ロジスティクス・レビュー

第188号卸売業の安心・安全への対応 ―鮮度・日付管理の実態と今後の取り組み― (2010年1月19日発行)

執筆者 田代 環
財団法人流通システム開発センター
流通コードサービス部 次長
    執筆者略歴 ▼

  • プロフィール
    • 入所以来、商品コードに関わる登録管理、普及事業(JANコード、集合包装用商品コード)を担当。特に国際標準の商品コードGTINの導入にあたっては、当初より課題研究、普及推進を担当している。
    • 他方、卸売業の研究会である「情報志向型卸売業研究会」が進める、卸売業の情報システム、物流システムの研究をサポートしている。

目次

1.はじめに

  情報志向型卸売業研究会(会長 (財)流通システム開発センター 辛島 修郎、以下略称:卸研)では、毎年度、卸売業が関わる最新の研究テーマを取り上げ会員メンバーが研究を行う研究委員会を設置し、事業活動の中心としている。
  卸研は、異業種の卸売業が互いに共通する情報化に関する課題を研究し、卸売業の情報化を推進し、卸売業の合理化及び近代化を当初の目的として、1985年8月に当時の通商産業省(現:経済産業省)の支援を受け設立された。四半世紀の歴史の中では、その研究の成果として卸売業の情報システム化に関わる各種の研究報告書、活用マニュアル、流通業界へ向けての提言など数多くの実績がある。
  現在では、卸売業25社とこれを支援する賛助会員の合わせて42社から組織される研究会である。
  最近の研究テーマには、次世代EDIへの対応、流通情報システム標準化事業への対応として「流通BMS検討部会」と「物流標準検討部会」を設置するなどし、それぞれについて卸研としての意見の表明、提言をした。なかでも物流標準化については「卸研 物流関連標準化仕様(案)SCMラベル、個口納品書」を作成し、経産省の標準化事業に対し提言、要望をした。結果、これらの研究成果は、経産事業の「スーパー業界 物流ラベル標準化検討」における検討の素案として採用され、同事業の08年度「物流ラベル・付帯帳票の標準化」の策定に反映された。

2.研究委員会の取り組み

  現在、卸研にあるシステム研究委員会では、「卸売業における鮮度管理・日付管理」を08年度から継続する研究テーマとして、旭食品㈱ 情報管理部部長 竹内恒夫氏をリーダーに、31社46名(内卸売業正会員20社23名)のメンバーによる研究活動を展開している。
  研究委員会では、昨年度の検討の中で、主に卸売業各社おける鮮度管理・日付管理の実態の調査と把握を行ったが、今年度は、これまでの成果を踏まえ、さらに実態を詳細に把握し、日付管理についての具体的な運用基準の標準化、システム化の検討などを行い、卸研として理想とする日付管理のガイドラインの作成を目指している。

3.これまでの検討経緯と内容

  08年度のシステム研究委員会は、「商品の安心、安全」を実現させるための重要な要因とされる「鮮度管理」、「日付管理」「トレーサビリティ」などを研究課題としたいとの会員企業からの要請により、「卸売業における鮮度管理・日付管理」を研究テーマと決めた。
  そこでの具体的な研究目標として、

卸売業における適正な鮮度管理方法と鮮度管理システムの標準モデルのガイドライン作成すること
加工食品の適正な鮮度管理基準の設定を検証することにより、管理基準の標準化を目指し、さらに流通業全体による標準化を推進すること。
商品メーカーと共に、商品分類別の解りやすい賞味期限の設定と保管、配送、販売管理におけるガイドライン策定すること。
メーカー/卸売業間、小売業/卸売業間の鮮度情報のデータ交換の将来的な方向性を研究すること。

  などを掲げ研究を始めた。
  また、この鮮度・日付管理のテーマは、商品の安心・安全はもちろんであるが、環境問題、CO2削減問題、食糧問題等、現在、社会的にも課題とされている諸問題との関連を否定できない。研究会では、環境問題、食糧問題の改善、CO2削減に貢献する、適切、効率的な商品管理、鮮度管理の実現も視野に入れ研究を進めることとした。

4.鮮度管理の現状、実態

  研究会では、より具体的な検討を行うために参加卸売業各社における「鮮度管理の現状、実態」を本格的に調査した。
  入荷期限、出荷期限の設定、管理など鮮度管理の情報システム化全般について、汎用センターと専用センターの機能面、システム仕様における違いについて、鮮度情報のマスター管理体制について、鮮度チェックの主体となる部署(発注管理部署と営業部署)の実態についてなど、卸売業における鮮度管理の現状、実態を認識することが出来た。

5.テーマ別による検討

  卸売業各社における鮮度管理の現状、実態を、把握した結果により、3つの検討テーマ別による具体的な検討を進めた。

■発注(発注~仕入れ・メーカーとの取組み)
  発注チームでは、発注から仕入れに至る鮮度管理を検討の対象とし、検討すべき具体的な課題を摘出した。

1. 各社(各業種)VAN発注フォーマットの検討(食品、菓子、日雑、医薬)
2. 医薬品メーカーと医薬品卸売業のJD-NET(受発注データ等、データ交換オンラインシステム)の活用事例を参考にし、食品系、菓子系VANにおけるデータ交換への対応を検討
3. メーカーに対する鮮度情報印字のルール、特に外箱に対して策定、提案
4. メーカーからの納品書における賞味期限、ロット番号の印字の可否を検証特に食品・菓子メーカーとのEDI項目の拡充と整備、EDIに対応した発注、物流のルール化を目標とし、課題の整理と実現について検証した。
課題の実現性を検証した結果、以下の効果が期待されることが明らかとなった。
  商品別の鮮度管理基準を共有化することにより、商品別の出荷基準レベルの明確化、及び小売業、卸売業からの返品・廃棄など経済的な損失を最小限にすることが可能となる。
  商品の生産から、出荷、納品、在庫など流通段階での安全性が保障される事により、サプライチェーンの透明性が確保され、トレーサビリティの実現へ向けての可能性が高まる。
  商品外箱への商品鮮度日付・製造ロット番号を印字することにより、業務の効率性が向上する。(将来的にはGS1データーバーも想定)メーカーでの出荷及び卸売業における納品時の物流作業が省力化され、納品時間短縮が図れる。
  ノー検品の可能性が高まる。

■入荷在庫管理(入荷~在庫、庫内運用、機能)
  入荷から在庫における庫内運用、機能に関して鮮度管理のあり方を検討することとし常温、加工食品、汎用型センターを「標準型」の前提として検討を進めた。
  運用実態をベースにあるべき姿を整理して、全体標準型を作り、次に多様、詳細に亘り検討(パターン化含む)を進めることとした。具体的には、
1.入荷在庫管理業務の現状と課題の整理
2.鮮度情報取得の為、出荷案内を事前入荷情報としての活用可否
3.鮮度管理基準の考え方の分析
4.GS1データバーへの対応、データ交換の実現性と取り組み方式の検討
を検討課題として取り上げ、食品・菓子メーカーとのEDI項目の拡充による鮮度情報の取込み、基本的な鮮度管理機能を取り込んだガイドラインの作成を今後の目標とした。
  また、これらの検討過程でまとめられた提言として、

メーカーへの提言

  • 商品外箱への賞味期限表示の徹底と標準化(印字位置と表示内容)
  • 商品マスタ情報(賞味期間等)の登録精度の向上(業界標準マスタメンテナンス及び情報提供の精度向上)
  • 納品時の1商品に対する複数の賞味期限日付混在の削減
  • 事前出荷案内情報に対する賞味期限情報の付加
    (事前出荷案内が送信できない場合、納品書への賞味期限情報及び発注№の表示)

小売業への提言

  • 得意先別の鮮度管理基準の見直し(小売業における鮮度管理基準の統一)
  • 廃棄ロス・返品削減を目指す取り組み


などを想定し、流通業界全体による取り組みの必要性を結論づけた。

■出荷(得意先対応)
  鮮度情報に関しての小売業への提言、標準共通ルールの作成、対小売業への鮮度情報の提供を卸売業がどう扱うか、トレーサビリティ情報 (製造番号、ロット番号等)の必要性などの検討を行った。
  最初に出荷時の賞味期限チェックの実態把握(在庫管理時を除く)を下記事項により確認し、出荷管理の鮮度管理システムの詳細分析・課題検証を行った。
1. 賞味期限別の在庫引き当て
2. ピッキグリスト賞味期限表示
3. マテハン機器の賞味期限対応
4. 伝票上の賞味期限表示の必要性

  結果、賞味期限の年月表示、賞味期限表示の統一、さらに流通BMSで賞味期限データ作成することや、GS1データバーの利用の可能性の検証を検討し、鮮度管理基準の統一と納品期限の緩和、賞味期限の年月表示(賞味期限3ヶ月超える商品)を結論とした。
  さらなる安心・安全と鮮度管理効率化の実現のためには、将来的には、流通BMSとGS1データバーを活用したモデルを理想とした。

6.現在の研究活動内容

  現在、システム研究委員会では、これまでの成果を踏まえた上で、検討の視点を業務運用面、情報システム面、業種温度帯という視点に切り替えて、以下の取り組みを展開している。

  • 卸売業における適正な鮮度管理方法とシステム化のモデルガイドライン作成
  • 加工食品の適正な鮮度管理基準を設定することによる管理基準の標準化、流通業全体での標準化
  • 製造メーカーにおける解りやすい商品分類別の賞味期限設定と保管、配送、販売管理のガイドライン策定
  • メーカー・卸売業間、小売業・卸売業間との鮮度情報のデータ交換の将来的な方向性とあるべき姿、メーカーからの情報提供


  今後、研究委員会においては、商品メーカー、小売業における日付・鮮度管理のさらなる実態把握と共に意見交換を実施すること、鮮度管理項目の標準化へ向けての調整、検討を行っていくこと、発注・入荷、在庫、出荷の運用面における鮮度管理と温度管理別、業種製品別(食品、菓子、低温、日雑)の取引先との日付管理についての具体的な運用基準の検討、システム化の検討を行うことが計画されている。
  今年度、最終的にこれらを取り纏めた卸研の共通認識として、卸売業として最低限実施しなければならない理想的な鮮度管理の標準モデルの作成、及び情報システム化の標準モデルの作成を盛り込んだガイドラインの完成を目指し検討を進めている。

以上



(C)2010 Tamaki Tashiro & Sakata Warehouse, Inc.


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