらに、車両運行管理システム、トラック隊列システム、繋がるトラック、無人配送システム(自動運転)などを見据えた技術革新がドンドン進んでいます。
トヨタ自動車の社長が「改革の指針は微調整改善ではなく建設的な破壊だ」「行動の指針は前例踏襲ではなくスピードと前例無視」と関係企業に訴えています。
物流業界も改善でなく100年に一度の次世代物流の変革をドンドン進めたいものです。
2.日本の人口推移
人口減少に対する特効薬は見当たらず、省人化、効率化、自動化を進めていくしかないとの判断から大手企業を中心に自動化の波は、ますます加速していくと思われます。
ソフトバンクの孫正義社長は、日本経済の復活は生産性の向上にあり、その鍵を握っているのがAI(人工知能)を搭載したロボットだそうです。
具体的には、1日24時間働けるロボットを3,000万台投入できれば、現在の製造業の労働人口1,000万人と合わせて、1億人分の労働力を確保できるとしています。
孫氏は、ロボットの導入により、労働工数を確保して「日本はもう一度競争力を取り戻せる」と強調しています。
物流分野に於いても「自動倉庫システム」を中心に自律走行型ロボットは人の代替、自動追従型ロボットは作業補助の役割として現場作業の省人化や効率化で物流業界全体のイノベーション(技術革新)が進んで労働力不足の解消の一助にしたいものです。
3.ネット通販で物流業と小売業の変革を期待。
アメリカでは、Amazonなどのネット通販が拡大し、インフレ率低下の遠因とも言われ、物流業と小売業の大変革が生まれています。
日本でのAmazonは通販と物流の急速な拡大に伴い、フルフィルメント・センターという巨大な物流拠点を整備し、取り扱い物量の増加で低価格販売などを可能にし、お客様によりよいサービスを提供するために常に改善活動や5Sに取り組んでいるとのことです。
高齢化や都市集中化は、日本のみならず、韓国、中国、欧米などの先進国でも深刻化しつつあり、高齢化に加えeコマースは欧米をはじめ中国でも急拡大、個人への宅配量が増加し、円滑な配達が大きな課題となっているそうです。
物量の増加と人件費の高騰、コストの低減・効率化(生産性の向上)は各国にとっても喫緊の課題のようです。
国内のネット通販市場は2017年に17兆円、小売市場全体の10%を超え、既存の小売業にとっても無視できない拡大ぶりです。
小売業でネット通販(EC)を展開する理由の1つが「販路拡大」です。
特に、都市部から外れたところに店舗を構えている場合、集客は一定数が頭打ちになる問題があり、ネット通販を展開することで販売エリアを全国に拡大できます。インターネットにアクセスするために知識は関係ないので北は北海道、南は沖縄まであらゆる地域が販売エリアです。
最近「アマゾンフレッシュ」で生鮮食料品の取り扱いも開始しており、今後も物流システムと実務の改善でネット通販の拡大が続きそうです。
都市部への人口集中と地方との利便性の格差は益々広がり、日常品の買い物難民と言われる層のネット通販の利用率の上昇に拍車をかけていくと思われます。
私が、ほぼ30年前から興味を持っていたのが生協(生活協同組合)事業です。
九州の某運輸業が生協事業の3PL(アウトソーシング)に挑戦する時にお手伝いした縁で身近な食料品、日用品、日常品を主体に毎週、定期的に前回の注文品を配達すると同時に次回の注文を受ける方式で宅配を行う優れたシステムの生協事業を知りました。
これからは、ネット通販が生協事業&コンビニ事業の良いとこ取りで同一商圏(地域)を網羅するネット通販で弱者(買物難民)救済の特効薬になるのではと期待しています。
4.ロジスティクス1.0~4.0時代の技術革新の変遷
物流は1800年代後半(ロジスティクス1.0)から「輸送の機械化」と言われ、当初は大量・長距離輸送の主役は、船舶が中心でしたが、鉄道網の整備やトラックの実用化で陸上での輸送力が格段にアップし、大量輸送時代の幕開けを迎えました。
1960年代(ロジスティクス2.0)は、自動倉庫や自動搬送台車、自動仕分け装置と言った物流機械と情報システムの融合で大量の物流量を短時間で処理できる「荷役の自動化」の時代になり、さらに、コンテナ船の普及で港湾荷役の機械化が大きく進みました。
1980年代(ロジスティクス3.0)は、ITシステムの普及が本格的に始まり、業務を効率化するためのWMS(倉庫管理システム)などの広がりで「物流管理のシステム化」の時代が到来、在庫や配車などの物流管理の効率化と物流インフラが進んだ時代でした。
2010年代後半(ロジスティクス4.0)は、「自動化(ロボット化)、効率化」の時代で新たなイノベーション(変革)を起こす「ロジスティクス4.0」が注目されはじめています。
これに伴い産業構造や就業構造が劇的に変わる可能性があると言われています。
その変革の方向性は「省人化、効率化」と「働き方改革」を連動させながら全ての物流機能を向上させ、物流コストを大きく下げることが期待されています。
さらに、少子化が進み人手不足が加速、物流業界においてもAI(人工知能)、IOT(モノのインターネット)、ビッグデータ(全てに付随して発生する大量データ)、ロボット化(自動化)などで、これからの物流の「運ぶ」「保管する」「梱包する」「手配する」といった基本オペレーションを含めた物流ソリューションの競争が始まろうとしています。
将来的には、物流現場の作業が機械装置(自動化)に置き換わる時代が来ると言われ、自動化(省人化)の将来性については、部分的な自動運転から本格的な自動運転の実現とパワードスーツなどの活用で特別な経験やスキルを必要とせず、体力、長時間労働などを必要とする自動化(省人化)が進むと予想されています。
結果として、物流現場の作業環境の改善とコストパフォーマンスは、着実に段階的に向上し、将来的には、FA(コンピュータの制御技術による工場の自動化)時代の再来が物流部門にも訪れるのではないかと言われ、期待しています。
5.次世代物流(ロジスティクス4.0時代)の潮流
物流業界に過去経験したことのない大きな変革の波が押し寄せてきています。
人手不足と人件費の高騰、働き方改革による総労働時間の短縮、残業規制などの克服、作業の自動化・効率化、さらに、ネット通販の拡大・宅配便の増加とドライバー不足、自動運転、ダブル連結トラック、輸送能力の向上、中継輸送などを見据えた技術革新の大きな時代の変革にチャレンジしていくべき方向性が定められてきています。
そして、イノベーション(技術革新)の進化で作業の自動化・省力化を担う物流ロボット(自動化)、AGV(無人搬送台車) 物流向けパワーアシストスーツ、物流向けドローン、新しいテクノロジーの導入、ドローンの利用や当日宅配などに様々な課題と期待があり、これからの物流業界の100年に一度と言われる変革に注目していきたいと思います。
物流の自動化・省力化は、諸説がありますが、大手企業のこれからは、物流拠点内の自動化・ロボット化で一気通貫型の物流へ、さらに企業間の物流は、中堅・中小企業もサプライチェーン指向へと変革していくと言われています。
中堅・中小企業にとっては、負担軽減を視野に設備と情報の有機的な結合で「単純作業、長時間労働など」の対応、働き方改革に「自動化・半自動化」を視野に取り組むのも選択肢の一つになるのではないかと思われます。
前述の如く、将来的には、物流部門にもFA時代の再来が訪れることを期待しています。
これからは、物流ビジネスにおける戦略的な投資の重要性が高まると言われています。
脱労働集約、生産性の追求で機械やシステムへの大胆な投資が必要で企業は、経済活動が主たる使命であり、省力化、自動化ブームに踊らされず、投資対効果を勘案しながら積極的に時代にマッチした効率的な物流技術を導入していきたいものです。
日本の物流現場では深刻な人手不足が顕著に現れてきており、あちこちに「動脈硬化」を起こしそうな社会環境が訪れようとしています。
解決策として新しい法律で外国人労働者の受け入れが始まりました。
未知数の分野が沢山ありそうです。
様々なタイプの自動化・半自動化技術、人工知能(AI)が 現場に投入されつつありますがドライバーの高齢化と人手不足問題も深刻です。
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