第187号INDITEX ZARA(2010年1月7日発行)
執筆者 | 鈴木 準 サン物流開発 代表 |
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目次
- 1.会社概要
- 2.生い立ち
- 3.インディテックスの各種ブランド
- 4.インディティックスのデザインセンター
- 5.インディテックスの高速サプライチェーン
- 6. INDITEXの物流センター
- 7.出荷
- 8.まとめ
創 業 1974年 本 社 A Coruna Spain(スペイン、ラ・コルニャ) 年 商 104億1000万ユーロ(2008) 所 得 16億900万ユーロ(2008) 純収入 12億5300万ユーロ(2008) 従業員 89,110人(2008) |
1.会社概要
世界のファッション・アパレルのリーディングカンパニー
ZARAはスペインでは濁らずに”サラ”と発音する。日本ではザラが社名で、本体のように思われているが、実際はINDITEXという会社の一つの部門(店・ブランド)である。GAP(アメリカ), Benetton(イタリー), H & M(スゥーデン), UNIQLO(日本)と並ぶ世界のファッション・アパレルのリーディングカンパニーである。面白いことに、ユニクロは山口県宇部市、ベネトンはイタリーのトレビーゾ、ZARAはスペインのラ・コルニアと、地方都市で創業している。そして、SPA(Specialty Store retailer of Private Label製造小売)、グローバル化と共通点が多い。
INDITEXとは、Industrias de Diseno Textilの略で、直訳すれば「テキスタイル・デザイン産業」という意味である。インディテックスはスペイン一の大きい会社で世界の最も大きいファッショングループの一つである。
それはテキスタイル・デザイン、生産、および流通活動に対処する、およそ100の会社で作られている。アマンシオ・オルテガ・ガオナ(Amancio Ortega Gaona)氏はINDITEXの創設者であり現会長である。オルテガ会長はスペインで最も金持ちの男性と言われている。
インディテックス(Inditex)は世界中に4,270の店を持ち複数の店舗グループを経営している。それは Zara, Massimo Dutti, Bershka, Oysho, Pull and Bear, Zara Home, Kiddy’s Class (Skhuaban), Uterq?e and Stradivariusなどである。 グループ自体は、いわゆるSPA(製造小売り)で、ほとんどすべてを自らデザインして製造する。90%は自社工場で生産し、デザインは外注が50%と聞いている。そして、新しいデザインは1週間に二度ZARAの店に供給される。品切れは気にしない。次から次へ新製品を投入する。客は、それを楽しみにして買いに来る。
2.生い立ち
創業者である、現会長アマンシオ・オルテガ・ガイナ氏はスペインの最北西部の町ラ・コルニャに下着の縫製会社を設立した。そして、幸先良く、ドイツの卸売業者から下着の大量注文を受けたが、製品ができたころに、キャンセルされた。そこで、彼は切羽詰まって、工場の近くに小売店を開き、製造直販を開始した。今のインディテックスの原点である”垂直統合”SPAが自然発生的にできてしまった。
オルテガが設立したグルボ・インディティックスの第一号店がZARAである。
今アパレル業界を席巻している”Fast”という流行語の原点はZARAだと言っても良いだろう。
Inditex Global Presenceの最初のザーラ店は1975年にスペインのA Corunaに開店した。現在、世界ではニューヨークの五番街、パリのシャンゼリゼ、イスタンブール及びロンドンのリージェント通り、フランクフルトのザイル、上海の南京の西路、東京の渋谷、新宿、銀座、ソウルの明洞にある。
2008年に、InditexはUterqueという新しいアクセサリーブランドを始めた。この最高級品店はマドリード(Serrano通り)と、バルセロナ(Passeig deグラシア)とラコルニャにある。
2008年9月22日に、INDITEXは東京の銀座に世界で4,000番目の店をオープンした。インディテックス社は、銀座店は世界一重要な商店街の1つに考えている。INDETEX本部はArteixoに所在している。それはスペインの北西ガリチアのラコルニア州の村にある。さらに、INDITEXの、別の大きい工場はエルチェ(スペインの地中海沿岸におけるアリカンテの州の有名な町)で靴のデザイン、生産、および物流の拠点がある。
3.インディテックスの各種ブランド
(1)ZARA(ザーラ)
最高級品チェーンである。多品種のデザインを展開している。一つのカテゴリー「ジャーナル」でも多くの異なったスタイルの品揃えをしている。マルなパーティ用のファッションのドレスとスーツで、女性、男性及び子供のためのファッションで、それは非常に都市型のスタイルで若者のファッションに焦点を合わせている。主として十代と思春期直前の子少女と少年をターゲットにしている。
(2)Bershka
ベルシュカは少女のためにファッションで、最近デリバリーし始めた少年向けファッションです。
(3)Pull & Bear
ほとんどの都市では展開していないが、それは若もののファッションです。
(4)Massimo Dutti
ハイライトは、より上品で、古典的で、ジャーナルと正装のために研究されたデザインです。それは、グループの店で価格で差別化した高級ファッションです。女性、男性、および最近、子供のためのファッション。
(5)Stradivarius(ストラディバリウス)
若い女性をターゲットにしています。
(6)Oysho
これは、ランジェリーと女性の下着(しかし、また、パジャマ、アクセサリー、夏の水着、およびその他を含んでいる)は幼女と赤ん坊のための商品である。
(7)Zara Home(ザーラホーム)
インテリア、家庭用品、アクセサリー、台所用品、ザーラホームKids(子供のための)のための用品。
(8)Uterque
Inditexの最新のブランド。靴、ハンドバッグ、宝石類、サングラスを含む高級アクセサリー。
4.インディティックスのデザインセンター
(1)デザイン
ZARAの商品同様に、本社のデザインセンターは斬新なデザインである。内外装は純白で、大きいガラスの窓がある。柱と柱のスパンは広く、壁や間仕切りは少なく、ジャンボジェット機の格納庫のようである。社員の出入りは自由である。
そして、デザイナーと他の部門はいつでも話ができる。ここには23室の会議室があるが、デザイナー達は仕切りのない部屋で立ち話で会議している。
製造はベーシックなものは外注である。量産品はアジア、インド、カンボジアで製造する。流行の先端をゆくファッション品はスペイン国内で縫製する。1,400の店には情報用のPDA(ポータブル端末)があり、販売情報が本部に送られてくる。また、POSからも情報を取っているが、人と人との対話による情報を大切にし、時間をかけている。デザイン、カラーの決定までに数十回も会議する。
1年間に3万のモデルが作り出される。デザイナーにはスターは作らない方針だ。試作ができると試着し、数人の関係者で議論する。モデルはマネキン人形でなく、生の人間である。グループごとに集まり立って議論する光景をよく見かけた。机や椅子は質素で工場のようである。デザイナー室の什器・家具はまるでイケアの組み立て家具のようだ。
(2)型紙作り
デザインができると、コンピュータで型紙を作り、次に、コンピューターで布地の型取りをする。一定の幅の布地を如何に歩留り良く取るかが重要な仕事である。
しかし、コンピューターより人間の方が歩留まりが高いので、人がPCを使って作業するといった方が良い。花柄は型取りが難しく、無駄が多く出るそうだ。
(3)裁断
裁断は自動裁断機で行う。裁断の作業者はマッパーという。 生地は在庫が800万平方米あり、自動倉庫に保管されている。生地は流行に対応して染色できるように無地で保管するそうだ。巻かれた反物は3mくらいにカットされ、10㎝位に重ねまとめて切断する。生地を載せるテーブルには細かい孔がたくさん空いていて、空気を吹き出し、生地を動きやすくしている。裁断機は自動でカッターを研いでいる。
(4)その他
①縫製工場は2直、8-16、14-22時である。本部の近くに11工場ある。一部モロッコで縫製している。
②商品は女性用60%、男性と子供で40%。
(5)モデル店舗
本社内にはモデル店舗があり、実際の店と同じ什器、同じ商品を陳列している。社員教育にも使用する。
5.インディテックスの高速サプライチェーン
商品はラ・コルニャにある中央物流センターから世界の店に向けて一晩で出荷される。トラックに積まれた箱詰めの商品とハンガー付き商品は最寄りの飛行場に運びこまれるか、直接ヨーロッパの各店に配送される。トラック便と航空便が週2回の注文に合わせて、定期運行されている。ヨーロッパの店舗は24時間以内。アメリカ48時間、日本は72時間で配送される。インディテックスは商品開発から販売までリズムに乗って進行している。物流も同じである。
オルテガ会長の経営理念の一つに「片手は工場に、もう一つの手は顧客に」がある。デザイン・生地・副資材・調達・縫製・物流。顧客の手に渡るまで、自社管理しなければならない。ということである。アパレル小売業者は一般に工場を持たない。しかし、ZARAは90%を自社工場または、自社の完全支配下の工場で生産し、アウトソーシングはわずか10%である。垂直統合・高速サプライチェーンが利率で同業他社に大きく水を空けている。
完成品はすべてラコルニャの中央物流センターに集められる。1週間に80万点に上る。大部分はハンガーに掛けた商品の一時置き場である。操業時間も他の部門と共通のリズムで運営されている。即ち、週2回のリズムに合わせている。週4日間は3シフト24時間、残り3日間は生産・販売に合わせて1または2シフトである。通常千人の従業員が8時間3交代で従事し、繁忙期には臨時要員400人を採用している。2003年にはマドリードの北東に位置するサラゴサに12万㎡の物流センターを増設した。インディテックスの経営方針は余裕を持つことで、いわゆるリズムを崩さないための増設である。実際はその後の成長で、増設しなければ商品供給は異常を来したと思う。工場も物流センターも稼働率を低めに抑えるのが同社のポリシーである。製造後、すぐ販売することにより、スループットタイムを短縮し、資金回転を効率化し、業績を向上する。
6.INDITEXの物流センター
(1)スペイン・ラコルニャから銀座へ”直流”
物流センターはアラゴサ、レオン、マドリード、ラ・コルニアの4か所にある。ラ・コルニアの物流センターは5階建て50万㎡の広さである。物流機器はハンガー用保管レールとハンガーソーター、それにフラットウエア(シャツ・セーター)用のクリスプラント製ダブルソーターである。機械は10年も経っているのではないかと思う古さである。スペースの80%はハンガーものに使われている。レールの全長は260Km。処理能力は1時間6万着、1週間360万着を出荷する。2009年は不況のため、4月から午前の作業は中止している。出荷は週2回である。ここのセンター長は40代の女性である。
日本では衣料スーパー「しまむら」が”直流”という物流システムを採用しているが、この源流はイタリーのベネトンだと聞いている。インディティックスは日本にもこの方法で輸送している。この”直流”方式による効果は、
- 生産から販売までの時間短縮
- 在庫削減による、在庫回転の向上
- トータルでの物流費削減
- 市場の変化に迅速に対応
などである。
①日本のアパレルの従来の輸送方式
②INDITEX(産地直送)
(2)ハンガーのオペレーション
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①入荷
所謂、アウターと呼ばれるハンガー物の多いのに、驚かされた。保管のために、アパレルのハンガーを釣るレールの全長は260Kmある。ハンガーの移動は人が手で押す。自動の移動には専用の搬送機がある。トロリーを搬送機のレールに取り付け、チェーンの駆動で移動する。
工場からはハンガー専用のトレーラーで運ばれて来る。荷受場には伸縮する搬送機があり、トラックまで手で引っ張ってゆく。トラック内の固定レールからハンガーをまとめて取り、トロリーに掛けて、荷降ろしをする。このトロリーに付いているペグセッターという行き先設定器で、搬送先のコードを設定する。ZARAで見たものはマイクロスイッチを使ったペグセッターである。設定ボタンを上下して行き先のコードを設定する。トロリーはチェーンで運ばれ設定した保管用レールに運ばれる。保管中は、トロリーは使わない。トロリーからハンガーに、自動的に移し替える装置もあるが、ここにはないと思った。ラコルニアのDCが設立されたのは1995年で、制御系はメカ的である。
②仕上げ
入荷した商品にプレスする。アイロン台はプレスする部位によって、異なるコンピュータで管理されており、IDのバーコードをハンディスキャナーでスキャンすると。アイロン台が表示され、温度などが自動設定される。仕上げの終わったハンガーはポリセロで自動包装される。
③ピッキング
出荷指示が来ると、保管レールからアイテム単位でピッキングし、トロリーに積み替える。トロリーのペグセッテッターでハンガー仕分け機を設定し、トロリーを送り出し、ハンガー自動仕分機のインダクションレールにハンガーを載せ換える。ハンガーは自動的に仕分け機に送り込み、店別に仕分けする。
(3)フラットウエアのオペレーション
フラットウエアとはシャツやセーターのように畳んでポリセロ袋に入れた商品である。倉庫内には保管棚は見当たらなかった。多分、在庫がないのだろう。フラットウエアのピッキングには自動仕分け機が使われている。自動仕分機はデンマークのコーサンクリスプラント製のダブルトレイソーターS-2000である。
自動仕分機のメカニズムはIHI(SIハンドリング)のガルゥインソータに似ている。鳥の翼の両側に商品を載せる方式で、1台で2倍の能力が出せる。メーカーはデンマークのクリスプラント、日本では住友重機が代理店であった。
自動仕分機は2台ある。最初にバッチを作り、一次ピッキングをして、自動仕分機で仕分けする。1台の能力は1時間 45,500枚、2台で1時間10万枚という世界最大の能力である。導入は1995年。この機械が優れている点は仕分け後、段ボールに詰める梱包作業の省人化です。シュートに分けられた商品は自動的に箱詰めされ。満杯になると梱包(バンディング)ラインに自動搬送されることです。そして、次の空箱が自動供給されます。そのあと荷札が自動添付され、出荷方面別に仕分けられる。
7.出荷
ハンガーの輸送にはハンガー専用トラック、航空コンテナがある。専用トラックには自動積み込み装置がある。フラットウエアもハンガーウエアも週2回の発送で、ラコルニアのDCで世界の店毎にアソートし、発送される。
8.まとめ
物流システムではハンガーシステムは古いと思った。フラットウエアのダブルソーターのシステムはワールドクラスである。大きいだけで新味はないがROIは高いと思った。しかし、巨大さには驚かされる。
現地から日本の店舗に直送する「直流」はベネトンが先行していたが、思い切りのよいシステムである。これから日本でも中国製品を中心に普及するだろう。スペインは人件費が安いからだと思うが、これからの日本は外注の取り込みによる高速サプライチェーンを検討する必要がある。
以上
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