ロジスティクス・レビュー

第44号大学と企業における物流教育体系の研究(2003年11月25日発行)

執筆者 三木 楯彦
大阪産業大学 経営学部 流通学科 教授
    執筆者略歴 ▼

  • 学位
    • ニューヨーク州立大学 理学修士(MSIE,1970年),
    • 京都大学・工学博士(1984年)
    研究経歴
    • 1985年4月 神戸商船大学 商船学部 教授
    • 1991年4月 神戸商船大学 附属船貨輸送研究施設長(4年間、兼務)
    • 1998年4月 大阪産業大学 経営学部 教授
    • 2000年4月 大阪産業大学 経営学部長(2年間、兼務)
    • 2003年10月~ 現在に至る
    研究成果
    • 研究論文数 60編(和文[国内誌]52編、欧文[国際誌]8編)、
    • 著書数 11編
    主著
    • 【1】 三木楯彦、「改訂・物流システムの構築」、白桃書房刊、1990.4.
    • 【2】 共著、「基本ロジスティクス用語辞典(第2版)」、日本ロジスティクスシステム協会、白桃書房、2001.2.
    • 【3】 三木楯彦、「効率的物流経営のための12章(改訂版)」、白桃書房刊、2001.3.

目次

序論

  この研究は、大学と企業における物流教育のカリキュラムとシラバスの調査に基づき、物流教育の一体系を提案するものである。研究方法は、まず「大学における日米物流のカリキュラム調査報告書(1990.2.7、日本物流学会)」を基として報告書に含まれているアメリカの大学を対象に物流のカリキュラムとシラバスを10年ぶりに調査した。調査方法は、各アメリカ大学のインターネットのホームページからの情報抽出と、種々の刊行物のほか、雑誌や新聞等を参考にした。

  要点は過去10年にアメリカの大学における物流教育が“どのように変化したのか”と “その変化は何を語っているのか”、“物流教育の重要性がどのように認められているか”の調査である。それによって“今後、物流動向はどのように進むか”と言う未来予測の試みとともに、「大学における物流カリキュラム」構想を提案する。

アメリカの大学における物流教育の動向を探るために、1990年のアメリカ大学の教育カリキュラムとシラバスを調査分析した「大学における日米物流のカリキュラム調査報告書」を下敷きに、2001年のアメリカ大学の教育カリキュラムとシラバスを調査・比較した。以下は、アメリカの物流教育に関する三つの分析である。

第2章.物流教育を行っているアメリカの大学

[1]アメリカの大学でロジスティクスに関連した専攻のある大学は全体で74大学である。各大学の物流に関連した課程及び専攻等は次の通りである。

[2]教科 vs.. 国・地域 vs.. 年度
  1990年度はアメリカの大学を対象として、2001年度はアメリカの大学と企業、日本の企業を対象としてロジスティクス教育のカリキュラムとシラバスを調査した。内容は、アメリカ大学における物流教育の教科とアメリカと、日本の企業における物流教育の教科である。アメリカの大学では1990年と2001年の教科は大きくは変っていないが、分野別にみると学部の専攻数はほぼ同一(103%)で、修士課程は増えている(130%)。アメリカ大学の教科 vs.年度で見ればロジスティクス教科の中で1990年度にあったが2001年度には無くなっているもの、1990年度には無かったものが2001年度に加えられているもの、1990年にも2001年にもあるが内容に多少の変化が見られるものに類型化される。

  教育プログラムは1990年度と2001年度で学部と大学院ともに余り変っていない。個別に見れば、ジョージア大学マーケティング学部のロジスティクス関連教科は、調査対象のアメリカ10大学で唯一1990年度にあった物流教育が2001年度に無くなっている。学部は同一であるが、大学院の場合Transportation and LogisticsからTransportationへ、さらにはLogisticsに変更され、教科もTransportation and LogisticsやPhysical DistributionからLogisticsに変更がある。アイオワ州立大学経営管理学部のロジスティクスもほぼ同様である。インディアナ大学経営学部のロジスティクス関連教科では、カテゴリは学部の場合Business Logistics ManagementがMarketing and Distribution Managementに名称が変わり、大学院の場合Business Logistics ManagementからInformation Systems (MSIS)に学科が変った。テネシー大学経営学部のロジスティクス関連学科では教科も余り変っていない。

[3]物流教育体系の変化と展望
  アメリカ大学の教科数の年度に応じた変化をみると、学部及び博士課程でほぼ同数であるが、修士課程が増えた(約30%)。ロジスティクス専攻として独立した形を採るのが多いことからみると、ロジスティクス教育が専門分野として深化してきたことを物語っている。ロジスティクスが研究できる専攻名を並べてみるとその一番目がマーケティング、次いでロジスティクス、経営学、輸送経済Transportation、Economicsなどで、物流教育が行われる大学の範囲が拡大している。

  一方で、1990年代に無かった教科の登場が注目される。新分野としてSupply Chain Management(以下でSCMと略す)やe-Commerce(電子商取引)、Information Technology(IT)の登場はロジスティクスという分野の変化とその教育の変貌を加速している。

[4]大学における物流一貫教育
  アメリカの大学におけるロジスティクス教育の教科とシラバスの調査の結果、教科カテゴリは基本的に学部及び博士課程、修士課程,企業や学会などと連携した経営者幹部教育である。アメリカの大学におけるロジスティクス教育体系も多様であるが、調査資料に基づいて図示してみると次のとおりである。この概念図を基として第2章で調査したアメリカの各大学のカリキュラムとシラバスを参考に大学における物流教育の体系化を図ることができよう。

結論

  物流教育体系の変化では1990年度と2001年度を比較し、さらに三つの観点すなわち教科 vs.. 国・地域, 教科vs.. 年度, 国・地域 vs.. 年度について分析した。その結果、アメリカ大学における物流教育体系は、1990年と2001年の教科カテゴリはあまり変ってないが、カリキュラムとシラバスの変化から全般的な物流教育の変化が見られた。

  ロジスティクスの深化に応じてその教育体系をさらに専門的な分野として確立しようとしていること、ロジスティクス教育はもはや経営や工学の一分野の学問として行われているのではない点が今回の調査で印象付けられたと言える。また、1990年当時になかったSCM、電子商取引、情報技術(IT)という新しい概念の登場も近年の顕著な動向である。物流からロジスティクスへ、ロジスティクスからSCMを経て環境志向へと進む潮流のなか、新登場の電子商取引、ITはロジスティクスとその教育自体の変化を加速している。

  アメリカ大学における物流教育の事例調査から、調査対象の大学でほぼ共通して学部プログラムから大学院プログラムまで「ロジスティクス専攻」が存在し、かなりの数の大学で企業の幹部教育養成プログラムを確立しており、毎年定期的にセミナーを開催している。中には、学会と大学が連携した企業向けの教育もSCMを中心に様々な形態で行われている。

  本稿は、大阪産業大学 経営学部論文集に掲載された研究報告を数分の1に短縮したもので多くの興味深い図表を割愛したので内容的に舌足らずの面が多いと考えますが、大学や企業でのロジスティクス教育のカリキュラムとシラバスの参考に、また物流教育の体系を整備されるのに若干でも役立てて頂ければ幸いです。

【参考文献】

1. 大学における日米物流教育のカリキュラム調査報告書,1990年,日本物流学会.
2. オハイオ州立大学マーケティング学部;http://www.cob.ohio-state.edu/~mkt/
3. ペンシルベニア州立大学経営学部;http://www.smeal.psu.edu/smeal/index.html
4. シラキュース大学経営学部; http://sominfo.syr.edu/
5. メリーランド大学経営学部; http://www.rhsmith.umd.edu/tbpp/
6. ミシガン州立大学経営学部; http://www.bus.msu.edu/msc/
7. ジョージア工科大学IE&SE学部; http://www.isye.gatech.edu/
8. ジョージア大学マーケティング学部; http://www.cba.uga.edu/marketing/

以上



(C)2003 Tatehiko Miki & Sakata Logics,Inc.


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