ロジスティクス・レビュー

第139号物流改革計画書の作り方(2008年1月10日発行)

執筆者 平野 太三
有限会社SANTA物流コンサルティング 代表取締役社長
-物流改革コンサルタント Dr.SANTA-
兵庫県芦屋市出身
    執筆者略歴 ▼
    経  歴
    • 昭和61年 甲南大学法学部卒業
    • 同年     ユーザックシステム株式会社入社
    • 物流担当システム営業として100社を超える物流現場分析に携わる。
    • 平成12年 Dr.SANTAのネーミングで物流コンサルティング(物流コスト削減、物流指標
      の作成、物流サービス向上、物流プロジェクトの運営)を開始。
    • 平成15年にユーザックシステム株式会社を退社後、有限会社SANTA物流コンサルティングを創業。
    • 講演回数年間50回
    所属団体
    • 日本物流学会正会員
    • 物流技術管理士会理事
    主な論文、著作
    • 「3ヶ月で効果が見え始める物流改善【現状把握編】」(㈱プロスパー企画)等
    • 包装タイムス、物流ニッポン、マテリアルフロー等で「Dr.SANTAの物流講座」の連載を行う

目次

1.物流改革方針の決定

  近頃、経営者が物流をKEYWORDにした経営方針発表をする様になってきたが、在庫削減、運賃削減等のおおまかな方針になってしまう場合も多い。確かに方向性は間違っていないが、物流現場からみると内心では、「物流を知らない人間に何がわかる!」という反発心を持ち、1年経過後に「こういう努力をしたのですが、うまくいきませんでした」ということになりがちである。しかし、出来なかった場合でも、経営者は具体的にどうすれば良いか指示ができないため、なかなか物流改革が進まないというパターンに陥ってしまうのである。
  それでは、本当に物流改善を進めることができないのであろうか? 答えは「NO」である。物流改善が推進できない企業には共通した問題が発生している。「具体的な物流改革目標が無い」「物流改革が進む組織になっていない」「物流現場で物流改革意識が低い」などがそれにあたる。ただ、物流現場が今まで何もしなかったかと言えば、そうでは無い。自分達なりに努力をしており、物流に関する知識は社内の誰にも負けないプライドもある。
  こういう場合、まず目的の共有化から入ることが望ましい。会社の規模によって進め方は異なるが、全部門のリーダー以上の人を集めて、会社の市場での位置づけと今後の方向性を述べ、今のままで進めていくと問題があることを強く訴える。こういう話をすると、「そんなことは昔からやっているよ!」と言われるかもしれないが、社員に言うことが重要ではなく、社員に理解してもらうことが重要だと思う。(図1物流改革の方針決定)
  会社を変えていくという方針が共有化できれば、各部門での現状の問題を各部門長が説明する。物流部門では、在庫の状況、運賃の状況、作業人員の状況等の説明が入り、過去に行ってきた改善の報告、今後の課題に入る。意識の共有化で一番肝心なことは、各部門の問題を全社で取り組むことである。

図1 物流改革の方針決定

2.物流改革目標の設定

  本来であれば、全社で物流改革に取り組むことを決定した後に、物流プロジェクトを作り、物流に関するすべての問題を洗い出すフェーズになるが、文字数制限の関係で別の機会にゆずりたい。問題を多く出した後、物流の数値化に入る。例えば、在庫であれば、商品アイテム数、全体の在庫金額、過剰在庫金額がそれにあたる。
  図2の物流管理表をご覧頂きたい。

図2 物流管理表

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  これはひとつの例であるが、物流として重点的に改善していく項目だけを1つの表でまとめ、改善の推進状況を見る。顧客クレームであれば、月間のクレーム件数、発生原因を月毎に記入していく。クレームを減らしなさいと指示するよりも、「商品Aのピッキングミスを減らしなさい」という具体的な指示の方がはるかに対策をたてやすい。発生原因別に推移表を見ていけば、改善策の効果が出ているのかどうか一目でわかる。ピッキング効率も同じである。ピッキング効率を良くするために倉庫レイアウトを変えた場合、改善効果が数字で見えてくる。ピッキング効率のデータが無い企業も多いかもしれないが、月間何回かデータを取り(例えば、毎月第2火曜日)、ピッキング時間とピッキング行数のデータを取るだけで比較できる。これであれば現場の負荷が低くて済む。評価基準としては、ピッキング行数÷作業時間=1時間当りのピッキング行数、で計算できる。私は毎月1回、物流定例会を開催することをお薦めしているが、その会議の中でこの様な内容を発表すれば、詳細の内容を知らないメンバーでも物流改善が進んでいるかどうかがはっきりとわかる。

図3 物流改革計画表

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  図3の物流改革計画表は、物流改善金額の目標と改善効果をみる。今後の改善は、①小さな改善の積み重ね、②難易度の高い改善、③投資が必要な改善、であると思う。よって、②③は効果予想額がどのくらい見込めるのかがわからないと、積極的に全社で取り組もうとする気になれない。例えば、年間300万円の改善効果が見込める場合であれば、年間投資額が100万円発生しても年間200万円の改善効果が実現できる。あとは、それだけ効果があるのかを検証するだけである。物流改革計画表は、年間どのくらい効果があるのかを明確にし、他部門へ協力の要請をしたり、多少の投資をしても構わないと判断できる。

3.役員会で物流改革計画の承認

  おおまかな改善計画ができれば、その内容を役員会で承認をもらう必要がある。物流プロジェクトで案を作成して、役員会で承認されれば反対するものがなくなり、怖いものは何も無い。図4の物流改革成果予測表をご覧頂きたい。改善計画の内容と、年間での改善効果予測額、どの部署の協力が必要かを明確にする。例えば、営業部門の協力が必要な場合でも、物流部門から依頼するよりも、役員会からTOPダウンで指示する方が改善は進みやすい。現在のやり方を変える場合、何故変えないといけないかを説明することに全体の50%程度のパワーがかかる。論理的に説明すれば解決できる場合はまだしも、効果があってもやりたくないという考えに対して説得をするのは非常に大変である。根回しに時間をかけるよりも、出来るだけ計画立案と実行に時間をかけたいと私は思う。

図4 物流改革成果予測表

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4.具体的な実行計画立案

  最後に一番重要な実行計画の立て方である。馴れていない企業では、最初はちょっと大変かもしれないが、一度慣れれば計画立案はそれほど難しくない。図5の物流改革実行スケジュールをご覧頂きたい。出来るだけ具体的に詳細の計画をたてることをお薦めする。誰が、いつ、何を、どのくらいの時間をかけて行うかを詰める必要がある。必ず、個人名で記入し、改善実行するために必要な予想時間を明記しておく。部署名で書いてしまうと、他人事の様に思ってしまう。また、月間の改善活動予想時間を書いておけば、その時間をいつ作るかを考えることができる。あとで、「時間がありませんでした」と言われるよりも、問題は出来るだけ早くわかった方が良い。時間が無いのであれば、その仕事を他のメンバーに回せないか考えることもでき、また、派遣社員を雇うことも検討できる。

図5 物流改革実行スケジュール

  以上の注意を心がけて、物流改革計画を作成すれば、必ず効果は出る。問題が明確になっていて、改善策ができ、実行計画を役員会で承認してもらうのであるから、何の障害もない。皆様も是非トライして頂きたい。

以上



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