ロジスティクス・レビュー

第351号 コンテナラウンドユースはどこまで浸透してきたか?(2016年11月10日発行)

執筆者 久保田 精一
(ロジスティクスコンサルタント)
    執筆者略歴 ▼

  • 著者略歴等
    • 熊本県出身
    • 1995年 東京大学 教養学部教養学科 卒
    • 1995~1996年 国土交通省系独立行政法人
    • 1997~2004年 財務省系シンクタンク(財団法人日本システム開発研究所)
      産業振興、物流等の調査業務を担当
    • 2004~2015年 公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会 JILS総合研究所
      物流コスト、物流システム機器等の調査業務を担当
    • 2015年7月 独立

目次

  復路が「カラ」となる輸入コンテナ輸送と、逆に往路が「カラ」になる輸出コンテナ輸送とをマッチングさせるのが「コンテナラウンドユース(CRU)」である(注1)。当初先進的な企業、団体による民間ベースでの取り組みから始まったCRUは、関係省庁・自治体などが事業費補助や施設整備、マニュアル作成などの基盤整備を進めるに従って取り組みが拡がっている。
  本稿ではこれまでの主要な動きを整理し、これまでの成果としてどの程度CRUが普及してきたか、その現状を確認しつつ、今後の課題を考えてみたい。
注1:コンテナラウンドユースの取り組みについては、2013年に本欄で取り上げたため、概要については当該記事を参照ください。 http://www.sakata.co.jp/logistics-273/


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1.コンテナラウンドユース推進への動き

1)行政がラウンドユース推進に動く

  CRUはコンテナの陸送コストを最小化しようという取り組みであるが、そのしわ寄せが船社・港運会社に行く構造となる。そのため、モード間で賛否が分かれる傾向がある。このような背景もあって、従来行政の関与が少なかったが、2013年頃から国(国土交通省、経済産業省)や自治体レベルでCRU促進の動きが活性化している。主な動きは以下の通りであるが、国(特に国交省)による「お墨付き」によって、大手荷主がCRUを活発化させることとなった。

①国交省(関東地方整備局)
  国は、国際コンテナ戦略港湾として京浜・阪神の2港を選定しているが、グローバルハブ港としての両港の機能を高めるため、広域から集貨を図ることが重要であることから、CRU(ないしコンテナマッチング)は両港の主要政策の一つとなっている。
  特に京浜港は、北関東以北の工業地帯から主たる集貨手段が、トラック・鉄道という陸送である(阪神港は若干事情が異なる)。そのため、京浜港を管轄する関東地方整備局においてCRU推進に積極的であり、具体的には2014年2月以降、「物流高度化シンポジウム」等のイベントが数度開催されるなど、コンテナマッチングの普及促進が図られてきた。
参考:http://www.pa.ktr.mlit.go.jp/kyoku/57butsuryu/matching.html

②経産省
  荷主を所管する経産省も、CRU推進に取り組んでいる。2015年度まで数年にわたって委員会組織を設置し、各種検討が行われたほか、日本ロジスティクスシステム協会(JILS)に交付した補助事業の一環として、調査研究やイベントを開催してきた。また、「コンテナラウンドユース推進の手引き」を作成するなどの成果を公表している。
参考:http://www.meti.go.jp/press/2015/05/20150512003/20150512003.html

③埼玉県
  自治体では埼玉県の動きが活発であり、内陸県としての輸送条件の向上などを目指して、CRU推進に積極的に取り組んでいる。2014年10月に「埼玉県コンテナラウンドユース推進協議会」を設置し、多数の荷主や事業者の参加を得てCRU推進策の検討を行っているほか、CRUの実施者に対する財政支援も行っている。CRU実施1件ごとに、データ報告を条件として「データ取得費」の支給を行っており、これまで2000件程度が支援対象となっている。
参考:https://www.pref.saitama.lg.jp/a1102/container/

④茨城県
  茨城県も埼玉県と同様の支援策を開始しており、2016年11月より、CRUを支援する「コンテナラウンドユース社会実験」に着手することとしている。なお茨城県は県内に常陸那珂港(茨城港常陸那珂港区)を抱えており、常陸那珂港の利用にも焦点を当てている点が、特徴である。
参考:https://www.pref.ibaraki.jp/kikaku/chikei/keikaku/butsuryu/round-use.html

⑤東京港(東京港埠頭)
  東京港では、従前から荷主同士の情報交換会などを開催し、企業間のマッチングの場として評価されてきたが、2014年3月から、インターネット上のマッチングシステムも稼働させている。この「To Po -Net」というシステムは、荷主等を対象とする、無料・会員制のマッチングサイトとなっている。
参考:http://www.tptc.co.jp/news/detail/69

2)インランドデポの整備、民間ベースのマッチングの拡がり

  CRU推進策の一環として、インランドデポ等のインフラ整備も拡がっている。インランドデポがあれば幹線部分の輸送と末端の配送を切り離すことができ、効率化につながる。インランドデポの整備はCRU推進にとっても重要な要素である。また、デポ整備とも関連するが、日通がマッチングへの取り組みを促進しているなど、民間ベースのマッチングも拡がっている。

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①佐野インランドポート(栃木県佐野市)
  栃木県佐野市は「佐野インランドポート」の構想を推進しており、2017年度中の供用開始に向け整備が進められている。なお実際のデポの運営には民間を活用する「指定管理者制度」が採用されているが、すでに指定管理者には吉田運送(有)(茨城県板東市)が選定されている。
参考:https://www.pref.saitama.lg.jp/a1102/container/documents/20160726_6.pdf

②その他のデポ整備の動き
  その他にもデポの整備拡大などの動きがある。
  例えば、太田国際貨物ターミナル(群馬県太田市)は2013年から施設規模を拡大して供用している。旧つくば国際貨物ターミナル(茨城県つくば市)は、設立時からの運営主体であった3セクが解散したものの、みなと運送(茨城県神栖市)が施設を継承して引き続き運営を継続している。
  ところで、インランドデポのうち公的施設はむしろ少数である。ドレージ会社や海貨業者が独自に運営している施設が多いが、そのような民間施設でも、設備を増強する動きが見られる。例えば郵船港運は、経産省の補助金を活用し、「伏見インランドコンテナターミナル」(京都市伏見区)の設備を強化している。
参考:http://www.logistics.or.jp/jils_news/郵船港運.pdf

③日通コンテナマッチングセンター
  企業がマッチングを担う動きも進んでいる。
  日本通運は、2014年5月に「コンテナマッチングセンター」の設立を発表し、CRUへの積極的な取り組みを開始している。日通は、鉄道・内航・海貨・ドレージにおいて有力企業であり、開始から間もないにもかかわらず、公表されているマッチングの件数からみて(後述)、ポテンシャルの高さが伺われる。また、亀山(三重県亀山市)と橋本(神奈川県相模原市)にそれぞれデポを新設するなど、インフラ整備が進んでいる点も注目される。
参考:https://www.pref.saitama.lg.jp/a1102/container/documents/2.pdf

3)規制・制度面の改善によってCRUのユーザビリティが向上

  CRU実施を後押しする規制緩和等も行われている。特に国内貨物へ輸送条件緩和が実現したことが重要である。

①国際貨物と国内貨物とでCRUを実施するための条件が大幅緩和
  一般に輸出入貨物量は当該エリアの総貨物量の1割程度に過ぎず、地域によっては輸出入貨物は数%しかない。CRUでは、このように量が限られた輸出貨物と輸入貨物とをマッチングする必要があり、その困難さが最大の課題となっている。
  これに対し、近年、国内貨物と国際貨物の往復輸送を可能とする規制緩和が行われた。
  具体的には、関税法上の規制(免税コンテナの国内輸送転用規制)と道路法上の規制(特殊車両通行許可制度の規制)が相次いで緩和されている。詳細は割愛するが、後者の道路法に関わる規制は、従来、輸出入用の海上コンテナのみ例外的にフル積載での運行を認めていたものを、国内貨物であっても同一の許可基準に統一するというものであり、かなりインパクトのある制度変更である(注2)。
  現時点では適用例自体は多くないが、これら規制緩和によって、国内貨物とのCRUの実現可能性は大きく進展したと言える。今後実務上のノウハウが蓄積されるに伴い、徐々に利用が増えると思われる。なお事例としては、濃飛倉庫運輸が衣料品量販店を荷主として実施している例があり、参考になる(注3)。

注2:許可は申請ごとに審査されるため、例外なく許可される訳ではない。
  その他詳細は http://www.mlit.go.jp/common/001085050.pdf
注3:事例について以下を参照。

https://www.pref.saitama.lg.jp/a1102/container/documents/20160217_5.pdf

2.CRU実施率は多い地域でも全体の数%程度か

  このように普及が進んでいると思われるCRUであるが、日本全体でどの程度CRUが実施されているか、コンテナの総本数の何%程度を占めているか、など、CRUの実態を定量的に調査したデータは、筆者が知る限りは存在しない。公的機関によってより正確な推計が行われることが期待されるが、現状では断片的な情報から推定するしかない。

①地域別に見ると京浜港が主
  地域別に見ると、CRUの実施エリアは限定的であり、京浜港と阪神港が主であることは明らかである。
  このうち、関西は主たる工業集積地が阪神港と近接しており、輸送距離が近すぎるためにCRUの成立が困難である。そのため、滋賀・京都周辺や神戸以西など一部地域での実施となっている(このうち、滋賀県は名古屋港の利用が多いこともネックである)。このような事情から、京浜港に比べるとCRUの実施数は非常に少ない。
  その他の地域では、名古屋港は貨物量が多く、また主要工業都市との距離的にも一見してCRUのポテンシャルがあるように思われるが、実際にはほとんど実施されていない(周辺の港湾運送業者へのヒアリングによる)。若干実施パターンが異なるものの、清水港、四日市港などで実施されている本数は一定のレベルに達すると見られる。

②京浜港後背圏におけるCRU実施状況
  CRUの本数はどの程度か、確認したいところだが、上記のとおり包括的な統計は存在しない。よって個別企業・自治体などのデータから推し量るしかない。
  まず個別企業等のデータとしては、荷主としては最大手クラスのCRUの実施主体であるクボタ(単月500本規模、注4)や、日通マッチングセンター(2014事業年度に268本、注5。ただし全国ベース)等はボリューム感を想定するうえで参考となる。また、公共系デポで行われている荷主間CRUの本数データ(年間数百~数千本程度が多い)も参考となる(注6)。
  地域レベルのデータとしては、埼玉県のCRU協議会が支援を行った本数のデータがあり、これによると、2014年10月末に協議会を設立以降、2016年7月時点でのCRU報告実績は1962件となっている。これは2年分の実績であり年間に換算すると1000本強に相当する。ただし、予算や制度的な制約から支援対象から漏れたケースがあると思われるため、埼玉エリアの実際のCRU実施本数はより多いはずである(注7)。
  ところで、京浜港のコンテナ取扱本数の半分は東京都・神奈川県が目的地である。両都県は港湾からの距離が近いため、CRUの実施は少ない。CRUの主対象エリアは、距離がある程度離れている埼玉・栃木・茨城・群馬である(福島以北もあるが、本数的には以上の4県が圧倒的に多い)。この4県を主たるCRUの対象圏域として想定すると、これに占める埼玉の割合は意外と高く、輸入貨物の場合39%を占める(注8)。仮に埼玉で1000本のマッチングが可能な場合、単純に拡大推計すると4県で2500本程度となるが、これは各デポ・企業の実績値から見て明らかに過小である。積み上げでカウントしても、当該地域で年間1万本以上のボリュームは確実に存在する。
  とはいえ、CRUはコンテナ全体のボリュームからするとわずかな量である。なぜなら、京浜港の取り扱い本数は、輸出入あわせて700万TEU程度であり、このうち輸入は360万TEU程度である(港湾統計による)。エリアを絞って、埼玉・栃木・群馬・茨城のみを対象としたとしても、150万TEU程度に上る。よって現状のCRUの実施率は多めに見ても数%程度に留まると考えられる。

③物流事業者によるラウンド運行が実は大きい
  CRUの規模感を想定するうえで大きな問題は、物流事業者が自社内でラウンドしているケースの捉え方である。物流事業者(ドレージ、海貨、港湾運送等)が船会社とバンプール契約を結んでいるデポは、関東域内でもかなりの数に上る。このようなデポを起点にラウンド運行する場合、荷主間でマッチングするCRUと同様の効果を生む(注9)が、必ずしもCRUとして認識されているとは言えない。ところが実態として、このようなパターンでの運行が、荷主間でのCRUを大幅に上回る規模で実施されている。これをCRUの一種と捉えるなら、本数はかなり増えることになる。

注4~5:以下掲載のPDF資料による。

http://www.pa.ktr.mlit.go.jp/kyoku/57butsuryu/buturyu_koudoka/symposium02.html

注6:例えば以下におけるデポ運営者の講演資料。

http://www.logistics.or.jp/jils_news/2015/06/post-103.html

注7:平成27年7月26日開催協議会資料より。

https://www.pref.saitama.lg.jp/a1102/container/

注8:全国輸出入コンテナ貨物流動調査(平成20年度)による。輸入のみを取り出しているのは、CRUの母数は往復いずれか片方だけであるからである。
注9:バンプールにコンテナを返却した段階で荷主との輸送契約は原則として終了するため、復路がマッチングされるかどうか、その段階では明らかでないが、マッチングされた場合に往復でのラウンド運行となる。

3.最後に:CRU拡大への期待

1)荷主同士のマッチングはパターンの見直しが必要

  CRUのマッチングには色々なパターンがあるが、荷主同士でのマッチングには課題が少なくない。特にコスト面でのインセンティブが小さいことが問題である。CRUを実施したとしても、運賃が半額になるわけではない。デポの利用コストのほか、デポとの間のショートドレーコストが発生する。よって1本当たりのコスト削減額は意外と小さい。
  仮に、コンテナを1日に3本、年間600本出荷する荷主が、3分の1の確率でマッチングできたとする。さらに、1本あたり1万円のコスト削減が可能だったとして、年間のコスト削減額は200万円に過ぎない。マッチングの手間や、コンテナの到着が遅延するリスクなどを考えると、コスト的に見合わないと考える荷主が少なくない。コンテナの出荷本数が一日1本にも満たない大多数の荷主ではなおさらである。よって、単なる往復マッチングでなく、国内貨物とのマッチングや調達物流とのマッチング、業界内での共同化など、荷主ならではの取り組みへと進化させる必要がある。

2)事業者によるマッチングの推進策も必要

  自社でマッチングするメリットを感じない荷主に対して、物流事業者(海貨・港湾運送・ドレージ・船会社)がマッチングの機能を担うことが期待される。荷主同士のマッチング「だけ」では、数量的にみて飛躍的な拡大は難しいはずである。事業者においてもマッチングの手間はデメリットとなるが、多数の荷主からコンテナが集まれば、1本当たりのマッチングのコストは低減する。また、顧客獲得という営業上の動機付けもあるし、ドライバー不足解消、環境負荷削減など、社会的意義も大きい。
  上述のとおり、物流事業者が船社とバンプール契約を締結し、コンテナヤードを内陸部に設置している例は多数存在し、ラウンド運行も行われている。事業者によるこのような取り組みが促進されることが望ましいし、そのため、後述するような規制緩和や、開発許可における配慮など制度的後押しも考えられるであろう。

3)道路運送の規制緩和との連携にも期待

  国交省が推進する物流生産性革命の一環として、トラック輸送の効率を向上させる各種規制緩和策が検討されている。フルトレーラ連結車などの「ダブル連結トラック」の実証事業のほか、隊列走行の実験も俎上に上っている。これらの取り組みは、現状では東名間での高速道路を中心とした実施であるが、インランドデポと港の間での連結輸送を許可するなどの規制緩和が行われれば、CRUへの後押しとなるだろう。
  規制緩和の関連で言うと、この10年ほどの間に行われた特車申請の制度見直し、運用の改善は、ドレージの効率化にかなり大きな効果を挙げたと思われる。その点で、更なる制度改善も期待される。
  例えば、CRUのマッチング効率だけを考えれば、ヘッドを切り離して不特定の異なるシャーシを牽引運行できる方が良いが、現状の特車申請、車検制度上、不可能ではないものの、かなりの困難が伴う。仮にこれをインランドデポとの間の輸送などで限定的に緩和できれば、有効かも知れない。

4)入出荷側の施設・オペレーションの海コン対応が不十分である

  その他のCRUの実施の課題としては、コンテナの管理責任や貨物品質の保証など様々な問題が指摘されるが、ここで別の角度から指摘しておきたいのは、入出荷の拠点となる倉庫・工場などの設備・オペレーションの問題である。道路の運行規制が大型車に対応して緩和されているのに対し、入出荷側の拠点の対応が進んでいないように思われる。輸入貨物において特に顕著であるが、ほとんどのコンテナは港頭地区でデバンされているため、内陸のインランドデポを利用する必要性が低い。よって、インランドデポの利用が進まない。
  細かくみて行くと、バース形状の問題、ウイングトラックによる低床式の倉庫内荷役への適用(ドックレベラー等の導入が必要となる)、ドライバーの荷役範囲の違い(ドレージとその他での荷役の担当範囲が異なる)など、色々な問題が指摘される。
  これはトラック待機時間が長いといった、昨今の物流問題全般とも共通した問題であるが、荷主側のオペレーションが物流を配慮したものとなっていないことが、物流効率を向上するうえで障壁となっているケースが散見され、輸出入物流においても改善が期待されるところである。


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以上


(C)2016 Seiichi Kubota & Sakata Warehouse, Inc.


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